1月13日(日),六本木ヒルズ内アカデミーヒルズ(東京都港区)にて,標記会が約120名の参加者を集め開催された(会長:村上斎氏,愛知県).
今年のセミナーでは,「保存か? 抜歯か?-従来補綴とインプラントのボーダーゾーンを探る-」がメインテーマに設定され,海外の大学院で学んだ8名の専門医が,診断・治療のうえで抜歯と保存の意思決定はどのようになされるべきか,インプラントが有効なのはどのような場合なのかについて講演し,ディスカッションを行った.
午前中は5名の若手専門医が登壇し,保存か,抜歯か? の意思決定について,文献考察と自身の臨床例から講演を行った.まずペリオの視点から,一般開業歯科医院に勤務する谷口崇拓氏(長野県)と歯周病専門医としてデンタルセンターに勤める築山鉄平氏(福岡県)が話され,両者とも適切な歯周治療とメインテナンスにより歯周組織の保存は可能であり,抜歯やインプラントは治療の反応や患者の年齢などを考慮して判断すべきと述べた.
続いて,補綴専門医の立場で,穂積英治氏(愛知県)が1歯単位のクラウンブリッジ,須田剛義氏(大阪府)がより広範囲の補綴の場合の,補綴物の予後に関連するリスクアセスメントについて文献データを基に解説され,補綴する歯の状態の診査と厳密な治療計画の管理の重要性を強調された.
歯内療法専門医の田中利典氏(東京都)は,アメリカ歯内療法学会のディシジョンガイドに基づいた予後不良歯の抜歯/保存の判断を解説し,歯周組織の状態,残存歯質の有無,感染除去が可能か,といった点を診査時の重要項目としてあげた.
午後は,従来補綴とインプラントのボーダーゾーンを探るをテーマに,二階堂雅彦氏(東京都),弘岡秀明氏(東京都),岩田健男氏(東京都)が講演された.二階堂氏と弘岡氏は中等度~重度の歯周病患者に対し再生療法やインプラント治療を行った長期症例を提示し,サポーティブセラピーの重要性を強調された.
岩田氏も,メインテナンスが良好であれば従来補綴でもインプラントでも機能回復は可能と述べ,反面,従来補綴とセメント合着のインプラントでは修理の困難さが臨床的な課題とした.
文献に基づいた根拠の提示にとどまらず,実際の臨床における術者の判断が臨床例に反映され,たいへん興味深く内容の濃いセミナーであった.