やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

特集 リハビリテーション栄養の医療チームビルディング
 企画主旨
 編集委員 森脇美早
 疾病構造が複雑化,対応すべきことの豊富さから多職種協働が重要といわれて久しい.特にリハビリテーション(以下リハ)栄養は,その内容から個人のタスクワークで完結することはなく,必ずチームワークを必要とする.リハ栄養ではさまざまな教育・文化背景をもった多くの職種が相互に乗り入れる形で,役割開放が行われながらチームをつくっていく.チーム運営がうまくいくと,個人の力は掛け算となり大きな力を発揮する.一方で,複雑であるため葛藤や対立が起こりやすい.葛藤の果てには,疲れて現場を離れていく人もいれば,特定の職種を苦手になる人も出てくる.せっかく役割開放が積極的に行われていても,フィードバックやフォローアップがないと専門職としての自信が低下することもある.逆に役割の認識が狭いとその認識の範囲でしか個人は動けなくなってしまう.
 このようななかで,「多職種で協働しましょう」と連携のマニュアルを整備し,各自の意識づけを頑張るだけでは,なかなかよいチーム運営はできない.
 患者一人ひとりに全人的なリハ医療を提供する私たちスタッフも,一人ひとり生きてきた背景があり,それぞれの信念がある.たとえ,やる気にあふれた人が集まったとしても人間であることを意識せずにチームはつくれない.
 本特集では人間に着目し,心から参加できるチーム運営を模索した.
 リハ栄養では所属する病院・施設や地域のチーム構成など,マンパワーの偏りや個人の得意分野の違いによっては同じ職種でも役割が異なることがある.役割の認識を柔軟にし,あの人はこんなこともできるかもしれないと視野を広げていくために,「お互いを知ろう.職種の他己紹介」を取り入れた.原稿を拝読し,想像していた以上にとても温かく思いやりにあふれる内容で,チームビルディングにおいて,相手を知り,尊重していくことの奥深さを再考させられた.また,次の「人間に着目したチームビルディングの工夫」では人はどのように突き動かされ行動するのか,どのようなコミュニケーションの特性がありどのような工夫ができるのかなどを心理的な背景から学ぶことができる.さらに,教育現場での取り組み,連携ツールや環境の工夫,現場での実践例を盛り込み,それぞれ各領域のエキスパートの先生方に執筆いただいた.本書をご活用いただき一人でも多くの読者が孤軍奮闘や葛藤から抜け出し,楽しくチームでリハ栄養ができることを願っている.
特集 リハビリテーション栄養の医療チームビルディング
 企画主旨
 リハビリテーション栄養の医療チームビルディング(森脇美早)
 お互いを知ろう.職種の他己紹介
  (1)医師(リハ科医師),歯科医師,歯科衛生士,介護福祉士の紹介(藤岡誠二)
  (2)看護師,薬剤師,管理栄養士の紹介(白石 愛)
  (3)理学療法士,作業療法士,言語聴覚士の紹介(貴島真佐子 糸田昌隆)
 人間に着目したチームビルディングの工夫
  (1)リハビリテーション多職種チームにて専門職が生きいきと働くために(先崎 章)
  (2)医療安全からみたチームビルディング―アサーティブコミュニケーションの重要性とTeam STEPPS(高橋郁夫)
  (3)認知心理学的観点からの医療チームビルディング(三石敬之)
  (4)リハビリテーション栄養チームのための信念対立解明アプローチ(京極 真)
 医療チームビルディング―教育現場での取り組み(松村竜誠)
 ツールの利用・環境の工夫から連携しやすくする―地域連携ツール・ICT・建物の設計・動線など(池永康規)
 チームビルディング実践例(田中志子)

連載
【リハ栄養研究の勘所(2)】
 臨床研究の進め方について(原 正彦)

【災害支援とリハビリテーション栄養(7)】
 災害時における病院食対応の実際(山仁子)

リハビリテーション栄養論文紹介(7)
 (白石 愛)

【リハ栄養あるある(7)】
 薬が活動や栄養素摂取の阻害要因となった介護医療院入所者の処方カスケード(中道真理子)

活動報告 回復期リハビリテーション病棟でのリハビリテーション栄養サポートチームの活動とスタッフ教育
 (堀家章宏 森 隆志・他)

原著 大腿骨頸部骨折術後患者(HF)に対する栄養介入によるリハビリテーションへの効果─異なる組成の栄養剤の効果の差
 (木原直貴 玉井範子・他)

原著 Impact of pharmacists on the improvement of activities of daily living and nutritional status of convalescent stroke patients
 (Mariko Nakamichi,Hidetaka Wakabayashi et al)

 日本リハビリテーション栄養学会 入会のすすめ
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