はじめに
「リハビリテーション看護研究」第2号では,「リハビリテーション看護に活用する評価」として「ADL・身体的評価」を取りあげ,おかげさまで多くの方々から好評を得ることができました.それに引き続き第3号では,「リハビリテーション看護に活用する心理的評価」として,リハビリテーション看護(以下,リハ看護)で重要な心理面のアセスメントを見直してみました.効果的なリハ看護の実践において,心理的側面の理解は不可欠であり,その手段として「心理的評価」は重要だと考えたからです.
人は心身の統合体であり,平素の行動は,多かれ少なかれ心理面が関与しています.とくに病気や外傷などにより身体に障害を負うと,リハビリテーションの過程において心理的問題が生じやすく,しばしば抑うつや依存,攻撃などの不適応行動として顕在化し,医療スタッフを悩ませ,時には軋轢を起こすことがあります.さらに,対応を誤ると悪循環に陥りやすく,患者の医療に対する不信感を招き治療関係を破綻させる原因となることもあります.
不適応行動を示す患者に対して医療スタッフは,不適応行動の原因の解明に向けて多角的側面から情報を収集・分析・評価し支援していく治療的態度が求められます.医療スタッフはリハビリテーション・チームとして患者に関する情報を密接に交換し,統一した方針に基づいて心理的アプローチを実践して心理的問題の早期の解決を導きます.その中でも,病棟において日常的に患者とかかわることの多い看護師は,障害に対する患者の自己認識が不適応行動を生じさせていないかを的確に観察・評価し,適応行動への変容を目指した心理的アプローチにつなげる重要な役割があると言えます.患者の日常生活行動を注意深く観察し,心の微妙な変化や異常な兆候を見逃さず,心理状態を的確にアセスメントしていく能力がリハビリテーション看護師の資質として求められます.
「リハビリテーション看護実践研究」では口腔ケアを取りあげました.従来,口腔ケアは,身体の清潔のケアの一部として,あるいは嚥下リハビリテーションの前提として捉えられる傾向がありました.しかし最近では,口腔ケアの意義はそれだけにとどまるものではなく,誤嚥性肺炎の予防,意識レベルの覚醒効果,生活リズムの獲得といった,全身状態の改善および生活全般への影響が大きいことが知られてきています.このような立場から,今回,口腔ケアをQOLの視点からトータル・アプローチとして捉え直そうと考えて特集してみました.紙面の都合で実践報告を数多くは紹介できなかったのは残念ですが,身体状況がどのような段階においても口腔ケアが重要な意義を持つことを再認識し,早期リハビリテーションにつなげる視点を考えながらお読みいただき,それぞれの実践報告を皆様の参考にしていただきたいと思います.
最後に,皆様からの忌憚のないご意見やアドバイスをお寄せいただければ幸いです.
2002年3月 編者
「リハビリテーション看護研究」第2号では,「リハビリテーション看護に活用する評価」として「ADL・身体的評価」を取りあげ,おかげさまで多くの方々から好評を得ることができました.それに引き続き第3号では,「リハビリテーション看護に活用する心理的評価」として,リハビリテーション看護(以下,リハ看護)で重要な心理面のアセスメントを見直してみました.効果的なリハ看護の実践において,心理的側面の理解は不可欠であり,その手段として「心理的評価」は重要だと考えたからです.
人は心身の統合体であり,平素の行動は,多かれ少なかれ心理面が関与しています.とくに病気や外傷などにより身体に障害を負うと,リハビリテーションの過程において心理的問題が生じやすく,しばしば抑うつや依存,攻撃などの不適応行動として顕在化し,医療スタッフを悩ませ,時には軋轢を起こすことがあります.さらに,対応を誤ると悪循環に陥りやすく,患者の医療に対する不信感を招き治療関係を破綻させる原因となることもあります.
不適応行動を示す患者に対して医療スタッフは,不適応行動の原因の解明に向けて多角的側面から情報を収集・分析・評価し支援していく治療的態度が求められます.医療スタッフはリハビリテーション・チームとして患者に関する情報を密接に交換し,統一した方針に基づいて心理的アプローチを実践して心理的問題の早期の解決を導きます.その中でも,病棟において日常的に患者とかかわることの多い看護師は,障害に対する患者の自己認識が不適応行動を生じさせていないかを的確に観察・評価し,適応行動への変容を目指した心理的アプローチにつなげる重要な役割があると言えます.患者の日常生活行動を注意深く観察し,心の微妙な変化や異常な兆候を見逃さず,心理状態を的確にアセスメントしていく能力がリハビリテーション看護師の資質として求められます.
