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259巻5号 2016年10月29日
第5土曜特集マクロファージのすべて
序論
第5土曜特集 マクロファージのすべて 序論 松島綱治
 企画の背景・意図
 著者にとって,アメリカNational Cancer Institute/National Institutes of Health(NCI/NIH)での1985 年のマクロファージ由来サイトカインinterleukin−1β(IL−1β)の精製と活性体の同定(ICE/Caspase 1 cleavage site の決定),1987 年・1989 年の白血球遊走因子・ケモカインのプロトタイプIL−8(CXCL8)とMCAF/MCP−1(CCL2)の発見からおよそ30年が経過した.また1990 年に,アメリカNCI/NIH から金沢に戻り,国際マクロファージ分子細胞生物学シンポジウム(International Symposium of Molecular Cell Biology of Macrophages:MMCB)を組織・開催してから25 年が経過し,この間マクロファージ研究は大きく進展し,様変わりをした.この分野から世界の炎症・免疫学を牽引する研究者が数多く育ち,マクロファージ研究が炎症・免疫学の重要分野と認識されるようになった.今回,『医学のあゆみ』から“マクロファージのすべて”に関して取りまとめを依頼されるにあたり,著者の研究・学会活動のひとつの区切りとして本企画を提案させていただいた.
 MMCB 開始初期のおもなテーマは,マクロファージ由来サイトカインとしての代表格であるIL−1,IL−6 などの遺伝子発現制御,IL−1/6 受容体シグナル伝達機序であり,その発展として,審良らによるToll−like receptor リガンドの同定と細胞内シグナル伝達機序の解明があった.一方,MMCB 発足時から国際的重要テーマとして高橋・内藤らが唱えた腹腔マクロファージ,肝Kupffer 細胞などの組織マクロファージが卵黄?マクロファージに由来するのか,それともvan Furth らが唱え欧米では通説となっていた骨髄由来単球由来説が正しいのかを重要テーマとして設定した(その結末詳細は,本特集の樗木「マクロファージ・樹状細胞の起源と多様性」,内藤「Kupffer 細胞」,上羽「マクロファージの生体内ダイナミズムとケモカイン,接着因子による制御」,北沢ら「組織マクロファージ:総論」の稿を参照).
 ケモカインは,1990 年代にゲノム情報をもとにつぎつぎと発見され,炎症のみならず免疫応答・免疫組織・造血の場の形成にも深くかかわる分子として認識されるようになった.そうしたなかで,炎症・自然免疫の場と獲得免疫応答の場であるリンパ組織がケモカインの制御下で,組織からリンパ管をたどって移動する抗原提示細胞(樹状細胞)により連動すること(炎症・自然免疫と獲得免疫の連結という新しい概念),ならびに炎症免疫応答解析の固定病理標本を観察するスナップショット的静止画像から,リアルタイムでの動的解析に基づく理解にパラダイムシフトをもたらした.
 炎症惹起・マクロファージ活性化物質とは,病原菌由来物質のみならず,死細胞などから放出される核酸・核蛋白質・異常蛋白質,生理活性物質なども含まれ,それらを認識するシステムが自然免疫細胞に存在することが明らかになり,sterile inflammation(無菌的炎症)という概念も誕生した.また,IL−1βの前駆体をプロセスするCaspase 1 活性化細胞内システム・インフラマゾームの存在が発見され,その構成分子遺伝子変異による恒常的異常産生がもたらす疾患として,自己炎症(autoinflammation)症候群の存在が明らかになった.
 これらのマクロファージ基礎研究は臨床医学にも大きく貢献した.マクロファージがおもに産生するサイトカインに対する生物製剤,TNF−α阻害抗体,IL−6 受容体抗体などは関節リウマチ治療,炎症性腸疾患などの炎症・免疫疾患治療を一変させた.また,自己炎症症候群という新しい疾患概念の誕生とともに,その基盤となるIL−1βを阻害するIL−1Ra,IL−1β阻害抗体はCAPS(cryopyrin−associated periodic syndrome),家族性地中海熱,Behcet 病などの希少疾患に劇的に奏効するのみならず,糖尿病,心不全治療薬としても期待されている.また,IL−1α阻害抗体は上皮がんに伴う悪液質治療薬としての臨床治験が進行している.
