序
「うまく食べられない,うまく飲めない,むせる,食事がつらい」と訴える患者さんが増えています.年齢別には子供からお年寄りまで,原因別には遺伝的疾患から,脳血管障害や交通外傷まで様々です.食べられない,飲めない程度も様々です.中には誤嚥性肺炎のリスクを避けるために,口から食べることを禁止され,鼻からのチューブや胃瘻で栄養摂取している患者さんもいます.
患者さんの多くは,「口から食べること」を熱望しています.「口から食べる」ことは,命の維持の基本ですし,「口からおいしく食べる」ことは,生きることの充実と満足の前提です.「口からおいしく食べたい」という願いになんとかして応えたい,家族や介護者および医療従事者の共通の願いです.
しかし,現状では障害を完治させることは容易ではありません.摂食・嚥下障害の原因や病態,障害の程度も様々ですし,リハビリテーションの効果が現れるのにも長期間が必要です.したがって,効率的なリハビリテーションのためには,残存機能の評価や訓練計画,ゴールの設定を適切に行うことが必須です.
書物や講習会などから摂食・嚥下障害に関する情報が多数得られるようになってきました.しかしこれらのほとんどは,摂食・嚥下障害の基礎から診断,治療までを網羅したものであり,口腔や咽頭の機能評価とその結果に基づく体系的な訓練法を扱った書物ではありません.そのため必ずしも臨床の現場に即してはいませんでした.
本書は,摂食・嚥下障害のための機能評価と訓練法を体系化したものです.臨床の現場で実際に患者さんの対応に当たっている方々のための実践書です.心がけたことは,評価に基づいて系統的に訓練できるようにすること,イラストや写真を多用して,初心者でも理解しやすく臨床的に使いやすい実用的な本をつくることでした.
内容としては,第1章では,脳の機能解剖学から細菌学,病態生理学までをわかりやすく,第2章では機能評価と訓練法を詳細に,第3章では食事に関すること,第4章では医学的・歯科医学的な対応を具体的に解説しています.「第2章 嚥下器官運動検査法と摂食機能療法の実際」は,執筆者らが臨床の現場で使用し,漸次修正を加えてきた「摂食・嚥下障害者用の訓練用テキスト」を中心に構成されています.また患者さんや介護者が生活の場でリハビリテーションを行えるように,摂食機能療法についての「付録」を添付しました.
「口から食べる」ことは,極めて日常的でしかも極めて重要な行為です.今後の高齢社会の進行に伴って,さらに重要な社会的な関心事になっていくことでしょう.将来は患者や介護者と医療者のみならず,地域社会も含めて摂食・嚥下障害に取り組むようになるものと思われます.そのための第一歩は,患者・介護者と医療者が一体となって「摂食・嚥下障害と向き合う」ことだと思います.本書が,摂食・嚥下障害に対して三者が協力して取り組むための一助となれば,望外の喜びです.
2002年10月
監修者・編集者一同
「うまく食べられない,うまく飲めない,むせる,食事がつらい」と訴える患者さんが増えています.年齢別には子供からお年寄りまで,原因別には遺伝的疾患から,脳血管障害や交通外傷まで様々です.食べられない,飲めない程度も様々です.中には誤嚥性肺炎のリスクを避けるために,口から食べることを禁止され,鼻からのチューブや胃瘻で栄養摂取している患者さんもいます.
患者さんの多くは,「口から食べること」を熱望しています.「口から食べる」ことは,命の維持の基本ですし,「口からおいしく食べる」ことは,生きることの充実と満足の前提です.「口からおいしく食べたい」という願いになんとかして応えたい,家族や介護者および医療従事者の共通の願いです.
しかし,現状では障害を完治させることは容易ではありません.摂食・嚥下障害の原因や病態,障害の程度も様々ですし,リハビリテーションの効果が現れるのにも長期間が必要です.したがって,効率的なリハビリテーションのためには,残存機能の評価や訓練計画,ゴールの設定を適切に行うことが必須です.
書物や講習会などから摂食・嚥下障害に関する情報が多数得られるようになってきました.しかしこれらのほとんどは,摂食・嚥下障害の基礎から診断,治療までを網羅したものであり,口腔や咽頭の機能評価とその結果に基づく体系的な訓練法を扱った書物ではありません.そのため必ずしも臨床の現場に即してはいませんでした.
