やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

推薦の辞

 近年,まったく「たまたまそこにいただけ」で,突然命を奪われるという事件が,次々に起こりました.少し前では平成7年1月の阪神・淡路大震災,また最近では,平成13年の6月に起きた大阪教育大学教育学部附属池田小学校での殺傷事件,さらに9月の米国同時多発テロ事件がありました.世界に目を向ければ,同じことが「空爆」で殺されたアフガニスタンの人々にも当然起こっているはずです.
 このような,なんの前触れもなく,たくさんの人々の命が一瞬で消えてしまうという事件に「慣れっこ」になってしまうと,私たちは人間の「死」というものの重みを感じなくなってしまいそうです.どんな場合でも,死者の周囲にはその家族や知人がいるはずです.そういう人たちの悲しみや苦しみ,怒りなどへ目を向けることは,「たまたまそこにいなかっただけ」で死をまぬがれた私たちにとっての道義的な責務ではないでしょうか.
 本書では,身近な人の「突然の死」に直面した人たちへのインタビュー,質問紙調査などの膨大なデータをもとに,そのような人たちがどのようなことに苦しむのか,どのようなケアが必要なのかが,具体的な事例をまじえて,ていねいに語られています.また,そのようなケアを専門にする人を育成する訓練プログラムも示されています.私自身も,これまで何度か経験した「身近な人の死」を思い起こしながら,一つひとつ納得しながら読みました--「ああ,そういう配慮をしてもらえれば,どんなによかったか!」と痛感しながら.
 本書は救急救命にたずさわる医師やナースの方たちに是非読んでいただきたいのですが,それ以上に,もっと広く,医学教育や看護教育のカリキュラムの中で,「死の教育」の一貫として取り上げていただきたいところです.人間の死というものが,「医学・生理学的」現実以上に,本書の最終章にあるように「ホリスティックな」(身体,感情,知性,社会,たましいの全体にかかわる)出来事なのだということを,医療にかかわるすべての人に理解していただきたい.とくに,遺伝子操作やクローン人間など,「いのち」というものを,「操作可能なこと」の範疇に入れてしまう風潮の中で,しっかりした人間観,死生観を持つことこそが,今日の医学教育ではますます重要になってきています.
 さらに,私たち一般の人も,一生の間には何度も「身近な人の死」を経験するものです.そのようなときの自分自身のケア,あるいはそのような経験をしている身近な人へのケアは,それこそ「他人事ではない」でしょう.むしろ,そういうときに,「他人事」にしないで,十分な配慮ができるということは,私たちが「人間らしく生きる」ことの条件でしょう.
 本書は,多くの場合「突然の死」で亡くなられた方の臓器の移植で新しい命をもらうという,臓器移植患者の一人である若林さんが訳されたことも,「重みのあること」と思います.若林さんは,おそらく,ドナーの家族や知人への感謝の想いを込めて,一言一言,ていねいに訳されたことでしょう.そして若林さんの「想い」には,臓器移植にかかわる全ての人たち(ドナーとその家族だけでなく,移植を必要とする患者やその支援者たち)が,人の死というものの重みを,互いにしっかりと理解しあい,その悲しみや苦しみを「ケア」しあうようになってほしいという祈りがこめられているものと推察します.
 2002年2月
 東京大学名誉教授
 青山学院大学教授
 佐伯 胖

