やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
難易度が高くても,本書を上手に利用すれば合格は十分可能!
 平成21年度,第45回理学療法士・作業療法士国家試験の受験者は,作業療法士(以下OT)6,469名,理学療法士(以下PT)9,835名であり,昨年度(第44回)と比較するとOTは約200名減少したが,PTは約650名増加した.また合格者数はOTが5,317名,PTが9,112名であった.この合格者数について第44回と比較すると,第45回の合格者数はOTは約90名減少したが,PTで約800名増加した.国家試験(以下国試)合格率は,OTは82.2%,PTは92.6%であり,第44回と比較してOTが1.2%,PTが1.5%上昇した.
 OT・PT共に第43回の合格率は過去15年間で最低の合格率であった.平成17年度以降の合格率は低下傾向であったものの90%台を維持していた.それが第43回ではOTは70%台,PTは80%台にまで劇的に低下した.第43回合格発表に際し,厚生労働省は『「受験者レベルには難しすぎる」ので調整した』という注釈をつけた.第43回では『X(2)タイプ(2つ選べ):五者二択』が前年度に比較して激増し,質問内容も臨床経験を要する問題が多数出題された.この合格率の低さを見て厚生労働省は次年度の出題内容を吟味することになったようである.また全国のOT・PT養成校では「今までのような国試対策では100%は無理だ」と考えるようになり,今まで以上に国試対策を行う結果になった.受験者は「難度の高い問題でも解ける」ことを目指し,厚生労働省は「受験生レベルに適切な問題」を吟味することを目指した結果,第44回の「合格率の上昇,合格者数の増加」につながった.第44回の厚生労働省の出題問題には「不適切問題,削除問題」の指摘は1問もなかった.また第44回では『X(2)タイプ』は第43回より減少し,OTは59問/200問,PTは57問/200問になった.
 その上で今回の第45回を分析すると,第44回の傾向を踏襲していることが分かる.まず『X(2)タイプ』は第44回とあまり変わらず,OTは50問/200問,PTは56問/200問であり,OTに関しては第44回より減少している.また設問文が『誤っているのはどれか』型が減少し,『正しいのはどれか』型が増加した.OTは約90%,PTは約82.5%がこの『正しいのはどれか』型の設問である.この型の設問文では解答するときに答えを導きやすい.以上のことから第44回に比較すると第45回の難易度はやや下がっているといえる.
 今回(第45回),過去の国家試験と異なる点が一つあった.それは問題内容構成の出題形式が変化したことである.第44回までは,午前100問が「PTまたはOTの専門分野」,午後100問が「PT・OT共通の専門基礎分野(基礎医学・臨床医学)」という午前午後で分割した分野が出題されていた.しかし第45回では,「午前100問,午後100問のそれぞれの中にPTまたはOTの専門分野と専門基礎分野(基礎医学・臨床医学)の全てが含まれる」ことになった.この出題形式の変更は厚生労働省から全国の養成校に通達が届いており,各養成校は事前準備を行っていたので,これに関してはあまり困惑することはなかったように思われる.総合的に見ると第45回は第44回と難易度はあまり変わらず,むしろやややさしくなっているように思われる.
 単年度で比較すると第45回は第44回よりも若干やさしくなってはいるが,4〜5年前と比較すると難易度は明らかに高くなっている.問題内容は臨床的になり,症例に関する「患者動作の実写真」「X線画像」「MRI画像」「CT画像」「実測異常心電図」などが数多く出題され,単純な机上学習では解答できないような難易度の高さである.この傾向は今後も続くとみられ,ますます合格点獲得が難しくなるだろう.しかし本書を十分に活用し受験対策をしっかりと立てて,着実に一歩一歩学習し続ければ必ず合格へ導くことができると思っている.なぜならば本書は過去約20年分の国試問題を細かく分析し,今後の出題傾向を探りながら学習できるように,参考書兼問題集として構成しているからだ.国家試験合格のために,是非,本書を上手に活用し学習していただきたい.
合格を確実にするための本書の特徴
 本書は,国家試験に対してしっかりと対策を立て,また基礎から臨床まで十分に学習し,確実に合格を手にしたい受験者のために作成した.本書の特徴を以下にあげると,
 (1)国試の過去問題〔第36回から第45回までの10年分(1,000問)〕を分析し,「出題傾向と対策の要点」を円グラフや棒グラフで表示し,「付録」(投げ込み)にまとめて示した.