本書は,摂食・嚥下障害のための機能評価と訓練法を体系化したものです.臨床の現場で実際に患者さんの対応に当たっている方々のための実践書です.心がけたことは,評価に基づいて系統的に訓練できるようにすること,イラストや写真を多用して,初心者でも理解しやすく臨床的に使いやすい実用的な本をつくることでした.
内容としては,第1章では,脳の機能解剖学から細菌学,病態生理学までをわかりやすく,第2章では機能評価と訓練法を詳細に,第3章では食事に関すること,第4章では医学的・歯科医学的な対応を具体的に解説しています.「第2章 嚥下器官運動検査法と摂食機能療法の実際」は,執筆者らが臨床の現場で使用し,漸次修正を加えてきた「摂食・嚥下障害者用の訓練用テキスト」を中心に構成されています.また患者さんや介護者が生活の場でリハビリテーションを行えるように,摂食機能療法についての「付録」を添付しました.
「口から食べる」ことは,極めて日常的でしかも極めて重要な行為です.今後の高齢社会の進行に伴って,さらに重要な社会的な関心事になっていくことでしょう.将来は患者や介護者と医療者のみならず,地域社会も含めて摂食・嚥下障害に取り組むようになるものと思われます.そのための第一歩は,患者・介護者と医療者が一体となって「摂食・嚥下障害と向き合う」ことだと思います.本書が,摂食・嚥下障害に対して三者が協力して取り組むための一助となれば,望外の喜びです.
2002年10月
監修者・編集者一同
序
本書の構成について
第1章 摂食・嚥下障害を理解する
I 摂食・嚥下にかかわる脳の機能解剖 [馬場元毅]
はじめに
1.摂食・嚥下機能をコントロールする最高中枢はどこにあるか
2.摂食・嚥下にかかわる視床下部のしくみと働き
3.摂食・嚥下にかかわる大脳辺縁系のしくみと働き
4.脳幹部および末梢部での摂食・嚥下にかかわる神経のしくみ
上行性網様体賦活系(覚醒保持機構) /脳神経のしくみと働き
5.摂食・嚥下運動における神経機構
先行期(認知期,捕食期) /口腔準備期 /口腔期 /咽頭期 /食道期
6.嚥下反射のメカニズム
まとめ
II 摂食・嚥下障害とは[横山美加]
はじめに
1.先行期とその障害
先行期(認知期,捕食期) /先行期の障害
2.口腔準備期とその障害
口腔準備期(食塊形成期) /口腔準備期の障害
3.口腔期とその障害
口腔期(食塊移送期) /口腔期の障害
4.咽頭期とその障害
咽頭期 /咽頭期の障害
5.食道期とその障害
食道期 /食道期の障害
おわりに
III 摂食・嚥下障害と誤嚥性肺炎
1.誤嚥性肺炎の病態生理[熊崎智司]
1.高齢者の肺炎の一般的特徴
肺炎の種類 /高齢者の肺炎の特徴 /肺炎の診断 /肺炎の治療
2.誤嚥性肺炎
誤嚥と誤嚥性肺炎 /胃逆流物の誤嚥による肺炎 /胃食道逆流症 /口腔・咽頭内残留物の誤嚥による肺炎 /不顕性誤嚥
2.誤嚥性肺炎と口腔常在細菌叢[花田信弘]
はじめに
1.口の進化と上気道感染
2.表面防御関門
3.人と細菌
口腔の常在細菌叢 /善玉菌・悪玉菌・日和見菌・共生菌 /日和見菌の増殖
4.誤嚥性肺炎の起炎菌
おわりに
IV 医学・歯学的な評価・診断法
1.摂食・嚥下障害を疑う臨床兆候[佐藤真由美]
はじめに
1.摂食状態の観察
むせ /痰(喀痰) /咳 /口の動きと食物残渣の観察 /喉頭の動き /覚醒状態(意識状態) /食物認知の問題 /表情の変化
2.全身状態と日常生活の観察
熱型の変化 /食事摂取量の減少 /嗜好の変化 /水分摂取量の減少 /体重の減少 /服薬内容の変化 /姿勢 /食形態,自助具 /心理的変化 /精神活動や身体機能の廃用
おわりに
2.摂食・嚥下障害の検査法
(1)機器を必要としない検査法[高橋浩二]
