やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 エネルギー問題,経済問題,外交問題と,わが国の抱える諸問題は枚挙にいとまがないほどであるが,なかでも超高齢社会にかかわる諸課題は地球に住む以上,今後いかなる国においても避けて通れない状況にある.とくに世界でも頭一つ抜きんでて高齢化の先頭を走り続けるわが国が,いかにこの課題をスマートに解決していくか,諸外国から注視されているといっても過言ではない.このままのペースでいけば,2020 年には65 歳以上が全体の人口の約3 割を占めることになる(2013 年は2.5 割).そうした時代背景のなかで誕生したPT(理学療法士)への期待は大きいことはいうまでもない.もちろん,両資格者がかかわる対象者は高齢者だけではないが,人と人とが助け合う社会の最前線で働くことを決意し,資格取得を目指したからには,いろいろなかたちでハンディを抱える人びとのためにも,ぜひ実地や臨床でのトレーニングに熱心に取り組み,人間の心身に関するさまざまな知識を身につけ,大いに活躍してもらいたいと願う.
 それでは,2014 年2 月末に行われた,第49 回「理学療法士・作業療法士国家試験」の概要を振り返りながら,第50 回に向けてどのように学習をすすめていくのがよいか,考えてみよう.

 第49 回国家試験の合格率
     出願者数 受験者数 合格者数 合格率
 PT国試 11,596 11,129 9,315 83.7%
 (うち新卒者) 10,311 9,889 8,924 90.2%

 増加するPT/OTの養成校の数に反し,その学生の数は減少している.その結果,PTは第47 回以降,受験者数は減少し,また国家試験の合格率も減少傾向にある.かつては90%以上の合格率を維持してきたが,ここ数年の合格率はグラフに示したとおり,80%台と低迷している.その理由のひとつには,新卒者の合格率は90%を維持していることからも明らかであるように,一度不合格になった受験者がなかなか合格水準に至らないことにある.各種学校を卒業したにもかかわらず,合格ができずそれでもがんばろうという,いわゆる浪人生の方々にはぜひ本書を繰り返し学習し,合格基準点を目指してもらいたい.
 その合格基準点とはなにか.PT/OTともに,問題は午前・午後各20 問,計40 問の実地問題(配点は3 点,120 点満点)と,午前・午後各80 問,計160 問の一般問題(配点1 点160 点満点)で構成され,その総得点は280 点が満点である.そのうち,168 点以上で,しかも実地問題の得点が43点以上である者だけが合格となる.つまり168 点とれても,実地問題が42 点であれば不合格なのだ.ちなみに,厚生労働省発表による第49 回の合格基準は,採点除外等の問題があったため,表に示したとおりであった.

