やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第2版の序
 本書の初版は,全国の柔道整復学校における解剖学教科書として平成7年に出版された.それ以来14年が経過して,解剖学および関連分野の進歩に対応するべく改訂を行う時期を迎えた.
 今回の改訂に当たり,次の点に留意した.
 1)各章の区分は,人体解剖学概説,骨格系,筋系,心脈管系にはじまり,体表解剖と映像解剖で終わる従来と同様な方式を採用した.これは,初めて解剖学を学ぶ学生諸君にとって器官系統別の記述が理解しやすいと考えたからである.
 2)各器官系統が人体のどの部位にあるのかを明示した.
 3)複雑な人体を視覚的に理解しやすくするために,二色刷り図を採用した.また,図の訂正や増補を行った.
 4)現在の細胞学,免疫学,神経科学の進歩に対応するために,細胞学,血液,リンパ系,神経系の錐体外路系についての記述を大幅に改めた.
 5)解剖学用語は,日本解剖学会監修,解剖学用語委員会編集の『解剖学用語改訂13版』に可能な限り従った.
 改訂に当たっては,全国柔道整復学校協会の諸先生から多数の貴重なご意見をいただき,参考とさせていただいたことに対して,深甚なる謝意を表する.
 今後ともよりよい「解剖学」の教科書を目指して努力いたす所存であり,関係各位のご支援,ご叱責をお願いする次第である.
 平成20年1月
 執筆者一同

初版の序
 解剖学,とくに人体解剖学はヒトの身体の構築を学ぶ学問である.人体の成り立ちや,完成された形態や構造を肉眼的に,あるいは顕微鏡を用いて解明する学問である.とくに医療技術の修得を志すものにとっては,必要欠くべからざる基礎的学問となっている.
 本書は,社団法人全国柔道整復学校協会の柔道整復師教科ガイドラインに従って記述した.柔道整復師という特性を考慮して,骨・関節・筋の記載に重点をおいた.また,体表解剖の章では,体表から観察される骨・筋・血管・神経などについて記載した.
 解剖学を初めて学ぶ方々のために,1)人体を構成する細胞・組織・器官が身体のどの部位にあるのかを明示し,2)それらの関連を整理・配列し,諸器官の形態・構造および機能を一体として把握できるようにつとめた.また,3)人体を構成する細胞・組織・器官の形態の理解を助けるために,できるだけ多くの図表を取り入れ,4)重要な解剖学用語はゴシック体で記載した.しかしながら,人体解剖学はきわめて具体的な事実を記述した学問であり,それを教科書のみを通して理解することには,かなり無理があると考える.できるだけ解剖学の模型・標本・映像資料などを参照して,人体の構造を立体的に把握されることを望んでいる.
 編集を終えてみると,われわれの力不足のために所期の目的を十分に達成できたとは必ずしもいえない点もある.また,われわれの知識不足から思わぬ記述の誤りがあることと考える.関係各位からのご批判・ご助言をいただき,今後さらに努力を重ねて,よりよい書物にしていきたいと考えている.
 最後に,映像解剖の資料を快く貸与下さいました東邦大学医学部大橋病院第二放射線科の桑島章助教授と筑波技術短期大学の坂井友実助教授,本書の全体にわたってご指導をいただいた教科委員長の櫻井康司先生ならびに成瀬秀夫先生,本書の刊行までにいろいろとお世話いただいた医歯薬出版編集部の各位,すべての挿図を描いた青木勉氏に深甚なる謝意を表する.