医療面接 /視診および触診 /氷砕片飲み込み検査 /喉頭挙上検査 /水飲み検査 /改訂水飲みテスト /食物テスト /反復唾液嚥下テスト
(2)簡単な機器を使って行う検査法-頸部聴診法 [宇山理紗]
頸部聴診に用いる器具 /頸部聴診の方法 /頸部聴診による判定法 /頸部聴診法の判定精度 /頸部聴診法の今後
(3)特殊な機器を用いて行う検査法[高橋浩二]
嚥下造影検査 /嚥下内視鏡検査 /超音波検査
(4)その他の検査法[高橋浩二]
嚥下前・後X線撮影法 /パルスオキシメータ /嚥下圧検査(マノメトリー) /筋電図検査 /シンチグラフィー
第2章 嚥下器官運動検査法と摂食機能療法
I 楽しい摂食機能療法のために [稲川利光]
II 嚥下器官運動検査法と訓練計画の立案
1.嚥下器官運動検査[山下夕香里]
1.検査の概要
目的 /特徴 /検査の構成 /評価方法と訓練の必要性
2.検査実施上の注意
3.検査の実施手順
呼吸機能(喀出能) /頸部の可動性 /顎運動 /舌運動 /口唇・頬運動 /喉頭挙上 /発声持続・共鳴 /構音
2.検査に基づく摂食機能訓練計画[山下夕香里]
1.検査項目に対応する訓練内容
2.訓練計画の例
事例1 /事例2 /事例3 /事例4
III 摂食機能療法の実際
1.呼吸機能(喀出能)訓練[山中良二]
1.嚥下障害における呼吸訓練の役割
2.基礎的訓練
離床と動作訓練 /リラクゼーションと可動域訓練 /腹式呼吸(横隔膜呼吸) /口すぼめ呼吸
3.誤嚥の予防と喀出能強化訓練
声帯内転(声門閉鎖)訓練 /嚥下パターン訓練 /咳嗽訓練 /ハッフィング
4.体位排痰法
排痰体位 /分泌物の移動を促進させる手技(排痰手技) /分泌物の喀出と吸引
2.頸部のストレッチ運動[難波亜紀子]
首を前後に倒す /首を左右に倒す /首を左右にねじる
3.顎運動訓練[平野 薫]
顔面のマッサージ,K-point刺激法(開口反射誘発法) /咀嚼筋の筋力強化 /開閉口運動 /開口訓練
4.舌運動訓練[石野由美子]
舌のマッサージ(舌の準備運動) /舌前方挺出訓練 /舌尖挙上訓練 /舌挙上訓練(舌打ち,ポッピング) /舌尖口角接触訓練 /舌尖口唇なめ訓練 /舌の後方移動訓練 /舌後方部の負荷・挙上訓練 /舌側方部と後方部の負荷訓練
5.口唇・頬運動訓練[平野 薫]
口唇・頬マッサージ /口唇閉鎖訓練 /頬膨らまし訓練 /吸引運動訓練
6.喉頭挙上訓練[難波亜紀子]
裏声発声訓練法 /メンデルソン手技
7.発声・発音訓練[難波亜紀子]
1.発声訓練(力強く,長く発声する)
2.ブローイング訓練(声の鼻漏れを防ぐ)
3.発音訓練
8.知覚改善訓練(のどのアイスマッサージ) [難波亜紀子]
9.臨床例
(1)舌腫瘍の手術後の摂食機能療法 [難波亜紀子]
(2)脊髄小脳変性症症例における摂食機能療法 [衣松令恵]
第3章 食事形態と食事介助
I 病態に応じた食事形態
1.食物の物性[畑江敬子]
はじめに
1.弾 性
2.粘 性
ニュートン流動 /非ニュートン流動 /塑性流動 /粘度の測定
3.粘弾性
マックスウェル模型とフォークト模型 /4要素模型 /粘弾性の測定
4.物性の経験的測定
5.物性とテクスチャーの個人差
6.高齢者用特殊栄養食品の規格基準
7.食物の物性と味覚,油脂感覚との関係
物性と味覚 /油脂感覚
2.調理法の実際
(1)栄養士の立場から[増田邦子]
はじめに
1.食形態の種類
2.食形態別の調理法の実際
主食の食形態 /副食の食形態 /水分補給の工夫 /食欲が低下したときの対応 /自立の援助
(2)介護者の立場から(1)[今井紅子]
はじめに
1.食べることへの戦い
2.常食に近づく
3.再発から今日までを振り返って
4.献立の紹介
(3)介護者の立場から(2)[星千鶴子]
はじめに
1.調理の工夫
2.献立の紹介
おわりに
3.嚥下補助食品一覧[森田真由]