推薦の序

 「突然の死はひどい暴力です」 序文に記されたこの言葉ほど雄弁に,本書の必要性を表現した言葉を見つけるのは容易ではない.本書がその対象と想定しているナース,ソーシャルワーカー,医師,救急救命士などの職業人は,この 「ひどい暴力」に日常的に直面し,的確に対応することを要求される.本書は,そのために必要な理論と実践的技能に関する詳解である.
 愛する者の突然の死は,本来,極めて個人的な経験である.遺された家族や友人は様々な悲嘆を繰り返しながらも,やがては現実を受け容れ,最終的には平常の生活に戻る必要がある.その過程もまた,個人的な経験と言えよう.われわれは第三者として,この個人的経験に対して,果たして介入すべきなのであろうか? あるいは,介入を良しとした場合,どのように介入するのが効果的なのであろうか? 介入が逆効果となることはないのだろうか?
 「突然の死」 を取り扱う多くの現場において,悲嘆にくれる者への対応は,対応する者の個人的な経験に基づいて行われることも多い.「喪」という言葉に示されるように,宗教的行事に代表されるような「先達の知恵」が悲嘆者の負担を和らげる効果をもっていたことは間違いないとしても,確固たる理論に基づいた体系的対応がなされていたかどうかは疑わしい.「ひどい暴力」の結果として生じた身体的傷害に対応することが,多くの医療関係職種の業務であるのなら,精神的な傷害もまた,理論的,体系的に対応されなければならないのは明らかである.
 本書は,このような問題について,実に明解な示唆を与えてくれる実践書である.といっても,単なるHow-to物ではない.これは,本書が最新の研究と実践の成果とに基づいた理論を明示してくれているからにほかならない.原著者自らが明らかにしているように,この領域に関しては,疑う余地のない理論が確立されたとは言い難いものの,理論的背景のみならず,実際の症例と演習とを併記した構成は,読者が実践技術を習得する上での強力な武器となっている.
 本書が取り扱う内容は,「遺された者への対応」だけではない.遺された者に対応する側自身もまた,「ひどい暴力」の犠牲者となりうる.第8章「私たち自身のケア」は,「対応者自身への対応」に関する記述である.この章の存在によって,本書は「突然の死」に関連する全ての人々に起こりうる問題への総合的対処の必要性を力説するものとなっている.
 訳者の若林正氏は,私が救急医療メーリングリストで知り合った貴重な仲間の一人である.その仲間と共に,ある文書の翻訳を進めていた頃,氏の類稀なる表現力には何度も脱帽させられた記憶が今でも鮮明に残っている.また,訳者序文にも記されているように,若林氏自身が貴重な個人的経験の持ち主でもある.Bob Wright氏と若林氏の合作とも言えるこの日本語版は,遺された者とその対応者,すなわち,個人として,職業人としてのわれわれ全員にとって,欠くことのできない情報を提供している.
 2002年2月
 (財)救急振興財団・救急救命九州研修所教授
 畑中哲生

