やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第3版の序

 国民総医療費は年々増大し,平成9年度は29兆円に達し,平成10年度は30兆円に達する予想です.一方,わが国の合計特殊出生率は平成9年は1.39と1.4を割り込み,21世紀初頭には,若年労働者の激減とともに,65歳以上の人口が25%に達するという超高齢化社会に直面することが予想されます.このことは,世界人口56億人から21世紀には100億人という異常事態と裏腹に,わが国は,医療,年金,福祉の負担増に対し国を挙げての重点施策が大きな課題であり,これを放置すると,医療のみならず,日本経済の空洞化をもたらします.
 医療施設,医療技術は世界的高水準に達しましたが,保健医療費,年金費の負担増に伴う診療報酬の抑制,薬価基準の引下げによって,病院,診療所の経営は,厳しい環境に落ち込んできました.
 このような厳しい環境のなかで,69%の病院が赤字経営('95年6月全国公私病院連盟調査)になり,病院経営の抜本的見直しが必要とされています.また,2000年4月から導入される介護保険法施行にあたって,病医院はこれに対応して在宅介護支援業務などに参入し,福祉社会に貢献する責務があります.これからの病医院では,自主経理に基づく経営管理制度を確立し,経営の合理化を進める必要があります.
 本書は,病医院の経営の基盤となる会計と経営分析について学ぼうとする経営者や医業事務担当者の方々のために,わかりやすく解説することを目的として発刊しました.病医院の会計と経営の入門書として役立てば幸いです.この本の編集にあたっては,医歯薬出版編集スタッフのご協力に感謝します.
 なお,本書に引用する税法に関する既述は,平成11年4月末現在によっています.
 2000年2月 斎藤力夫
第3版の序
I 病医院会計はなぜ必要か

II 診療事務の実際
 1.診療事務のポイント
  1)診療事務の一般的注意事項
  2)診療収入の区分
 2.外来診療事務
  1)外来診療の窓口事務
  2)診療所の外来事務
  3)病院の外来事務
 3.入退院事務
  1)診療所の入退院事務
  2)病院の入院事務
  3)病院の退院事務
 4.保険診療請求事務
  1)医療保険制度と請求事務の仕組み
  2)保険診療の請求から支払まで
  3)保険請求の仕方
  付.診療録などの管理方法

III 病医院会計の基礎的ルール
 1.簿記の種類と会計期間
  1)簡易簿記か複式簿記か
  2)病医院の会計期間
 2.財産計算と損益計算
  1)財産とはなにか
  2)財産計算と貸借対照表
  3)損益計算の仕組み
  4)財産計算と損益計算とのつながり
 3.取引と勘定科目
  1)取引とはなにか
  2)病医院の勘定科目

IV 病医院のための複式簿記入門
 1.複式簿記の手ほどき
  1)バランスシートとソントク
  2)財産の変化と損益
 2.仕訳の原理と勘定科目
  1)現金が入ったら左,出たら右
  2)仕訳は簿記の出発点
  3)勘定科目の種類
  4)仕訳の演習
 3.帳簿の種類と記帳方法
  1)主要簿と補助簿の役割
  2)仕訳から総勘定元帳へ
  3)補助簿の様式と元帳との関連
 4.自動チェック──試算表
  1)試算表とは
  2)試算表の検証能力
  3)元帳(勘定)残高の原則
 5.決算のすすめ方
  1)決算の手続
  2)精算表の作り方
  3)損益勘定の整理と帳簿の締切
 6.決算書の作成
  1)貸借対照表(バランスシート)
  2)損益計算書
  3)利益処分はどうするか
 7.総合演習問題
  1)総合取引例
  2)仕訳から精算表までの解答

V 勘定科目の実務
 1.収益に属する科目
  1)診療収入
  2)その他の収益
 2.費用に属する科目
  1)薬品材料費
  2)給料手当
  3)物件費および経費
  4)医業外費用と特別損失
  5)引当金
 3.資産に属する科目
  1)流動資産
  2)固定資産
 4.負債に属する科目
  1)流動負債
  2)引当金
  3)固定負債
 5.資本に属する科目
  1)資本金
  2)資本剰余金
  3)利益剰余金
 6.医療施設と減価償却
  1)固定資産の範囲
  2)減価償却の方法
  3)耐用年数と償却限度
  4)減価償却方法の変更
  5)特別割増償却
  6)耐用年数表
 7.保険診療に関する特例計算
  1)保険診療の特例制度
  2)保険診療の特例を使った計算方法

VI 管理会計の必要性
 1.管理システムと財務会計
 2.医事システム
 3.看護業務
 4.その他の管理業務
  1)医療機器の稼働状況
  2)物品管理
  3)部門別採算管理

VII 経営分析の手引き
 1.医業の経営分析とは
  1)経営分析の課題
 2.総合的な分析の仕方
  1)決算書類の比較分析
  2)比率による総合分析
 3.採算性分析の仕方
  1)損益分岐点による分析
  2)固定費と変動費の求め方
  3)損益分岐点の応用例
 4.資金分析の仕方
  1)資金運用表の利用
  2)資金繰表の作り方
  3)資金運用の計画
 5.生産性の分析
  1)医療の生産性とは
  2)付加価値とは
  3)付加価値分析の仕方

VIII 病院管理部門機能評価調査項目
 1.経営およびマネージメントのための調査項目
 2.事務部門のための調査項目

付録
病院会計準則
病院会計準則注解
索引

参考
   1 医療機関
   2 政府管掌・組合管掌・国民健保
   3 保険診療報酬単価
   4 診療録,帳票などの保存期間
   5 簿記上の符号
   6 医療法人