1.副菜
2.嚥下ゼリー
3.増粘剤
4.デザート
5.市販食品製造・販売会社 連絡先
II 食事介助法[奈良真喜子]
はじめに
1.摂食・嚥下障害を看護・介護の視点からみる
摂食・嚥下障害とは /症状 /口腔ケアの重要性 /「食べる」を看護・介護の視点からみて考慮すべき4項目
2.食事介助の手順
目的 /準備 /方法
おわりに
第4章 医学・歯学的対応
I 代替栄養法
1.経鼻的経管栄養[稲川利光]
1.チューブ挿入時の注意
2.栄養剤の注入法
3.栄養剤について
4.経鼻胃管の問題点
5.抑制からの解放
6.OE法について
7.経管栄養の上手な導入を
2.中心静脈栄養法[熊崎智司]
1.皮下埋め込み式ポート・カテーテル
2.中心静脈カテーテル留置時の合併症
3.中心静脈栄養施行中の合併症
3.胃瘻・腸瘻[稲川利光]
1.胃瘻とは
2.胃瘻カテーテルについて
3.腸瘻とは
4.PEGの適応
5.PEGの手技
6.PEG後の管理
7.在宅療養と胃瘻
II 口腔ケア[角 保徳]
1.口腔ケアの必要性
摂食・嚥下障害患者の口腔の現状 /要介護高齢者の口腔ケアの社会的状況 /口腔ケアが普及しない原因
2.口腔ケアのシステム化
口腔ケアシステム開発の基本コンセプト /口腔ケアシステムの実際 /口腔ケアシステムの特長
3.口腔ケアシステムの有効性
臨床例 /介護者の負担を減少させる口腔ケアシステム /口腔ケアの効果
まとめ
III 歯科補綴物の適用
1.軟口蓋挙上装置(PLP)が有効であった症例 [山田真美恵]
1.症 例
2.訓練前嚥下器官運動検査所見
3.摂食機能療法の内容
4.結 果
2.舌接触補助床(PAP)[衣松令恵]
はじめに
1.適 応
2.よくみられる症状
3.舌接触補助床による摂食機能療法
3.人工舌床[衣松令恵]
はじめに
1.対象となる症状
2.人工舌床の製作
3.人工舌床を併用した摂食機能療法
4.考 察
IV 外科的対応[米川博之]
はじめに
1.手術治療の分類
2.術前評価
嚥下障害の程度と経過 /嚥下機能の評価 /全身状態の評価 /知的能力や社会的背景の評価
3.手 術
嚥下機能改善術式 /気道食道分離術
4.症例の紹介と解説
症例 /解 説
索引
付録
嚥下器官運動検査/経過表・記録用紙(訓練者用) [山下夕香里]
摂食機能療法マニュアル(患者さん用) [難波亜紀子]
炉辺談話
(1)食べられない/食べたくない /(2)Swallow(つばめ)とSwallow(飲み込む) /(3)嚥と嚥下 /(4)食に関する語源
訓練余話
(1)痴呆? /(2)なんで言えるの? /(3)咳ばらい?! /(4)のどごし
本書の構成について
第1章 摂食・嚥下障害を理解する
I 摂食・嚥下にかかわる脳の機能解剖 [馬場元毅]
はじめに
1.摂食・嚥下機能をコントロールする最高中枢はどこにあるか
2.摂食・嚥下にかかわる視床下部のしくみと働き
3.摂食・嚥下にかかわる大脳辺縁系のしくみと働き
4.脳幹部および末梢部での摂食・嚥下にかかわる神経のしくみ
上行性網様体賦活系(覚醒保持機構) /脳神経のしくみと働き
5.摂食・嚥下運動における神経機構
先行期(認知期,捕食期) /口腔準備期 /口腔期 /咽頭期 /食道期
6.嚥下反射のメカニズム
まとめ
II 摂食・嚥下障害とは[横山美加]
はじめに
1.先行期とその障害
先行期(認知期,捕食期) /先行期の障害
2.口腔準備期とその障害
口腔準備期(食塊形成期) /口腔準備期の障害
3.口腔期とその障害
口腔期(食塊移送期) /口腔期の障害
4.咽頭期とその障害
咽頭期 /咽頭期の障害
5.食道期とその障害
食道期 /食道期の障害
おわりに
III 摂食・嚥下障害と誤嚥性肺炎
1.誤嚥性肺炎の病態生理[熊崎智司]
1.高齢者の肺炎の一般的特徴
