やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社


 放射線技術革新の進歩は目覚ましく,毎年開催されている学術大会や放射線機器展示では,臨床技術の新しい知見,新しいハードウェアやソフトウェアの開発などが,次々と発表されています.そのためもあって,診療放射線技師養成学校で放射線技術学を教育しておられる先生や,日々放射線診療業務に携わっておられる診療放射線技師は,高度な診療放射線技術学を支えるために,より専門に細分化された新しい技術への対応が求められています.
 しかし,診療放射線技術学は,医療上での独立した技術として成り立っている学問であり,時代の変遷によらず,臨床においては,基礎的で普遍的な技術を多くもっています.そのなかの一つに,放射線を使って画像を描出する撮像(画像)技術学があります.これは,画像診断学に対して有用な画像情報を提供するための基本的な学問です.そこで,放射線技術学として幅広く臨床に対応できるものとして出版されたのが,医用放射線科学講座シリーズの第8巻「放射線画像技術学」でした.
 当該書が発刊されてから11年が過ぎました.この間,診療放射線技師養成学校の教科書,診療放射線技師国家試験参考書として,また,放射線診断技術領域で必要な知識を得るための臨床現場での実践書として広く活用されてきました.それは,放射線画像診断領域における,画像診断技術のための基礎は,X線撮影に必要な臨床基礎と各種X線撮影法の基礎を,医用画像技術学では,CT,MRI,超音波,眼底カメラなどの基礎技術と撮像技術,放射線写真学では,X線写真学の基礎および応用として編集されており,放射線技術学の幅広い臨床技術に対応できる内容を網羅するものであるという本書のコンセプトであったからこそ,放射線診断技術教育および臨床現場で長く広く活用されてきたものと確信しています.しかしながら,新しい診断技術が確立されている今日において,それぞれの部門・分野では,ハードウェアの技術革新による新技術への対応,ソフトウェアによる新技術の応用,技術領域の拡充などによる新しい内容が要求されています.
 今回の改訂では,新・医用放射線科学講座「放射線画像技術学」として装いも新たにして,特に技術革新の目覚ましいX線検査において,最近の技術革新による装置や新しい臨床検査技術について加筆していただきました.デジタル化時代の今日,ややもすると従来のアナログ画像技術は軽視される傾向にありますが,画像を掲示するのは写真であり,その基礎的項目は十分理解しておく必要があります.その意味で放射線写真学の章は残しています.
 執筆陣は,大学の教員,日常病院業務を行っておられる臨床経験豊かな医師・診療放射線技師であり,指導的な立場に基づいて執筆していただいています.その努力によって改訂されました本書は,単に学生の教科書としてだけではなく,診療放射線技師として末長く活用されるものと確信しています.
 どうぞ,ご一読のうえ,ご批判,ご意見をお寄せいただければ幸いに存じます.
