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デンタルハイジーンBOOKS
見逃さない歯科衛生士養成
虎の穴

メインテナンス&リスクコントロールの視点

卒業試験 解答解説

  • 1) 解答:a

     砂糖(糖質)の過剰摂取は,口腔内でプラークの形成を促進し,その除去を困難にする主要な要因である.これは,口腔内の細菌が砂糖を代謝して粘着性の高い細胞外多糖類を産生し,この粘着性の物質によりプラークが歯面に強固に付着するためである.その結果,強固に付着したプラークは通常のブラッシングでは除去しにくくなる.塩分はプラークの粘着性には影響せず,タンパク質はプラークの形成に直接的な影響は少ない.カルシウムは,むしろ歯の再石灰化に重要な栄養素である.

  • 2) 解答:c

     まず,正確な観察の妨げとなるプラークを完全に除去する必要がある.次に歯面を乾燥させて観察することで,エナメル質内の病変を確認する.続いて歯面を湿潤させて観察することで,象牙質内の病変を確認する.この段階で齲蝕の深さを評価することが可能である.その後,視診により光沢の有無を確認し,プローブ先端側面の触診により表面性状が平滑か粗造かを確認して活動性を評価する.
     この手順により,齲蝕の深さと活動性を適切に評価し,その後の治療方針を決定することが可能である.特に乾燥時と湿潤時の観察を順序立てて行うことで,エナメル質内と象牙質内の病変を的確に判別することができる.なお,ほかの順番では,診査効率の低下や所見の見落としリスクが高まるため,注意が必要である.

  • 3) 解答:b,d

     エナメル質初期齲蝕病変の活動性評価において,「光沢がない」かつ「粗造」である場合に活動性病変と判断する.一方,「光沢がある」「平滑」は非活動性病変の特徴である.なお, 活動性病変を放置すれば,初期齲蝕が進行する可能性が高い.口腔内環境を改善できると,活動性病変の進行は停止し非活動性病変になる.しかし,活動性病変が非活動性病変に変わったとしても,齲蝕になりやすい環境に戻れば再び活動性病変に移行し,病変は進行してしまう.そのため,活動性病変と非活動性病変をしっかり鑑別できるようになるとともに,患者さんに継続的な来院を促し,「生活習慣や口腔内環境」と「初期齲蝕病変の経過」を定期的に観察することが重要である.

  • 4) 解答:a

     齲蝕好発部位には,咬合平面に達していない小窩裂溝,歯頸部,隣接面が含まれる.
     咬合平面に達していない小窩裂溝は,プラークが停滞しやすい解剖学的形態で,歯ブラシの到達が困難であり,特に萌出途中の臼歯で好発する.
     歯頸部は,プラークが蓄積しやすく,歯肉縁に近接して清掃が難しく,特に露出根面では注意が必要である.
     隣接面は,歯間部の清掃が困難で自浄作用が働きにくいため,歯間ブラシやフロスによる清掃が必要な部位である.
     一方,舌側面は比較的自浄作用が働きやすく,唾液や舌による清掃効果があり,プラークが停滞しにくい形態のため,齲蝕好発部位とはされていない.

  • 5) 解答:c

     活動性初期根面齲蝕病変の管理において,実質欠損の深さは重要な判断基準である.深さ0.5mm未満の根面齲蝕の場合は,フッ化物塗布などによる再石灰化療法が有効で,非侵襲的な治療アプローチが可能であり,適切な予防管理により修復処置を回避できる可能性が高いとされている.一方,0.5mm以上の場合は,再石灰化による十分な効果が期待できず,修復処置が必要となる可能性が高く,プラークコントロールも困難となる.このため,実質欠損が0.5mm未満の活動性初期根面齲蝕病変では,再石灰化療法による齲蝕の管理が可能とされており,この基準は臨床的な治療方針の決定において重要な指標である.

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  • 6) 解答:b

     根分岐部病変の分類において,0度は根分岐部への歯周プローブの挿入が不可能であり,病変がない正常な状態を示す.
     T度は水平的な歯周組織破壊が3mm未満で,初期の段階であるが,根分岐部病変における対応の重要なポイントである.この段階は適切な治療介入により進行を防止できる時期であるため,歯科衛生士による定期的なプロービング検査が重要である.
     これは,T度の根分岐部病変は歯周基本治療により,根分岐部病変を進行させずに歯の延命を図ることが可能だからである.
     U度は水平的な歯周組織破壊が3mm以上だが根分岐部を貫通していない状態で,明確な病変として認識できる段階である.
     V度は根分岐部を完全に貫通しており,もっとも重症な段階である.
     歯科衛生士は特にT度の段階での発見が重要である.この段階で発見し適切な治療を開始することで,より重症な段階への進行を防ぐことができるため,予防的観点からも重要な時期である.

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  • 7) 解答:a

     咬合性外傷の特徴的な所見として,歯の動揺が1度以上,X線所見での歯根膜腔の拡大および垂直性吸収,フレミタス,歯の病的移動が重要である.これらは過度な咬合力により歯周組織に力が加わることで生じる変化を示している.咬合性外傷を疑うほかの所見には,過度の咬耗,歯の破折,X線所見での歯槽硬線の喪失・肥厚,歯根吸収,セメント質の肥厚などがある.
     一方,歯肉退縮は咬合性外傷に特異的な所見ではない.歯肉退縮の原因としては,加齢,強すぎるブラッシング圧,歯周病,不適切な歯列などがあげられる.したがって,歯肉退縮のみでは咬合性外傷の診断的価値は低く,ほかの特徴的な所見と合わせて総合的に判断する必要がある.