肺炎の種類 /高齢者の肺炎の特徴 /肺炎の診断 /肺炎の治療
2.誤嚥性肺炎
誤嚥と誤嚥性肺炎 /胃逆流物の誤嚥による肺炎 /胃食道逆流症 /口腔・咽頭内残留物の誤嚥による肺炎 /不顕性誤嚥
2.誤嚥性肺炎と口腔常在細菌叢[花田信弘]
はじめに
1.口の進化と上気道感染
2.表面防御関門
3.人と細菌
口腔の常在細菌叢 /善玉菌・悪玉菌・日和見菌・共生菌 /日和見菌の増殖
4.誤嚥性肺炎の起炎菌
おわりに
IV 医学・歯学的な評価・診断法
1.摂食・嚥下障害を疑う臨床兆候[佐藤真由美]
はじめに
1.摂食状態の観察
むせ /痰(喀痰) /咳 /口の動きと食物残渣の観察 /喉頭の動き /覚醒状態(意識状態) /食物認知の問題 /表情の変化
2.全身状態と日常生活の観察
熱型の変化 /食事摂取量の減少 /嗜好の変化 /水分摂取量の減少 /体重の減少 /服薬内容の変化 /姿勢 /食形態,自助具 /心理的変化 /精神活動や身体機能の廃用
おわりに
2.摂食・嚥下障害の検査法
(1)機器を必要としない検査法[高橋浩二]
医療面接 /視診および触診 /氷砕片飲み込み検査 /喉頭挙上検査 /水飲み検査 /改訂水飲みテスト /食物テスト /反復唾液嚥下テスト
(2)簡単な機器を使って行う検査法-頸部聴診法 [宇山理紗]
頸部聴診に用いる器具 /頸部聴診の方法 /頸部聴診による判定法 /頸部聴診法の判定精度 /頸部聴診法の今後
(3)特殊な機器を用いて行う検査法[高橋浩二]
嚥下造影検査 /嚥下内視鏡検査 /超音波検査
(4)その他の検査法[高橋浩二]
嚥下前・後X線撮影法 /パルスオキシメータ /嚥下圧検査(マノメトリー) /筋電図検査 /シンチグラフィー
第2章 嚥下器官運動検査法と摂食機能療法
I 楽しい摂食機能療法のために [稲川利光]
II 嚥下器官運動検査法と訓練計画の立案
1.嚥下器官運動検査[山下夕香里]
1.検査の概要
目的 /特徴 /検査の構成 /評価方法と訓練の必要性
2.検査実施上の注意
3.検査の実施手順
呼吸機能(喀出能) /頸部の可動性 /顎運動 /舌運動 /口唇・頬運動 /喉頭挙上 /発声持続・共鳴 /構音
2.検査に基づく摂食機能訓練計画[山下夕香里]
1.検査項目に対応する訓練内容
2.訓練計画の例
事例1 /事例2 /事例3 /事例4
III 摂食機能療法の実際
1.呼吸機能(喀出能)訓練[山中良二]
1.嚥下障害における呼吸訓練の役割
2.基礎的訓練
離床と動作訓練 /リラクゼーションと可動域訓練 /腹式呼吸(横隔膜呼吸) /口すぼめ呼吸
3.誤嚥の予防と喀出能強化訓練
声帯内転(声門閉鎖)訓練 /嚥下パターン訓練 /咳嗽訓練 /ハッフィング
4.体位排痰法
排痰体位 /分泌物の移動を促進させる手技(排痰手技) /分泌物の喀出と吸引
2.頸部のストレッチ運動[難波亜紀子]
首を前後に倒す /首を左右に倒す /首を左右にねじる
3.顎運動訓練[平野 薫]
顔面のマッサージ,K-point刺激法(開口反射誘発法) /咀嚼筋の筋力強化 /開閉口運動 /開口訓練
4.舌運動訓練[石野由美子]
舌のマッサージ(舌の準備運動) /舌前方挺出訓練 /舌尖挙上訓練 /舌挙上訓練(舌打ち,ポッピング) /舌尖口角接触訓練 /舌尖口唇なめ訓練 /舌の後方移動訓練 /舌後方部の負荷・挙上訓練 /舌側方部と後方部の負荷訓練
5.口唇・頬運動訓練[平野 薫]
口唇・頬マッサージ /口唇閉鎖訓練 /頬膨らまし訓練 /吸引運動訓練
6.喉頭挙上訓練[難波亜紀子]
裏声発声訓練法 /メンデルソン手技
7.発声・発音訓練[難波亜紀子]
1.発声訓練(力強く,長く発声する)
2.ブローイング訓練(声の鼻漏れを防ぐ)
3.発音訓練
8.知覚改善訓練(のどのアイスマッサージ) [難波亜紀子]
9.臨床例
