やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社


 本書は,『Therapeutic Exercise Notes』の訳本で,運動療法と徒手療法の介入に関して,脊椎,肩関節,肘関節,手関節,手指,股関節,膝関節,足関節,足趾の身体領域別に,余すところなくそのエッセンスが網羅されている.
 その内容は,有酸素性コンディショニングと再調整,筋パフォーマンス運動,関節モビライゼーション・関節マニピュレーション・運動併用モビライゼーション・ストレッチング手技,神経筋制御・協調性・抑制・促通手技・姿勢意識トレーニング,姿勢制御・ボディメカニクス(身体力学)・安定化運動,バランス運動・敏捷性トレーニング,リラクセーション手技,課題別機能トレーニングなど多岐にわたっており,これらの内容を身体領域別に簡潔明瞭にまとめあげ,これほどまでに広く充実した書籍は他に類をみない.
 さらには,身体領域別に選別された整形外科症状と,それに対する保存療法と手術後の簡潔な運動指針も充実しており,セラピストの臨床上の悩みをひもとくガイドとしても参考になる内容ばかりである.
 本書は,同著者による欧米の有名な理学療法の教科書である『Therapeutic Exercise-Foundations and Techniques第5版』を元にダイジェスト版として再構成されているだけでなく,さらにEBMに基づく新たな内容が多く加わり,ストレッチング,関節モビライゼーション,筋力トレーニング,プライオメトリック運動など300枚以上の写真が掲載されており,ビジュアルポケットガイドとして読者の理解を助けるに十分な構成となっている.
 本書は,学生の参考書としても,セラピスト自身の知識と技術を整理するためにも大いに活用でき,セラピスト自身の実力を発展させるガイドとして最適である.さらには臨床場面においても常に手の届く所に置いておくことで,セラピストの虎の巻として活用できること間違いなしの逸品といえる.運動療法と徒手療法の発展のためにも多くの読者に本書を活用していただければ幸いである.
 2013年9月
 竹井 仁
 訳者序文