 2010年3月
 小水 満
第1章 放射線画像技術学
 1 X線撮影の総論
  1.専門職としての自覚(中西左登志)
   1)チーム医療のなかの診療放射線技師
   2)専門職としての診療放射線技師
   3)サービス業としての診療放射線技師
  2.X線写真の成り立ち
   1)画質の構成
   2)被写体コントラストと写真コントラスト
   3)被写体コントラスト
   4)散乱線の除去
   5)写真コントラスト
   6)被写体鮮鋭度と写真鮮鋭度
  3.撮影に必要な用語
   1)解剖学的体位
   2)撮影方向に関する用語
   3)ポジショニングに関する用語
   4)頭部の基準線,基準面および基準点
   5)体表面触知可能部位と脊椎レベルとの関係
  4.造影剤(坂下惠治)
   1)造影剤として備えるべき条件
   2)造影剤投与に関する注意事項
   3)造影剤の副作用
   4)X線造影剤
   5)MRI造影剤
   6)造影撮影時の注意事項
   7)造影剤による重篤な副作用への対応法
  5.救命救急
   1)救急医療における業務
   2)災害医療とトリアージの概念
   3)救急患者や家族への接し方とペーシェントケア
   4)救急医療における放射線技師の役割
   5)救急部門におけるX線設備
  6.感染防止
   1)感染とは
   2)感染症の分類
   3)感染の経路と感染対策
   4)病原体別の感染対策
   5)放射線診療における感染防止
 2 X線撮影の各論
  1.一般撮影法(中西左登志)
   1)全般的注意事項
   2)胸 部
   3)腹 部
   4)手・手関節
   5)前腕骨
   6)肘関節
   7)上腕骨
   8)肩
   9)鎖骨
   10)肩甲骨
   11)趾骨・足骨
   12)足関節
   13)下腿骨(脛骨,腓骨)
   14)膝関節・膝蓋骨
   15)大腿骨
   16)股関節
   17)骨盤
   18)腰椎
   19)胸椎
   20)頸椎
   21)胸骨・肋骨
   22)脳頭蓋
   23)顔面骨
   24)副鼻腔
   25)錐体乳突部
  2.特殊撮影法
   1)拡大撮影
   2)断層撮影
   3)間接撮影法
  3.小児撮影
   1)撮影までの留意点
   2)撮影中の留意点
  4.乳房撮影法(小縣裕二)
   1)乳房撮影装置
   2)撮影方法
   3)撮影前の準備
   4)準備のポジショニング
   5)撮影手技
   6)X線撮影手技のポイント
   7)乳管造影法
  5.上部消化管X線検査法(中村信美)
   1)解剖
   2)胃の区分
   3)前処置
   4)造影剤
   5)各種撮影法
   6)病期分類
   7)撮影法および撮影順序,操作順序と読影のポイント
  6.低緊張性十二指腸造影法(松本光弘)
   1)ゾンデ法
   2)経口法
  7.小腸造影法
   1)経口法
   2)ゾンデ使用による二重造影法
  8.下部消化管造影法(注腸X線検査法)(中村信美)
   1)前処置
   2)造影剤
   3)大腸粘膜表面の構造
   4)大腸の区分と撮影体位
   5)解剖
   6)大腸・肛門腫瘍および腫瘍様病変の病理組織学的分類
   7)大腸炎症性疾患の鑑別診断
  9.胆道造影検査法(前田大助)
   1)肝胆膵道系の解剖・生理
   2)検査方法
   3)非血管系IVR
  10.血管造影検査法
   1)血管造影法(山口和也)
   2)血管造影の実際
   3)脳血管造影法
   4)心臓・大血管造影法(全般)(三木 弘)
   5)冠動脈造影法
   6)左心室造影法
   7)右心室造影法,肺動脈造影法,大動脈造影法
   8)小児科領域(先天性心疾患)の造影
   9)その他のIVR
   10)腹腔動脈造影法(山口和也)
   11)上・下腸間膜動脈造影法
   12)気管支動脈造影法
   13)腎・副腎(腎上体)動脈造影法
   14)骨盤動脈造影法
   15)四肢動脈造影法
  11.泌尿器系造影検査(前田大助)
   1)泌尿器系の解剖・生理
   2)泌尿器系造影検査法
   3)泌尿器系検査の前処置,準備,注意事項
