やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

特集 実践! リハビリテーション栄養ケアプロセス
 企画主旨
 編集委員 社本 博
 「まず1人で1症例から実践してみよう!」は,本誌で執筆した井村沙織先生が誌面で伝えた重要なメッセージである.「急性期での実施は個人の早期介入が重要である!」は執筆者である小蔵要司先生からのメッセージである.リハビリテーション(以下リハ)栄養ケアプロセスは質の高いチーム医療を展開するための強力なツールとなり得る.しかし,いきなりエンジン全開でリハ栄養ケアプロセスを展開する必要はない.執筆者である飯田有輝先生が誌面で「実際の患者に当てはめ理論を実践に落とし込むことで,リハ栄養ケアプロセスの理解が深まる!」としている.対象患者を絞り,セッティングによってはリハ栄養ケアプロセスの一部を用い,少しずつ他職種を巻き込んでいくような積み重ねが必要である.
 リハ栄養ケアプロセスはリハ栄養を実践するためのツールの一つである.リハ栄養ケアプロセスが実践できないから,リハ栄養も実践できない,というわけではない.一方,リハ栄養を実践する目的は,「目の前の患者,利用者によくなってもらいたい」,あるいは「目の前の患者,利用者をよくしたい」というごく単純なものだと考えられる.そのためには「ゴール設定」が重要である.「ゴール設定」するためには,対象となる患者や利用者の現状を客観的に分析する必要がある.それが「アセスメント」「診断推論」「診断」である.ゴールが決まれば「介入」方法を決めることができ,「介入」が正しいかどうかを客観的に分析する「モニタリング」が必要とされる.これは医療介護従事者が慣れ親しんだ治療やケアで既に実践しているサイクルと同じではないだろうか.
 本特集を読めば,明日からリハ栄養ケアプロセスを実践できるようになるわけではない.まずは読者自身が「リハ栄養ケアプロセスを実践する!」というゴールを設定してみてはどうだろうか? そのうえで,自分や自分たちの現状をアセスメントし,そのゴールに向けて今何が充足していて,何が不足しているかを冷静に分析してみてはどうだろうか? そのためにはリハ栄養ケアプロセスの理解が必須である.読者が自施設で展開するリハ栄養の自己評価や課題を確認できるようになること,リハ栄養ケアプロセスを理解しやすくなること,そして少しでも質の高いリハ栄養を実践できるようになることが本特集の主旨である.
特集 実践! リハビリテーション栄養ケアプロセス
 企画主旨
 リハビリテーション栄養ケアプロセスのスペック(飯田有輝)
 施設でリハビリテーション栄養ケアプロセスを導入するためのノウハウ(井村沙織)
 リハビリテーション栄養ケアプロセス実践例
  (1)急性期:サルコペニアと低栄養を併存し早期離床に難渋した超重症肺炎症例(渡邊恭啓)
  (2)回復期:右大腿骨頸部骨折術後に第12胸椎圧迫骨折と抑うつ状態を併発し食思不振となった症例(早坂奈緒子 木村利江子・他)
  (3)ケアミックス:ケアミックス病院のリハビリテーション栄養ケアプロセスの実践例(青山愛果 森村勇喜)
  (4)在宅:在宅における進行性核上性麻痺利用者の栄養管理(谷中田修右)
 リハビリテーション栄養ケアプロセス失敗例
  (1)急性期:急性期におけるリハ栄養ケアプロセスの実践―実施率からみる現状と症例提示(小蔵要司)
  (2)回復期:攻めの栄養療法に加えて過剰な間食摂取により肥満に至った脳梗塞症例(山内杏奈 井上 健・他)
 座談会 リハビリテーション栄養ケアプロセスの実践のために(若林秀隆 西岡心大 永野彩乃 飯田有輝 司会:小蔵要司 オブザーバー:社本 博)

連載
【リハ栄養研究の勘所(3)】
 レター論文の意義と書き方について(對東俊介)

【災害支援とリハビリテーション栄養 最終回】
 DPATにおける避難所支援―リハビリテーション栄養の課題と連携(大鶴 卓)
 リハビリテーション栄養論文紹介(8)(中道真理子)

【リハ栄養あるある 最終回】
 リハビリテーション栄養からみた,栄養改善に対する歯科診療の効果を再認識した一例(桝井悦子)

原著 Impact of the number of drug types on Activities of Daily Living and Length of hospital stay in patients with vertebral compression fractures on acute care hospitals
 (Hiroki Maki,Hidetaka Wakabayashi et al)

症例報告 低栄養とサルコペニアを合併した食道がん術後患者に対するリハ栄養ケアプロセス介入:症例報告
 (市川佳孝 小蔵要司・他)

原著 回復期リハビリテーション病棟に入院した高齢脳梗塞患者の発症から入院までの日数と入院時栄養状態,退院時日常生活動作との関連
 (ブラウン章子 井上達朗・他)

病態別栄養理学療法:日本リハビリテーション栄養学会理学療法士部会によるポジションペーパー
 (井上達朗 竹内 泉・他)

栄養と理学療法:日本リハビリテーション栄養学会理学療法士部会によるポジションペーパー
 (井上達朗 飯田有輝・他)

リハビリテーション栄養における栄養・体重のゴール設定:日本リハビリテーション栄養学会によるポジションペーパー
 (若林秀隆 吉村芳弘・他)

 日本リハビリテーション栄養学会 入会のすすめ
 Corrigendum
 リハビリテーション栄養診療ガイドライン2020 Clinical Questionおよび推奨文
 日本リハビリテーション栄養学会誌投稿規定
 次号予告