やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

日本語版2005 訳者の序
 本書の初版は2000年6月の発刊であった.今版が第4版である.原著の改訂が毎年という予定であるので,日本語版も同時に改訂していけるよう,訳者一同努力している.
 第4版は初版発刊以降,アメリカで発売中止になった医薬品の相互作用を削除し,新たに確立された相互作用を追加している.
 相互作用の検索をいかに簡単に行うかを考え,今版も,原著にはない早見表を目次代わりに付した.相互作用の早見検索表として利用していただきたい.
 医薬品の相互作用に基づく有害反応の検索,回避には,ぜひ本書を有効に活用していただきたい.本書は,臨床で重要な相互作用を簡潔に要点のみ収載してある.さらに,その相互作用を回避するための方法および代替薬,有害反応の発現を事前に見つけるためのモニター項目について記載している.今回もまた,正確な内容であることを心がけたが,お気づきの点など,ぜひ,ご一報いただきたく,お願いする次第である.
 2005年9月20日
 訳者を代表して 菅家甫子

第1版 訳者の序
 今日,「薬物相互作用」といえばDr.Hanstenといわれるほど,彼はこの分野における第一人者として,世界的に知られている.
 訳者の一人,菅家が初めてDr.Hanstenの労作,“Drug Interaction”に出会ったのは1970年のことであった.当時勤務していた大学の教員数名で,その本を翻訳した.それが,Dr.Hanstenの日本における最初の著書の紹介であった.訳者一同は日本に「薬物相互作用」の理解と普及に多少なりとも貢献したものと考えた.以来,原著改訂版が出るごとに翻訳させていただいた.
 共立薬科大学大学院に臨床薬学特論を開設したのは,1996年であった.附属病院をもたない大学で,最良の臨床薬学教育を目指したとき,アメリカの臨床薬剤師の業務を体験させたいと考えるのは当然のことであった.そこで,100年以上の歴史をもち,臨床薬学教育の最先端を行っているワシントン大学薬学部(シアトル)と学術交流協定を締結させていただいた.
 そのワシントン大学で偶然にもHansten教授と初めてお会いしたのが,1999年の夏であった.昔からのいきさつをお話している最中に,本書,“The Top100Drug Interactions”を著作編集していることを伺い,私が日本における翻訳権をいただくことになった.
 早速,共立薬科大学臨床薬学教室員3名で作業を進め,完成させた.途中,何カ所にもわたって疑問が生じ,E-mailでDr.Hanstenと討議を重ねながら,翻訳は正確な内容を心がけた.
 本書が医療現場および医学・薬学の場において,少しでも活用されるならば,訳者一同の喜びとするところである.
 2000年5月20日
 訳者を代表して 菅家甫子

日本語版への序
 本書が日本語へ翻訳出版されたことは,われわれにとり大変名誉なことと感激しています.われわれは数年前から,臨床上どの薬物相互作用が最重要であるか知りたいというワシントン大学の学生の指針として,本書をまとめ始めました.本書の主目的は,薬物相互作用の臨床的なマネジメントに対し指針を提供することです.単に2つの薬剤が相互作用を起こすということを知っているだけでは実践の場ではあまり使いものにはなりません.その薬物相互作用に対する有効なマネジメントを導入して初めて利用できるのです.
 われわれは共立薬科大学の菅家甫子教授はじめ教室員に,本書の翻訳に尽力いただいたことに感謝するとともに,一緒に仕事ができたことを光栄に思います.
 われわれは本書が日本の皆様にとって,薬物-薬物相互作用による有害作用を予防するのに役立つことを希望してやみません.
 2000年4月1日
 Philip Hansten
 John Horn
 University of Washington

原書出版社から
 本書は著者によって全編編集著作されたものである.本書は薬物相互作用の情報として,他の書籍にとってかわることを意図するものではない.
 本書の著者・訳者ならびに出版者は,収載情報の正確さを確保するために細心の注意をはらったが,患者本人のもつファクターを考慮し,その分野の新たな進歩を考慮したうえで,当該記載事項の妥当性を評価するのは,読者の責任においてしていただきたい.著者・訳者ならびに出版者は本書に記載されている情報を用いた結果,いかなる過誤や損害が起こっても,責任は一切負わない.
 copyrightC2002by H & H Publications.
 本書のいかなる部分も,無断複製,検索システムへの取り込み,あるいはデジタル,電子機器,光学的,コピー機,あるいは音声による録音などを含む,あらゆる手段での,あらゆる形での転載を禁じる.本書発行所に文書で許諾を請求しなければならない.
 16921 76th Ave West,Edmonds,WA98026USA.
 ISBN 0-9674718-6-9

