10月28日(日),北海道歯科産業株式会社が創業60周年を記念して標記講演会を開催.会場のTKPガーデンシティ札幌きょうさいサロン(札幌市)には100名近くの歯科医師,歯科技工士,歯科衛生士,学生が集まった.
午前中は西川義昌氏(東京SJCD会員,NMG代表)の講演が行われた.西川氏は,歯科医師が行う治療の80%は1本の歯の治療であり,基本的な歯冠修復処置を見つめ直し,なるべく小さな処置で済ませられるような治療を心がけるべきと強調.歯界展望別冊『Tooth Preparation』で提示された3面形成の基準となる面の角度や,マージン設定位置,オールセラミクスの場合の形成と通常の修復物の場合の形成の違いなどについて述べた.
午後の桑田正博氏(愛歯技工専門学校長,クワタカレッジ主宰)の講演では,西川氏の支台歯形成に関する講演を受けて,「歯のあるべき姿」すなわち修復物がとるべき形態について話が展開された.1960年代に桑田氏がPFMの開発・臨床にかかわった際,修復治療の要は支台歯形成であるとの見解から,歯科医師とともに支台歯形態や修復物の形態を模索し基準を策定していったエピソードを,当時の貴重な資料とともに披露した.
最後に,千葉豊和氏(札幌市開業)が座長を務めてパネルディスカッションが行われ,会場からの質問に両氏が答えた.最近,注目を集めているジルコニア修復に話が及ぶと,CAD/CAMによる修復の特性を理解した支台歯形成を行い,特に咬合面はチッピング等の問題が起こらないような形態を模索する必要があるとコメント.技能の高い術者が行うべきと強調された.
1本の歯の支台歯形成を突き詰めた歯科医師・歯科技工士からの講演に,別冊のページを繰りながら熱心に聴き入る聴衆の姿が印象的な会であった.