訳者序文

 本書はBob Wright,Sudden Death――A Research Base for Practice(second edition).1996,Churchill Livingstoneの翻訳です.原著者のボブ・ライトさんはイギリスのリーズ総合病院において,危機ケアの臨床専門看護士として,日々救命救急部でカウンセリングを実践されています.また,1987年のゼーブルージュ・フェリー事故(死者188名),1990年のロッカビー・パンナム機爆破事件(死者270名),1991年の湾岸戦争,1996年のダンブレーン・小学校銃乱射事件(死者18名,犯人も自殺)などのカウンセラーのデブリーフィングに関わっているほか,国際的にもアドバイザー,ワークショップのファシリテーター,講演者として活躍されており,Accident and Emergency Nursing誌の編集長を務められています.
 本書については,原書の裏表紙に次のような紹介がなされています.
 愛する人の突然の死という衝撃で,後に遺された人々は自分の感情や反応にどう対処してよいのかわからなくなってしまうことがあります.このような場面に対応する医療スタッフには,悲嘆過程にある人々を援助する方法が必要です.
 ・遺族はいつ何を言い,いつどんな行動をとるのか?
 ・何もしない方がよいときもあるのか?
 ・私たちが効果的なケアを行うためにはどんな自覚とサポートが必要なのか?
 この本は,ケアする者の立場から,そして後に遺された人々の立場から,死という危機を見つめることで,直接こうした疑問に答えています.
 第2版の内容は,
 ・死の際に遺族を援助するための,理論に支えられた実践的な方法を示す.
 ・グループや個人で学ぶための詳細なケーススタディや演習を含む.
 ・後に遺された人々がそれぞれに抱えている「物語」を傾聴することの重要性を強調して,様々なアプローチが長期的に何をもたらすのかを分析する.
 ・子どもや,子どもを亡くした親のケアに関する最新情報を提供する.
 ・ 「燃え尽き(burnout)」を回避する方法を示唆することで,ケアする側自身に必要なものに気づくよう促す.
 様々な研究の成果や,著者の豊富な危機カウンセリングの経験に基づいていますから,本書は,ナース(特に救急救命に関わる者),救命救急士,カウンセラー,ケアスタッフ,ソーシャルワーカー,牧師,軍関係者,レスキュー隊や災害救助者など,常に突然の死に対応しなければならない専門職の教育,訓練,ケアにあたる際には,この上ないものです.
 今回,日本語版の刊行に当たっては,ライトさんから次のようなお言葉をいただきました.
 「毎日多くの人々や家族が,突然の死という痛みへの対処を迫られています.また,私たちはメディアを通じて大惨事に接しています.こうした多くの惨事の陰には,この人生の危機から再び蘇って,再び人生を歩み始めようとして苦闘している人々がいるのです.
 この本は,こうした人々のために尽力し,ケアに当たっている全ての人々に対し,どこから仕事に手をつけたらよいのかについて,ガイドラインを提供するものです.これによって,人々が長く困難な悲嘆過程を開始するのを手助けすることができるようになるでしょう.この困難な仕事に関わる際に支えとなる理論的枠組みに加えて,極めて実践的な示唆を提示しています」
 私が元移植コーディネーターの池田美和さんから原書の存在を教えていただいて,初めて本書を手にしたのは1999年2月のことでした.長年にわたる臨床経験と教育経験に支えられた内容はとても密度が濃いのにもかかわらず,読みやすくコンパクトにまとめられていて,我が国で類書を見ないことに感激して,翻訳ができたらいいなと,淡い願望を抱いていました.
 この話を高校・大学の先輩に当たる石井秀宗さんに相談させていただいたところ,医歯薬出版株式会社の板橋辰夫さんをご紹介いただきました.そして,企画会議にかけていただいたうえで,編集担当が吉田邦男さんに決まって,淡い願望が現実のものとなりました.
 当初は短期間で翻訳できるだろうと甘く見ていたのですが,いざ翻訳に取りかかってみると英語と日本語の間の壁は想像以上に厚く,作業は難航しました.1999年4月から本格的に臨床心理学の勉強を始めて,「わかりやすい」言葉に込められた深い意味を知るにつれて,本書の奥深さを改めて実感し,事の重大さに恐ろしくもなりました.あるいは,私が移植を希望される患者さんやご家族からの相談を受ける中で,日米における二度の肝移植という自らの経験や知識を「活かす」難しさを痛感しました.そして,この長い月日の間には,友人など身近な人々の「突然の死」をも経験し,生きているということの意味について改めて考え,言葉では語り尽くせないことの膨大さを再認識しました.
 原書の内容をどこまで日本語で表現することができたのかについては,心許ないかぎりですが,こうした私自身の個人的な経験や思いが何らかの形で本書の訳に反映されているよう願っています.読者の皆様には,本書の内容を現場に当てはめるのではなく,この仕事に立ち向かうライトさんの姿勢を読みとって,毎日の仕事に活かしていただければ幸いです.
 本書の訳出過程では,本当に多くの方々から助言や励ましをいただきました.栗原浪絵さんには本当に未熟な段階の原稿に細かく朱を入れていただきました.齋藤直子さんには細かな英語のニュアンスについてご教示をいただきました.加えて,岩田恵子さん,村瀬公胤さん,岡野谷純さん他,多くの方々にご意見をいただきました.ストレスのデブリーフィングについては,田村伸也さん(札幌市消防局),榎本暁さん(東京消防庁)にご教示をいただきました.お忙しい中,私の指導教官である佐伯胖先生,救急医療メーリングリストでお世話になっている畑中哲生先生には温かい推薦の辞をいただきました.遅々として進まない作業を辛抱強く見守りつつ,素晴らしい編集作業をしてくださった医歯薬出版株式会社の吉田邦男さんには心から御礼申し上げます.
 最後に,アメリカのドナーとそのご家族,そして私を支えてくださった全ての方々に感謝を捧げたいと思います.
 2002年1月
 若林 正

