やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 我が国の高齢化の状況について少し考えてみたい.
 我が国の総人口は平成26(2014)年10月1日現在で1億2,708万人,65歳以上の高齢者人口は過去最高の3,300万人(前年3,190万人)である.
 つまり総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は26.0%(前年25.1%)である.
 そのうち,「65〜74歳人口」(前期高齢者)は1,708万人,総人口に占める割合は13.4%,「75歳以上人口」(後期高齢者)は1,592万人,総人口に占める割合は12.5%で,これは今後減少することはなく,さらに増加するとされている.
 総人口が減少するなかで高齢化率は上昇する.
 推計によると,高齢者人口は平成54(2042)年に3,878万人でピークを迎え,その後は減少に転じるとはいうものの高齢化率は上昇し続け,平成72(2060)年には,およそ2.5人に1人が65歳以上,4人に1人が75歳以上となるとされる.
 そうした時代背景のなかで理学療法士(PT),作業療法士(OT)への期待が大きいことはいうまでもない.もちろん,両資格者がかかわる対象者は高齢者だけではないが,人と人とが助け合う社会の最前線で働くことを決意し,資格取得を目指したからには,いろいろなかたちでハンディを抱える人びとのためにも,人間の心身に関するさまざまな知識を身につけ,大いに活躍してもらいたいと願う.
 それでは,2016年2月28日(日)に行われた,「第51回PT・OT国家試験」の概要を振り返りながら,「第52回国家試験」に向けてどのように学習を進めていくのがよいか,考えてみよう.

 第51回PT・OT国家試験合格率
       出願者数 受験者数 合格者数 合格率
 PT国家試験  13,104  12,515   9,272 74.1%
 OT国家試験   6,272   6,102   5,344 87.6%

 10年以上前まではPTもOTもほぼ90%以上の合格率を維持してきたが,ここ数年の合格率はグラフに示したとおり,70〜80%台と低迷している.その理由のひとつには,新卒者の合格率は90%を維持していることからも明らかであるように,一度不合格になった受験者がなかなか合格水準に至らないことにある.大学や専門学校を卒業したにもかかわらず,合格ができずそれでも来年こそは合格したいという,いわゆる浪人生の方々はぜひ本書を繰り返し学習し,合格基準点を目指してもらいたい.
 その合格基準点とはなにか.PT・OTともに,午前・午後各20問,計40問の実地問題(配点は3点,120点満点)と,午前・午後各80問,計160問の一般問題(配点は1点,160点満点)で,その総合点の280点が満点である.そのうち,168点以上で,しかも実地問題の得点が43点以上である者だけが合格となる.つまり168点とれても,実地問題が42点であれば不合格となる.ちなみに,厚生労働省発表による第51回の合格基準は,採点除外等の問題があったため,下表(厚生労働省発表)に示したとおりであった.

 第51回PT・OT国家試験の合格基準
       合格基準点/総得点 合格基準点/実地問題の総合計点
 PT国家試験 165点以上/ 274点  41点以上/117点
 OT国家試験 167点以上/ 278点  43点以上/120点

