やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序文
 整形外科疾患の診療とリハビリテーションは,切っても切れない関係にあります.手術後の機能回復訓練としてのリハビリテーションはもちろんですが,保存的治療としての運動療法や物理療法,社会復帰に向けた包括的なリハビリテーション,さらには整形外科疾患の予防にもリハビリテーションは深く関わっています.したがって,運動器の構造や整形外科疾患の病態や診断,治療を理解しておくことは,リハビリテーションに携わる医療従事者やそれを目指す学生にとっては非常に重要なことです.一方で,整形外科は四肢と体幹の運動器全体を対象としており,扱う疾患は多岐にわたり,そのすべてを頭に入れることは整形外科医と言えども容易ではありません.本書では,臨床の現場で経験することが多い疾患を取り上げ,具体的な症例を示したうえで,患者像をイメージしながら必要な知識を身につけられるように企画しました.これらの知識を得ることで,頻度の少ない他の整形外科疾患についての理解は容易になると考えています.またコラムとして,発展的な知識やトピックスも解説しています.
 リハビリテーションを受ける患者さんは,リハビリテーションのゴールに関しては自身の希望も含めて医師や療法士と相談することはあっても,多くの場合,リハビリテーションの内容については任せるしかない立場にいます.したがって医師や療法士がリハビリテーションの内容を考え決定する際には,個々の患者さんの病態,手術など受けてきた治療の具体的な内容を理解しておく必要があります.特に,理学療法士や作業療法士を目指している学生さん達には,臨床実習等において,指導にあたる療法士や主治医,リハビリテーション医の指示通りにリハビリテーションを行うのではなく,その指示にある背景を十分に理解するように努めていただきたいと思います.
 本書は,整形外科医としての長年にわたるバックグラウンドをもつ3名のリハビリテーション医が執筆しており,個々の疾患の内容について,リハビリテーションを考えるうえで必要な部分を強調して記述しています.整形外科疾患の知識の整理として,そして,実際の臨床の現場における参考資料として役立てていただければ幸いです.
 2016年1月吉日
 芳賀 信彦
01 大腿骨近位部骨折
  導入エピソード
  どんな人がなりやすいですか
  どんな病態ですか
  どのように診断されますか
  どんな治療が行われますか
  大腿骨近位部骨折の予防
  After
  Another Case
 脊椎椎体骨折
  ・脊椎椎体骨折とは
  ・症状
  ・治療
02 下腿骨骨折
  導入エピソード
  どんな人がなりやすいですか
  どんな病態ですか
  どのように診断されますか
  どんな治療が行われますか
  小児の下腿骨骨折
  After
 橈骨遠位端骨折
  ・橈骨遠位端骨折とは
  ・症状
  ・分類
  ・治療
03 足関節の外傷
  導入エピソード
  どんな人がなりやすいですか
  どんな病態ですか
  どのように診断されますか
  どんな治療が行われますか
  After
04 膝前十字靱帯損傷
  導入エピソード
  どんな人がなりやすいですか
  どんな病態ですか
  どのように診断されますか
  どんな治療が行われますか
  After
05 末梢神経損傷
  導入エピソード
  どんな原因で生じますか
  どんな病態ですか
  どのように診断されますか
  どんな治療が行われますか
  After
06 四肢切断
  導入エピソード
  どんな原因で生じますか
  どんな病態ですか
  切断手術と断端ケア
  どのように分類・評価しますか
  義足の製作
  After
07 変形性股関節症
  導入エピソード
  どんな人がなりやすいですか
  どんな病態ですか
  どのように診断されますか
  どんな治療が行われますか
  変形性股関節症の予防
  After
  Another Case
08 変形性膝関節症
  導入エピソード
  どんな人がなりやすいですか
  どんな病態ですか
  どのように診断されますか
  どんな治療が行われますか
  After
  Another Case
 骨端症
  ・ペルテス病(Legg-Calve-Perthes病)
  ・オスグッド病(Osgood-Schlatter病)
  ・ケーラー病(Kohler病)
09 関節リウマチ
  導入エピソード
  どんな人がなりやすいですか
  どんな病態ですか
  どのように診断されますか
  どんな治療が行われますか
  After
  Another Case
10 肩痛
  導入エピソード
  基礎知識
  肩関節の解剖と特徴
  どんな人がなりやすいですか
  どんな病態ですか
  どのように診断されますか
  どんな治療が行われますか
  予後はどうですか
  After
11 腰痛
  導入エピソード
  基礎知識
  どんな人がなりやすいですか
  どんな病態ですか
  どのように診断されますか
  どんな治療が行われますか
  予後はどうですか
  After
12 頚椎症性脊髄症
  導入エピソード
  どんな人がなりやすいですか
  どんな病態ですか
  どのように診断されますか
  どんな治療が行われますか
  After
13 脊髄損傷
  導入エピソード
  どんな人がなりやすいですか
  どんな病態ですか
  どのように診断されますか
  どんな治療が行われますか
  After

コラム
 01 大腿骨近位部骨折
  (1)大腿骨頭の血流
  (2)大腿骨転子部骨折の安定性
  (3)高齢者の長期臥床による廃用症候群
  (4) sliding hip screwとshort femoral nail
  (5)「転倒不安」とその評価
  (6)大腿骨近位部骨折と生命予後
 02 下腿骨骨折
  (1)骨折線の方向による分類
  (2)ロッキングプレート
  (3)開放骨折のGustilo分類と初期治療
  (4)多発外傷における骨折治療
 03 足関節の外傷
  (1)Lauge-Hansen分類とは
  (2)RICEとは
 04 膝前十字靱帯損傷
  (1)スポーツ外傷とスポーツ障害
  (2)メカノレセプターと関節覚
  (3) Segond骨折とは
  (4)スクリューホームムーブメント
 05 末梢神経損傷
  (1)絞扼性神経障害
  (2)末梢神経損傷による手の変形
  (3)フロマン徴候(Froment sign)
  (4)カウザルギー
 06 四肢切断
  (1)下肢切断の年齢
  (2)壊死性筋膜炎とは
  (3)幻肢痛の治療
  (4)骨直結型義足
 07 変形性股関節症
  (1)臼蓋形成不全とは
  (2)変形性股関節症の遺伝子異常
  (3)先天性股関節脱臼診療の変遷と変形性股関節症
  (4)人工関節と骨の間の固定
  (5)人工股関節の弛み
 08 変形性膝関節症
  (1)下肢のアライメントとは
  (2)一次性変形性膝関節症に関連する因子
  (3) closing wedge osteotomyとopening wedge osteotomy
 09 関節リウマチ
  (1)ボタン穴変形と白鳥のくび変形
  (2)新しい活動性評価法
  (3)遠位橈尺関節障害に対するSauve-Kapandji手術
  (4)温熱療法
 11 腰痛
  (1)腰部脊柱管狭窄症とは
  (2)腰痛のレッドフラッグ
 12 頚椎症性脊髄症
  (1)頚椎後縦靱帯骨化症とは
  (2)打鍵器ひとつで高位診断
  (3)椎弓形成術とは
 13 脊髄損傷
  (1)球海綿体反射
  (2)麻痺の回復を促す治療
  (3)自律神経過反射
  (4)新しい痙縮の治療
  (5)性機能障害
  (6)自動車の運転

 索引