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深井保健科学研究所 第15回コロキウム 開催される
8月20日(土),東京国際フォーラム(東京都千代田区)にて,深井保健科学研究所 第15回コロキウムが開催された.テーマは「2050年のヘルスケア」であった(大会長:深井穫博氏・埼玉県開業,深井保健科学研究所長). 
大会長:深井穫博氏
  まず「最新トピックス」と題し,竹内研時氏(九州大)・佐藤遊洋
氏(東北大)・岡本悦司氏(福知山公立大)が登壇.
 竹内氏は「臼歯部の噛み合わせと高齢者の身体機能の関連」と題し,天然歯の数ではなく人工歯も含めた噛み合わせの数が身体機能の自立には重要であると解説.高齢期の身体治療の低下に対する歯科医療の可能性について述べた.佐藤氏は「口腔保健とIADLとの関連に関するコホート研究」と題し,口腔状態の悪化は社会的機能の低下・高次機能の低下のみならず閉じこもりの誘発を招くと解説.歯の本数と義歯の未使用者は,統計学的に有意に引きこもりになりやすいことを論じた.岡本氏は「知的障害児の増加と出生時体重ならびに母年齢との関連」と題し,精神障害児が近年急増していることについて解説.高齢出産は低体重出産を招き,低体重で産まれた児は精神発達障害になりやすいことを示唆した.
 続いて「2050年の将来予測」と題し,神原正樹氏(大阪歯科大,神原グローバルヘルス研究所),深井穫博氏(深井保健科学研究所)が登壇.
 神原氏は「歯科医学教育を考える」と題し,現代の歯科教育は治療の主な対象が齲蝕であった時代のカリキュラムであり,現在の多様なニーズが求められる歯科治療には適していないと解説.予防歯科など変化していく要求に対応できる,反応性に富む教育モデルの作成が必要であると注意を喚起した.深井氏は「2050年のヘルスサイエンス・ヘルスケアと健康創造」と題し,人口構造.疫病構造・技術進歩・社会的ニーズの変化から,現在の治療中心の歯科学は健康創造を中心とした歯科学に変化すると解説.2050年の歯科医療機関は予防・健康増進中心と歯科疾患・口腔機能治療中心に機能分化していくと予想した.
左: 神原正樹氏 右:深井穫博氏
 続いて「歯科医療ニーズと歯科専門職数」と題し,安藤雄一氏(国立保健医療科学院),恒石美登里氏(日本歯科総合研究機構),大島克郎氏(日本歯科大)が登壇.安藤氏は「歯科医療ニーズと歯科医師需給」と題し,2050年では8020の達成は当然のモノになっていると予想.一方で2050年では,高齢者の歯の本数が多くなっているため歯科医院への来院数が増加する点および歯科医師の数が減少する点から,需要に対して歯科医師が足りなくなると注意を喚起した.恒石氏は「NDBからみる歯科医療・口腔保健ニーズ」と題し,国が保有するレセプトなどのビッグデータの活用方法について解説.膨大な診療データにいかに意味を見いだし,有効活用するかについて論を展開した.大島氏は「補綴治療ニーズに関する将来予測」と題し,減少する歯科技工士は2050年にどのようになっているのかについて解説.作業の大半はデジタル化され,微細な調整などが歯科技工士の主な作業になると述べた.
左:大島氏 中央:恒石氏 右:安藤氏
 続いて「健康課題と歯科医療・口腔保健」と題し,島崎善浩氏(愛知学院大),上野尚雄氏(国立かん研究センター),片岡竜太氏(昭和大),花田信弘氏(鶴見大),野村義明氏(鶴見大)が登壇.島崎氏は「健康長寿高齢者」と題し,高齢者の口腔環境の悪化は低栄養を招き,低栄養は筋力の低下を招き,そして筋力の低下はフレイルや易感染を招くと解説した.上野氏は「NCDsの最前線と将来予測」と題し,2050年までにはがんの治療技術および早期発見技術より,がんによる死亡率が減少すると解説.ブラッシングは上部消化管がんのリスクを統計学的に有意に減らすことより,がん予防に寄与する口腔衛生のあり方について述べた.片岡氏は「健康長寿社会に向けての他職種連携教育」と題し,ITを活用したオンライン教育の必要性について解説.自職種の限界を知り,他職種の視点を取り組み解決を試みるクリティカルシンキング能力を養うべきと論じた.花田氏は「2050年のヘルスケア像」と題し,健康を支えるための社会環境の整備が必要であると解説.医薬看などと連携し,地域コミュニティに根ざす,かかりつけの機関の重要性について述べた.野村氏は「高齢者の食事形態」と題し,要介護度と咬合接触には相関性があると解説.少数歯残存の高齢者には義歯の利用が全身に好影響を与える可能性を示唆した.
 最後にワークショップとして,参加者が全6グループに分かれ,①歯科医院のあり方の変化 ②歯学部のあり方の変化 に関して予測し,それらを達成するために必要な研究課題について議論した.また,各グループでまとめた予測について,参加者全体による活発な討論が行われた.
グループに分かれ,討論している様子

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