補訂版の序
昨年,本書を出版したが,多くの方々から文章の不鮮明さ,図版の改良等貴重なご批判,助言をいただいた.心からお礼申し上げる.今回は,新しく第9章として“生物と地球環境”を設け,ヒトを取り巻く基本的な環境問題に触れ,主に日頃の生活と密着した内容を考えてみた.さらに,第2〜5章,第8章については,部分的な構成・項目の追加や簡略化,削除等を含めた変更を行った.図表の差し替えや追加,わかりにくかった箇所の文の訂正および解説を追加して,より深く理解するための手助けとして役立てばと工夫してみた.なお,本書のタイトルから副題「細胞機能・細胞遺伝と発生分化を探る」をとり「補訂版」とした.補訂版の出版にあたり阿部道生博士(鶴見大学歯学部)から貴重な写真の提供を受けた.また,優れた多くの方々のご高著を参考にさせていただいたことを記し,著者一同,心から感謝の意を表したい.
2002年早春著者一同
序
21世紀に入って,ヒトゲノムの解読がほとんど終了するなど,生命科学,医学,医療の研究や技術の開発は,急速な発展をとげている.そして,医療に携わる者には,いっそうの幅広い生物学や医学的基礎知識と高度な専門技術が求められる時代となってきている.新カリキュラムにおける生命科学の基礎科目の教育目標は,科学的,論理的思考力を育て,人間性を磨き,自由で主体的な判断と行動を培うと同時に,生命倫理や人の尊厳を幅広く理解していくことである.さらに国際化および情報化社会に対応できる能力を養成することである.これらをふまえて,科学的思考の基盤や人間生活へのかかわりを教科内容に盛り込むように努めた.
生物学の目標であるヒトを含む生物の生命現象の解明は,広く各分野の境界をとりはずした生命科学と呼ばれる学問分野で行われ,その研究成果は基礎医学上の未知の諸問題の解決に貢献し,またわれわれの日常生活にも身近に影響を及ぼしている.このような新時代に医療に従事しようとする皆さんには,今後,人間が多様な生物と釣合いながら,共生していくためにも広い視野をもって生物学の勉学に励んでいただきたい.
高等学校の教育が多様化されてから,新入生の生物学に対する基礎知識も幅広くなったが,未修得の学生さんにも理解できるように配慮して教科書を作成した.
本書は生命の起源から生命体の構成物質,生命の単位としての細胞,個体の構成と機能,初期発生,遺伝情報,ヒトの進化などを中心項目として,理解しやすいように前著の章だてを整理し組み換えをおこなった.顕微鏡で観察する時間の少ない皆さんが,形態やその構造の変化を理解するためには図や写真が役立ち,模式図だけではなく電子顕微鏡写真ものせて補足するようにつとめ,説明も図と対照的に記しておいた.また,生物学の各分野の研究について歴史的事実を取り上げたのは,その研究に関わった人達のことをできるだけ知ってもらいたいためである.コラムは学習者が広く,深く生物学に触れるための参考になるように構成した.そして各章ごとの目標とするまとめと問題を提示した.今後とも,多くの方々からのご意見や誤りをご指摘いただければ幸いである.
限られた紙数の中で,生物学の基礎を学び,生命科学に各関連する専門科目を消化するためには巻末し示した参考図書などを利用してほしい.
本書を刊行するにあたり,西川純雄助教授(鶴見大学歯学部),高浜秀樹教授(大分大学福祉学部),木下 勉教授(関西学院大),外村 晶元教授(東医歯大)から貴重な写真とご教示をいただいた.その他,多くの内外の高著を参考にさせていただくとともに,写真,図表を引用させていただいた.また,本書の刊行にあたっては,医歯出版編集部の皆さんに長期間にわたるご尽力とご配慮をいただいた.ここに,これらの方々に心から感謝の意を表する次第である.
