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「口腔湿潤剤フォーラム」開催される

 5月12日(日),鶴見大学記念ホール(神奈川県横浜市)にて標記会が開催された.本会は日本老年歯科医学会が主催するもので,歯科医師,歯科衛生士,コデンタルスタッフを中心に,430名もの参加者を集めた.

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  会場内の様子

 会冒頭では,森戸光彦氏(鶴見大学歯学部高齢者歯科学講座・教授)が挨拶.(1)口腔ケアを「口腔のケア」とよぶこと,(2) 病態別のケアを実践すること,(3) 食べられる口づくりをすること,(4)ケアの内容で伝え合うこと,これらを提案したうえで,口腔のケアには口腔湿潤剤が欠かせないが,現在市場にはあまた製品種類があることから,患者の口腔状態ごとに正しい選択をする必要性があると述べた.
 教育講演1「口腔湿潤剤のレオロジー」では,栄弘精機(株)の新井武彦氏が登壇.物性評価機器メーカーの研究者として,(湿潤剤の口腔内への)塗布後の性質を示す粘弾性や湿潤剤に含まれる高分子ポリマーの凝集性等について解説したうえで,湿潤剤の材料物性と使用感等についてまとめた.
 教育講演2「口腔湿潤剤の原型としてのDDS(drug delivery system)」では,薬剤師である斎藤義夫氏(鶴見大学歯学部附属病院)が,鶴見大学における院内製剤3AT CMC軟膏(歯科臨床におけるアフタッチ,ケナログに相当)の歴史をもとに解説.口腔湿潤剤誕生の背景には,“口腔内”という,湿潤していて,可動域が多く,自浄性の高い特殊環境下における,DDSの活用があったことを紹介した.
 教育講演3では,柿木保明氏(九州歯科大学老年障害者歯科学分野・教授)が「口腔乾燥症の基礎と臨床」をテーマに登壇.「口腔乾燥症」と「唾液分泌量の低下」はノットイコールの関係であるとし,全身因子ともさまざまに関連する口腔乾燥症の診断・対応・考え方を解説した上で,口腔湿潤剤を効果的に使用する必要について言及した.
 教育講演4では,「オーラルマネジメントにおける口腔湿潤剤」をテーマに岸本裕充氏(兵庫医科大学歯科口腔外科・准教授)が講演.オーラルマネジメントの定義や口腔のバイタルサインとしての清浄度と湿潤度,保湿の考え方や口腔湿潤剤の選択について解説された.

 その他,ミニレクチャーとして,「ドライマウス外来の現状と口腔湿潤剤(山本 健氏(歯科医師)/鶴見大学歯学部高齢者歯科学講座)」,「急性期看護における口腔湿潤剤(西村和子氏(看護師)/藤田保健衛生大学病院)」,「口腔湿潤剤によらないケア(西川利恵氏(歯科衛生士)/東名厚木病院)」「洗浄に代わる感染対策としての口腔湿潤剤の応用(渡邊 裕氏(歯科医師)/国立長寿医療研究センター)」,「人工呼吸器装着患者に対するケア研修システム(星野由美氏(歯科衛生士)/徳島大学)」,「終末期患者の口腔ケアにおける口腔保湿剤の役割(阪口秀夫氏(歯科医師)/大生病院)」と,現場の第一線で活躍するさまざまな職種の演者が登壇し,臨床現場における口腔湿潤剤利用の現状や教育現場における研修システム等を解説した.

 本会テーマは「口腔湿潤剤」であったが,講演内容としては,在宅・訪問診療および急性期医療における口腔ケアの考え方,口腔乾燥症の臨床など,幅広い視点で演題が展開され,会場内の聴講者も熱心に耳を傾けていた.

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