 第51回PT・OT国家試験の採点除外・複数正解問題
 問題分野   問題  問題種別 理由                          採点   配点
 PT専門分野  午前16 実地問題 問題として適切であるが,受験者レベルでは難しすぎるため 採点除外 なし
        午後23 一般問題 設問文が不明瞭であるため                採点除外 なし
        午後49 一般問題 複数の正解があるため                  複数正解 1点
 OT専門分野  なし
 専門基礎分野 午前56 一般問題 設問が不適切で正解が得られないため           採点除外 なし
        午前74 一般問題 選択肢において正解を得ることが困難なため        採点除外 なし
 はじめに
 第51回PT・OT国試問題の傾向と分析
 第51回PT ・OT国試問題専門基礎分野(基礎医学)出題傾向と対策の要点
 第51,50回PT ・OT国試問題専門基礎分野(基礎医学)
 第51回問題分類表
 問題・解答・解説
 第50回問題分類表
 問題・解答・解説
 参考資料「理学療法士・作業療法士国家試験出題基準平成28年版」
 得点力アップのために(本書のページ構成)
第1章 解剖生理学I(植物機能)
 1)循環器系
  ・かんたんチェックポイント
   全身の動脈
   全身の静脈
  (1)動脈
  (2)静脈
  (3)リンパ循環
  (4)胎児循環
  (5)心臓
  (6)循環の生理
  (7)心臓の刺激伝導系
  (8)頸動脈洞反射
  (9)血液細胞〔赤血球,白血球(顆粒球,単球,リンパ球),血小板〕
 2)消化器系
  (1)消化酵素
  (2)唾液
  (3)咀嚼
  (4)嚥下
  (5)消化管の構造と消化機能
  (6)排便の生理
  (7)肝臓と胆嚢
  (8)膵臓の構造と生理機能
 3)泌尿器系
  (1)腎臓の解剖
  (2)腎臓の生理機能
  (3)泌尿器の構造
  (4)排尿の生理
 4)呼吸器系
  (1)呼吸器系の構造
  (2)健常成人の呼吸量
  (3)呼吸中枢と呼吸生理
  (4)換気と酸塩基平衡
  (5)運動時の呼吸の変化
 5)代謝
  (1)基礎代謝
  (2)エネルギー代謝
  (3)体温
  (4)体温調節
  (5)糖(質)代謝
  (6)骨代謝,カルシウム代謝
  (7)ビタミン欠乏症
 6)内分泌系
  (1)分泌器官とホルモン
  (2)下垂体
  (3)甲状腺・副甲状腺(上皮小体)
  (4)ホルモンの作用
 7)発生と組織
  (1)細胞の基本構造
  (2)発生
  (3)DNA
 文献
第2章 解剖生理学II(動物機能)
 1)中枢神経
  (1)中枢神経系の解剖と系統発生
  (2)大脳皮質の機能局在
  (3)大脳基底核
  (4)大脳辺縁系
  (5)大脳皮質の血管支配
  (6)脳波
  (7)中脳
  (8)延髄・延髄にある脳神経核
  (9)生理機能中枢とその部位
  (10)髄の構造
  ・かんたんチェックポイント
   伝導路
  (11)上行伝導路
  (12)下行伝導路
  (13)上行路と下行路
  (14)反射中枢
  (15)神経伝達物質
 2)末梢神経
  (1)神経線維の構造
  (2)神経線維の種類(直径・伝導速度・伝達情報)
  (3)脳神経とその働き
  (4)副交感神経を含む脳神経
  (5)自律神経
  (6)表在感覚の神経支配
  (7)腕神経叢
  (8)腰神経叢と仙骨神経叢
 3)骨格筋
  (1)構造
  (2)特徴
  (3)運動単位と神経支配比
  (4)筋収縮の生理
  (5)筋紡錘
  (6)ゴルジ腱器官
  (7)伸張反射(単シナプス反射)
 4)感覚
  (1)皮膚の構造
  (2)(表在・深部・特殊)感覚受容器
  (3)視覚器の構造と機能
  (4)視覚伝導路
  (5)聴覚器・平衡覚器の構造と機能
  (6)感覚と大脳機能局在
 文献
第3章 運動機能学
 1)骨
  (1)構造と解剖
  (2)頸椎の構造と運動
  (3)骨盤の前傾
  (4)手の骨
 2)関節
  (1)形状分類
  (2)関節液
  (3)靱帯
  (4)顎関節
 3)上肢
  (1)肩関節および体表解剖
  (2)肘関節と肘部の触知
  (3)手根管,手部の筋
 4)下肢
  (1)足部の骨と関節
  (2)膝関節
  (3)股関節
  (4)大腿部の体表解剖,触知
 5)柱
  (1)頸椎の回旋運動
  (2)柱の靱帯
 6)上肢の筋
  (1)肩甲骨に付着する筋
  (2)肩甲骨の運動
  (3)肩関節の運動に作用する筋
  (4)肩関節の外旋・内旋に作用する筋
  (5)上腕骨に付着する筋
  (6)前腕骨に付着する筋
  (7)肘関節および前腕に作用する筋
  (8)手指の運動に作用する筋
 7)下肢の筋
  (1)股関節と大腿骨に付着する筋
  (2)股関節運動の制限因子
  (3)股関節に作用する筋
  (4)膝関節屈曲位の下腿への作用筋
  (5)足のアーチに関与する筋
  (6)足部骨に付着する筋
  (7)足根管を通る筋・神経・血管
  (8)足関節運動に作用する筋
 8)頭部の筋
  (1)表情筋
 9)体幹の筋
 10)神経支配
  (1)二重神経支配の筋
  (2)上肢の筋の支配神経
  (3)下肢の筋の支配神経
  (4)呼吸筋
  (5)脳神経と支配筋
 11)正常歩行
  (1)歩行時のモーメント
  (2)歩行率,歩行周期
  (3)重心移動と関節角度
  (4)歩行時の活動筋
  (5)歩行の神経機構・高齢者の歩行
 12)バイオメカニクス
  (1)てこ
  (2)筋収縮
  (3)仕事と力学的エネルギーの定義
 13)立位姿勢
 14)運動学習
 文献
第4章 人間発達学
 1)小児の反射・反応
  ・かんたんチェックポイント
   小児の発達過程
   小児の反射・反応(1)〜(4)
 2)小児の運動発達
 3)小児の歩行
 4)老化現象
 文献

 参考図書
 自己評価テスト
 X(2)対策実力テスト
 チェック項目リスト(索引)