「リハビリテーション看護実践研究」では口腔ケアを取りあげました.従来,口腔ケアは,身体の清潔のケアの一部として,あるいは嚥下リハビリテーションの前提として捉えられる傾向がありました.しかし最近では,口腔ケアの意義はそれだけにとどまるものではなく,誤嚥性肺炎の予防,意識レベルの覚醒効果,生活リズムの獲得といった,全身状態の改善および生活全般への影響が大きいことが知られてきています.このような立場から,今回,口腔ケアをQOLの視点からトータル・アプローチとして捉え直そうと考えて特集してみました.紙面の都合で実践報告を数多くは紹介できなかったのは残念ですが,身体状況がどのような段階においても口腔ケアが重要な意義を持つことを再認識し,早期リハビリテーションにつなげる視点を考えながらお読みいただき,それぞれの実践報告を皆様の参考にしていただきたいと思います.
最後に,皆様からの忌憚のないご意見やアドバイスをお寄せいただければ幸いです.
2002年3月 編者
1 リハビリテーション看護に活用する心理的評価
1.心理的評価の意義とその方法(乾 吉佑)
はじめに/
心理的評価とその方法/
心理アセスメントを身につけるには
2.心理的評価の尺度に関する開発と研究(宮森孝史)
リハビリテーションにおける心理的評価/
心理的評価の方法/
リハビリテーションにおける心理的評価の開発の現状/
具体例:アセスメント・ツールとしての質問紙法/
リハビリテーション看護の視点からみた心理的評価の意義
3.リエゾン・カンファレンスからみたリハビリテーション・チームの課題(乾 吉佑)
はじめに/
リエゾン・カンファレンスとは/
リエゾン・カンファレンスに提出される問題点─筆者の経験から抽出された問題点─/
どんなリエゾンがなされるのか─筆者の経験から抽出されたかかわりの実際─/
リエゾン・カンファレンスに提出された一症例/
リエゾン・カンファレンスからみたリハビリテーション・チームの課題
4.リハビリテーション看護における心理アセスメント―こころの状態を捉えるための分析視点―(粟生田友子)
リハビリテーション看護におけるこころのケアの課題/
看護の視点で捉えるこころのアセスメントの方法/
おわりに
2 リハビリテーション看護実践研究
■スペシャリストのための理論と実践
「全身状態改善に導くトータル・アプローチとしての口腔ケア実践とリハビリテーション看護」
1.口腔ケアとリハビリテーション看護のかかわり(佐藤真由美)
はじめに/
口腔ケアとは/
口腔ケアにおける看護職の役割/
リハビリテーション看護のかかわり
2.口腔ケアにかかわるアセスメントと評価ツール(佐藤真由美)
はじめに/
口腔ケアのアセスメントに必要な基礎知識/
アセスメントと評価ツール/
おわりに
3.リハビリテーション看護における口腔ケア実践の研究の動向(迫田綾子)
リハビリテーション看護からみた口腔ケアの枠組み/
オーラル・ヘルスプロモーション/
口腔ケアに関する看護研究/
まとめ
4.口腔ケアの看護実践(大阪大学歯学部附属病院)
(西尾善子・池 美保・高野幸子・川尻節子)
はじめに/
口腔ケアの実践事例
5.口腔の手術を受けた患者の口腔ケアと看護のかかわり(愛知県がんセンター病院)
(野田順子・亀井亜子)
口腔がん患者の口腔ケアの目的/
口腔アセスメントとケアの実際/
口腔がん術前後の口腔ケアの実際/
まとめ
6.ICUにおける口腔ケアの援助実践(名古屋第二赤十字病院集中治療部)
(川合美知子・花井桂子・中川智美)
ICUにおける口腔ケアの目的/
口腔ケアに使用する物品の選択/
口腔ケア時の留意点/
経口気管内挿管している患者の口腔ケアの実際/
おわりに
7.口腔ケアに対するスタッフの意識向上への取り組み―重症心身障害児(者)の口腔ケアを実施して―(広島県立身体障害者リハビリテーションセンター)
(古胡真佐美・加藤辰子)
はじめに/
口腔ケアへの取り組みの実際/
まとめ
8.在宅での口腔ケア実践とリハビリテーション看護(迫田綾子)
在宅療養者の口腔ケアの現状/
在宅療養者の実態調査から/
口腔ケア実践/
おわりに
3 リハビリテーション看護の国内外の動き
1.Today's Rehabilitation Nursing in America and ARN Activities(Donna Williams)
History of Rehabilitation/