 (2)各科目をさらに小項目に細分類し,学習項目を絞り込んだ.
 (3)分野ごとに過去10年間の「出題傾向分析表」を提示し頻出問題に印を付けた.
 (4)専門分野における「実地問題=高得点(3点)」にはマークを提示した.
 (5)最重要問題番号を1,重要問題番号を2で提示した.
 (6)基本的に1分野1ページ終了形式(実地問題,図示問題等はイラストが多いため2ページ形式もある)を基本とした.
 (7)問題直下の「必修ポイント」欄には「暗記表」を掲載し最低限暗記しなければならない内容を提示した.
 (8)同じく必修ポイントには数多くの「写真やイラスト」を掲載し,「視覚学習」「イメージ学習」方式を採用した.
 (9)図表中の「絶対覚えるべき項目」は赤字で提示した.
 (10)問題の右側には「解答記入」欄を設定し,設問文章ごとに○(正しい)や×(誤っている)を記入できるようにした.
 (11)ページ最下段に「解答」欄を提示し,いつでも正解を確認できるようにした.
 (12)参考資料として「かんたんチェックポイント」ページを設け,応用力の育成を目指した.
 (13)巻末に「自己評価テスト」100問を付け加え,実力養成を図れるようにした.
 (14)「付録」として「第43回〜第45回国試問題」「国試合格率(第30回〜第45回)」などを加え,さらに実力養成を図ることができるようにした.
読者全員(100%)合格を祈念!
 国家試験を合格するためには膨大な出題範囲をできる限り深く確実に学習しなければならないため,受験生は分野別にたくさんの参考書や問題集を揃えなければならないのが現状である.それをできるだけ少ない時間で効率よく,しかも国家試験の内容に沿った深さまで学習しなければならない.そのためには国家試験内容に的を絞った参考書および問題集が必要である.本書は限られた時間のなかで本気で学習したいと考えている国家試験受験者のために,参考書と問題集を一冊にまとめた国家試験受験対策の最適書として作成した.受験生諸氏には,上述欄で分析した点を十分に把握して,過去問題をそのまま暗記するのではなく,設問中の1文1文に「○あるいは×」を付けながら,「この文章は正しい」「この文章のここが誤っている」を確認しながら学習を進めていただきたい.来る2月の国家試験に向けて,受験生諸氏が本書をしっかりと活用して有意義に学習されることを願っている.
 書籍編集者一同,受験生諸氏全員(100%)の合格を心よりお祈り申し上げます!!
 はじめに
 第45回PT・OT国試問題の概要
 第45回作業療法国家試験の問題分類と配点
 第45回出題傾向と対策の要点
 合格のための学習テクニック
 得点力アップのために(本書のページ構成)
第1章 精神障害
 1)精神障害総論
  (1)抗精神病薬・抗うつ薬の副作用
  (2)作業療法の意義・目的,就労援助
  (3)活動種目に関する原則・作業種目の選択
  (4)精神科作業療法の適用・適応
  (5)種々の精神疾患に対する作業活動
  (6)精神科作業療法中の作業療法士の対応
  (7)精神科作業療法における観察と評価
  (8)精神科作業療法の記録と報告
 2)精神科集団作業療法
  (1)集団(グループ)活動と小集団療法(小集団作業療法)
  (2)精神科デイケアの歴史・特徴
  (3)精神科デイケアの対象・プログラム
  (4)作業療法士やスタッフの対応
 3)統合失調症
  (1)統合失調症の症状
  (2)統合失調症の作業場面での行動特徴
  (3)幻聴・妄想の影響
  (4)統合失調症に対する面接・評価
  (5)統合失調症の回復過程別作業療法の目的・留意点
  (6)高齢患者,長期入院患者の作業療法
  (7)就労する意義と知的障害者作業療法との違い
  (8)妄想型(思考障害),自閉,亜昏迷に対する作業療法
  (9)作業療法士の態度・対応
  (10)症例問題(1)〔実地問題(単独)〕
  (11)症例問題(2)〔実地問題(複数連問)〕
 4)気分障害(感情障害)
  (1)うつ病
   a.行動特徴・症状
   b.作業療法の治療計画,留意点,作業適用,作業種目
   c.うつ病回復期
   d.症例問題
   e.初老期うつ病・老年期うつ病の作業療法
   f.老年期うつ病の症例問題
  (2)躁病