第2版への序文

 初版が刊行されてから5年の歳月が流れましたが,この間,この分野における私の仕事や関わりは増えるばかりでした.常勤の危機ケアの臨床専門看護士(Clinical Nurse Specialist)として,私の仕事のほとんどは,突然の死や心的外傷に関わるものです.突然の死によってもたらされる悲嘆や,心的外傷後ストレスについては,事件の衝撃を受けたまさにそのときに対応するだけでなく,その後も多くの時間を費やすカウンセリングが必要になります.子どものカウンセリングが増えてきましたので,第2版では,突然後に遺された子どものケアについての章を加えました.このほか,突然後に遺された人々のカウンセリング,スタッフのケアや教育,訓練を継続する中で私が得た経験を元に,加筆修正しました.
 教育や訓練は私の役割の3分の1を占めていますが,様々な分野の方がいらっしゃいます.様々な職種の方が参加する訓練セッションでは,この種の仕事に関わることは誰にとっても同じように困難なことがはっきりしますから,参加者も私もなぐさめられます.ナース,ソーシャルワーカー,医師,カウンセラー,教師,チャプレンに加えて,警察官,消防士,救命救急士も含めて,全ての参加者が,自分に傷つきやすいと感じるときがあることを認めているのです.どのように死に遭遇するのかは職種によって違うかもしれませんが,私たちは皆,死が私たち人間のはかなさをいかに浮き彫りにするのかということを分かち合っているのです.
 こうした人々を,組織の一員として,あるいは様々な職種の人が参加するグループの中で指導する経験から,私たちには得られるかぎりのあらゆる援助が必要なのだということが明らかになりました.災害や惨事の報告からは,この分野で働く多くの人々の強さや哲学を学びました.ケアに関わる人々の根源的な信念がどれほど脅かされるのか,あらゆるレベルのリソースがどれほど必要とされるのかも明らかになりました.危機に関わる人々に準備をさせること,教えること,訓練すること,サポートすることは,やはりこの本になくてはならない部分です.
 突然の,心に傷を残す死の物語に毎日耳を傾けることは,私がナースとして,カウンセラーとして,実際に行っていることですが,それなりの代償を伴うものです.その点,救命救急部のスタッフが私をケアしてくれるのは,ありがたいことです.また,私はスーパービジョンを継続的に受けていますが,私の妻,子どもたち,家族,友人からのサポートと同じように,スーパービジョンは人生における大切なものを私に思い出させてくれます.
 私が出会った当事者や,私の仕事からも多くを得ていることを強調しておかなければなりません.この本で用いた多くの事例から,当事者が私たちにたくさんのことを教えてくれることがわかるでしょう.子どもたちも含めて,全ての方々が,苦痛,苦悩,深い悲しみの物語を語ってくれました.また,勇気と知恵と,あらゆる困難に立ち向かって生きる決意を教えてくれました.「私たちの人生をすっかり変えてしまう,これほどまでに混乱を招く,破壊的で,残酷で,全くどうにもならないことがあるだろうか.私たちが知っていた人生は,もう二度と戻ってこない(Gregory 1995)」.この悲嘆にくれる母親が述べているように,突然の死はひどい暴力です.どのような言葉をもってしても,人間のあらゆる次元で経験されるこの痛みを十分に表現することはできません.
