やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序文
 本書は,2006年に医歯薬出版から発行された『高次脳機能障害マエストロシリーズ(2)画像の見かた・使いかた』をベースとして,さらに細かく,さらに深く,脳画像について学ぼうとする方々を対象としてまとめたものです.マエストロシリーズでは十分に説明できなかった点についても補足するように心がけました.
 人間の顔,骨格などが一人ひとり異なっているように,脳の形状も一人ひとり異なっています.本書に掲載した正常対照者の画像も,恐らくは「標準的な」形態ではあっても,同じ画像は二つとして存在するものではありません.実際の症例にあたってみると,本書に掲載された画像とは異なるため,同じ方法では目的とする構造を同定することができない場合もあるかもしれません.しかしそれぞれの脳部位の位置関係は症例ごとに異なるものではなく,基準となる構造からたどる手順を踏めば,高い確率で目的とする構造を同定することができると思います.
 手順を踏んだダイナミックな読影法を私が最初に体験したのは,医師になって2年目,亀田総合病院で神経内科の研修を受けている時でした.本書でも取り上げている「中心前回の同定法その2」は,当時の放射線科顧問,(故)久留 裕先生からご教示いただいたものです.それ以来,脳画像の読影にあたっては,基準となる構造,周囲との位置関係から目標とする構造を探し出すというプロセスを踏むよう心がけてきました.
 本書に用いた画像は「パラパラ漫画」と同じ要領で収録しました.ノートの隅に書いた絵が,ページを繰ることによって動いて見える,というあの手法です.CDには部位ごと,症例ごとに読影の手順に従って画像を収録してあります.パソコンの画面上で,カーソルをクリックする度に,必要な情報が画面に付加されていくので,ダイナミックな読影の手順を体感していただくことができるようになっています.また,書籍だけに目を通しても読影のプロセスを踏めるように,CDに収録した画像と同じものを順番に並べ,必要最小限の解説をつけました.さらに余白には,臨床のミニ知識として“臨床メモ“や“解剖のミニ知識”など,高次脳機能障害について学ぶうえで有用と思われる項目について,簡単に解説してあります.
 本書の刊行にあたっては,医歯薬出版の編集担当の方々に大変お世話になりました.この場を借りてお礼申し上げます.また医学部学生の頃から今日に至るまでご指導いただいた,昭和大学神経内科,河村 満先生,さらに昭和大学神経内科および亀田総合病院神経内科,汐田総合病院神経内科のスタッフの方々に深謝いたします.
 本書が読者の皆さんの日常診療,学術活動の一助となれば幸いです.
 2010年9月
 石原健司
 序文
 本CD-ROMのご使用にあたって
 総論
 コラム 脳溝を追跡する
正常編
水平断
 1 大脳縦裂(大脳半球間裂)
 2 シルビウス裂
 3 側脳室
 4 側脳室下角
 5 脳梁
 6 中心溝の同定
 7 前頭葉
 8 前頭葉の細分
 9 ブローカ野(下前頭回弁蓋部・三角部)
 10 側頭葉
 11 側頭葉の細分
 12 上側頭回(ウェルニッケ野を含む)
 13 海馬
 14 後頭側頭回
 15 頭頂葉
 16 後頭葉
 17 代表的な断面(症例呈示の際に頻用される断面)
 18 大脳白質
冠状断
 1 大脳縦裂・脳梁
 2 シルビウス裂
 3 前頭葉
 4 側頭葉
 5 側脳室下角
 6 扁桃体
 7 海馬・海馬傍回
 8 海馬傍回〜舌状回・紡錘状回
 9 帯状回
 10 島回(島葉)
 11 後頭葉の脳溝
矢状断
 1 脳梁
 2 帯状回・帯状溝
 3 後頭葉内側面の脳溝
 4 大脳半球の細分
 5 シルビウス裂
 6 ブローカ野
 7 ウェルニッケ野
症例編
 intro 症例呈示の前に―画像の読影にあたって注意すべき点を列挙する
 1 症例1 使用行為,全般的認知機能低下を呈した症例
 2 症例2 左中枢性顔面神経麻痺を呈した症例
 3 症例3 発語失行を呈した症例
 4 症例4 ウェルニッケ失語を呈した症例
 5 症例5 純粋語聾を呈した症例
 6 症例6 言語性記憶障害を呈した症例
 7 症例7 感覚性失語,失読失書,計算障害を呈した症例
 8 症例8 右手の肢節運動失行を呈した症例
 9 症例9 急性期に漢字の読み書き障害を呈した症例
 10 症例10 純粋失読,右上四半盲を呈した症例

 参考文献
 索引