   a.症状・行動特徴・作業場面でみられる行動
   b.作業療法の目標,留意点,対応
   c.症例問題
  (3)双極性感情障害
   a.症状・特徴
   b.症例問題
 5)依存症
  (1)アルコール依存症
   a.症状・特徴
   b.作業療法の目的,目標,評価,プログラム
   c.作業療法士の対応・関わり方
   d.症例問題
  (2)薬物依存症
 6)不安障害
   かんたんチェックポイント
    不安障害と神経症の分類
  (1)不安障害の症状
  (2)不安障害の作業
  (3)不安障害(症例問題)
  (4)パニック障害
  (5)身体表現性障害
  (6)強迫性障害
  (7)不潔恐怖症(特徴・症例問題)
  (8)先端恐怖症(症状・症例問題)
  (9)解離性障害・転換性障害(症状,留意点)
  (10)転換性障害(作業療法・症例問題)
 7)てんかん
  (1)てんかん発作
  (2)作業療法評価
  (3)作業療法(留意点,注意事項)
  (4)症例問題
 8)人格障害
  (1)人格障害の特徴
  (2)境界型人格障害の作業療法(目的・適応・留意点・作業療法士の対応)
  (3)境界型人格障害(症例問題)
 9)認知症
  (1)認知症の症状・特徴
  (2)認知症に対する作業療法評価
  (3)認知症に対する作業療法の展開
  (4)認知症に対する作業活動・作業種目
  (5)作業療法の面接
  (6)アルツハイマー型認知症(症例問題)
  (7)脳血管性認知症(症例問題)
 10)青年期精神障害
  (1)神経性無食欲症(摂食障害,神経性食思不振症)の症状・特徴・留意点
  (2)神経性無食欲症(摂食障害,神経性食思不振症)の作業療法
  (3)神経性無食欲症(摂食障害・神経性食思不振症)症例問題
  (4)自己臭(自己臭恐怖)症例問題
 11)器質性精神障害
  (1)評価・作業活動
  (2)症例問題
   文献(引用文献,参考図書)
第2章 発達障害
   かんたんチェックポイント
    小児の発達(Denver発達スクリーニング)
 1)正常児の発達
  (1)4か月児
  (2)6か月児
   かんたんチェックポイント
    小児の反射・反応表(1)
    小児の反射・反応表(2)
    小児の手の発達
  (3)9か月〜12か月児
  (4)2歳児,3歳児
  (5)手指動作
  (6)総合問題
   かんたんチェックポイント
    (1)脊髄に中枢がある反射・反応
    (2)脳幹に中枢がある反射・反応
    (3)中脳に中枢がある反射・反応
    (4)大脳皮質に中枢がある反射・反応
  (7)小児の反射・反応
  (8)発達検査
  (9)遠城寺式乳幼児分析的発達検査
 2)脳性麻痺
  (1)姿勢反射(緊張性迷路反射)
  (2)痙直型四肢麻痺
  (3)痙直型両麻痺
  (4)痙直型片麻痺
  (5)アテトーゼ型四肢麻痺
  (6)低緊張性脳性麻痺
  (7)総合問題
 3)ダウン症/作業療法
 4)小脳低形成症候群/症例問題
 5)知的障害児(精神遅滞児)
  (1)症状と特徴
  (2)作業適用・種目・目標
  (3)作業療法評価
  (4)症例問題
 6)重症心身障害児/ADL指導・作業療法
 7)自閉症児
  (1)自閉症児の行動特性
  (2)評価,作業療法,就労支援
  (3)症例問題
 8)広汎性発達障害・アスペルガー症候群
  (1)広汎性発達障害の症状と作業療法
  (2)広汎性発達障害(症例問題)
  (3)アスペルガー症候群(特徴・症例問題)
 9)学習障害児(LD)/作業療法の目的・症例問題
 10)多動性障害〔注意欠陥多動性障害(ADHD)〕
  (1)症状および行動の特徴
  (2)多動性障害児の症例問題
 11)情緒障害児(ED)/行動特徴・作業種目
 12)障害児療育/感覚統合的アプローチ・プレイセラピー
 13)不登校(登校拒否)/症例問題・作業療法
  文献(引用文献,参考図書)
  自己評価テスト(チェックシート,解答シート)
  X(2)対策実力テスト(チェックシート,解答シート)
  索引
  付録
   「第43〜45回OT国家試験問題」(作業療法専門分野障害別編II)
   「国家試験合格率」(第30回〜第45回)