やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第3版の序

 現代は少子時代である.子どもの数が少ないことは,子ども自身の健康状態にも少なからず影響をもたらすとはよくいわれることである.少子は,子ども人口が少ないことだけを意味するのではない.子ども人口の偏在化にもつながる.併せて,子育て人口も少ないことにもなり,子育て人口の偏在化でもある.その子育てを支援することは小児保健の重要な役割である.本書は,その子育て支援に従事しようと志し,小児保健を学ぶ人に役立つものである.
 小児保健は,学問と学問を背景にした実践活動の両面がなければ意味がない.その学問と活動は,子どもの健康保持と増進を基盤に,そのQOLの向上を図るために必要な保健活動であり,その基本は,ヘルスプロモーションの概念に基づくものである.そして,小児保健活動は,子どもが生活している全ての場で実践されなければならない.家庭はもちろん,児童福祉に関係する施設,学校,さらに医療機関が,その実践の場となる.
 もう一つ付け加えるならば,これは子どものあらゆる時期において実践されなければならない.適切な実践には,子どものあらゆる時期の状態を理解し,実践される場のことを把握しておかなければならない.
 本書は,この趣旨にそって編集され記述されたものと確信している.さらに,当然のことながら,子どもの特性に関する基本的知識の習得はいうまでもなく,子どもの健康に関する基本的理念と知識を得るためにも,本書を活用して,充実した子育て支援に従事できるように努力されたい.そのために,基本的な事実はいうまでもなく,最新の情報も獲得できるように留意した.そして21世紀の小児保健の方向性を基盤に小児保健を学んでほしいものである.これが,本書を担当した執筆者の切なる願いである.
 2002年3月 執筆者一同
 (なお,目次の変更に伴い分担は次の通りである.第1章,第3章,第5章3〜7,第7章4,第8章1・4・6:窪田,第2章1〜3,第4章,第5章1・2,第6章,第7章2・3,第8章2・3・5:野,第2章4・5・6,第4章5:橋,第4章6・7,第7章1:犬飼)
 第3版の序
 第2版の序
 第1版の序