   4)検査方法
   5)排泄性腎盂造影法
   6)順行性腎盂造影法
   7)逆行性腎盂造影法
   8)膀胱造影法
   9)尿道膀胱造影法
   10)排尿時膀胱造影法
   11)チェインCG
  12.その他の造影検査法
   1)婦人科系造影検査
   2)関節造影法
   3)脊髄腔造影法
   4)神経根造影法
   5)精嚢造影法
   6)瘻孔造影法
   7)その他
  13.その他の撮影法(新井正一)
   1)病室におけるX線撮影法
   2)ICU(集中治療室)における撮影
   3)小児の病室における撮影
   4)手術室におけるX線撮影法
  14.歯科撮影法(角田 明)
   1)撮影対象部位と呼称
   2)X線装置と撮影機材
   3)歯科用X線フィルム
   4)現像法
   5)撮影時の患者の位置づけ
   6)平行法X線撮影
   7)咬翼法X線撮影
   8)二等分(面)法撮影法(等長法)
   9)偏心投影撮影法
   10)全顎撮影
   11)第三大臼歯(智歯)撮影
   12)咬合法撮影
   13)唾石の撮影
   14)パノラマX線撮影
   15)頭部X線規格撮影法(セファログラフィ)
   16)顎関節撮影法
   17)口内法デジタルX線撮影
   18)回転式パノラマデジタル撮影
   19)アーム型(コーンビーム)X線CT撮影
   20)その他の撮影法
  15.骨塩定量法(川本清澄)
   1)骨塩定量測定装置
   2)測定原理
   3)腰椎正面定量法
   4)大腿骨近位部測定
   5)橈骨遠位部測定
   6)骨密度の評価
   7)品質管理
第2章 医用画像技術学
 1 X線CT(佐藤和彦)
  1.X線CTの発展
   1)X線CTの発明
   2)X線CT装置の進化
   3)交互回転から連続回転へ
   4)ヘリカルスキャンの開発
  2.システムの構成
   1)X線高電圧発生装置
   2)X線管球
   3)X線検出器
   4)データ収集システム
   5)コンピュータシステム
   6)周辺機器
  3.画像再構成
   1)データサンプリング
   2)投影データ
   3)投影データの前処理
   4)画像再構成法
  4.CT値とウィンドウ機能
   1)CT値
   2)ウィンドウ幅とウィンドウレベル
  5.ヘリカルCT
   1)ヘリカルスキャン
   2)展開図
   3)補間計算
   4)ピッチファクタ
  6.マルチスライスCT
   1)検出器
   2)画像再構成
   3)コーン角補正を考慮した画像再構成
   4)三次元画像再構成のZ軸フィルタ
   5)アーチファクト
  7.CTの被ばく線量
   1)CT被ばくにおける線量指標
   2)CT検査における被ばく線量
   3)CT検査の被ばく線量ガイドライン
   4)マルチスライスCTの被ばく線量低減技術と被ばく低減に必要な知識
  8.CT検査の実際
   1)頭部・頭頸部CT
   2)胸部CT
   3)腹部CT
 2 MRI
  1.NMR現象からMRIへ(川原雅昭)
  2.MRIの原理
   1)NMR現象
   2)緩和
   3)信号強度
   4)対象核種
  3.MRIの装置および撮像法
   1)装置
   2)撮像法
   3)画像データの収集
   4)画像の再構成
   5)高速撮像法
   6)高速撮像法の用法
  4.MRI検査の基本手順(上口貴志)
   1)入室前確認
   2)検査準備
   3)検査の実行
   4)造影剤
   5)画像処理
   6)画像の表示と保管
  5.流れの画像化
   1)流れの影響
   2)タイムオブフライト効果
   3)位相コントラスト
  6.アーチファクト
   1)磁化率差によるアーチファクト
   2)体動や流れによるアーチファクト
   3)化学シフトによるアーチファクト
  7.化学シフトの応用
  8.安全性
   1)静磁場の安全性
   2)高周波電磁場の安全性
   3)時間的に変動する傾斜磁場の安全性
   4)騒音
 3 超音波(石蔵文信)
  1.循環器
   1)心臓超音波検査法の種類・装置