2001年4月
著者一同
昨年,本書を出版したが,多くの方々から文章の不鮮明さ,図版の改良等貴重なご批判,助言をいただいた.心からお礼申し上げる.今回は,新しく第9章として“生物と地球環境”を設け,ヒトを取り巻く基本的な環境問題に触れ,主に日頃の生活と密着した内容を考えてみた.さらに,第2〜5章,第8章については,部分的な構成・項目の追加や簡略化,削除等を含めた変更を行った.図表の差し替えや追加,わかりにくかった箇所の文の訂正および解説を追加して,より深く理解するための手助けとして役立てばと工夫してみた.なお,本書のタイトルから副題「細胞機能・細胞遺伝と発生分化を探る」をとり「補訂版」とした.補訂版の出版にあたり阿部道生博士(鶴見大学歯学部)から貴重な写真の提供を受けた.また,優れた多くの方々のご高著を参考にさせていただいたことを記し,著者一同,心から感謝の意を表したい.
2002年早春著者一同
序
21世紀に入って,ヒトゲノムの解読がほとんど終了するなど,生命科学,医学,医療の研究や技術の開発は,急速な発展をとげている.そして,医療に携わる者には,いっそうの幅広い生物学や医学的基礎知識と高度な専門技術が求められる時代となってきている.新カリキュラムにおける生命科学の基礎科目の教育目標は,科学的,論理的思考力を育て,人間性を磨き,自由で主体的な判断と行動を培うと同時に,生命倫理や人の尊厳を幅広く理解していくことである.さらに国際化および情報化社会に対応できる能力を養成することである.これらをふまえて,科学的思考の基盤や人間生活へのかかわりを教科内容に盛り込むように努めた.
生物学の目標であるヒトを含む生物の生命現象の解明は,広く各分野の境界をとりはずした生命科学と呼ばれる学問分野で行われ,その研究成果は基礎医学上の未知の諸問題の解決に貢献し,またわれわれの日常生活にも身近に影響を及ぼしている.このような新時代に医療に従事しようとする皆さんには,今後,人間が多様な生物と釣合いながら,共生していくためにも広い視野をもって生物学の勉学に励んでいただきたい.
高等学校の教育が多様化されてから,新入生の生物学に対する基礎知識も幅広くなったが,未修得の学生さんにも理解できるように配慮して教科書を作成した.
本書は生命の起源から生命体の構成物質,生命の単位としての細胞,個体の構成と機能,初期発生,遺伝情報,ヒトの進化などを中心項目として,理解しやすいように前著の章だてを整理し組み換えをおこなった.顕微鏡で観察する時間の少ない皆さんが,形態やその構造の変化を理解するためには図や写真が役立ち,模式図だけではなく電子顕微鏡写真ものせて補足するようにつとめ,説明も図と対照的に記しておいた.また,生物学の各分野の研究について歴史的事実を取り上げたのは,その研究に関わった人達のことをできるだけ知ってもらいたいためである.コラムは学習者が広く,深く生物学に触れるための参考になるように構成した.そして各章ごとの目標とするまとめと問題を提示した.今後とも,多くの方々からのご意見や誤りをご指摘いただければ幸いである.
限られた紙数の中で,生物学の基礎を学び,生命科学に各関連する専門科目を消化するためには巻末し示した参考図書などを利用してほしい.
本書を刊行するにあたり,西川純雄助教授(鶴見大学歯学部),高浜秀樹教授(大分大学福祉学部),木下 勉教授(関西学院大),外村 晶元教授(東医歯大)から貴重な写真とご教示をいただいた.その他,多くの内外の高著を参考にさせていただくとともに,写真,図表を引用させていただいた.また,本書の刊行にあたっては,医歯出版編集部の皆さんに長期間にわたるご尽力とご配慮をいただいた.ここに,これらの方々に心から感謝の意を表する次第である.
