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「第34回 日本歯科技工学会学術大会」開催

 9月15日(土),16日(日)の両日,岡山コンベンションセンター(岡山市北区)にて標記学術大会が「歯科医療におけるパラダイムシフトと歯科技工」をテーマに開催され,延べ1,026名が参加した(大会長:窪木拓男氏/岡山大学歯学部長).

特別講演「補綴修復治療を成功へと導く戦略的マネージメント」
南 清和氏,藤本光治氏(大阪市淀川区/ミナミ歯科クリニック)
 補綴物の永続性を獲得するためには,“一口腔内一単位”〔齲蝕(カリエス)や歯周病の有無のみに注目するのではなく,機能性や審美性などあらゆる観点から患者の口腔内を観察すること〕の考えによる総合診断を行ったうえで,①炎症のコントロールと,②力(咬合)のコントロールを施す必要があり,①には歯科衛生士によるプラークコントロールと,歯科医師と歯科衛生士の連携による歯周病治療が該当するとした.②には,生理的咬合での治療(審美症例)と病的咬合での治療(咬合再構成の症例)が存在し,前者は臼歯部の咬合安定が確保されているという前提のもと,「安静位で上顎の犬歯が見えないように調整すること(0ポジション)」「ヒトの外耳道の左右非対称性を考慮して,フェイスボウトランスファーの他に竹ひごを用いて患者の正確な正中を把握すること」を,後者では診断用ワックスアップを行ったうえで,臼歯部において咬頭嵌合位での咬合安定が得られる歯列弓となっているか,前歯部においてアンテリアガイダンスが確立できる上下顎のトゥースポジションとなっているかどうかを確認することをポイントに挙げた.

「アナログとデジタルの融合に歯科技工の未来が見える」
十河厚志氏(大阪府吹田市/デンテックインターナショナル)
中野田紳一氏(香川県高松市/インサイドフィールド)
 十河氏は,社会のデジタル化の風潮に合わせて,歯科技工界でも補綴物の設計(CADデザイン)から加工(ミリング加工)までをコンピュータ支援によって行うCAD/CAMが普及したことを説明したうえで,CAD/CAMの利点として「補綴物の品質向上・安定」「技工作業の効率化」「労力の軽減にともなう労働環境の改善」のほか,従来のアナログ技工では補綴物製作への応用が困難であったコバルトクロム合金をはじめとする歯科材料の使用が容易になったこと,単一材料での補綴物製作が可能になったことによる「補綴物の高精度化・高強度化」などを挙げた.中野田氏は『3Shape デンタルシステム』(3Shape;DENTSPLY)を例に,現在のCAD/CAMで代用可能な技工操作を列挙した後,有床義歯領域におけるデジタル化について,機能印象を採得したり,口腔内と義歯床研磨面との調和や口腔内での審美的・機能的回復を図るためにはワックス義歯による試行錯誤が重要であったりするため,工程の完全なデジタル化は困難であり,将来的には迅速かつ平均的なワックス義歯の製作という点において,同領域におけるCAD/CAMの開発が進んでいくという見方を示した.

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「修復治療を成功に導くためのチーム医療とメインテナンス」
西村好美氏(大阪府茨木市/デンタルクリエーションアート)
 修復治療におけるチーム医療としての歯科技工士と歯科衛生士の関係性について言及され,歯科技工士と歯科衛生士の“ダブルライセンス”を持つ西村氏と歯科衛生士の土屋和子氏(東京都港区/スマイル・ケア)が登壇.西村氏は歯科衛生士養成校に入学した経緯を説明した後,“ダブルライセンス”を取得して実感したこととして,歯科技工士と歯科衛生士の考える咬合の違いを挙げた.歯科技工士は,咀嚼,嚥下,発音ができ,歯周組織に悪影響を与えない補綴物を製作する(咬合関係を付与する)一方で,歯科衛生士は長期にわたって機能する補綴物(咬合関係)となっているかどうかを観察しており,それぞれが持つ知識を共有することでさらに完成度の高い補綴修復治療が可能になると語った.

歯型彫刻テクニカルコンテスト
 各校の代表49名(石膏部門42名,ワックス部門7名)が日頃の授業や自主練習などで磨いたカービングテクニックを競い合い,受賞者は石こう部門金賞が大城結愛さん(東洋医療専門学校),銀賞が高田義征さん(九州歯科技工専門学校),銅賞が上藤千晴さん(笠岡歯科技工専門学校),ワックス部門金賞が飯尾利佳子さん(東洋医療専門学校)となった.

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 次回の第35回学術大会は,2013年7月5日(金)~7日(日)に,第5回国際歯科技工学術大会との併催で,大田市国際会議場(韓国・大田市)にて開催される予定.

※本学会に関するレポート記事は月刊『歯科技工』11月号に掲載予定です.

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