やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

編集の序

 柔道整復師の資質向上を目的に,厚生労働大臣の定める国家試験となって,早10年が経過しました.平成9年より始まった,柔道整復師養成施設の新設は,いまだ止まる様子はなく,資質の向上に対する社会的責任の重さに想いを致すと,大量に卒業生が輩出される状況のなか,質を確保することは至難の技と思われます.従来にも増して,医療を実践するに足る人格,倫理教育等課題が山積と認識しております.また昨年より,柔道整復師の免許取消し等の処分が,新聞等に公表されることとなりました.
 このようななか,柔道整復師として必要な法的知識,その教育を通して柔道整復師としての倫理観の徹底,順法精神の涵養等,医事関係法規を学ぶ意義ははなはだ深いものがあります.
 従来の教科書は,委員会委員であられた(故)田城幸雄先生の労作を,当協会の教科書委員会を中心とした関係委員により継続して発行してきたものですが,関係法規の改正が多岐に及び,毎年の改訂が,他の教科書の改訂作業に影響を及ぼすことも懸念されるため,この種の出版に豊富な経験を有する医歯薬出版株式会社に編者として参画を依頼することとしたものです.今後教科書委員会との共同作業により従来の教科書にも増して,学校教育の質的向上にさらなる貢献を果たすことのできる教科書に仕上がっていくことを期待するものです.
 学生諸君は,日々真摯摯な態度で広く学習することによって,さらに人格の陶冶に努めることを希望するものです.
 孔子の『論語』に「事を敬して信あり」とありますが,自分の仕事を敬うことが,すべての出発点になります.己の仕事に誇りを持ち得るように,お互いが切磋琢磨して研鑽に励むことが肝要です.
 学生諸君を含めた一人一人の行動に,柔道整復師の未来がかかっていることを忘れず,精進されることを切望し,序文とします.
 平成15年1月
 社団法人 全国柔道整復学校協会 会長 櫻 井 康 司

監修のことば

 わが国の医療を取り巻く環境は,人口の高齢化,疾病構造の変化,医療の高度化,国民の医療に対する関心の高まりなど著しく変化しており,国民に適正かつ良質の医療サービスを提供する必要性はますます高まっている.このことは,医療に従事する者全てが等しく自己研鑽に励み,国民の期待に添うべく努力しなければならないことを意味している.民族医学といわれる柔道整復師の分野においても例外ではなく,柔道整復学の更なる確立とともに,国民医療の一翼を担う責任を果たすために,努力を傾注し精進を重ねて欲しいと念願しているところである.
 柔道整復師の行う業務は,医師や看護師その他の医療関係職種と同様,人体の健康に関わる重要な業務であるため,法令によってその資格が定められているところである.
 本書は柔道整復師の業務に従事するうえで了知しておくべき法令について解説したものであり,関係法規・疑義解釈・関係判例等も併せて収録している.
 本書が,柔道整復師の業務の適正化・向上に寄与し,もって国民の健康の確保に資することを念願して,監修のことばとする.
 平成15年1月
 医事法制研究会
I 序 論
 1. 法の意義
 2. 法の体系
 3. 柔道整復および柔道整復師に関する法規
  1) 人および人の行為に関する法規
   (1)柔道整復師に関する法規
   (2)その他医療を行う人に関する法規
  2) 医療を行う場所に関する法規

