やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第2版の序
 本書の初版を出版して9年近くが経過する.その間に障害児医療の分野には多くの進展がみられている.まず第一は,小児の後天性脳損傷におけるリハビリテーションの必要性が知られるようになり,特に高次脳機能障害に対する知識の普及が求められていることである.小児の高次脳機能障害は評価もその後の支援も容易ではないが,高次脳機能障害をもつ小児は全国で7万人程度いると思われるため,地域でそのリハビリテーションが完結できることが必須である.第二の進展は,米国精神医学会による『精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5)』の発刊である.今回の改訂では,小児期に頻回に診断される疾患としての神経発達症群のなかで,自閉性障害・アスペルガー障害・広汎性発達障害を自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害と1つにまとめたことなど,比較的大きな改訂が行われている.それらの進展をふまえる形で本書の改訂を行ったが,テキストとして充実させるために,「低酸素性脳症」「脳腫瘍」「整形外科疾患」の章を加えた.
 後天性脳損傷に対するリハビリテーション,特に高次脳機能障害に対するリハビリテーションを希望して当院を受診する小児は年々増加しており,その居住地域は全国に及ぶ.元来,リハビリテーションは家庭生活を行うなか,地域で継続していくべきものである.筆者の願いは,後天性脳損傷を負った小児に地域でリハビリテーションが行われることである.そのために本書は後天性脳損傷の領域に力を入れて書かれている.本書が少しでも役に立つことを願っている.
 2015年4月 栗原まな


第1版の序
 筆者は,はじめに一般小児科と正常な小児の発達を学び,ついで障害児医療の分野に入っていった小児科医である.神奈川県総合リハビリテーションセンターに勤務するようになって18年目になる.ここで学ぶなかからリハビリテーション専門医としての資格をとり,この間に学んだことを書き綴ったのが本書である.したがって筆者らがほとんど扱うことのない整形外科疾患や外科疾患などについてはあまり触れていないが,小児のリハビリテーションの分野では非常に多くみられる発達障害(脳性麻痺,知的障害,広汎性発達障害,注意欠陥/多動性障害など)については比較的詳細に記載した.
 また総合リハビリテーションセンターとしての特質を生かし,筆者らは後天性脳損傷のリハビリテーションに力を入れていることから,脳外傷,脳炎・脳症などについても詳細に記載した.
 小児のリハビリテーションにはいくつかの特徴がある.(1)小児は成人を小さくしたものではないということ,(2)小児のリハビリテーションは,成長と発達を念頭において進めていくべきであるということ,(3)小児のリハビリテーションには家族のかかわり,特に母親のかかわりが欠かせないということなどである.
 本書は,小児のリハビリテーションにかかわっていくコメディカルスタッフを念頭において書いたものであるが,若い医師や看護師などにも読んでいただけたら嬉しい.
 本書を書くにあたりご協力くださった医歯薬出版編集部諸氏に感謝したい.
