やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 エネルギー問題,経済問題,外交問題と,わが国の抱える諸問題は枚挙にいとまがないほどであるが,なかでも超高齢社会に関わる諸課題は地球に住む以上,今後いかなる国においても避けて通れない状況にある.特に世界でも頭一つ抜きんでて高齢化の先頭を走り続けるわが国が,いかにこの課題をスマートに解決していくか,諸外国から注視されているといっても過言ではない.このままのペースでいけば,2020年には65歳以上が全体の人口の約3割を占めることになる(2013年は2.5割).
 そうした時代背景のなかで誕生したPT(理学療法士),OT(作業療法士)への期待が大きいことはいうまでもない.もちろん,両資格者が関わる対象者は高齢者だけではないが,人と人とが助け合う社会の最前線で働くことを決意し,資格取得を目指したからには,いろいろなかたちでハンディを抱える人びとのためにも,ぜひ実地や臨床でのトレーニングに熱心に取り組み,人間の心身に関するさまざまな知識を身につけ,大いに活躍してもらいたいと願う.
 それでは,2015年3月1日(日)に行われた,「第50回PT・OT国家試験」の概要を振り返りながら,来年度実施される「第51回国家試験」に向けてどのように学習を進めていくのがよいか,考えてみよう.
 第50回PT・OT国家試験合格率
       出願者数 受験者数 合格者数 合格率
 PT国家試験  12,505  12,035   9,952 82.7%
 OT国家試験   5,508   5,324   4,125 77.5%

 増加するPT・OTの養成校の数に反し,その学生の数は減少している.その結果,PTは第47回以降,OTは第44回以降,受験者数も国家試験の合格率もほぼ減少傾向にある.
 10年以上前まではPTもOTもほぼ90%以上の合格率を維持してきたが,ここ数年の合格率は上記の折れ線グラフに示したとおり,80%台と低迷している.その理由のひとつには,新卒者の合格率は90%を維持していることからも明らかであるように,一度不合格になった受験者がなかなか合格水準に至らないことにある.大学や専門学校を卒業したにもかかわらず,合格ができずそれでもがんばろうという,いわゆる浪人生の方々はぜひ本書を繰り返し学習し,合格基準点を目指してもらいたい.
 その合格基準点とはなにか.PT・OTともに,午前・午後各20問,計40問の実地問題(配点は3点,120点満点)と,午前・午後各80問,計160問の一般問題(配点は1点,160点満点)で,その総合点の280点が満点である.そのうち,168点以上で,しかも実地問題の得点が43点以上である者だけが合格となる.つまり168点とれても,実地問題が42点であれば不合格となる.ちなみに,厚生労働省発表による第50回の合格基準は,採点除外等の問題があったため,以下の表(厚生労働省発表)に示したとおりであった.
 第50回 PT・OT国家試験の合格基準
          総得点     実地問題
 PT国家試験 168点以上/280点  43点以上/120点
 OT国家試験 165点以上/275点  41点以上/117 点

 第50回 PT・OT国家試験の採点除外・複数正解問題
 問題分野   問題  問題種別 理由                          採点   配点
 PT専門分野  なし
 OT専門分野  午前2  実地問題 選択肢に誤りがあり,正解が得られないため        採点除外 なし
        午前22 一般問題 問題として適切であるが,受験者レベルでは難しすぎるため 採点除外 なし
        午後50 一般問題 選択肢に正解がないため                 採点除外 なし
 専門基礎分野 午前77 一般問題 複数の正解があるため                  複数正解 1点
 はじめに
 第50回PT・OT国試問題の傾向と分析
 第50回PT・OT国試問題専門基礎分野(臨床医学)
  出題傾向と対策の要点