 この本の初版が刊行されてから,一番変わったのは,突然の死に対する私たちの対応や,人々のニーズについての私たちの知識でした.第2版では,事件の衝撃を受けた際のケアや,組織の反応について,より多くの情報を盛り込むことができました.
 危機介入の理論的な枠組みは,私たちの個人としての反応を肯定してくれます.この版で完全に差しかえられているのが,突然の死について,極めて個人的な経験を聴くということについての私の考察です.聴くことは事件の衝撃を受けたまさにそのときだけでなく,悲嘆をくぐりぬけていく困難な旅のいつであっても,私の仕事の主要な部分になります.物語を傾聴するということについては,さらに多くの注意を払いました.これは癒しの過程に,そして苦痛に打ちひしがれた状態から再び蘇るために,不可欠な要素であるからです.
 子どもの死特有の問題点については,独立した章を設けました.
 第2版には,私の知識や実践に影響を与えた人々の仕事に加えて,突然後に遺された人々と共に私が日々経験したことが反映されています.「私たちの研究」へのリファレンスは,マージョリー・アシュダウンと私の仕事を示しています.この研究では突然後に遺された100名の身内の人々を対象として,病院での死という衝撃を受けた際の彼らの反応,彼らが受けたケア,担当したスタッフが経験した困難について調査しました.スタッフには事件から1〜2日のうちに事件をどう捉えたのかについて話を訊きました.遺族には6〜10ヶ月後にお会いして,彼らが受けたケアについてどう感じたのかを伺いました.
 私たちの研究に対する批判の1つは,方法論がはっきりしていないというもの(McDonald et al.1995)ですが,スタッフや後に遺された家族から得られた情報を最もよく記述できるのは質的な方法です.データの多くは状況や出来事の記録でした.スタッフや遺族との面接で得られたデータに,見出しや小見出しをつけて組織化しました.各症例には物語の要約を作成しました.こうした物語を比較することで,興味深いパターンや反応が浮かび上がってきました.とはいえ,データを組み立ててゆく際に研究者自身が及ぼす影響を考慮に入れるべきだというご指摘には感謝しています.グレイザーとストラウス(Glaser & Strauss 1967)の提唱した質的比較分析,あるいはグラウンディッド・セオリー(grounded theory)は,理論の発展にとって重要なものです.グラウンディッド・セオリーによって生成された理論は,それを裏づけるさらにフォーマルなアプローチでテストする必要があります.
 学生の読者のために,各章には提示した考え方を補強する演習を設けました.読者が受け身になることなく,議論の中に参加していると感じられる一助になるよう願っています.
 この改訂版では,突然後に遺された人々に対するケアがより深い理解に基づくものとなり,初版よりも登場するケア従事者が成長を遂げていることと思います.加えて,私の仕事への情熱や,より深い洞察や知識の探求に賭ける情熱が,本書に反映されているよう願っています.
 リードにて 1996年
 ボブ・ライト

