やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社


 本書は,中範囲理論を看護アセスメントに活かしたうえで,多様な背景をもつ患者の看護計画にNANDA-I看護診断,看護成果分類(Nursing Interventions Classification;NIC),看護介入分類(Nursing Outcomes Classification;NOC)の適用をめざした解説書である.
 第1章では,NANDA-I看護診断,NIC,NOCについて,初めて知ろうとする読者にも基本的な理解ができるような解説を心がけた.また,すでにNANDA-I看護診断,NIC,NOCに馴染みのある読者には,最新の内容を知っていただくために,詳しく解説した.
 そのうえで第2章では,急性期の事例,超急性期の事例,慢性期の事例,終末期の事例,周産期の事例,地域の事例を取り上げ,焦点化したアセスメント,全体像,そして看護計画を詳しく解説した.事例の解説で取り上げている中範囲理論には,心理的ストレス・コーピング理論,問題解決型危機理論,愛着(アタッチメント)理論,マズローの自己実現理論,ローカス・オブ・コントロール,対象喪失および悲嘆のプロセス,役割理論がある.これらは臨床現場で大いに活用できる実践的な理論である.
 第2章で取り上げている事例はすべて架空のものであるが,できるかぎり事実データを豊富に組み込み,読者が多様な目的で活用できることを意図して作成している.是非いろいろな部署の研修に活用していただきたい.
 さらに第3章では,看護記録の監査を取り上げ,基本的な監査の解説をしたうえで,NANDA-I看護診断,NIC,NOCを使用している看護計画の監査方法を具体的に解説した.監査に容易に使える独自の尺度も解説しているため,現場の各部署の監査に活用していただきたい.
 本書の執筆者全員は,黒田裕子が代表を務める看護診断研究会(Nursing Diagnosis Conference;NDC)のメンバーである.NDCは1993年から活動を始め,2018年現在25年以上が経過している.主として現場の臨床家であるメンバー約30人(定員制)から組織されており,実践的な視点から看護診断,看護過程を2か月に1回の定期的な研究会で探究している.その一方で,全国の看護師を対象とした看護診断に関する公開セミナーを年1回,継続的に開催し,看護診断の啓発活動にも力を注いでいる.本書は,その第22回NDC公開セミナーの開催日に合わせた刊行となった.
 本書はこのNDCのメンバーが日ごろの努力を駆使して執筆している.その成果が読者の看護アセスメントや看護計画の手助けになることを執筆者代表として心より願っている.理解しづらい部分や解釈が難しい部分があるとすれば,すべて編集者の責任である.どうか読者の厳しい助言や指導をお願いしたい.
 最後に,本書を出版していただいた医歯薬出版株式会社,さらに本書の編集の業を,丁寧に着実に,しかも迅速にこなしていただいたニイ編集室の新居功三氏に,この場を借りてお礼を申し上げる.
 2018年10月
 執筆者を代表して 黒田裕子
第1章 看護診断 基礎の基礎
 1.そもそも看護診断とは何?(黒田裕子)
  看護診断のはじまり
  看護診断の分類構造
  なぜ,看護診断を使う必要があるのか
  看護診断から理解する看護実践
  看護診断は積み重ねである
   NANDA-I看護診断の変更と改訂
  看護診断を使った看護過程の展開
 2.看護介入分類と看護成果分類(黒田裕子)
  看護介入と看護成果の分類法
  看護介入分類(NIC)
  看護成果分類(NOC)
第2章 事例で学ぶアセスメント
 1.急性期の事例 早期退院を希望する急性心不全で入院した女性(松下美緒,益田美津美)
  事例の視点:心理的ストレス・コーピング理論
  事例の紹介
  事例のアセスメント
  事例の全体像と看護診断
 2.超急性期の事例 交通外傷時の代理意思決定(榊 由里,柳瀬圭司,古澤圭壱)
  事例の視点:問題解決型危機理論
  事例の紹介
  事例のアセスメント
  事例の全体像と看護診断
 3.周産期の事例 緊急帝王切開により超低出生体重児を出産した母親(福田和明)
  事例の視点:愛着(アタッチメント)理論
  事例の紹介
  事例のアセスメント
  事例の全体像と看護診断
 4.慢性期の事例(1) 筋萎縮性側索硬化症(ALS)の診断を受けた男性(山田由美,中西雅代,益田亜佐子)
  事例の視点:マズローの自己実現理論
  事例の紹介
  事例のアセスメント
  事例の全体像と看護診断
 5.慢性期の事例(2) 慢性腎不全の女性(宮城智賀子,菊池麻由美,小山夢津海)
  事例の視点:心理的ストレス・コーピング理論
  事例の紹介
  事例のアセスメント
  事例の全体像と看護診断
 6.終末期の事例(1) 原発不明がんで緩和治療を選択した男性(小泉純子,杉田里絵,成井美穂)
  事例の視点:ローカス・オブ・コントロール
  事例の紹介
  事例のアセスメント
  事例の全体像と看護診断
 7.終末期の事例(2) 医療者に不信感を抱く終末期の女性(山田紋子)
  事例の視点:対象喪失および悲嘆のプロセス
  事例の紹介
  事例のアセスメント
  事例の全体像と看護診断
 8.地域の事例 在宅での看取りを希望する療養者と家族(古川秀敏)
  事例の視点:役割理論
  事例の紹介
  事例のアセスメント
  事例の全体像と看護診断
第3章 看護記録の監査
 1.看護記録監査の重要性(中野由美子)
  監査とは
  看護記録監査とは
 2.NNN(NANDA-I看護診断-NIC-NOC)の監査方法(中野由美子)
  NNN監査の目的
  NNN監査実施までの準備
  NNN監査用紙の使いかた
  監査手順と方法
 3.NNNを監査する視点(中野由美子)
  看護診断が複数選択されている場合
  看護診断と看護成果・看護介入の整合性

 索引