 第50回PT・OT国試問題専門基礎分野(臨床医学)
  問題分類表
  問題・解答・解説
 参考資料「PT・OT国家試験出題基準平成28年版」(厚生労働省)
 得点力アップのために(本書のページ構成)
第1章 病理学
 1)創傷治癒
 2)組織の病理変化
  (1)浮腫
  (2)萎縮
  (3)褥瘡
 3)炎症
  (1)仲介物質
  (2)急性炎症と慢性炎症
  (3)関節炎
 4)感染
  (1)感染症・院内感染対策・標準予防策
  (2)種々の感染症と感染源
 5)腫瘍
  (1)発生年齢
  (2)良性腫瘍と悪性腫瘍の特徴
  (3)脳腫瘍
 6)病理所見
  (1)眼疾患
 7)病因
  (1)種々の循環障害の原因
  (2)血栓形成疾患
  (3)免疫組織と免疫グロブリン
  (4)ヒトの免疫機構
  (5)病理学的変化と病変部位
  (6)代謝性疾患
  (7)遺伝性疾患
  (8)ビタミン欠乏症
第2章 内科学
 1)循環器疾患
  (1)虚血性心疾患(心筋塞・狭心症)
  (2)心不全
   ・かんたんチェックポイント
    不整脈(異常心電図)(1),(2)
  (3)種々の心疾患
  (4)運動処方
  (5)高血圧と血圧降下薬の作用機序
  (6)末梢循環障害
  (7)脳塞栓の原因
  (8)血友病
 2)代謝性疾患
  (1)糖尿病の合併症
  (2)低血糖・高血糖
 3)呼吸器疾患
  (1)閉塞性換気障害と拘束性換気障害
  (2)様々な呼吸器疾患
  (3)重症急性呼吸器症候群(SARS),チェイン・ストークス呼吸
  (4)呼吸音・スパイログラムによる肺気量測定
 4)消化器疾患
  (1)いろいろな消化器疾患
  (2)腸疾患
 5)肝疾患
  (1)肝炎
  (2)肝硬変
 6)内分泌疾患
   ・かんたんチェックポイント
    内分泌腺の分泌異常(1)〜(4)
  (1)分泌異常と疾患
 7)膠原病
 8)その他の内科疾患
  (1)生活習慣病
  (2)腎不全
 9)治療学
  (1)薬物療法
第3章 整形外科学
 1)骨折
  (1)特徴・整形外科的治療
  (2)部位と受傷機転
  (3)合併症(神経麻痺)
  (4)合併症(拘縮・萎縮・壊死)
  (5)小児の骨折
  (6)高齢者に起こりやすい骨折
  (7)治癒
 2)骨肉腫と骨髄腫
 3)関節リウマチ
  (1)特徴
  (2)診断基準
  (3)関節症状
 4)脊椎
  (1)腰椎椎間板ヘルニア
  (2)柱管狭窄症
 5)変形性関節症
  (1)変形性膝関節症
  (2)変形性股関節症
 6)四肢血行障害
 7)末梢神経障害
  (1)絞扼性神経障害
  (2)分娩麻痺
  (3)尺骨神経麻痺
  (4)手根管症候群
 8)小児整形外科疾患
  (1)骨端症
  (2)先天性骨関節疾患
 9)脊髄損傷
  (1)症状と機能レベル
  (2)ショック期症状
  (3)中心性頸髄損傷
  (4)髄部分損傷
 10)切断
  (1)下肢切断
  (2)幻肢
 11)骨粗鬆症
 12)その他
  (1)膝関節疾患
  (2)骨壊死
  (3)脱臼・靱帯損傷
  (4)肩手症候群(反射性交感神経ジストロフィー)
  (5)スポーツ障害とRICE
  (6)熱傷
  文献
第4章 神経内科学
 1)脳血管障害
  (1)原因
  (2)CT所見
  (3)機能予後
  (4)急性期のリハビリテーション
  (5)視床症候群・脳出血・脳血栓
 2)高次脳機能障害
  (1)運動性失語でも評価できる検査
  (2)Gerstmann症候群
  (3)外傷性脳損傷・脳損傷・びまん性軸索損傷
  (4)大脳半球損傷
 3)変性疾患
  (1)Parkinson病
  (2)不随意運動
  (3)小脳症状
 4)嚥下障害
 5)頭蓋内圧亢進
 6)正常圧水頭症
 7)運動ニューロン疾患
  (1)上位運動ニューロン障害
  (2)筋萎縮性側索硬化症
 8)脱髄性疾患
  (1)多発性硬化症
  (2)Guillain-Barr?e症候群
 9)末梢神経障害
  (1)末梢神経麻痺
  (2)末梢神経損傷
 10)神経筋接合部疾患