II 柔道整復師法とその関連内容
A 第1章 総 則
 1. 柔道整復師法の目的
    ※免許制度を設ける理由
 2. 定義
  1) 「柔道整復師」とは
  2) 「施術所」とは
B 第2章 免 許
 1. 柔道整復師免許
 2. 免許を受けるための要件
  1) 積極的資格要件
  2) 消極的資格要件(相対的欠格事由)
 3. 免許の申請
 4. 柔道整復師名簿
  1) 柔道整復師名簿の登録事項
  2) 柔道整復師名簿の訂正
  3) 柔道整復師名簿登録の消除
    ※失踪の宣告 ※死亡の届け出義務者
    ※失踪の届け出義務者
  4) 柔道整復師名簿の登録事務と指定登録機関
 5. 免許の取消等
    ※再免許
 6. 柔道整復師免許証及び柔道整復師免許証明書
 7. 免許証の書換え交付
 8. 免許証の再交付
 9. 免許証又は免許証明書の返納および提出
C 第3章 柔道整復師試験
 1. 試験の実施
    ※試験事務の実施結果の報告
    ※試験委員の要件
    ※試験委員の選任及び変更の届出
  1) 受験資格
    ※学校教育法第56条
  2) 不正行為者の受験停止等
    ※受験停止の処分の報告
    ※試験無効等の処分の通知
  3) 試験科目,受験手続
   (1)試験科目
   (2)受験手続
   (3)受験手数料
   (4)試験施行期日等の公告
 2. 合格証書と合格証明書
  1) 合格証書の交付
  2) 合格証明書の交付
D 第4章 業 務
 1. 業務の禁止
    <名称独占と業務独占>
 2. 業務範囲
  1) 施術の制限
    ※医師の同意
    ※応急手当
  2) 外科手術,薬品投与等の禁止
    ※医師法第17条
    ※医師法第31条
    ※薬剤師法第19条
    ※薬剤師法第29条
    ※薬品投与の範囲
  3) 診療放射線の扱い
   (1)診療放射線の人体照射
   (2)診療放射線の照射場所
 3. 秘密を守る義務
 4. 都道府県知事の指示
 5. 緊急時における厚生労働大臣の事務執行
E 第5章 施術所
 1. 施術所の届出
  1) 施術所を開設したとき
    ※届出事項
  2) 施術所を休止,廃止又は再開したとき
  3) 罰則
 2. 施術所の構造設備等
  1) 施術所の構造設備基準
  2) 衛生上必要な措置
 3. 施術所に対する監督
  1) 報告及び検査
  2) 施術所の使用制限等
F 第6章 雑 則
 1. 広 告
  1) 広告の制限
    ※広告を制限する理由
  2) 名称の制限
   (1)医師法に違反するもの
   (2)医療法に違反するもの
    ※医療法第3条第1項
    ※広告することができる診療科名
    ※病院
    ※診療所
 2. 経過措置の制定
G 第7章 罰 則
 1. 罪刑法定主義
    ※懲役
    ※禁錮
    ※拘留
    ※罰金
    ※科料
    ※執行猶予
 2. 柔道整復師法に定められる罰則
  1) 指定登録機関役員等の秘密保持義務違反
  2) 指定登録機関又は指定試験機関の事務停止命令違反
  3) 1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられるもの
  4) 50万円以下の罰金に処せられるもの
  5) 30万円以下の罰金に処せられるもの
 3. 両罰規定
  1) 第22条の規定に基づく処分又は命令に違反したとき
  2) 第24条の規定に違反したとき
  3) 第19条第1項又は第2項の規定による届出をせず,又は虚偽の届出をしたとき
  4) 第21条第1項の規定による報告をせず,若しくは虚偽の報告をし,又は同項の規定による職員の検査を拒み,妨げ,若しくは忌避したとき
H 第8章 指定登録機関及び指定試験機関
 1. 指定登録機関
    ※厚生労働大臣による登録事務の実施
  1) 指定登録機関の指定の申請
    ※申請書の記載事項
    ※申請書に添える書類
  2) 指定登録機関の指定の要件
  3) 指定登録機関の欠格事由
  4) 指定登録機関の役員
  5) 事業計画
  6) 登録事務規程
    ※登録事務規程の記載事項
  7) 指定登録機関が登録事務を行う場合の規定の適用
    ※指定登録機関の行う登録事務
  8) 秘密保持義務
  9) 帳簿の備付け
    ※帳簿の記載事項
  10) 厚生労働大臣の監督等
  11) 登録事務の休廃止
  12) 指定登録機関の指定の取消し
  13) 指定登録機関がした処分等に係る不服申立て
    ※不作為
 2. 指定試験機関
  1) 指定試験機関の指定の申請
  2) 指定試験機関の指定の要件
  3) 指定試験機関の欠格事由
  4) 指定試験機関の役員
    ※試験委員の要件
    ※詞ア委員の選任及び変更の届出事項
  5) 事業計画
  6) 試験事務規程
    ※試験事務規程の記載事項
  7) 秘密保持義務
  8) 帳簿の備付け
    ※帳簿の記載事項
  9) 試験事務の実施結果の報告
  10) 受験停止の処分の報告
  11) 厚生労働大臣の監督等
  12) 試験事務の休廃止
  13) 指定試験機関の指定の取消し
  14) 指定試験機関がした処分等に係る不服申立て
I 第9章 附 則
 1. 免許の特例
  1) 内地以外の地で柔道整復術の免許鑑札を得た者に対する特例
  2) 旧法の規定による免許及び免許証
 2. 受験資格の特例

III 関係法規
A 医療従事者の身分関係法
 1. 医師法
 2. 歯科医師法
 3. 保健師助産師看護師法
 4. 診療放射線技師法
 5. 臨床検査技師,衛生検査技師等に関する法律
 6. 理学療法士及び作業療法士法
 7. 視能訓練士法
 8. 臨床工学技士法
 9. 義肢装具士法
 10. 救急救命士法
 11. 歯科衛生士法
 12. 歯科技工士法
B 医療法
 1. 医療法
 2. 医療法施行令
C 薬事法規
 1. 薬事法
 2. 薬剤師法
 3. 麻薬及び向精神薬取締法
 4. 毒物及び劇物取締法
D 衛生関係法規
 1. 保健一般に関する法律
 2. 予防衛生に関する法律
 3. 環境衛生関係の法律
E 社会福祉関係法規
 1. 生活保護法
 2. 児童福祉法
 3. 身体障害者福祉法
 4. 介護保険法
 5. 老人福祉法
F 社会保険関係法規
 1. 健康保険法
 2. 国民健康保険法
 3. 老人保健法
 4. 共済組合法等
 5. 労働者災害補償保険法

 ◎柔道整復師法
 ◎柔道整復師法施行規則
 ◎各種様式
 ◎柔道整復師法に基づく指定登録機関及び指定試験機関に関する省令