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特集 リハビリテーション栄養臨床研究のすすめ
 企画主旨
 編集委員 吉村芳弘
 本学会が2017年5月に設立され2年が経過した.前身の日本リハビリテーション栄養研究会が2011年に設立されて8年になる.この間に「リハ栄養」という言葉はリハビリテーション(以下リハ)領域や栄養領域だけでなく,一般診療においても広く用いられつつある.2017年秋に仙台で開催された本学会の全国学術集会では参加者が1,000名を超えた.リハ領域や栄養領域の学術集会でもリハ栄養関連の演題数が増加している.リハ栄養をコンセプトとした栄養剤も開発,販売されている.「リハ栄養」の定義が更新され,リハ栄養ケアプロセスという質の高いリハ栄養ケアを行うための体系的な問題解決手法も開発された.リハと栄養の距離は以前より格段に近づいたと考える.一方で,この領域の存在意義ともいえるエビデンスは十分とは言えない.さらに,海外ではリハ栄養の英訳“rehabilitation nutrition”という用語は学術的にごく一部で使用されているに過ぎない.実際に現時点のリハ栄養の学術論文はほとんどが日本から発信されたものである.リハ栄養のエビデンスを質,量ともに充実させ,国内外においてリハ栄養学が発展し続けるためには臨床研究の推進が極めて重要である.
 臨床研究のステップには,(1)臨床上の疑問をリサーチクエスチョンに落とし込み,(2)先行研究を検索して「わかっていること」と「わかっていないこと」を明確にし,(3)リサーチクエスチョンを解決するための研究デザインを選択し,(4)研究プロトコールを作成し,(5)データ収集と統計解析を行い,(6)結果を解釈して成果を発表する(学会,論文),というステージが存在する.ありがちな臨床研究として,カルテからデータを集めて何か言えないかあれこれ考えるという流れがあるが,データ収集の前に研究の質の9割が決まる.さらに,質の高い臨床研究を行うためには適切な研究デザインや統計解析の選択にも習熟する必要がある.
 また,別の側面として,臨床研究は医療者の人生を豊かにする.研究は目の前の患者およびまだ見ぬ世界中の患者のために行うものであるが,研究者自身の臨床の視点が広がる.患者に密に接していれば研究のアイディアがさらに増える.研究をすれば臨床がおろそかになる,と言う人もいるが正反対である.研究は臨床への意欲をかきたてる.
 以上より,本特集では「リハビリテーション栄養臨床研究のすすめ」をテーマとして,臨床研究のwhy,what,howを第一線で活躍されている先生方に執筆をお願いした.学会誌としてこのような特集が企画されることは希少かつ貴重であると考える.本企画がリハ栄養の臨床研究を実践するあらゆる人にとっての道標となることを期待する.
特集 リハビリテーション栄養臨床研究のすすめ
 企画主旨
 1.なぜ臨床研究か
  臨床研究の意義〜あるリハビリテーション科医師の場合〜(小山哲男)
  リハビリテーション栄養関連の臨床研究の現状(藤原 大)
  リサーチクエスチョンの作り方(紙谷 司 福原俊一)
  臨床研究と学会発表,論文執筆の進め方(海道利実)
 2.臨床研究の実践
  文献検索(鈴木孝明)
  研究デザイン(観察研究)(鈴木規雄)
  研究デザイン(介入研究)(吉村芳弘)
  研究デザイン(系統的レビュー)(湯浅秀道)
  研究デザイン(理論的研究・質的研究・混合研究)(京極 真)
  研究プロトコール(小蔵要司)
  研究倫理・倫理審査の流れ(永見慎輔)
  統計解析(山本紘司)
 3.臨床研究のアウトプット
  多施設症例データベースを用いたリアルワールドサーチ(百崎 良)
  科研費―研究助成金を獲得する10条件(郡 健二郎)
  論文の書き方(原著)(前田圭介)
  論文の書き方(症例報告)(宇野千晴)

連載
【災害支援とリハビリテーション栄養(3)】
 災害時に生じる栄養不良と高齢者・障がい者の栄養ケア(笠岡(坪山)宜代)

【リハ栄養あるある(3)】
 回復期リハビリテーション病棟における看護師の視点―その嘔吐,原因はなんですか?(一柳有紀)

リハビリテーション栄養 論文紹介(3)
 (安福祐一)

症例報告 サルコペニアの摂食嚥下障害の合併が疑われた回復期脳卒中患者に対するリハ栄養管理:症例報告
 (渡部理子 西岡心大・他)

原著 脳梗塞リハビリテーション患者の骨格筋減少と機能的予後との関連
 (佐藤圭祐 前田圭介・他)

サルコペニアと摂食嚥下障害4学会合同ポジションペーパー

 日本リハビリテーション栄養学会 入会のすすめ
 日本リハビリテーション栄養学会誌投稿規定
 次号予告