 平成7年2月
 編者
1 人体解剖学概説
 A 意義と分類
  1.解剖学の意義
  2.解剖学の分類
   a.肉眼解剖学
   b.顕微解剖学(組織学)
   c.発生学
  3.解剖学用語
   a.方向と位置を示す用語
   b.人体各部の名称
 B 細胞および組織
  1.細胞
   a.形態と内部構造
   b.細胞周期と細胞分裂
  2.組織
   a.組織の分類と特性
 C 発生
  1.人体の発生
   a.生殖細胞
   b.性染色体と性の決定
   c.受精卵(原胚子)の分割と
  2.その後の発生
  3.各組織,器官の発生
 D 器官系統
  1.器官の定義
  2.器官系
 E 人体の区分
  1.区分
  2.細区分
   a.頭の部位
   b.顔の部位
   c.頚の部位
   d.胸の部位
   e.腹の部位
   f.背の部位
   g.会陰の部位
   h.上肢の部位
   i.下肢の部位
  3.人体の区分線
2 運動系
 A 骨格系
  1.総論
   a.骨の役割
   b.骨の形状による分類
   c.骨の構造
   d.骨の発生と成長
   e.骨表面の形状(性状)についての用語
   f.骨の連結
  2.各論
   a.脊柱
   b.胸郭
   c.上肢骨
   d.上肢の関節
   e.下肢骨
   f.下肢の関節
   g.頭蓋
 B 筋系
  1.骨格筋
   a.筋の形態と起始,停止
   b.筋の作用
   c.筋の補助装置
   d.筋の神経
  2.頭部の筋
   a.顔面筋(表情筋)
   b.咀嚼筋
  3.頚部の筋
   a.広頚筋
   b.胸鎖乳突筋
   c.前頚筋
   d.後頚筋
   e.頚部における三角
  4.胸部の筋
   a.大胸筋
   b.小胸筋
   c.鎖骨下筋
   d.前鋸筋
   e.外肋間筋
   f.内肋間筋,最内肋間筋
   g.横隔膜
  5.呼吸運動
  6.腹部の筋
   a.腹直筋
   b.錐体筋
   c.外腹斜筋
   d.内腹斜筋
   e.腹横筋
   f.腰方形筋
   g.鼡径管
  7.背部の筋
   a.浅背筋
   b.深背筋第1層
   c.深背筋第2層(固有背筋)
  8.上肢の筋
   a.上肢帯の筋
   b.上腕の筋
   c.前腕の筋
   d.手の筋
  9.下肢の筋
   a.下肢帯の筋
   b.大腿の筋
   c.下腿の筋
   d.足の筋
3 脈管系
 A 総論
  1.体循環と肺循環
   a.肺(小)循環
   b.体(大)循環
  2.血管の形態と構造
   a.形態
   b.構造
 B 心臓
  1.心臓の位置と形態
  2.心臓の構造
  3.心臓の弁
   a.房室弁
   b.動脈弁
  4.心臓壁の構造
   a.心内膜
   b.心筋層
   c.心外膜(漿膜性心膜臓側板)
  5.刺激伝導系
   a.洞房系
   b.房室系
  6.心臓の脈管(冠状動脈と冠状静脈洞)
   a.右冠状動脈
   b.左冠状動脈
   c.冠状静脈洞
  7.心臓の神経
  8.心膜
   a.線維性心膜
   b.漿膜性心膜
 C 心脈管系
 C-1 肺循環(小循環)
 C-2 体循環(大循環)
  1.動脈系
   a.大動脈
   b.頭部,頚部の動脈
   c.上肢の動脈
   d.胸大動脈
   e.腹大動脈
   f.骨盤部の動脈
   g.下肢の動脈
  2.静脈系
   a.上大静脈
   b.下大静脈
   c.門 脈
   d.骨盤部の静脈
   e.下肢の静脈
  3.胎児循環
 D リンパ系
  1.リンパ本幹
  2.リンパ性器官
   a.リンパ節の構造
   b.リンパ節の分布
   c.脾 臓
   d.胸 腺
4 内臓系
 A 消化器
  1.消化器の働き
  2.消化器の種類と構造
   a.口
   b.口腔腺(唾液腺),歯,舌
   c.咽頭
   d.食道
   e.胃
   f.小腸
   g.大腸
   h.肝臓と胆道(胆嚢を含む)
   i.膵臓
   j.腹膜
 B 呼吸器
  1.呼吸器の働き
  2.呼吸器
   a.外鼻
   b.鼻腔と副鼻腔
   c.咽頭
   d.喉頭
   e.気管および気管支
   f.肺
   g.胸膜
   h.縦隔
 C 泌尿器
  1.泌尿器の働き
  2.泌尿器
   a.腎臓
   b.尿管
   c.膀胱
   d.尿道
 D 生殖器