 第49 回国試の合格基準
     総得点 実地問題
 PT国試 167 点以上/ 277 点 43 点以上/ 120 点

 第49 回国試の採点除外・複数正解問題
 問題分野 問題 問題種別 理由 採点 配点
 PT国試問題 午前28 PT専門一般問題 選択肢が不明確で正解が得られないため 採点除外 なし
       午前31 PT専門一般問題 複数の正解があるため 複数正解 1 点
       午前44 PT専門一般問題 複数の正解があるため 複数正解 1 点
 専門基礎分野(共通)問題 午前53 共通分野一般問題 設問が不十分で正解が得られないため 採点除外 なし
              午前66 共通分野一般問題 複数の正解があるため 複数正解 1 点
              午後52 共通分野一般問題 複数の正解があるため 複数正解 1 点
              午後58 共通分野一般問題 複数の正解があるため 複数正解 1 点
              午後61 共通分野一般問題 複数の正解があるため 複数正解 1 点
              午後90 共通分野一般問題 設問が不適切で正解が得られないため 採点除外 なし
 はじめに
 第49回 PT/OT国試問題の傾向分析
 第49回 出題傾向と対策の要点
 第49回 国家試験理学療法専門分野
  問題分類表
  問題・解答・解説
 第48回 国家試験理学療法専門分野
  問題分類表
  問題・解答・解説
 得点力アップのために(本書のページ構成)
第1章 理学療法の基礎
 1)理学療法概要
  (1)国際生活機能分類(ICF)
   活動と参加,個人因子と環境因子,心身機能と身体構造
  (2)対人コミュニケーション能力
   共感的態度,不適切発言
  (3)理学療法研究
   エビデンス(EBM),感度と特異度,統計用語
  (4)理学療法士及び作業療法士法
   法の制定・目的・免許・国家試験受験資格・業務・罰則
  (5)介護保険法
   介護保険制度と特定疾病
  (6)身体障害者福祉法
   補装具の給付・身体障害者手帳の交付
  (7)リスク管理
   救急処置,感染予防,インフォームド・コンセント
 2)理学療法基礎
  (1)エネルギー消費
   最大酸素摂取量とエネルギー消費量
  (2)エネルギー消費量(運動強度)
   日常生活活動とMETs
  (3)呼吸生理
   肺気量分画
  (4)運動が生体におよぼす影響
   呼吸循環機能
  (5)運動負荷量の指標
   リハビリテーション安全基準・血圧の基準・アンダーソン―土肥の基準
  (6)生体力学の基礎
   身体とてこ
   重力と分力(三角関数を用いた力学計算)
   膝蓋骨(ベクトル)
  (7)運動学的歩行分析
   正常歩行時の筋活動
   正常歩行の関節角度変化
   正常歩行
  (8)歩行分析
   異常歩行
  (9)動作解析
   筋電図ポリグラフ
   運動学的分析
   姿勢調節と異常姿勢
 文献・参考図書
第2章 理学療法評価学
 1)徒手筋力テスト
  (1)段階(筋力)1(Trace)
  過去出題(MMT)◆かんたんチェックポイント・MMT1(筋収縮の有無を触察):触察部位◆
  ◆かんたんチェックポイント・MMT(筋別MMT)一覧◆
  (2)段階(筋力)2(Poor)
  (3)段階(筋力)3(Fair)
  (4)段階(筋力)4(Good),段階(筋力)5(Normal)
  (5)MMTレベル別(段階(筋力)1〜5)/全身の筋の徒手筋力検査法
  (6)MMTレベル別(段階(筋力)4〜1)/測定肢位別検査(背臥位,側臥位,腹臥位,座位)
  過去出題(MMT)◆かんたんチェックポイント・肢位別MMT(腹臥位,背臥位,側臥位,座位,立位)◆
  過去出題(MMT)◆かんたんチェックポイント・筋別肢位別MMT◆
  (7)手指のMMT
  (8)顔面のMMT
  (9)基本概念
  (10)代償運動
  過去出題(MMT)◆かんたんチェックポイント・MMT(代償運動)一覧◆
  (11)分離判別テスト
  (12)小児のMMT実地問題
  過去出題(MMT)◆かんたんチェックポイント・MMT(小児)一覧(1)◆
  過去出題(MMT)◆かんたんチェックポイント・MMT(小児)一覧(2)◆
  過去出題(MMT)◆かんたんチェックポイント・乳幼児,歩行開始時及び就学前の児童の発育の里程標(マイルストーン)◆
 2)関節可動域測定(ROM-T)
  関節可動域(ROM)テスト◆かんたんチェックポイント(上肢・手指・下肢・体幹測定)◆
  (1)基本軸(0°軸) 実地問題
  (2)基本軸(0°軸) 一般問題
  (3)移動軸
  (4)基本原則,参考可動域角度,特殊測定法
 3)形態(身体)測定
  ◆かんたんチェックポイント<四肢長・周径>◆
  (1)四肢長・周径
 4)姿勢観察
  (1)アライメントと重心線
 5)感覚検査
  (1)表在感覚検査・深部感覚検査
 6)反射・反応
  (1)深部腱反射
  (2)病的反射
 7)ブルンストローム・リカバリー・ステージ
  ◆かんたんチェックポイント<Brunnstrom Stage>◆
  (1)下肢のステージ
  (2)上肢ステージ・手指ステージ