History of Rehabilitation Nursing/
The Association of Rehabilitation Nurses Today/
Resources Published by ARN/ On a Personal Note
2.英国の第1回国際RCNリハビリテーション看護学会に出席して
(奥宮暁子)
Rivermead Rehabilitation Centre訪問/
第1回国際RCNリハビリテーション看護学会への参加/
おわりに
1.心理的評価の意義とその方法(乾 吉佑)
はじめに/
心理的評価とその方法/
心理アセスメントを身につけるには
2.心理的評価の尺度に関する開発と研究(宮森孝史)
リハビリテーションにおける心理的評価/
心理的評価の方法/
リハビリテーションにおける心理的評価の開発の現状/
具体例:アセスメント・ツールとしての質問紙法/
リハビリテーション看護の視点からみた心理的評価の意義
3.リエゾン・カンファレンスからみたリハビリテーション・チームの課題(乾 吉佑)
はじめに/
リエゾン・カンファレンスとは/
リエゾン・カンファレンスに提出される問題点─筆者の経験から抽出された問題点─/
どんなリエゾンがなされるのか─筆者の経験から抽出されたかかわりの実際─/
リエゾン・カンファレンスに提出された一症例/
リエゾン・カンファレンスからみたリハビリテーション・チームの課題
4.リハビリテーション看護における心理アセスメント―こころの状態を捉えるための分析視点―(粟生田友子)
リハビリテーション看護におけるこころのケアの課題/
看護の視点で捉えるこころのアセスメントの方法/
おわりに
2 リハビリテーション看護実践研究
■スペシャリストのための理論と実践
「全身状態改善に導くトータル・アプローチとしての口腔ケア実践とリハビリテーション看護」
1.口腔ケアとリハビリテーション看護のかかわり(佐藤真由美)
はじめに/
口腔ケアとは/
口腔ケアにおける看護職の役割/
リハビリテーション看護のかかわり
2.口腔ケアにかかわるアセスメントと評価ツール(佐藤真由美)
はじめに/
口腔ケアのアセスメントに必要な基礎知識/
アセスメントと評価ツール/
おわりに
3.リハビリテーション看護における口腔ケア実践の研究の動向(迫田綾子)
リハビリテーション看護からみた口腔ケアの枠組み/
オーラル・ヘルスプロモーション/
口腔ケアに関する看護研究/
まとめ
4.口腔ケアの看護実践(大阪大学歯学部附属病院)
(西尾善子・池 美保・高野幸子・川尻節子)
はじめに/
口腔ケアの実践事例
5.口腔の手術を受けた患者の口腔ケアと看護のかかわり(愛知県がんセンター病院)
(野田順子・亀井亜子)
口腔がん患者の口腔ケアの目的/
口腔アセスメントとケアの実際/
口腔がん術前後の口腔ケアの実際/
まとめ
6.ICUにおける口腔ケアの援助実践(名古屋第二赤十字病院集中治療部)
(川合美知子・花井桂子・中川智美)
ICUにおける口腔ケアの目的/
口腔ケアに使用する物品の選択/
口腔ケア時の留意点/
経口気管内挿管している患者の口腔ケアの実際/
おわりに
7.口腔ケアに対するスタッフの意識向上への取り組み―重症心身障害児(者)の口腔ケアを実施して―(広島県立身体障害者リハビリテーションセンター)
(古胡真佐美・加藤辰子)
はじめに/
口腔ケアへの取り組みの実際/
まとめ
8.在宅での口腔ケア実践とリハビリテーション看護(迫田綾子)
在宅療養者の口腔ケアの現状/
在宅療養者の実態調査から/
口腔ケア実践/
おわりに
3 リハビリテーション看護の国内外の動き
1.Today's Rehabilitation Nursing in America and ARN Activities(Donna Williams)
History of Rehabilitation/
History of Rehabilitation Nursing/
The Association of Rehabilitation Nurses Today/
Resources Published by ARN/ On a Personal Note
2.英国の第1回国際RCNリハビリテーション看護学会に出席して
(奥宮暁子)
Rivermead Rehabilitation Centre訪問/
第1回国際RCNリハビリテーション看護学会への参加/
おわりに