やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに

 この度,1995年からJournal of CLINICAL REHABILITATION(臨床リハ)に連載した「マイケル吉田のアメリカ通信」のなかから,医療事情に関する論文を選び,さらに最新情報を追加して小抄録集としてまとめました.これは,第39回日本リハビリテーション医学会学術集会における私の教育講演,「米国リハビリテーションの現状と将来の方向」の内容を補足する目的で作成しました.
 今回,小抄録集としてまとめるにあたり,これまでの内容をテーマごとに分類しました.また,1995年から2001年までの論文をまとめているため,その後変化している内容が多くあります.このため,各章ごとに「追記」として最新情報を盛り込みました.
 米国ではリハ医療,いや医療そのものが,いま大きな変革期を迎えています.嵐のまっただ中であるといえます.運転をひとつ誤まれば,沈没の危険をはらんでいます.残念ながら,日本もごく近い将来,同様な経験をたどりそうな気配があります.米国に比べて悪いことには,日本ではデフレと経済不況下における,日本医療の変革が始まろうとしていることです.瞬時のミスも許されない状況です.
 私は現在,在米17年目を迎えます.「マイケル吉田のアメリカ通信」を連載した目的は,日本の方々に米国リハ医療の実態を正確に知っていただくことにより,さらに相互理解を深め,日米ともに今後ますます発展することを強く希望したからです.日米大戦という歴史上最大の不幸をともに経験したにもかかわらず,世界の他国に比べ日米はたいへんよく似ており,相互に影響し合っています.しかし,一方で異なる点もみられ,お互いに学ぶべきところは多いと思います.今後直面するであろう日本のリハ医療改革を成功させ,将来の日本を背負う新世代の人々に感謝されるものを残したいと願っています.
 最後に,米本恭三先生,石神重信先生,石田 暉先生をはじめ,臨床リハ編集委員の先生方,編集部には,本連載を続けるなかで多大なご支援,ご提案をいただきました.この場をかりてお礼申し上げます.
 2002年4月
 米国ミルウォーキー市より
 マイケル吉田(吉田清和)
 はじめに

第1章 患者の流れとリハ治療の選択
    亜急性期リハビリテーション(subacute rehabilitation)
    膝人工関節
    リハ一貫治療
    2002年時のリハ患者の流れとリハ治療の選択
第2章 医療費支払い制度の変化
    米国医療改革
    米国のDRG/PPS
    米国医療環境の変化
    カルテ記載の新規則
    日米のDRG/PPS比較
    米国における慢性期リハ医療の支払い制度
    米国の急性期リハに対する新支払い制度
    2002年版新急性期リハ支払い制度
    米国リハ医療費支払い制度の歴史
第3章 リハ医学教育と診療形態
    レジデント教育
    米国リハ医の生涯教育
    最近の医学生教育,レジデント教育,PT・OT教育
    リハ医の細分化・専門分化と診療形態
第4章 リハ効果情報と医療の質の改善
    FIMを超えて
    CARF
    医療ミス対策
    医療ミスの実態と対応
    CARF新情報,患者安全対策と医療における3人の役者
第5章 リハ医学研究
    リハにおける研究
    最近のリハ研究