2013年12月1日(日),日本大学歯学部付属歯科病院(東京都千代田区)にて標記セミナーが開催された.本セミナーではより満足度の高い義歯を製作するための要件や手法について,9名の歯科医師,歯科技工士による解説が行われたほか,実際に治療を受けた患者による座談会なども行われ,歯科医師や歯科技工士ら185名が参加した.
(中略)
本セミナーを主催する深水氏が「総義歯に必須の無圧印象採得法」と題して登壇.義歯製作の要件について「治療義歯を用いて形態と機能の改善を図りながら,頰粘膜や舌との関係を踏まえた力のバランスを一口腔内単位で求める必要があります」と話し,印象採得時には可塑性が大きい,あるいは粘性の低い(流動性のよい)材料を用いる,混水比は水を10%ほど多めにすることで流動性が増す,患者には氷水を使ってうがいをしてもらい印象材の温度上昇を防ぐ,といった工夫を行っていることを紹介した.
水上泰宏氏(埼玉県越谷市/MIZUKAMI.歯科技工士)の司会のもとで行われたランチョンセミナーでは,実際に深水氏が診療した8名の患者が壇に上がり,義歯の使用感についてそれぞれの見解を述べた.「食事の際に,以前の義歯は“噛める”という感想を持つことが多かったが,いまの義歯は“美味しい”と感じるようになった」との意見も上がり,義歯の完成度が患者の味覚や発音などに影響することが示唆される内容であった.
午後からは3組の歯科医師,歯科技工士が協同して取り組んだ症例のケースプレゼンテーションが行われ,総義歯治療を成功に導くための要件やゲルバー理論を応用したスプリント製作の手法,チェアサイド-ラボサイド間のコミュニケーションの重要性などが供覧された.
最後に本セミナーのまとめとして,堤氏が「治療用義歯の意味と意義」という演題で登壇.患者の多くは過去の治療から総義歯治療に対して不安感を持っていることが多いと話し,患者の主訴・要望にしっかりと耳を傾けつつ,適合性の高い義歯と最短の治療期間を達成することで,患者満足度と信頼感を高める必要があると語った.(後略)
※講演の詳細については,月刊『歯科技工』後続号のRecord記事にて報告します.