やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 昨今の周産期医療・看護を取り巻く状況は,産科医や助産師の不足や偏在化にともない,出産施設の集約化がおこるなど多くの問題をもっています.妊産婦側から考えると,自分たちの生活する場,自分の産みたいところで産むという選択ができない状況が一部の地域でおこっているなど,社会的な問題となっています.また,女性の生き方の多様化にともなう高齢出産,不妊治療後妊娠といったハイリスク妊娠・出産の割合が着実に増えつつあります.一方,出産に対する価値観の多様化により,妊産婦個々の妊娠・出産へのこだわりが明確になり,自分たちの希望にあった出産様式を望む傾向が強く打ち出されるようになってきています.
 このような状況の中にあって,われわれ看護者は,できる限り妊産婦本人の希望を受け入れつつ,かつ安全に,安楽に,自立をめざした看護の提供をすることが求められています.
 本書は,周産期看護に焦点を当て,内容はナーシングプロセスに基づくこととし,アセスメントポイント(情報収集の視点),情報収集に必要な技術,ウェルネス診断または問題点,看護計画,実践,評価で構成しました.看護実践のときに容易に活用していただけることを期待し,とくにどのような状況の中でも決してはずしてはならないポイントについて述べております.したがって,看護学生にとっては実習時に,新人看護者,実習指導者にとっては日々の実習指導時に,お手元においていただくことによって,きっとお役に立つことと思います.本書は1991年に初版として出版しました「ポケッタブル・マニュアル母性看護」の内容を見直し,修正・充実させた形で,新企画として「ナーシング・ポケットマニュアル母性看護」としました.
 本書作成にあたっては,医歯薬出版編集部の担当者の皆様に多大なご助力を賜りました.この場をお借りして深く感謝いたします.

 2008年8月 編者ら
I.妊娠期
 (和智志げみ)
 1 妊娠経過の診断
  <1.妊娠経過を判断するためのポイント>
   1.妊娠初期のアセスメントポイント
   2.妊娠中期のアセスメントポイント
   3.妊娠末期のアセスメントポイント
  <2.妊娠経過を判断するための技術>
   1.分娩予定日の算定
   2.内診の介助・内診の実際
   3.腹囲・子宮底長の測定
   4.レオポルドの触診法
   5.超音波ドップラー法(胎児心音の聴取)
   6.ノンストレステスト(NST:non-stress-test)
 2 不快症状のある妊婦への支援
  1.つわり緩和への支援
  2.腰痛緩和への支援-正しい姿勢・妊婦体操
 3 分娩準備への支援
  1.スムーズに分娩するための支援−呼吸法・弛緩法・補助動作
 4 母親役割取得過程にある妊婦への支援
  1.母乳育児準備のための支援-乳房の手当て
  2.母親像形成のための支援
 5 ハイリスク妊婦への支援
  1.切迫流早産の予防と支援
  2.妊娠貧血の予防と支援
  3.妊娠高血圧症候群の予防と支援
  4.胎位異常時の支援-骨盤位の矯正
II.分娩期
 (岡 有美)
 1 分娩経過の判断
  <1.分娩経過を判断するためのポイント>
   1.分娩進行状態のアセスメントポイント
   2.産婦の健康状態のアセスメントポイント
   3.胎児の健康状態のアセスメントポイント
  <2.分娩経過を判断するための技術>
   1.陣痛の測定
   2.胎児モニタリング
 2 入院時の産婦への支援
  1.陣痛発来での入院時の支援
  2.誘発分娩での入院時の支援
  3.前期破水での入院時の支援
 3 分娩第 1 期の産婦への支援
  1.産婦の基本的ニーズ充足への支援
  2.産痛緩和への支援
 4 分娩第 2 期の産婦への支援
  1.スムーズな分娩への支援
 5 分娩第 3 期の産婦への支援
  1.胎児娩出から胎盤娩出までの支援
 6 分娩後 2 時間までの産婦への支援
  1.胎盤娩出後 2 時間までの支援
 7 分娩期の健康問題をもつ産婦への支援
  1.前期破水時の支援
  2.分娩出血時の支援
III.産褥期
 1 産褥経過の判断(村本淳子)
  <1.産褥経過を判断するためのポイント>
   1.子宮・全身の復古状態のアセスメントポイント
   2.母乳栄養確立状態のアセスメントポイント
   3.母子関係のアセスメントポイント
  <2.産褥経過を判断するための技術>
   1.子宮復古状態の観察
   2.乳汁分泌の観察
 2 産褥期の復古過程にある褥婦への支援(二村良子)
  1.子宮復古のための支援
  2.全身復古のための支援-産褥体操・感染予防
  3.全身復古のための支援-バックケア
  4.縫合部痛,脱肛痛のための支援
 3 母親役割取得過程にある褥婦への支援
  1.出産体験の振り返り(東野妙子)
  2.母乳栄養確立への支援-授乳(東野妙子)
  3.母乳栄養確立への支援-乳房マッサージ(東野妙子)
  4.母子関係確立のための支援(東野妙子)
  5.育児技術習得のための支援(二村良子)
 4 産褥期の健康問題をもつ褥婦への支援(佐藤里絵)
  1.子宮復古不全時の支援
  2.妊娠高血圧症候群の褥婦への支援
  3.帝王切開術後の支援
  4.産褥精神障害への支援
IV.新生児
 1 胎外生活適応の判断(崎山貴代)
  <1.胎外生活適応を判断するためのポイント>
   1.出生直後のアセスメントポイント
   2.移行期のアセスメントポイント
   3.3 日目のアセスメントポイント
   4.退院時のアセスメントポイント
  <2.胎外生活適応を判断するための技術>
   1.アプガースコアの採点
   2.身体計測
   3.バイタルサインの測定
   4.生理的黄疸の観察
   5.身体的観察
 2 胎外生活適応過程にある新生児への支援(澤井早苗・村本淳子)
  1.呼吸・循環確立への支援―気道の確保
  2.体温調節のための支援
  3.哺乳時の支援―初回哺乳時の支援
  4.排泄のための支援
  5.感染防止のための支援
 3 適応問題をもつ新生児への支援(澤井早苗・村本淳子)
  1.低出生体重児への支援
  2.高ビリルビン血症児への支援
 付録(村本淳子)
  周産期で使用される主な薬剤
  周産期・新生児に関する検査データ
 文献