やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大を受けて
検査業務に従事されている皆さんへ

2020年5月7日公開

【執筆】
松本哲哉(国際医療福祉大学医学部感染症学講座 主任教授/国際医療福祉大学成田病院感染制御部 部長)

 新型コロナウイルスの感染拡大により,多くの医療現場は逼迫した状態に陥っている.当初,この感染症は未知のウイルスであったが,ウイルスが確定した後は比較的早くからPCR法が利用できるようになった.しかし,初期の時点では処理できる検体数が少なく,毎日のようにマスコミはPCR検査体制の充実を訴えていた.このように感染症の診療において検査は欠かせないものであり,それが医療の根幹にかかわることもある.
 本学でも厚生労働省の求めに応じてPCRの検査体制を早期に築き,クルーズ船の乗員・乗客の検査も対応したが,実際に検査に従事した方々は泊まり込むこともあった.検査に従事する人達の献身的な対応に本当に頭が下がる思いである.
 現在,発熱外来で患者さんに接していると,PCR検査の要望がどれだけ強いのかが痛感される.診察後に「それでは新型コロナの検査をしましょう」と話すと,「本当にやってもらえるんですか?」と驚きと感謝が混じった反応が返ってくる.それを聞くと,この患者さんはPCRの検査を受けるのにどれだけ大変な思いをしたのだろうと悲しくなり,まだ容易に検査が受けられない状態が続いているのかと思うとやるせなくなる.
 PCR検査ばかりがクローズアップされるが,臨床検査の現場で注意を払わなければいけないのはそれだけではない.直接,PCR検査に携わっておられない臨床検査技師の方々も,少なからず新型コロナウイルスの影響を受けておられるであろう.すでに流行地域では,一般の診療を受けに来た患者さんが新型コロナウイルスに感染していたとしてもおかしくない状況にある.そうなると,患者検体の取り扱いや生理検査の際の感染リスクも考慮しなければいけなくなる.
 院内感染が報道された病院に勤めているだけで,職員の子どもが保育園から受け入れを拒否されたり,家族への感染を恐れて自宅に帰れないということも起きている.このような過酷な状況に置かれると,離職者が出てますます医療崩壊につながっていく.
 早くこの感染症が収束して,本来あるべき診療体制に一日も早く戻ってほしいと思う.それまでは,検査業務に携わっておられる方々も細心の注意を払ってみずからの感染を防ぎ,いろいろな苦難に挫けず,無事に業務を遂行されることを願ってやまない.

「Medical Technology」2020年7月号(48巻7号)では緊急企画として,検査室の感染対策にお役立ていただけるよう,2015年に発行された小誌臨時増刊号『必携 検査室の感染管理』(43巻13号)より一部の論文を抜粋し,再構成して掲載いたします.