 2006年8月 栗原まな
 第2版の序
 第1版の序
小児リハビリテーション 医学総論
I 知識
 1.小児リハビリテーション概論
  (1)小児のリハビリテーションの特徴
  (2)国際生活機能分類:ICF
  (3)チームアプローチの有効性
 2.小児の成長
  (1)成長とは
  (2)新生児期および幼児期
  (3)学童期
  (4)青少年期(思春期)
 3.小児の発達
  運動発達
   (1)運動発達の原則
   (2)乳児の運動発達
   (3)幼児の運動発達
  発達と反射
   (1)脳の成熟と反射
   (2)運動発達と反射
  知的発達
   (1)小児の知的発達
   (2)乳児の知的発達
   (3)幼児の知的発達
  脳障害のハイリスク因子
   (1)ハイリスク因子を把握する意義
   (2)乳幼児健康診査でのチェック項目
   (3)ハイリスク因子
II 診断・評価
 1.意識障害
  (1)所見のとり方
  (2)分類
  (3)鑑別診断
 2.運動障害
  (1)関節可動域測定
  (2)徒手筋力検査
  (3)運動障害
 3.感覚障害
  (1)感覚とは
  (2)体性感覚の種類
  (3)感覚神経の経路
  (4)診断
 4.歩行障害
  歩行障害の診断・評価
   (1)歩行の基礎知識
   (2)分類
   (3)診断
  歩行分析
 5.評価尺度
  (1)評価尺度とは
  (2)FIM,Wee FIM
  (3)バーセル・インデックス
  (4)PEDI
  (5)GMFM
 6.心理
  (1)小児の心理評価
  (2)発達検査
  (3)全般的知的機能
  (4)構成力・視覚認知機能
  (5)注意機能
  (6)記憶機能
  (7)コミュニケーション能力
  (8)社会性
III 治療
 1.全身管理
  (1)小児リハビリテーションにおける全身管理
  (2)健康状態管理
  (3)合併症の管理
  (4)急変時の対応
  (5)栄養管理
 2.障害評価に基づく治療計画
  (1)予後予測とゴール設定
  (2)目標指向的アプローチ
  (3)目標指向的ADL訓練
  (4)クリニカルパス
 3.理学療法
  (1)理学療法とは
  (2)運動療法
  (3)関節可動域の維持・改善
  (4)筋力の維持・増強
  (5)持久力の増強
  (6)協調性の改善
  (7)運動発達の促進
  (8)物理療法
 4.作業療法
  (1)作業療法とは
  (2)作業療法士が行う検査
  (3)機能的作業療法
  (4)ADL訓練
  (5)感覚統合療法
 5.心理療法
  (1)小児に対する心理療法
  (2)認知障害に対する心理療法
  (3)心理面からの支援
 6.補装具,訓練・福祉機器
  補装具
   (1)補装具とは
   (2)義肢
   (3)装具
   (4)杖・歩行装具
   (5)車椅子
   (6)座位保持装置
  訓練・福祉機器
   (1)自助具
   (2)環境制御装置
   (3)介助用具
 7.マネジメント
  (1)小児リハビリテーションを進めるポイント
  (2)チームアプローチ
  (3)地域連携
  (4)就学支援
  (5)障害受容への支援
小児リハビリテーション 医学各論
I 障害
 1.言語障害
  (1)言語とは
  (2)言語障害の分類と原因
  (3)言語検査
  (4)言語障害に対する支援
  (5)聴覚障害
  (6)脳性麻痺
  (7)言語発達の異常
  (8)失語症
  (9)構音障害
  (10)吃音
  (11)拡大・代替コミュニケーション
 2.高次脳機能障害
  (1)高次脳機能障害とは
  (2)小児の高次脳機能障害の特徴
  (3)小児の高次脳機能障害の原因
  (4)神経発達障害などとの関連
  (5)小児の高次脳機能障害の検査・評価
  (6)小児の高次脳機能障害のリハビリテーション
   [症例]
 3.摂食嚥下障害
  (1)小児の摂食嚥下障害
  (2)正常な摂食嚥下機能
  (3)摂食嚥下障害の診断
  (4)小児に特徴的な摂食嚥下障害とその対応
  (5)経口摂取が困難な場合の対応
 4.排泄障害
  (1)小児の排泄障害
  (2)神経因性膀胱
  (3)神経因性直腸障害
 5.呼吸機能障害
  (1)呼吸機能とは
  (2)呼吸機能障害
  (3)小児の呼吸機能障害
  (4)呼吸リハビリテーション
 6.廃用症候群
  (1)廃用症候群とは
  (2)症状
II 疾患
 1.脳性麻痺
  脳性麻痺総論
   (1)有病率
   (2)原因と発生頻度
   (3)分類
   (4)評価
  リハビリテーション
   (1)診断
   (2)医学的治療
   (3)療育
   (4)運動発達予後の予測
  産科医療補償制度
   (1)産科医療補償制度(厚生労働省)
   (2)補償の水準・掛金
   (3)原因分析・再発防止
    [症例]
