Ishiyaku Dent Web

歯科医師・歯科技工士・歯科衛生士のポータルサイト

第19回 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会学術大会開催される

 922日(日)~23日(祝),川崎医療福祉大学(岡山県倉敷市)にて,「摂食・嚥下リハビリテーション -今求められること-」をテーマに標記学術大会が開催され,5,200名を超える参加者が集った.

 

 大会初日の招待講演「The Process Model of Feeding :Recent Advases」では本領域の第一人者であるJeffreyB.Palmer氏(Johns Hopkins University,USA)が登壇.摂食・嚥下の旧来の4期連続モデル(液体やそれに準じた物性を嚥下した際の動態を基準にしたモデル)とは別の,固形物を食べることを前提とした,咀嚼から嚥下まで一連のプロセスとして発展した概念:Process Modelについて詳説.(1)補食とStage I transport(2)咀嚼,(3)Stage II transport(4)嚥下の各項目について動画等で解説し,“Eating is not drinking.”「食べると飲むとでは(神経生理が)異なる」と強調した.

看板IMG_3137.jpg

Palmer先生IMG_3143.jpg
JeffreyB.Palmer氏

 シンポジウム1「認知症患者への治療戦略」では4名が登壇.藤谷順子氏(国立国際医療研究センター病院リハビリテーション科)は「認知症の方へのコミュニケーション」をテーマに,認知症患者への医療職側の対応として,イギリスのperson centerd careやフランスのHumanitudeの概念を紹介し,個々の認知症患者のコミュニケーション障害の程度にあわせた接し方の重要性等を解説した.続く,小島千枝子氏(聖隷クリストファー大学リハビリテーション学部言語聴覚学科/ST),田中靖代氏(ナーシングホーム気の里/Ns),江頭文江氏(地域栄養ケアPEACH厚木/管理栄養士)の講演でも,患者本人が元気だったら何を望むかを考えたケアをすること,いまある機能を引き出すアプローチの重要性等が訴えられた.

 交流集会4(歯科衛生士)では,「歯科衛生士のキャリアアップとしての学会発表」について,松山美和氏(徳島大学大学院 教授)が講演.学術大会での発表や論文執筆が未経験である歯科衛生士へ向けて,その“ことはじめ”について詳説したうえで,まずは各学会認定歯科衛生士資格の取得や,本学会でのポスター発表を行うことを推薦した.

シンポ会場IMG_3146.jpg
シンポジウム会場の様子

 

 大会2日目のパネルディスカッション3「摂食・嚥下リハ:基本とコツ」では4名の演者が登壇.歯科から登壇したは大野友久氏(聖隷三方原病院リハビリテーション科歯科)は,「他職種に知ってもらいたい口腔ケア:基本とコツ」 と題し講演.「口腔ケア」は歯科界でも定義が一元化されていない現状を解説したうえで,歯科医療職が行う専門的なケアと看護師や介護職が行う口腔ケアの特徴を紹介したうえで,症例に応じた有効性や,臨床現場で現実的なチームアプローチの考え方,チーム医療に「歯科」が存在することの意味等を他職種へ向けて簡明に解説した.

 

 ランチョンセミナー7では,若林秀隆氏(横浜市立大学附属市民総合医療センターリハビリテーション科)が「Presbyphagia(老嚥)とサルコペニアの栄養管理」について講演.「老嚥」(Presbyphagia;生理現象による正常虚弱の嚥下)が進行し,誤嚥性肺炎を起こした際,適切な栄養改善,筋肉量UPを目的とした筋トレ(リハ栄養)が行われないと“サルコペニア(骨格筋・筋肉(Sarco)が減少(penia)していること)の嚥下障害”に至ると解説し,「老嚥」の段階で誤嚥性肺炎発症を防ぐ重要性や原因によってサルコペニアへの治療方針・内容が異なること等を解説した.

 

 教育講演「小児の摂食・嚥下障害への対応の問題点」には田角 勝氏(昭和大学小児科学講座)が登壇.子どもの食べる機能の発達過程を解説したうえで,食べる機能の獲得段階においてキーとなる「手づかみ食べ」は,実際の離乳食ではペースト状で適した形態とはいえないこと,現在の離乳食は介助者が“食べさせるのに都合がいい”食形態となっていることに警鐘を鳴らしたうえで,子どもの側に合わせた食材選択や,「口」だけでなく「全身状態や食環境」について配慮して対応すること,食事はつねに楽しい場であり“訓練”という表現は本来不適切であること等を訴えた.


 

  教育講演IMG_3162.jpg
教育講演会場の様子

 

 次回第20回大会は201496日(土),7日(日),京王プラザホテル(東京都新宿区)にて開催予定.5日(金)には国際シンポジウムが併催される(大会長:石川 誠氏/初台リハビリテーション病院).

 

■他のニュース記事をさがす

日付から記事をさがす
<2024年3月>
252627282912
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31123456
キーワードから記事をさがす

人気の歯科書籍(キーワード別)

歯科雑誌 最新号