2001年4月
著者一同
第1章 ――生命の起源
I.生命誕生の準備(化学進化)
II.原始生命の誕生
III.生命を支える分子
[1]水
[2]タンパク質
[3]炭水化物(糖質)
[4]脂質
[5]核酸
[6]無機物
まとめと問題
第2章 ――生命の単位
コラム―生物の多様性と分類学(種と学名)
コラム―細胞の観察
I.細胞の構造と機能
1-ウイルス
2-原核細胞と真核細胞
3-真核細胞の一般構造
[1]細胞膜(原形質膜,形質膜,生体膜)
[2]核
[3]小胞体
[4]ゴルジ装置(体)
[5]リソソーム(ライソソーム,水解小体)
[6]ミトコンドリア
[7]色素体
[8]細胞骨格
[9]中心体と線毛
II.生体の構成と機能
1-組織
[1]上皮組織
[2]結合組織
コラム―体液〔血液〕
コラム―体液〔リンパおよび組織液〕
[3]筋肉組織
[4]神経組織
2-器官とその機能
まとめと問題
第3章 ――生命活動とエネルギー
I.酵素
II.共通のエネルギー源
III.光合成
1-光化学系
2-カルビン回路
IV.呼吸
1-嫌気呼吸
2-好気呼吸
[1]クエン酸回路
[2]電子伝達系
まとめと問題
コラム―生命科学の基礎知識
第4章 ―― 細胞の増殖
I.細胞周期
1-間期
2-細胞周期の調節
3-分裂期
[1]体細胞分裂
[2]減数分裂
II.ヒトの配偶子形成
1-精子形成
2-卵子形成
コラム―グラーフ卵胞と排卵
まとめと問題
第5章 ――生命をつなぐ遺伝情報
I.メンデルの法則
[1]優性の法則・分離の法則
[2]独立の法則
II.遺伝子の本体
[1]解明の実験
[2]DNAの構造
III.DNAの働き
[1]DNAの複製
[2]RNAの合成(転写)
[3]遺伝暗号
[4]タンパク質合成
コラム―遺伝子のクローニング法
IV.ヒトの遺伝
[1]染色体の分類
[2]性別と遺伝子量
[3]遺伝の様式
[4]突然変異と先天異常(遺伝病)
コラム―家系図のつくり方
コラム―DNAフィンガープリント―親子関係や個人の識別
V.遺伝と環境
[1]双生児と遺伝への利用
[2]遺伝と環境の問題
まとめと問題
コラム―生命科学と生命倫理学
第6章 ――発生 ・分化
I.受精
コラム―卵表面の変化
[1]精子の放線冠への進入(受精能獲得)
[2]精子の透明帯への付着と進入
[3]多精子受精の防御
[4]精子と卵の融合と接合子形成
II.発生過程
1-割球
2-胞胚形成から胚葉形成
[1]卵割と中期胞胚変換
[2]原腸(嚢)胚形成
[3]細胞運動とフィブロネクチン
[4]神経胚形成
[5]中胚葉と内胚葉の分化
3-器官形成
[1]胚誘導と形成体
[2]形態形成と細胞死
まとめと問題
第7章 ――ヒトの初期発生
コラム―動物の方向用語
I.受精卵から個体へ
[1]卵割と初期胚
[2]胚盤胞(胞胚)の形成と着床
[3]内細胞塊の分化と胚葉の形成
コラム―神経堤の分化
[4]胚葉の分化
[5]子宮粘(内)膜と胎盤
[6]胎児の成長と発育
コラム―出生前診断
まとめと問題
第8章 ――ヒトへの進化
I.進化とその要因
[1]突然変異と淘汰
コラム―ヒトと類人猿の染色体
II.進化の事実と証拠
[1]分類学・形態学的な研究
[2]比較発生学的な証拠
[3]比較生理学,生化学的な研究
III.ヒトの進化
[1]アウストラロピテクス属(猿人)
[2]ホモ属
[3]ヒトの特徴
まとめと問題
コラム―mtDNAと人類の系統樹
第9章 ――生物と地球環境
I.ヒトと地球環 ォ
[1]エコシステム
[2]人間の生活と環境
[3]地球温暖化
II.環境汚染化学物質―環境保全
まとめと問題
コラム―地球の歴史と生命・文化の歴史(2000年から振り返ってみたとき)