 REFERENCES

 Glaser B,Strauss A1967The discovery of grounded theory: strategies for qualitative research.Aldene Publishing,Chicago(1996『データ対話型理論の発見--調査からいかに理論をうみだすか』後藤隆・大出春江・水野節夫訳,新曜社)
 Gregory C M1995I should have been with Lisa as she died.Journal of Accident & Emergency Nursing 3(3): 136-138
 McDonald L,Butterworth T,Yates D W1995Grief support in Accident & Emergency nursing: a literature review 1985-1993.Journal of Accident & Emergency Nursing 3(3): 154-157

謝辞

 まず,私の妻,子どもたち,家族に感謝を捧げたい.身を削って話を聴き,励まし,私の仕事をサポートしてくれた.
 マージョリー・アシュダウンは,研究に深く関わってくれただけでなく,引き続き私と一緒に仕事を続けてくれている.私は彼女と共に災害や惨事のデブリーフィングや,多くの訓練セッションを行っている.彼女の洞察,サポート,友情,ユーモアのセンスは私にとって本当にありがたいものだ.
 私が出会った当事者や家族の方々は,私の知識,力,発想の源である.彼らの物語の一部または全部をこの本の中で利用させていただくことについて,寛大にもお許しをいただいた.
 私の所属でもあり,サポートも受けているリード総合病院の同僚,特に救命救急部の皆さんには特にお世話になった.
 最後に,アン・ジャックは,多くの時間を割いて私の原稿を読んでくれただけでなく,出版社用の最終稿を用意するために,問題点や間違いを整理してくれた.読者がわかりやすいように修正を加え,私の英語を直し,やはり大変お世話になった出版社と連絡を取ってくれたのは,全て彼女の力によるものであった.
 推薦の辞・推薦の序/v〜viii
 訳者序文
 第2版への序文
 謝辞

第1章 突然の死という危機
 危機の4つの相
 地位
 悲嘆の決定因子
  死のありよう
  愛着の性質
  誰が亡くなったのか
  過去の前例
  パーソナリティ変数
  社会的変数
第2章 死の衝撃に対するケア
 電話で知らせる
 身内や友人のための控室
 眠れぬ夜
 自律性の喪失
 蘇生中のアクセス
 悪い知らせを打ち明ける
 すぐに利用できるリソースを見つけるのを手伝う
 身内の到着
 擁護
 死に目に会えないということ
 鎮静剤
 本人確認
 遺品
 文書
 病院や死の現場を去る
第3章 誰もが語るべき物語を抱えている
 物語を語ること
 当事者の物語に応える
 当事者の物語を傾聴する
 コミュニケーションのスキル
 「その日」の出来事を回顧する
 眠れぬ夜を思い出す
 死に関する約束
 自殺
 遺体を見ること
 締めくくりとなるやりとり
第4章 子どもの死
 乳幼児突然死症候群(SIDS)
 流産
 死産
 中絶
 注意しておきたいこと
第5章 突然後に遺された子ども
 知らせを打ち明ける
 遺体を見ること
 子どもの人生における重要他者に知らせる
 一人ひとりの子どもの困難を評価する
第6章 ケアに関わる者の問題
 引きこもり
  引きこもりに対する身内の認識
 否認
 怒り
 孤立感
 取り引き
 その場にふさわしくない反応
 罪責感
 泣き叫ぶこと,むせび泣くこと,すすり泣くこと
 受容
第7章 ケアを行うための指導と訓練
 ケアに関わる者の肯定的経験と否定的経験
 ブレインストーミングの必要性
 対処とは何か
 情緒的反応に対応する
 厄介なテーマに関わるための対人的スキル
 個人的な死の経験
  さらに詳しく質問紙を見つめる
 喪失にまつわる感情を分かち合う
 沈黙を経験する
 感情を響き返す
 話せる相手
 身体言語
 学習日やワークショップを設定する
第8章 私たち自身のケア
 ストレスの概念
 対処機制
 助けを得る
 同一化
 置き換え
 ケアの個人的な代償
 燃え尽き
 心的外傷後ストレス障害(PTSD)
  初期――衝撃と否認
  中期――対立と混乱
  最終期――再調整と回復
 ストレスのデブリーフィング
 クリティカル・インシデント(惨事)
  デフュージング(信管外し)
  デモビリゼーション(動員解除)
  CISD(惨事ストレス報告会)
  フォローアップ
 サポートグループ
  スタッフカウンセラー
  ケアする者やカウンセラーのスーパービジョン
 まとめ
第9章 ホリスティックなケア
 ホリスティックという原則
  身体の次元
  感情の次元
  知性の次元
  社会の次元
  たましいの次元

おわりに
 Useful address
 演習
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  2C
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  3B
  3C
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 索引