やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 わが国の医療財政が悪化の一途を辿る現代において,2003年に導入されたDiagnosis Procedure Combination:DPCが当たり前のように評価されるようになりました.そして,2012年にはDPC対象病院は1,505施設となり,導入当初の82施設から大幅に膨れ上がりました.昨今,医療費の定額支払い制度を実践していくためには,医療従事者は誰もが均質な医療を提供できなければなりません.看護においても,看護業務を誰が実践しても違いがないように努力しなければならず,その努力を支える手段として業務を手順化することもその一助です.しかし,看護手順もDPC導入前から各施設において用意されていたものの,その多くは文字ばかりでしたし,物品の名称を覚えるまでの場合や,もしも名称が変更になった場合などには役に立たないことが少なくありませんでした.
 そこで本書は,カラー写真により物品や手順を可視化してわかりやすいように配慮し,新人看護師や勤務異動となった看護師,また初めて子どもに看護技術を提供する場面などにおいて活用できる体裁を目指して発刊しました.さらに,看護技術を実践するにあたり,通常のテキストや看護手順には記載されていない注意事項やコラムを通して,効果的に実践できるためのコツを網羅しております.それは,小児医療の現場で実践した経験豊かな看護師にしか気付くことがないポイントであり,これからコツを覚えていく途上にある方々には非常に便利で,拠り所となる一冊だと思います.内容は,Chapter1「基本的技術」,Chapter2「検査と処置の技術」,Chapter3「治療処置の技術」,そしてChapter4「日常生活援助技術」と大きく四つの種類に分類し,小児医療の本質を説くAppendixを加えています.ぜひ小児看護学実習に臨む看護学生にも多いに活用していただき,看護実践への興味を覚えていただけたら嬉しく思います.
 繰り返しますが,前述のDPC評価を適切に行うためには,患者様の在院日数管理などが課せられており,クリティカルパスの導入や入退院業務の円滑化,術前検査の外来化,看護実践のスタンダードプランはもとより退院支援計画立案など,看護部門および看護師一人ひとりに多くの課題が与えられています.現状では,クリティカルパスにのっとって入退院が滞ることなく医療を提供できなければならず,医療従事者の責任は重大です.いわんやその責任の重さに押し潰されることがないよう,少しでも現場のストレスが緩和されますよう本書を活用していただき,看護実践の醍醐味と喜びを体得していただけたら幸いに存じます.最後に,本書の発刊にあたりましてご協力いただきました優秀な執筆者ら,刊行にご尽力いただきました医歯薬出版編集部の皆さま,私たちを応援し,励ましてもらいました家族にも愛を込めて心より感謝申し上げます.
 2012年8月 伊藤龍子
Chapter 1 基本的技術
 (導入文・1・3・6:遠藤数江,2・4・5:伊原仁子)
 1 バイタルサイン測定
 2 乳児の身体測
  COLUMN・その他の測定方法
 3 経口与薬(水薬,散剤と服薬補助ゼリー)
 4 末梢点滴刺入固定(成育方式)
 5 乳児の抱き方
 6 おむつ交換
Chapter 2 検査と処置の技術
 (導入文:伊藤龍子,1・2・4・5・8:押切美佳,3・6・7:原口昌宏)
 1 血液検査
 2 糞尿検査
 3 画像検査
  COLUMN・MRI室での酸素ボンベ持ち込みによる事故に注意!
 4 腰椎穿刺(ルンバール)
  COLUMN・髄液採取の禁忌
  COLUMN・クエッケンシュテット試験
 5 骨髄穿刺(マルク)
 6 心電図検査
  COLUMN・心電図室の様子
  COLUMN・安静を保つためのかかわり
 7 超音波検査
  COLUMN・注意すべき鎮静内服薬
 8 肝・腎生検
Chapter 3 治療処置の技術
 (導入文・1・4〜7:三浦貴子,3:原口昌宏,2・8:押切美佳)
 1 導尿
  COLUMN・カテーテルのサイズ
 2 輸血
 3 酸素療法
 4 浣腸
  COLUMN・浣腸液の量とカテーテルのサイズ
  COLUMN・カテーテル挿入位置の目安
 5 胸腔穿刺
  COLUMN・胸腔ドレーン挿入中の観察ポイント
 6 腹腔穿刺
  COLUMN・腹腔ドレーン挿入中の観察ポイント
 7 皮内・筋肉注射
  COLUMN・注射針の選択
  COLUMN・注射部位の選択
 8 外用薬
Chapter 4 日常生活援助技術
 (導入文・5〜9:押切美佳,1〜4・10・11:関水越嫁)
 1 プレパレーション
  COLUMN・インフォームド・コンセントとアセント
 2 食事
 3 遊び
 4 入院中の学習
 5 身体清潔
  COLUMN・バスマットに寝かせて全身を洗う方法
 6 排泄
 7 睡眠
 8 経管栄養
 9 冷罨法・温罨法
  COLUMN・温罨法の効果
 10 安楽な体位
 11 環境の整備

 Appendix 小児看護における細やかな配慮(伊藤龍子)