索引
I.生命誕生の準備(化学進化)
II.原始生命の誕生
III.生命を支える分子
[1]水
[2]タンパク質
[3]炭水化物(糖質)
[4]脂質
[5]核酸
[6]無機物
まとめと問題
第2章 ――生命の単位
コラム―生物の多様性と分類学(種と学名)
コラム―細胞の観察
I.細胞の構造と機能
1-ウイルス
2-原核細胞と真核細胞
3-真核細胞の一般構造
[1]細胞膜(原形質膜,形質膜,生体膜)
[2]核
[3]小胞体
[4]ゴルジ装置(体)
[5]リソソーム(ライソソーム,水解小体)
[6]ミトコンドリア
[7]色素体
[8]細胞骨格
[9]中心体と線毛
II.生体の構成と機能
1-組織
[1]上皮組織
[2]結合組織
コラム―体液〔血液〕
コラム―体液〔リンパおよび組織液〕
[3]筋肉組織
[4]神経組織
2-器官とその機能
まとめと問題
第3章 ――生命活動とエネルギー
I.酵素
II.共通のエネルギー源
III.光合成
1-光化学系
2-カルビン回路
IV.呼吸
1-嫌気呼吸
2-好気呼吸
[1]クエン酸回路
[2]電子伝達系
まとめと問題
コラム―生命科学の基礎知識
第4章 ―― 細胞の増殖
I.細胞周期
1-間期
2-細胞周期の調節
3-分裂期
[1]体細胞分裂
[2]減数分裂
II.ヒトの配偶子形成
1-精子形成
2-卵子形成
コラム―グラーフ卵胞と排卵
まとめと問題
第5章 ――生命をつなぐ遺伝情報
I.メンデルの法則
[1]優性の法則・分離の法則
[2]独立の法則
II.遺伝子の本体
[1]解明の実験
[2]DNAの構造
III.DNAの働き
[1]DNAの複製
[2]RNAの合成(転写)
[3]遺伝暗号
[4]タンパク質合成
コラム―遺伝子のクローニング法
IV.ヒトの遺伝
[1]染色体の分類
[2]性別と遺伝子量
[3]遺伝の様式
[4]突然変異と先天異常(遺伝病)
コラム―家系図のつくり方
コラム―DNAフィンガープリント―親子関係や個人の識別
V.遺伝と環境
[1]双生児と遺伝への利用
[2]遺伝と環境の問題
まとめと問題
コラム―生命科学と生命倫理学
第6章 ――発生 ・分化
I.受精
コラム―卵表面の変化
[1]精子の放線冠への進入(受精能獲得)
[2]精子の透明帯への付着と進入
[3]多精子受精の防御
[4]精子と卵の融合と接合子形成
II.発生過程
1-割球
2-胞胚形成から胚葉形成
[1]卵割と中期胞胚変換
[2]原腸(嚢)胚形成
[3]細胞運動とフィブロネクチン
[4]神経胚形成
[5]中胚葉と内胚葉の分化
3-器官形成
[1]胚誘導と形成体
[2]形態形成と細胞死
まとめと問題
第7章 ――ヒトの初期発生
コラム―動物の方向用語
I.受精卵から個体へ
[1]卵割と初期胚
[2]胚盤胞(胞胚)の形成と着床
[3]内細胞塊の分化と胚葉の形成
コラム―神経堤の分化
[4]胚葉の分化
[5]子宮粘(内)膜と胎盤
[6]胎児の成長と発育
コラム―出生前診断
まとめと問題
第8章 ――ヒトへの進化
I.進化とその要因
[1]突然変異と淘汰
コラム―ヒトと類人猿の染色体
II.進化の事実と証拠
[1]分類学・形態学的な研究
[2]比較発生学的な証拠
[3]比較生理学,生化学的な研究
III.ヒトの進化
[1]アウストラロピテクス属(猿人)
[2]ホモ属
[3]ヒトの特徴
まとめと問題
コラム―mtDNAと人類の系統樹
第9章 ――生物と地球環境
I.ヒトと地球環 ォ
[1]エコシステム
[2]人間の生活と環境
[3]地球温暖化
II.環境汚染化学物質―環境保全
まとめと問題
コラム―地球の歴史と生命・文化の歴史(2000年から振り返ってみたとき)
索引