第1章 家庭の小児保健とは
   1.小児の健康
   2.小児保健の概念
     1)小児保健と母子保健
     2)家庭の小児保健
     3)小児保健の特殊性
   3.小児期の分類と特徴
     1)出生後の分類
     2)出生前の分類
   4.小児保健に関係する法律・制度
   参考文献
第2章 小児の発育発達
   1.小児と発育発達
     1)小児期の特性としての発育発達
     2)発育とは
     3)発達とは
   2.身体発育
     1)発育の現われ方
     2)出生前の発育
     3)出生後の発育
   3.身体発育の評価
     1)発育評価の意義
     2)発育評価の実際
     3)体つき(肥満・やせ)の評価
   4.運動機能の発達
     1)運動機能の発達の意義
     2)運動機能の発達に関連する要因
     3)運動機能の発達過程
     4)発達の経過
   5.精神(心)の発達
     1)精神発達にみられる一般的傾向
     2)精神発達に影響を与える諸要因
     3)精神発達の経過
   6.精神発達の評価
     1)評価の意義
     2)評価の方法
     3)発達評価の際の留意点
     4)乳児の発達評価
     5)幼児の発達評価
   参考文献
第3章 小児期の栄養・食事
   1.小児栄養の特徴
     1)発育・発達からみた視点
     2)健康と栄養
     3)食生活習慣の面から
     4)栄養の摂取
     5)食品の分類
   2.乳児期の栄養
   3.母乳栄養法
     1)母乳栄養の利用状況
     2)母乳の成分
     3)母乳栄養の特色
     4)母乳分泌のしくみ
     5)母乳栄養授乳法
   4.人工栄養法
     1)育児用粉乳の内容
     2)人工栄養の方法
   5.混合栄養法
     1)混合栄養とは
     2)母乳不足の場合
     3)就労の場合
   6.その他の人工乳
     1)牛 乳
     2)調整粉末大豆乳
     3)特殊ミルク
   7.離 乳
     1)離乳ということ
     2)離乳の必要性
     3)改訂「離乳の基本」の内容
     4)離乳上の注意
     5)市販離乳食品および離乳期用粉乳の利用
   8.幼児期の栄養
     1)幼児期の栄養の特徴
     2)栄養上の配慮
     3)食事上の注意
     4)間食(おやつ)
   9.学童期の栄養
     1)学童期の栄養の特徴
     2)学校給食
   10.小児の栄養上の問題点
     1)乳児のミルク嫌い
     2)偏 食
     3)肥 満
     4)神経性食思不振(思春期やせ症,拒食症)
   参考文献
第4章 子どもの健康増進と保育生活
   1.子どもと諸環境の関係
   2.子どもの生活の特性と発育発達
     1)子どもの生活の特性
     2)生理機能発達
     3)臓器器官の発育と機能発達
   3.子どもの生理機能と生活
     1)循環機能と乳幼児の生活
     2)呼吸機能と乳幼児の生活
     3)摂食・消化機能と食生活
     4)睡 眠
     5)排泄の発達と世話
     6)体温調節と衣服
     7)清潔の習慣
     8)オンブ・ダッコ
     9)遊 び
     10)ことば
   4.生活習慣の自立
     1)自立の基本的条件
     2)自立のための「働きかけ」の方針
   5.子どもと家庭環境
     1)その意義
     2)家庭環境の現状
     3)親の養育態度
   6.子どもと保育環境
     1)集団生活の意義
     2)保育環境
     3)連携活動
   7.子どもの健康と社会・文化環境
     1)自然破壊
     2)地域社会との関わり
     3)教育の早期化と外注化
     4)コミュニケーション環境の変化
     5)児童文化財とその商業化
   参考文献
第5章 小児期の病気
   1.小児期の病気の特徴
     1)健康な小児とは
     2)小児の健康に影響する因子
   2.小児期の症状
     1)小児期の症状の特徴
     2)観察のポイント
   3.先天性の病気
     1)遺伝子,染色体
     2)先天性の病気の発生
     3)先天性の病気の予防
   4.新生児の養護
     1)出生時の状態
     2)新生児養護の重点
     3)新生児の疾病予防
   5.感染症とその予防
     1)伝染病の種類
     2)感染症の予防
   6.予防接種
     1)予防接種の種類
  @  2)ワクチンの特性
     3)ワクチン接種にあたっての諸注意
   7.小児のかかりやすい病気
     1)消化器系の病気
     2)呼吸器系の病気
     3)循環器系の病気
     4)血液の病気および出血性素因
     5)アレルギー性の病気
     6)内分泌系の病気
     7)神経の病気
     8)皮膚の病気
     9)骨・筋肉の病気
     10)眼の病気
     11)泌尿器・生殖器の病気
     12)心身症に関連する病気
     13)ウイルス感染による病気
     14)細菌その他感染による病気
     15)その他の病気
   参考文献
第6章 小児の事故と安全教育
   1.小児期の事故の特徴と種類
     1)小児の事故とは
     2)小児期の事故の特徴
     3)小児の成長と事故の特徴
   2.事故の防止・予防と安全教育
     1)小児期の事故とその対策
     2)安全教育
   参考文献
第7章 小児の保健と福祉
   1.子どもを取り巻く福祉環境
     1)子どもの権利
     2)児童虐待
     3)育児支援
   2.小児保健に関する統計
     1)統計資料とその活用の意義
     2)人口動態統計
   3.小児保健サービス
     1)小児保健行政
     2)母子保健法などの法規
     3)小児保健サービスの実際
     4)予防接種
     5)福祉サービス
   4.今後の小児保健対策
第8章 小児保健実習
   1.目的と意義
   2.身体発育の観察・評価
     1)発育評価の意義
     2)発育評価の指標
     3)評価の実際
     4)体つきの評価
   3.健康状態の観察と評価
     1)観察の意義
     2)評価の実際
   4.栄養と食事
     1)授乳のさせ方
     2)離乳食の与え方
     3)幼児食の与え方
     4)個々の子どもの扱い方
   5.小児看護
     1)小児看護の基本
     2)看護の実際
   6.応急処置
     1)高熱が出た時
     2)けいれん
     3)異物の気管内への誤飲
     4)溺水した時
     5)人工呼吸法
     6)心臓マッサージ法
     7)異物を食道に誤飲した場合
     8)やけど
     9)出 血
     10)その他の応急処置
   参考文献

 付表
 索引