(1)舌腫瘍の手術後の摂食機能療法 [難波亜紀子]
(2)脊髄小脳変性症症例における摂食機能療法 [衣松令恵]
第3章 食事形態と食事介助
I 病態に応じた食事形態
1.食物の物性[畑江敬子]
はじめに
1.弾 性
2.粘 性
ニュートン流動 /非ニュートン流動 /塑性流動 /粘度の測定
3.粘弾性
マックスウェル模型とフォークト模型 /4要素模型 /粘弾性の測定
4.物性の経験的測定
5.物性とテクスチャーの個人差
6.高齢者用特殊栄養食品の規格基準
7.食物の物性と味覚,油脂感覚との関係
物性と味覚 /油脂感覚
2.調理法の実際
(1)栄養士の立場から[増田邦子]
はじめに
1.食形態の種類
2.食形態別の調理法の実際
主食の食形態 /副食の食形態 /水分補給の工夫 /食欲が低下したときの対応 /自立の援助
(2)介護者の立場から(1)[今井紅子]
はじめに
1.食べることへの戦い
2.常食に近づく
3.再発から今日までを振り返って
4.献立の紹介
(3)介護者の立場から(2)[星千鶴子]
はじめに
1.調理の工夫
2.献立の紹介
おわりに
3.嚥下補助食品一覧[森田真由]
1.副菜
2.嚥下ゼリー
3.増粘剤
4.デザート
5.市販食品製造・販売会社 連絡先
II 食事介助法[奈良真喜子]
はじめに
1.摂食・嚥下障害を看護・介護の視点からみる
摂食・嚥下障害とは /症状 /口腔ケアの重要性 /「食べる」を看護・介護の視点からみて考慮すべき4項目
2.食事介助の手順
目的 /準備 /方法
おわりに
第4章 医学・歯学的対応
I 代替栄養法
1.経鼻的経管栄養[稲川利光]
1.チューブ挿入時の注意
2.栄養剤の注入法
3.栄養剤について
4.経鼻胃管の問題点
5.抑制からの解放
6.OE法について
7.経管栄養の上手な導入を
2.中心静脈栄養法[熊崎智司]
1.皮下埋め込み式ポート・カテーテル
2.中心静脈カテーテル留置時の合併症
3.中心静脈栄養施行中の合併症
3.胃瘻・腸瘻[稲川利光]
1.胃瘻とは
2.胃瘻カテーテルについて
3.腸瘻とは
4.PEGの適応
5.PEGの手技
6.PEG後の管理
7.在宅療養と胃瘻
II 口腔ケア[角 保徳]
1.口腔ケアの必要性
摂食・嚥下障害患者の口腔の現状 /要介護高齢者の口腔ケアの社会的状況 /口腔ケアが普及しない原因
2.口腔ケアのシステム化
口腔ケアシステム開発の基本コンセプト /口腔ケアシステムの実際 /口腔ケアシステムの特長
3.口腔ケアシステムの有効性
臨床例 /介護者の負担を減少させる口腔ケアシステム /口腔ケアの効果
まとめ
III 歯科補綴物の適用
1.軟口蓋挙上装置(PLP)が有効であった症例 [山田真美恵]
1.症 例
2.訓練前嚥下器官運動検査所見
3.摂食機能療法の内容
4.結 果
2.舌接触補助床(PAP)[衣松令恵]
はじめに
1.適 応
2.よくみられる症状
3.舌接触補助床による摂食機能療法
3.人工舌床[衣松令恵]
はじめに
1.対象となる症状
2.人工舌床の製作
3.人工舌床を併用した摂食機能療法
4.考 察
IV 外科的対応[米川博之]
はじめに
1.手術治療の分類
2.術前評価
嚥下障害の程度と経過 /嚥下機能の評価 /全身状態の評価 /知的能力や社会的背景の評価
3.手 術
嚥下機能改善術式 /気道食道分離術
4.症例の紹介と解説
症例 /解 説
索引
付録
嚥下器官運動検査/経過表・記録用紙(訓練者用) [山下夕香里]
摂食機能療法マニュアル(患者さん用) [難波亜紀子]
炉辺談話
(1)食べられない/食べたくない /(2)Swallow(つばめ)とSwallow(飲み込む) /(3)嚥と嚥下 /(4)食に関する語源
訓練余話
(1)痴呆? /(2)なんで言えるの? /(3)咳ばらい?! /(4)のどごし