 2.神経発達症群/神経発達障害群
  (1)神経発達症群/神経発達障害群とは
  (2)発生頻度
  (3)診断
 3.知的能力障害(知的発達症)
  (1)知的能力障害(知的発達症)とは
  (2)原因と発生頻度
  (3)診断
  (4)治療
  (5)予防
   [症例]
 4.自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害
  (1)自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害とは
  (2)原因と発生頻度
  (3)診断
  (4)治療
  (5)強度行動障害
   [症例]
 5.注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害
  (1)注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害とは
  (2)原因と発生頻度
  (3)診断
  (4)治療
   [症例]
 6.限局性学習症/限局性学習障害
  (1)限局性学習症/限局性学習障害とは
  (2)原因と発生頻度
  (3)診断
  (4)症状
  (5)リハビリテーションの実際
   [症例]
 7.脳血管障害
  脳血管障害総論
   (1)小児の脳血管障害の特徴
   (2)脳出血
   (3)脳梗塞
   (4)診断と評価
  リハビリテーション
   (1)リハビリテーションの実際
    [症例]
  コラム:後天性脳損傷の後遺障害
 8.脳外傷
  小児脳外傷総論
   (1)脳外傷とは
   (2)分類
   (3)臨床像と予後
   (4)小児脳外傷の特徴
  リハビリテーション
   (1)対象の内訳
   (2)後遺症の内訳
   (3)リハビリテーションの実際
  虐待による脳外傷
   (1)虐待による脳外傷の特徴
   (2)虐待発生のメカニズム
    [症例]
 9.急性脳炎・脳症
  急性脳炎・脳症総論
   (1)急性脳炎とは
   (2)急性脳症とは
   (3)症状
   (4)診断
   (5)治療
  リハビリテーション
   (1)対象の内訳
   (2)後遺症の内訳
   (3)リハビリテーションの実際
   (4)復園・復学への支援
    [症例]
 10.低酸素性脳症
  小児低酸素性脳症総論
   (1)低酸素性脳症とは
   (2)原因
   (3)治療
  リハビリテーション
   (1)対象の内訳
   (2)後遺症の内訳
   (3)リハビリテーションの実際
 11.二分脊椎
  (1)原因と発生頻度
  (2)病態と分類
  (3)症状
  (4)チーム医療の必要性
  (5)リハビリテーションの実際
   [症例]
 12.水頭症
  (1)水頭症とは
  (2)原因
  (3)分類
  (4)症状
  (5)検査
  (6)治療
  (7)リハビリテーションの実際
  (8)予後
   [症例]
 13.脳腫瘍
  小児脳腫瘍総論
   (1)分類と発生頻度
   (2)臨床像
   (3)検査
   (4)治療
   (5)小児脳腫瘍の特徴
  リハビリテーション
   (1)対象の内訳
   (2)後遺症の内訳
   (3)リハビリテーションの実際
    [症例]
 14.脊髄損傷
  (1)小児の脊髄損傷
  (2)原因と発生頻度
  (3)障害度分類
  (4)予防
  (5)検査
  (6)合併症・随伴症状
  (7)急性期の治療
  (8)リハビリテーションの実際
   [症例]
 15.ギラン・バレー症候群
  (1)ギラン・バレー症候群とは
  (2)原因
  (3)診断
  (4)検査所見
  (5)治療
  (6)予後
  (7)リハビリテーションの実際
   [症例]
 16.神経・筋疾患
  (1)神経・筋疾患へのアプローチ
  (2)症状
  (3)検査所見
  (4)代表的疾患
  (5)治療・リハビリテーション
   [症例]
 17.整形外科疾患
  (1)先天性内反足
  (2)先天性股関節脱臼
  (3)小児の脊柱側弯症
 18.重症心身障害
  (1)重症心身障害とは
  (2)原因と発生頻度
  (3)重症心身障害の医療的概観
  (4)合併症
  (5)重症心身障害児者の死亡原因
  (6)介護者の負担
  (7)成人重症心身障害者へのアプローチ
  (8)リハビリテーションの実際
   [症例]
 19.新生児疾患
  新生児学総論
   (1)新生児とは
   (2)新生児のケア
   (3)新生児特有の疾患
  新生児医療と医の倫理
  リハビリテーション
   [症例]
 20.てんかん
  (1)てんかんとは
  (2)原因と発生頻度
  (3)分類
  (4)診断
  (5)治療
  (6)発作のケア
  (7)リハビリテーションの実際
   [症例]

 索引