序章
 ・運動療法の介入
 ・関節可動域と機能的可動性の改善,維持に関する治療順序の提起
 ・ストレッチング(Stretching)
 ・関節モビライゼーション(Joint Mobilization)/関節マニピュレーション(Joint Manipulation)
 ・神経組織モビライゼーション(Neural Tissue Mobilization)
 ・抵抗運動(Resistance Exercise)
 ・有酸素性運動(Aerobic Exercise)
 ・結合組織の治癒およびリハビリテーション用語の比較
 ・結合組織損傷および関節損傷:一般的な管理指針
 ・慢性炎症期/蓄積外傷症候群:一般的な管理指針
 ・関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)
 ・変形性関節症(osteoarthritis:OA)
 ・関節保護のための指針
 ・繊維性筋痛症候群(fibromyalgia:FM)と筋筋膜性疼痛症候群(myofascial pain syndrome:MPS)
1章 脊椎
 ・脊椎のリハビリテーションの指針
 ・ROM改善の運動
 ・筋パフォーマンス(Muscle Performance)改善のための運動
 ・管理指針
 ・一般的な管理指針:回復段階に基づく頸椎または腰椎の問題
 ・管理指針:特定の診断カテゴリー
2章 肩関節
 ・肩関節のリハビリテーションの指針
 ・ROM増大のための運動
 ・筋パフォーマンス改善のための運動
 ・肩関節炎および五十肩
 ・肩関節炎:非観血的管理
 ・人工肩関節全置換術(total shoulder arthroplasty:TSA):術後管理(手術前に著しい回旋筋腱板損傷がない)
 ・肩関節形成術後のポジショニング急性期/最大の保護期
 ・肩関節形成術後の注意急性期/最大の保護期
 ・肩関節痛症候群:軟部組織インピンジメント,回旋筋腱板疾患,肩関節不安定症
 ・肩関節痛症候群:非観血的管理
 ・関節鏡視下の肩峰下除圧術:術後管理(一次性インピンジメントおよび無傷の回旋筋腱板)
 ・回旋筋腱板完全断裂の修復:術後管理と注意事項
 ・肩関節安定化手術後のリハビリテーションの進行に影響する因子
 ・反復性肩関節不安定症/脱臼に対する前方関節包再建術:術後管理および注意事項
 ・種類別関節安定化術後の注意事項
 ・胸郭出口症候群(thoracic outlet syndrome:TOS)
3章 肘関節/橈骨手根関節(手関節)/手部
 ・肘関節,前腕,手関節および手部のリハビリテーションの指針
 ・ROM増大のための運動
 ・筋パフォーマンス改善のための運動
 ・肘関節炎:非観血的管理
 ・「押し込まれた」肘関節の管理
 ・「引っ張られた」肘関節の管理
 ・人工肘関節全置換術(total elbow arthroplasty:TEA):術後管理
 ・人工肘関節全置換術(TEA):術後注意事項
 ・上腕骨外側上顆炎(テニス肘):非観血的管理
 ・上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘):非観血的管理
 ・関節保護のための指針:橈骨手根関節(手関節)と手部の関節炎
 ・橈骨手根関節形成術:術後の注意事項
 ・関節リウマチ(RA)の手の伸筋腱手術:術後の注意事項
 ・ボタン穴変形の矯正術:術後の運動と注意事項
 ・スワンネック変形の矯正術:術後の運動と注意事項
 ・母指の手根中手関節形成術:術後の注意事項
 ・橈骨手根関節(手関節)と手部の反復性外傷症候群
 ・手根管症候群:非観血的管理
 ・手根管解離術:術後管理
 ・複合性局所疼痛症候群(Complex Regional Pain Syndrome:CRPS)
 ・CRPS type I(RSD)の管理
4章 股関節
 ・股関節のリハビリテーションの指針
 ・ROM増大のための運動
 ・筋パフォーマンス改善のための運動
 ・股関節関節炎
 ・股関節関節炎:非観血的管理
 ・人工股関節全置換術(total hip arthroplasty:THA):術後管理(一次全置換術,標準的/従来のTHA)
 ・術後早期の運動およびADLの注意事項:人工股関節全置換術(THA)
 ・術後早期の荷重の注意事項:人工股関節全置換術(THA)
 ・股関節の関節鏡視下法−術後の考慮事項
 ・股関節骨折の観血的整復術/内固定法エクササイズと歩行に関する術後の考慮事項
 ・股関節骨折の整復に対する内固定法の失敗で起こりうる徴候と症状
 ・股関節骨折の観血的整復術/内固定法(転子間および転子下):術後管理
 ・疼痛股関節症候群:筋インバランスおよび機能障害
 ・疼痛股関節症候群:非観血的管理
5章 膝関節
 ・膝関節のリハビリテーションの指針
 ・ROM増大のための運動
 ・筋パフォーマンス改善のための運動
 ・膝関節関節炎
 ・膝関節関節炎:非観血的管理
 ・膝関節の関節軟骨修復術:術後の考慮事項と注意事項
 ・人工膝関節全置換術(total knee arthroplasty:TKA):術後管理(一次全置換術,標準的/従来のアプローチ)
 ・人工膝関節全置換術(TKA)後の注意事項術後早期
 ・人工膝関節全置換術(TKA)後の推奨身体活動
 ・膝蓋大腿関節機能障害
 ・膝蓋大腿関節機能障害:非観血的管理
 ・膝蓋大腿関節機能障害に対する関節鏡視下外側膝蓋支帯解離術:術後管理
 ・伸展機構の再構築(近位または遠位):術後の指針と注意事項
 ・半月板修復術:術後の考慮事項と注意事項
 ・膝関節の靱帯損傷
 ・靱帯損傷:非観血的管理
 ・関節鏡視下の前十字靱帯(ACL)再建術(骨−膝蓋腱−骨自家移植片):術後管理
 ・前十字靱帯(ACL)再建術:術後運動の注意事項
 ・要求度の高い活動への復帰基準前十字靱帯(ACL)再建術後
 ・後十字靱帯(PCL)再建術:術後の運動指針と注意事項
6章 下腿/距腿関節(足関節)/足部
 ・下腿,足関節,および足部のリハビリテーションの指針
 ・ROM増大のための運動
 ・筋パフォーマンス改善のための運動
 ・足関節と足部の関節炎
 ・足関節と足部の関節炎:非観血的管理
 ・下腿および足部の反復性外傷症候群
 ・靱帯損傷
 ・靱帯損傷:非観血的管理
 ・足関節の外側側副靱帯修復または再建術:術後管理
 ・足関節の外側側副靱帯修復:術後活動―関連した注意事項
 ・急性アキレス腱断裂−開放性修復:伝統的な術後管理
 ・急性アキレス腱断裂−開放性修復:術後管理―早期の荷重/ROM運動アプローチ
 ・アキレス腱断裂−開放性修復:術後の注意事項
7章 バランス,プライオメトリックおよび文献
 ・バランス運動
 ・プライオメトリック運動(伸張−短縮練習)
 ・References

 索引