  (1)重症筋無力症
  (2)ボツリヌス毒素
 11)筋疾患
  (1)Duchenne型筋ジストロフィー
 12)複合問題
  (1)神経疾患の特徴
  (2)中枢神経の変性疾患・多系統萎縮症
  (3)異常歩行
 13)脳波
 14)髄膜刺激症候
 15)神経疾患の評価
  文献
第5章 臨床心理学
 1)防衛機制
   ・かんたんチェックポイント
    臨床心理学/防衛機制
  (1)転換・行動化・反動形成
  (2)昇華・同一化
  (3)退行・抑圧・回避・理想化
 2)心理療法
   ・かんたんチェックポイント
    臨床心理学/心理療法
  (1)心理学者と研究業績
  (2)心理療法の技法
  (3)面接の基本的技法
  (4)心理状態
  (5)転移・逆転移
 3)心理検査法
   ・かんたんチェックポイント
    臨床心理学/心理検査
  (1)投影法検査(バウムテスト・P-Fスタディ・絵画統覚検査・文章完成法テスト)
  (2)知能検査・人格検査・WAIS
 4)障害受容
 5)学習理論
  (1)学習理論
  (2)記憶(展望記憶・手続き記憶・意味記憶)
 6)心理発達
  (1)発達段階と発達課題
第6章 精神医学
 1)統合失調症
   ・かんたんチェックポイント
    統合失調症・うつ病・躁病・てんかん
    統合失調症(1),(2)
  (1)特徴
  (2)予後に関連する因子
  (3)症状・診断
  (4)思路(思考の流れ)障害
  (5)思考内容の障害(妄想)
  (6)思考体験の障害(離人状態)
  (7)幻覚妄想症状
  (8)陽性・陰性症状
 2)気分(感情)障害
   ・かんたんチェックポイント
    気分(感情)障害/うつ状態
    気分(感情)障害/躁状態
    気分(感情)障害/特徴
    気分(感情)障害/うつ状態と躁状態
  (1)うつ病の対応・治療
  (2)うつ病の症状
  (3)躁病の症状
 3)認知症
   ・かんたんチェックポイント
    認知症
  (1)原因
  (2)検査
  (3)Alzheimer型認知症
  (4)Lewy小体型認知症,Pick病
  (5)Korsakoff症候群
 4)せん妄
 5)依存症
  (1)アルコール依存症
  (2)物質依存
 6)薬物療法
  (1)精神科薬物療法
  (2)薬物の副作用
 7)てんかん
   ・かんたんチェックポイント
    てんかん
  (1)てんかんの発作と特徴
 8)神経症性障害,ストレス関連障害・身体表現性障害
   ・かんたんチェックポイント
    ICD-10における精神障害の分類
    DSM-5における精神障害の分類
  (1)解離性(転換性)障害
  (2)離人状態
  (3)不安障害
  (4)外傷後ストレス障害
  (5)強迫性障害
 9)摂食障害
  (1)神経性無食欲症・神経性大食症
 10)パーソナリティ障害
 11)高齢者の精神・心理障害
 12)青年期の精神・心理障害
 13)小児期の精神・心理障害
 14)精神疾患
  (1)精神疾患と症状
 15)自殺
第7章 リハビリテーション医学
 1)廃用症候群
 2)高齢者・老化現象・老年症候群
 3)小児疾患
  (1)脳性麻痺,GMFCS
 4)クリニカルパス
 5)評価
  (1)ASIAの評価法
  (2)ADLとIADL,バーセル・インデックス
  (3)評価尺度(順序尺度・名義尺度・間隔尺度)
 6)個人情報保護法
 7)EBM,インフォームド・コンセント
 8)院内感染対策・標準予防策・種々の感染症
 9)物理療法
  (1)温熱療法
 10)脳卒中治療ガイドライン
 11)予防医学(一次予防・二次予防・三次予防)
第8章 リハビリテーション概論
 1)国際生活機能分類(ICF)
 2)ユニバーサルデザイン,ノーマライゼーション
 3)バリアフリー新法
   ・かんたんチェックポイント
    補装具および日常生活用具給付品・福祉施設
 4)身体障害者障害程度等級

 参考図書
 自己評価テスト
 X(2)対策実力テスト
 チェック項目リスト(索引)