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第23回ライオンNew Yearセミナー開催される

 2014年1月26(日),津田ホール(東京都渋谷区)にて,「健康寿命の伸展をめざして―歯科衛生士が支える すこやかな心身―」をテーマに標記セミナーが開催され,歯科衛生士を中心に400名あまりの参加者を集めた.

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 最初に登壇した森谷敏夫氏(京都大学大学院 人間・環境学研究科 応用生理学研究室教授)は,「からだと心の健康づくり~体・心・脳という3つの視点から健康寿命を目指す~」と題して,種々のデータから慢性的な運動不足による肥満が体力の低下や糖尿病,心筋梗塞などの生活習慣病を惹起していると指摘.運動不足は全身疾患だけではなく,脳の認知機能や自律神経系の機能を低下させ,認知症,うつなどの発症にも関わっている可能性があると述べた.また,これらの予防のために,良質なタンパク質,糖質を含む適切な食事の摂取,また,日常の何気ない動作による運動(NEAT:Non Exercise Activity Thermogenesis)を増やすことを推奨し,運動不足に陥りがちな現代人に警鐘を鳴らした.

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 午後の講演「いつまでも美味しく味わうために」では,佐藤しづ子氏(東北大学大学院歯学研究科口腔診断学)が,味覚障害の原因とその実態について解説.味覚障害が食欲不振,栄養障害,ひいてはQOLの低下につながる可能性を指摘し,これまで全身疾患や服薬が主な原因と考えられてきた味覚障害にはドライマウス,口内炎,口腔粘膜疾患,口腔カンジダ症などの口腔疾患も密接にかかわっており,歯科の積極的なかかわりが求められていると述べた.また,特に味覚障害と関連が深い口腔疾患としてドライマウスを挙げ,そのメカニズム,対処法を詳説するとともに,高齢者にも安全な最新の対処法として,「うま味」による刺激を紹介した.

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 つづく天野敦雄氏(大阪大学大学院歯学研究科 予防歯科学教授)は,「21世紀の科学で語るペリオドントロジー」と題して講演し,歯周病の病原性が高いRed Complexは18~20歳に感染する,歯周病の発症(バイオフィルムの高病原化)は上皮の脆弱化による歯周ポケットへの血液(ヘミン鉄)の供給により起こるなど,この10年ほどで変化してきた歯周病のエビデンスを提示.細菌検査の応用や特に病原性の高いp.g菌の型の同定などにより歯周病の発症が予測できる可能性はあるものの,細胞内に生息する歯周病菌は完全には駆逐できず,歯周病に完治はないとして,「歯周病菌と歯周組織の拮抗」のバランスが崩壊しないように見守る歯科医療職の役割を強調した.

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 最後に登壇した野原幹司氏(大阪大学歯学部附属病院顎口腔機能治療部)の講演「口から食べることの素晴らしさ」では,摂食・嚥下リハビリテーションの臨床を主軸にその現状と問題点を紹介.病院においては摂食・嚥下リハへの取り組みが充実傾向にあるものの,維持期・慢性期の患者がいる施設・在宅では現場のマンパワー不足などから手薄になる傾向があり,歯科医療職が摂食・嚥下障害に気づき,摂食・嚥下治療につなげることが解決の糸口になると述べた.また,超高齢社会において爆発的に増えている認知症高齢者への摂食・嚥下リハへの取り組みが急務であり,“症状”がベースとなるこれまでの摂食・嚥下リハ臨床から,“原因”に基づいた個別の対応を考える臨床へのシフトが求められていると言及した.

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