やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 子どもや家族を取り巻く社会環境には,本書初版が刊行された約10年前と比べてもさまざまな変化がみられます.子どもの健康問題では,食生活,生活習慣などの変化とともに,生活習慣病,思春期のやせの問題など,さらに,子どものこころの問題では,うつや自殺,ネット依存など,より複雑化した課題も出てきております.児童虐待は増加の一途を辿り,時には痛ましい事件へと発展するケースもあとを絶ちません.そのなかで小児看護に携わる看護職が果たす役割も,病院,地域などと,さまざまな場面に拡大しています.看護職には,子どもの健やかな成長,発達のために,その時代に生きる子どもと家族に何が起こっているのか,何が必要とされているのかを見極め,行動することが求められています.
 小児看護において子どもと家族の状況を理解し支援するためには,つねに子どもの発達段階をふまえた総合的な視点からアセスメントすることが求められています.多くの看護基礎教育の現場で活用されている,ゴードンを基盤としたアセスメントを主軸とした本書の初版を,多くの方にご活用いただき,たいへんうれしく思っております.
 このたび,第2版への改訂にあたって全体を見直し,看護過程の事例展開では,アセスメントにおける重要なポイントを示す〈ワンポイントアドバイス〉を初版より多く取り入れました.また,初版の5事例に3つの事例を加え,合わせて8事例を紹介します.とくに,小児がんの事例は,発症がわかった時期の事例に,長期化する治療を受けている時期の事例をあらたに加え,アセスメントの視点が変化することも意識した構成としました.
 本書が,子どものアセスメントを理解するために,小児看護を学ぶ看護学生,また実践されている方々に今後も広く活用していただければ幸いです.
 2021年8月
 京都光華女子大学健康科学部看護学科
 茎津智子
第1章 小児看護における看護過程
 (茎津智子)
 1 小児看護の変遷
 2 小児看護の目標
  (1)小児看護におけるキーワード
  (2)小児看護の目標
 3 小児看護における看護過程の展開
  (1)看護過程とは
  (2)小児看護における看護過程の特徴
   (1)アセスメント
   (2)看護問題の明確化
   (3)計画立案
   (4)実施(看護介入)
   (5)評価・修正
 4 ゴードンの機能的健康パターンを用いたアセスメント
  (1)ゴードンの機能的健康パターンとは
  (2)小児看護への応用
  (3)機能的健康パターンによる小児のアセスメントガイド
  (4)アセスメントプロセス
  (5)情報収集の実際
   (1)面接(インタビュー)
   (2)観察
第2章 小児の看護展開に必要な基本知識
 (茎津智子)
 1 子どもの成長・発達
  (1)成長・発達の概念と一般原則
   (1)発達の方向性
   (2)発達の連続性
   (3)発達の臨界期
   (4)発達の個人差
  (2)小児各期の成長・発達の特徴
   (1)乳児期(生後1カ月から1年未満)
   (2)幼児期(1歳から6歳)
   (3)学童期(6歳から12歳)
   (4)思春期(12歳から18歳)
 2 病気・入院への子どもの理解
  (1)乳児期
  (2)幼児期
  (3)学童期
  (4)思春期
 3 子どもの病気・入院と子どもの権利
  (1)インフォームドコンセント,インフォームドアセント
  (2)プレパレーション
  (3)家族とともに過ごすこと
  (4)遊びや教育が保障されること
第3章 小児の看護過程の実際―事例展開
 イントロダクション(茎津智子)
   (1)事例紹介
   (2)アセスメント(情報の解釈,判断)
   (3)看護問題の明確化
   (4)関連図
   (5)看護介入のポイント
 事例1 急性胃腸炎で入院となったAちゃん(工藤悦子)
 事例2 はじめての入院で手術を受けるBくん(草薙美穂)
 事例3 潰瘍性大腸炎により長期療養が必要となったCくん(田中さおり)
 事例4 医療的ケアを必要とする在宅療養のDくんとその家族(宮部麻衣子)
 事例5 ネフローゼ症候群により新たなセルフケアが必要となったEくん(山本裕子)
 事例6 気管支喘息治療中の発作出現により入院となったFちゃん(守口絵里)
 事例7 小児がんの発症がわかったGくん(加藤依子)
 事例8 長期化する小児がんの治療を受けているGくん(加藤依子)

 索引