   2)探触子
   3)操作と記録方法
   4)カラードプラ法
   5)スペクトラムドプラ法
   6)特殊な超音波検査法
   7)アーチファクト
   8)心エコー図の診断特性
  2.腹部(婦人科を含む)
   1)腹部超音波検査の特徴・注意点
   2)消化器系の超音波診断(全般)
   3)肝
   4)胆嚢,胆管
   5)膵
   6)消化管
   7)泌尿器系の超音波診断(全般)
   8)泌尿器系検査の実際
   9)婦人科疾患の超音波診断(全般)
   10)婦人科疾患検査の実際
 4 眼底カメラ(石本一郎)
  1.眼底の特殊性と眼底写真撮影
   1)なぜ眼底検査が行われるのか
   2)眼底写真撮影(法)
  2.眼底写真撮影のための基礎知識
   1)眼局所解剖とその特徴
   2)眼底の解剖
  3.眼底写真撮影装置
   1)眼底カメラ
   2)無散瞳眼底カメラ
   3)記録・出力装置
  4.撮影の実際
   1)前提条件
   2)位置合わせ
   3)焦点合わせ
   4)作動距離,位置調整
   5)無散瞳眼底カメラの利点・欠点
  5.眼底写真撮影に影響する異常
第3章 放射線写真学
 1 医療用写真の概要と放射線写真の形成(小水 満)
  1.おもな医療用写真
   1)直接撮影X線写真
   2)蛍光板間接撮影X線写真
   3)蛍光増倍管間接撮影X線写真
   4)デジタルフルオログラフィ画像
   5)X線CT画像
   6)デジタルラジオグラフィ画像
   7)シンチグラム
   8)オートラジオグラフィ画像
   9)MRI画像
   10)超音波画像
   11)サーモグラフィ画像
   12)内視鏡写真
   13)眼底写真
  2.写真の形成とX線透過像の成り立ち
   1)写真形成過程
   2)X線透過像
  3.写真現象と効果
   1)露光に関する現象
   2)潜像に関する現象
   3)露光以外の写真現象
   4)画像効果
 2 フィルムと増感紙(竹内浩美)
  1.医用フィルムの種類
  2.直接撮影用X線フィルム
   1)構造
   2)組成(ハロゲン化銀,ゼラチン,ほか)
   3)感色性(フィルム/増感紙システム)
   4)直接撮影用フィルムのタイプ
  3.間接撮影用X線フィルム
  4.マンモグラフィ用フィルム
  5.画像記録用フィルム
   1)構造
   2)ドライ処理フィルム
   3)各種ドライ画像記録方式
  6.支持体(ベース)
  7.増感紙
   1)蛍光増感紙の構造
   2)蛍光体
   3)デジタル画像入力の蛍光体
 3 感光機構と現像機構(小水 満)
  1.感光機構
   1)概説
   2)ハロゲン化銀の感光物性
   3)増感
  2.現像機構
   1)概説
   2)現像の熱力学
   3)現像速度
 4 写真処理とその化学
  1.現像
   1)現像液の成分
   2)現像条件
  2.定着
  3.その他の写真処理
   1)補助処理
   2)特殊処理
 5 自動現像機とその管理(竹内浩美)
  1.自動現像機処理
   1)自動現像機の処理時間
   2)迅速処理化の技術
   3)自動現像機の構造
  2.自動現像機処理の管理
   1)現像スタータの役割
   2)現像液の管理法
   3)定着液の管理法
  3.自動現像機管理(濃度管理法)
   1)現像性能の変動要因
   2)濃度管理法で必要な用具
   3)管理用に使用するフィルム
   4)露光
   5)現像
   6)濃度測定と管理濃度点
   7)管理図の作成と管理限界の決定
  4.自動現像処理の動向
 6 放射線写真のセンシトメトリー(小水 満)
  1.X線センシトメトリー
   1)センシトメトリー
   2)H&D曲線
  2.写真濃度
   1)写真濃度の定義
   2)拡散光濃度と平行光濃度
  3.相対露光量(比照射量)
   1)時間スケール法
   2)強度スケール法
   3)光センシトメータ法
  4.感光材料特性
   1)カブリ
   2)感度
   3)コントラスト,階調度,ガンマ,平均階調度
   4)ラチチュード

 参考文献
 索引
  和文索引
  欧文索引