  (3)上肢ステージ・手指ステージ・下肢ステージ総合問題
 8)反射・反応の検査
  (1)12脳神経検査
 9)協調性検査
  (1)(脊髄性,小脳性)運動失調に対する種々の検査
 10)認知症検査
  (1)改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDSR)
 11)意識障害
  (1)GCS(Glasgow Coma Scale)・JCS(Japan ComaScale)
 12)呼吸機能検査
  (1)スパイロメトリー,肺音聴診,Hugh-Jonesの呼吸困難度分類,検査器具
 13)神経筋疾患
  (1)神経伝達速度測定
 14)発達障害
  (1)小児発達検査(遠城寺式乳幼児分析的発達検査,改訂日本版デンバー式発達スクリーニング検査)
 15)バイタルチェック
  (1)触診と血圧測定
 16)整形外科検査法
  (1)種々の整形外科テスト法
 17)各種疾患別評価
  (1)評価法
第3章 理学療法治療学(基本介入手段)
 1)運動療法
  (1)筋力増強運動
   筋力増強の生理学
   筋力増強訓練(強化できる筋)
  (2)他動運動
   他動運動の目的,CPM(持続的他動運動)装置の目的
  (3)関節可動域訓練
  (4)伸張訓練
   伸張法(実地問題)
   伸張法(一般問題)
  (5)神経筋促通手技(PNF)
  ◆かんたんチェックポイント/神経筋促通手技(PNF)◆
   PNFパターン理論
   PNF上肢パターン
   PNF下肢パターン
   PNF体幹パターン
   上肢パターン
   下肢パターン
   体幹パターン(下部体幹パターン・上部体幹パターン)
  (6)神経生理学的アプローチ
   促通手技とその原理・目的
  (7)全身調整運動(コンディショニング)目的・効果
  (8)疾患別運動療法
   協調性回復訓練,転倒予防
   術後運動療法
   コッドマン体操
   ウイリアムス体操
   疾患と治療体操
  (9)介入戦略
   理学療法介入法・徒手抵抗誘導法
  (10)運動の基礎
   運動学習
 2)物理療法
  (1)温熱療法
   温熱療法の生理作用と効果
   温熱療法の熱の伝達様式
   超音波療法の物理的作用と生理的反応
   超音波療法の使用方法
   超音波療法の適応
   超音波療法の症例問題
   極超短波療法の目的・適応・禁忌
   極超短波療法の入射角と照射量
   パラフィン浴
  (2)低周波療法
  ◆かんたんチェックポイント/低周波刺激の運動点(モーターポイント)◆
   電気刺激部位・運動点(モーターポイント)
   強さ時間(SD)曲線とクロナキシー(時値)
   EMGバイオフィードバック訓練
   治療的電気刺激法(TES)―矩形波の周波数
   治療的電気刺激法(TES)―電気刺激理論
   治療的電気刺激法(TES)―低周波電気刺激の操作方法
   経皮的電気刺激法(TENS)
   機能的電気刺激法(FES)
  (3)水治療法
   水治療法の生理学的反応と利点
   全身浴,プール訓練,交代浴
   全身浴の水深と体重免荷率
  (4)牽引療法
   頸椎牽引
   腰椎(介達)牽引(骨盤牽引)
  (5)その他の物理療法
   寒冷療法,紫外線療法
  (6)物理療法総合
   疾患別物理療法(物理療法の適応と特性)
 3)日常生活活動と生活環境論
  (1)ADLの概念と分類
   手段的ADL・基本的ADL・生活関連動作
  (2)ADL評価
   FIM
   Barthel index
   種々の評価法(総合)
  (3)リハ関連機器
   車椅子の種類と名称と採寸
   車椅子の処方と付属品
   自助具・補装具・住宅環境整備の疾患別適応
  (4)生活環境論
   環境整備・住宅改修・自動車改造
  (5)車椅子介助法
   段差越え・斜面移動・階段
  (6)疾患別ADL指導
   総合問題
 4)補装具療法
  (1)切断
   断端計測
   下肢切断術後の断端管理(ソフトドレッシングとリジッドドレッシング)
   切断の部位と原因
  (2)義足の部品
   大腿義足ソケット
   下腿義足ソケット
   膝継手
  (3)義足の適合判定
   股義足
   大腿義足
  (4)異常歩行
   大腿義足の異常歩行の原因(実地問題)
   大腿義足の異常歩行の原因(一般問題)
   大腿義足の異常歩行に対する対策
   下腿義足の異常歩行の原因
  (5)大腿義足装着でのADL動作訓練
  (6)切断術後の理学療法
  (7)大腿義足
   歩行分析(床反力による分析)
  (8)義手
   義手の特徴
  (9)下肢装具
  ◆かんたんチェックポイント◆装具の一般的知識
   下肢装具の部品(膝継手,足継手,あぶみ)と素材
   下肢装具の適合判定基準
   短下肢装具
  ◆かんたんチェックポイント◆足部・膝の変形,靴の基本構造,靴底の補正
   靴の補正
   靴の補正と適応疾患
   装具と適応疾患(総合問題)
  (10)体幹装具
   頸椎装具および胸腰椎装具
  (11)上肢装具
   スプリント
   上肢装具と適応疾患
  (12)総合
   装具と適応疾患
 文献・参考図書

 自己評価テスト
 X(2)対策実力テスト
 索引