6 月1 日(日),東京都内にて,スタディグループ救歯会主催講演会「その人にとっての好ましい咬合像の付与の仕方について」が,長谷川成男氏(元明倫短期大学教授,元東京医科歯科大学教授)を講師に迎え,50名の参加者のもと開催された.
氏の長年にわたる咬合に関する研究成果を,貴重な研究秘話とともに紐解きながら,咬合をめぐる臨床上のさまざまな現象について一つひとつ丁寧に解説を加えられた.特に,臨床における咬合の個別性の捉え方や,咬頭嵌合位の診断の重要性,さらには間接法操作における誤差の理解,近似再現という限界を理解したうえでの咬合器の選択と活用法等について,会場からの質問を受けての白熱した議論が展開された.
さらに,臨床症例の緻密な分析の積み重ねこそが,咬合に関する臨床・研究に求められているとし,臨床家の多様な症例報告こそが「その人にとっての咬合像」に到達する方法論であると述べられた.
また,「咬合は,修復よりもその維持・管理に力を注ぐべきである」との言及は,顎運動・間接法操作の詳細を究めたうえでの氏の結論であるとともに,補綴治療あるいは歯科治療全般にとっての課題を鋭く指摘したものとも感じられた.