  1.生殖器の働き
  2.男性生殖器
   a.精巣と精巣上体
   b.精管
   c.精嚢
   d.付属生殖器
   e.陰茎と陰嚢
  3.女性生殖器
   a.卵巣
   b.卵管
   c.子宮
   d.腟
   e.外陰部
   f.会陰
   g.卵巣と子宮粘膜の周期的変化
   h.胎盤
5 内分泌系
 A 内分泌系
  1.内分泌器の働き
  2.内分泌器
   a.下垂体
   b.松果体
   c.甲状腺
   d.上皮小体
   e.副腎
   f.膵臓
   g.精巣
   h.卵巣
6 神経系
 A 神経系の基礎
  1.神経系の区分と特徴
  2.神経組織
   a.神経細胞(ニューロン)
   b.神経細胞の種類
   c.支持細胞
  3.灰白質,白質と神経節,根
  4.中枢神経系の区分
  5.脳室系
  6.髄膜と脳脊髄液
   a.硬膜
   b.クモ膜
   c.軟膜
 B 脳
  1.各部の形態と機能
   a.終脳(大脳半球)
   b.間脳
   c.中脳,橋,延髄
   d.小脳
 C 脊髄
  1.区分
   a.前根と後根(ベル・マジャンディーの法則)
   b.脊髄の内部構造
   c.中枢神経系の血管
  2.伝導路
   a.反射路(反射弓)
   b.上行性伝導路(感覚性伝導路)
   c.下行性伝導路(運動性伝導路)
 D 末梢神経
  1.脳神経
   a.嗅神経(I:感覚)
   b.視神経(II:感覚)
   c.動眼神経(III:運動,副交感)
   d.滑車神経(IV:運動)
   e.三叉神経(V:感覚,運動)
   f.外転神経(VI:運動)
   g.顔面神経(VII:感覚,運動,副交感)
   h.内耳神経(VIII:感覚)
   i.舌咽神経(IX:感覚,運動,副交感)
   j.迷走神経(X:感覚,運動,副交感)
   k.副神経(XI:運動)
   l.舌下神経(XII:運動)
  2.脊髄神経
   a.脊髄神経後枝
   b.頚神経叢
   c.腕神経叢
   d.胸神経
   e.腰神経叢
   f.仙骨神経叢
   g.陰部神経叢
   h.尾骨神経
   i.デルマトーム
  3.自律神経系
   a.交感神経系
   b.副交感神経系
   c.関連痛
7 感覚器
 A 外皮
  1.皮膚
   a.表皮
   b.真皮
   c.皮下組織
   d.皮膚に付属する角質器
   e.皮膚腺
  2.筋,腱,関節の感覚神経
   a.筋
   b.腱
   c.関節
 B 視覚器
  1.眼球
   a.眼球の構造
   b.光受容器と網膜
   c.視覚路
  2.眼球付属器(副眼器)
   a.眼ケン
   b.涙器
   c.眼筋
 C 聴覚器および平衡器
  1.外耳
  2.中耳
   a.鼓膜
   b.鼓室
   c.耳管
  3.内耳
   a.蝸牛
   b.前庭
   c.半規管
  4.平衡覚路と聴覚路および平衡覚中枢と聴覚中枢
 D 味覚器
  1.味蕾
  2.味覚神経
 E 嗅覚器
  1.嗅粘膜(嗅上皮)
  2.嗅球,嗅索
  3.嗅覚中枢
8 体表解剖
 A 体表区分
  1.区分
  2.細区分
  3.人体の区分線
 B 骨格系
  1.頭部
  2.頚部
  3.胸部
  4.腹部
  5.背部
  6.上肢
  7.下肢
 C 筋系
  1.顔面,側頚部
  2.頚部前面
  3.胸部前面
  4.腹部前面
  5.背
  6.上腕
  7.前腕
  8.手背
  9.大腿部
  10.後下腿部
  11.筋肉注射部位
 D 脈管系
  1.拍動の触れる動脈
   a.頭部
   b.頚部
   c.上肢
   d.下肢
   e.心尖拍動
  2.静脈注射および点滴部位
 E 神経系
  1.三叉神経
  2.大後頭神経
  3.尺骨神経
  4.坐骨神経
  5.総腓骨神経
  6.手根管症候群
  7.斜角筋症候群
 F 目,耳,鼻,口
  1.眉毛,目
  2.耳
  3.鼻
  4.口
 G 外皮
  1.皮膚
  2.毛
  3.爪
  4.乳房
 H 生体計測
  1.身長
  2.体重
  3.胸囲
  4.腹囲
  5.上肢の計測
  6.下肢の計測
9 映像解剖
 A 診断用X線
  1.単純X線検査法
  2.断層撮影法
  3.造影撮影法
  4.X線透視検査
 B CTスキャン
 C 磁気共鳴画像診断法(MRI)
 D サーモグラフィ

 索引