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  • 8) 解答:d

     Tooth Wearの種類には,咬耗,摩耗,酸蝕,Erosive Tooth Wearがある.咬耗は歯と歯の接触により歯が機械的にすり減ることで,おもに咬合面や切縁に認められる.摩耗は研磨剤含有歯磨剤を使用したブラッシングなどにより機械的に歯質が削られることで,一般的には歯頸部に生じる.くさび状欠損や皿状欠損が代表例である.酸蝕は細菌が産生する以外の酸によって化学的に歯が溶けることで,酸に触れるすべての歯面に起こる.酸が接触するエナメル質の溶解と象牙出の露出および歯頸部エナメル質の残存という所見を示す.
     Erosive Tooth Wearは酸蝕に摩耗や咬耗が重なることで起こり,酸蝕単独よりも歯質の喪失は重篤である.特徴として,喪失は多数歯に及び,摩耗単独では減らない歯冠部エナメル質が広範囲で喪失し象牙質が露出する一方で,歯肉縁に沿って健全エナメル質が一層残ることがあげられている.
     酸蝕やErosive Tooth Wearを生じる要因は,外的要因と内的要因に分類される.外的要因には炭酸水などの飲食由来の酸,酸性の内服薬,環境中の酸があげられる.内的要因としては反復性嘔吐,逆流,反芻による胃酸(pH1.0〜2.0)もしくは胃内容物(pH3.8)の口腔内への還流が考えられる.

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  • 9) 解答:a,c

     根尖部歯肉に認められる瘻孔と根尖孔を中心とした同心円状のX線透過像は根尖性歯周炎の所見である.歯根破折に特有の所見は,歯肉辺縁に近い瘻孔,歯肉の色調の変化,1〜2カ所の限局した深い歯周ポケット,歯根を取り囲むような暈状のX線透過像である.したがって,根尖性歯周炎などの病変と鑑別すために,歯根破折を示唆する特徴的な所見を正確に把握することが重要である.

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  • 10) 解答:d

     異常習癖であるブラキシズムは,上下の歯を左右または前後に擦り合わせるグラインディング(歯ぎしり),歯を強く噛みしめるクレンチング(食いしばり),連続的にカチカチと噛み合わせるタッピングに分類される.
     一方,シャイニングスポットは咬耗により歯の表面が滑沢になるという結果(臨床所見)であり,異常習癖そのものではない.

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  • 11) 解答:c

     口腔内外のチェック項目において,口腔内チェックに該当するのは口唇と口唇粘膜のチェックである.口腔内チェックは,口唇と口唇粘膜のチェック以外に,頰粘膜のチェック,硬口蓋と軟口蓋のチェック,舌のチェック,口腔底のチェック,歯肉および歯槽粘膜のチェックがある.これらのチェックは口腔内を見落としなく観察し,炎症,腫瘍,潰瘍などの有無を確認する重要な検査項目である.
     一方,ほかの選択肢はすべて口腔外チェックに分類される.頭頸部の非対称性は顔貌や腫脹などの外観の確認を行い,頭部・頸部のチェックはリンパ節腫脹や腫瘤の触診を含み,顎関節のチェックでは開閉口時の顎運動や関節音,疼痛の評価を行う.このように,口腔内と口腔外の両方のチェックを組み合わせることで,総合的な口腔の健康状態を評価することができる.

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  • 12) 解答:a

     口腔カンジダ症は,原発性と二次性に大きく分類される.原発性口腔カンジダ症には,急性偽膜性口腔カンジダ症,慢性萎縮性口腔カンジダ症,慢性肥厚性口腔カンジダ症の3つの病型が含まれる.これに対し,二次性口腔カンジダ症は免疫異常を背景に口腔以外の部位のカンジダ症を合併するものであり,原発性とは区別される.そのため,二次性口腔カンジダ症は原発性口腔カンジダ症には分類されないことから,これらを適切に鑑別することは治療方針の決定において重要となる.

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  • 13) 解答:b,c

     TCHの判定において,初回の検査では,まず舌圧痕などの他覚的所見の確認と問診票による評価が効率的である.舌圧痕は客観的な臨床所見として観察でき,問診票は,TCHの有無と,TCHがあるならばいつ行っているかを把握できる.
     一方,閉眼判定法や行動診察法は,より詳細な検査として位置づけられ,通常は初回の検査後,TCHが疑われる場合に実施する.これらの検査には一定の時間を要し,患者さんへの説明や協力も必要となる.

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  • 14) 解答:c

     >0.7mL/分の刺激唾液分泌量が正常で,これを下回る分泌量が唾液分泌低下である.

  • 15) 解答:a

     腺型シェーグレン症候群は,ほかの膠原病を合併せず唾液腺や涙腺などの外分泌腺のみが障害される病態であり,一次シェーグレン症候群に分類される.一次シェーグレン症候群はほかの自己免疫疾患を伴わないのに対し,二次シェーグレン症候群は関節リウマチなどの自己免疫疾患に合併して発症する.

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  • 16) 解答:a,b,c,d

     当院では,歯周病について,PPD,BOP,歯肉辺縁からの出血,そしてPCRを確認している.プロービング値が3〜4mm以下,BOPが10%未満,歯肉辺縁からの出血がみられない,PCRが20%以下であることを歯周治療の目標としている.

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ハイ!

よくぞここまで頑張った! だが,学びの道に終わりはない! 引き続きいっしょに頑張っていくのニャ!

虎師匠・虎DH