 マクロファージは,さまざまなウイルス・細菌・寄生虫感染症に対する生体防御において非常に重要な役割を有する一方,さまざまな慢性炎症・自己免疫疾患にも深くかかわる.近年,がん治療において免疫療法が再認識されているが,がん組織におけるマクロファージは腫瘍会合性マクロファージ・骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)とよばれ免疫抑制にかかわるとされ,その阻害剤開発がまたれる.また,マクロファージ・樹状細胞自らがん化する場合がある.

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目 次
【基礎】
マクロファージ・樹状細胞の起源と多様性……樗木俊聡 詳細
マクロファージの生体内ダイナミズムとケモカイン,接着因子による制御……上羽悟史 詳細
M2マクロファージの機能・多様性──疾患特異性とマクロファージサブタイプとの関連……佐藤荘 詳細
IL-1ファミリーサイトカインとTNF……向田直史 詳細
炎症性サイトカインIL-6とその転写後調節……吉永正憲・竹内理 詳細
死細胞の認識に関与する受容体とその応答……本村良知 詳細
非自己認識受容体シグナルとその臨床応用……城内直・石井健 詳細
マクロファージの代謝リプログラミングと制御……西川恵三 詳細
酸化ストレスシグナルと8-ニトロ-cGMPによる感染防御機構……笠松真吾・他 詳細
マクロファージとhypoxia inducible factor(HIF)……藤坂志帆・戸邉一之 詳細
【組織マクロファージ】
組織マクロファージ:総論……北沢祐介・松野健二郎 詳細
肺胞マクロファージ……鈴木拓児 詳細
Kupffer細胞……内藤眞 詳細
腹腔マクロファージ研究の進歩……岡部泰賢 詳細
ミクログリア:正常と病態……山中宏二 詳細
ランゲルハンス細胞――マクロファージか樹状細胞か……川村龍吉 詳細
腸管マクロファージ……香山尚子・竹田潔 詳細
破骨細胞……菊田順一・石井優 詳細
リンパ臓器のマクロファージ……上田祐司・沢登祥史 詳細
【マクロファージのかかわる臨床疾患】
肥満・糖尿病・メタボリックシンドローム……伊藤美智子・小川佳宏 詳細
心臓ストレスにおける心臓マクロファージの役割……藤生克仁・小室一成 詳細
動脈硬化におけるマクロファージの多様性……大石由美子・真鍋一郎 詳細
腫瘍関連マクロファージ──がんの微小環境を大きく左右する細胞……Shand Francis Henry Warner 詳細
細胞老化とマクロファージ……早川芳弘 詳細
マクロファージ活性化症候群……横田俊平 詳細
自己炎症性症候群の原因遺伝子……安友康二 詳細
血球貪食症候群……小内伸幸・樗木俊聡 詳細
肺線維症とマクロファージ……七野成之 詳細
腎疾患とマクロファージ……岩田恭宜・和田骼u 詳細
マクロファージによる肝線維症の病態形成……柳川享世・稲垣豊 詳細
皮膚疾患におけるマクロファージの働き……中溝聡・椛島健治 詳細
関節リウマチの病態・治療とマクロファージ……田中良哉 詳細
全身性エリテマトーデスとマクロファージ……庄田宏文 詳細
多発性硬化症とマクロファージ……橋和也 詳細
HIVによるマクロファージ感染と治癒をめざす治療研究……藤野真之・森一泰 詳細
寄生虫感染症におけるマクロファージ……阿戸学 詳細
細胞内寄生菌のマクロファージ内増殖機構――リステリア,結核菌,サルモネラ,レジオネラ……光山正雄 詳細
マクロファージ,樹状細胞,組織球の腫瘍および増殖症……大島孝一 詳細
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マクロファージのすべて
259巻5号 2016年10月29日
週刊(B5判,268頁)
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