原書の序
 臨床上重要な薬物相互作用を,重要でないものと区別することは困難なことが多い.患者における薬物相互作用の決定的な疫学的研究の不足により,どの相互作用が実際に公衆衛生上,最も危険であると確信をもって決めつけるのは不可能である.この冊子は臨床業務において無視すべきでない薬物相互作用を明らかにすることを目指している.当該冊子の第1版は約100の個々の相互作用各条を収載した.以後,実質的に増加し,現版では約3,000の個々の薬物-薬物相互作用を収載するはこびとなった.
 相互作用は「薬物相互作用を受ける薬剤」と「薬物相互作用を引き起こす薬剤」に従って記載されている.「薬物相互作用を引き起こす薬剤」は作用機序(たとえば,酵素阻害薬とか酵素誘導薬というように)によりグループ化され,それぞれに対応する「薬物相互作用を受ける薬剤」との相互作用のタイプを示すようにした.索引は薬剤が一般名でリストアップされている.本冊子は薬物相互作用の指針となることを目指している.読者はp.269〜281のシトクロムP-450の表を参照し,各条に収載されていない組み合わせについて,相互作用の可能性をチェックするよう心がけてください.

【本書の利用の手引き】
 ◆本書は薬物相互作用の運用上の分類を採用している(p.xiiの説明を参照).
 ◆薬物相互作用の重篤度は患者間で大きく差があるので(6〜8倍の差),予測することは通常困難である.このような理由から,相互作用の大きさを定義づけるような特別の数値は一般的には記載していない.治療域の狭い薬剤の血漿濃度の中等度の変化や影響を受けやすい素因をもつ患者の変化は重篤な有害な結果をもたらす.
 ◆論文として未発表の相互作用のいくつかも,2薬剤の既知の性状に基づいて,本書に含まれている(p.269〜281のシトクロムP-450の表を参照).
 ◆有害薬物相互作用を回避するために相互作用を起こさない代替薬を用いることは多くの場合望ましいことであるが,本書中の相互作用の中には絶対禁忌と表示されているものがわずかだがある.処方者は相互作用を起こす薬剤を併用投与することの危険性と有益性の比をぜひ慎重に考慮していただきたい.
 ◆「薬物相互作用を受ける薬剤」および/あるいは「相互作用を引き起こす薬剤」に対し,相互作用を起こさない代替薬を「コメント」や「マネジメント」の欄に記載しようと心がけた.処方者は代替薬を選択する前に,患者の全変動因子を考慮すべきである.処方時,必要な情報を製品ラベル上の記載から入手してもらいたい.
 ◆本書中には,食物,喫煙,および主に外科手術中に使われる薬剤との相互作用はほとんど含まれていない.相加的に働く中枢神経薬あるいは骨髄抑制作用薬のような予想できる薬理学的相互作用や,よい結果を期待しての意図的な相互作用なども含まれていない.
 ◆本書の利用者は,以下にあげるより詳細な薬物相互作用の書籍を利用されるとよいであろう.
 Hansten & Horn's Drug Interactions Analysis and Management.(Facts and Comparisons,Inc.)
 その注文,または薬物相互作用の機序に関する情報を得たいか,あるいは相互作用の総説を読みたいときは,www.hanstenandhorn.comを活用してください.

【薬物相互作用の実践上の分類】
 薬物相互作用の分類システムを臨床で役立つようにするため,薬物相互作用財団(本部:オランダ)では次頁のようなシステムをつくりあげた.このシステムは薬物相互作用をその相互作用のマネジメント(これは一般に,医療人が取り組むべき最重要点)に基づいて分類するものである.従来のシステムは臨床上の意義を推定し,それに基づいて分類していたが,本システムでは,臨床家が容易に使用でき,薬剤選択の手段として,より大きな利益が見いだせるよう工夫した.
 【注意】本書には次の5段階のうち,クラス1,2,3の相互作用のみを収載している.

相互作用実践上の分類
 クラス1:併用を避ける(併用した場合の危険性が利益を上回る).
 クラス2:通常は併用を避ける(特別な事情がある場合にのみ併用).
  ●一方あるいは両薬剤にはっきりこれといえる代替薬がある場合の相互作用.
  ●併用により利益が危険性を大幅に上回らないと判断されるならば,併用を回避すべき相互作用.
 クラス3:危険性を最小化(危険性を評価し,必要に応じ次のひとつ以上の対処法をとる).
  ●代替薬を考慮:相互作用があまり起こりそうにない代替薬がある.
  ●回避:相互作用を最小化するよう対処する(併用を避けずに).
  ●モニター:早期の発見により有害な結末に至る危険性を最小化できる.
 クラス4:特別の警戒を必要としない(有害な結末となる危険性が小さい).
 クラス5:無視(根拠からは相互作用しない).
序および利用の手引き
薬物相互作用早見表(クラス分け)
薬物相互作用トップ100(五十音順+欧文)
 付録1 抗菌薬のワルファリンに及ぼす影響
 付録2 QT間隔を延長させる薬剤との薬物相互作用
 付録3 シトクロムP-450酵素の遺伝的多型性
 付録4 薬用植物との相互作用
 付録5 シトクロムP-450酵素と薬物相互作用
  シトクロムP-450の基質薬,阻害薬,誘導薬およびP-糖蛋白のHansten/Hornの表
薬剤名索引