5月14日(金),15日(土)に,標記学術大会が,「歯周病研究フロンティア ―輝ける歯周治療を目指して―」をメインテーマに,いわて県民情報交流センター(アイーナ)で開催され,約1,600名の参加者を集めた.(大会長:岩手医科大学歯学部口腔機能保存学講座歯周病学分野・教授/國松和司氏).
大会1日目は,特別講演として審良静男氏(大阪大学WPI免疫学フロンティア研究センター)が登壇,「自然免疫と炎症・免疫応答」についてを解説した.自然免疫と獲得免疫という2つの免疫機構のうち,前者はToll-like receptors(TLRs)の発見により,従来と考えられていた作用と異なる働きをもつことが認識され注目されつつあることをはじめ,自然免疫による病原体認識の機構や免疫応答について言及した.

特別講演の様子
2日目には,これからの歯周治療応用が期待される最新トピックを集め,シンポジウムⅡ「最新の歯周治療の核心―そのコンセプト・技術・器材」が開かれた.和泉雄一氏(東京医科歯科大学大学院教授),山田 了氏(東京歯科大学教授)を座長に,青木 章氏(東京医科歯科大学助教),木戸淳一氏(徳島大学大学院准教授),富田幸代氏(東京歯科大学助教),山田陽一氏(名古屋大学医学部附属病院助教)が登壇.それぞれが最新の研究内容を発表した.まず青木氏が皮切りとなり「Er:YAGレーザーの導入による歯周治療の向上―歯周軟組織・硬組織の効果的マネジメント―」について解説.Er:YAGレーザーは,病巣を安全かつ徹底的に除去でき,歯肉剥離掻爬術との併用,あるいは外科手術の代替,デブライドメントに加えた歯槽骨整形など,ソフトティッシュマネジメント以外の応用も可能となるという.続く木戸氏は「マイクロディバイスを用いた歯周病診断法の展望―歯肉溝滲出液中のバイオマーカーの測定」について解説,歯肉溝滲出液中のサイトカイン,炎症因子をバイオマーカーとした歯周病診断の可能性が示唆された.富田氏は「GTR法を再考する:新技術による保護膜の固定法」と題し,強固な接着と上皮組織の進入阻止が見込め,「歯肉上皮に対しても親和性が高く,組織為害性は認められないとする報告がなされている」という.プラーク除去の問題,行政に対する適応範囲の拡大申請などの問題点があるが,今後の動向に注視すべきトピックといえる.山田氏は「組織幹細胞を用いた歯周組織再生医療のパラダイムシフト」と題し,生体反応の少ない自家PRP(platelet-rich plasma; 多血小板血漿)を用いた症例報告と,歯髄幹細胞による新たな歯槽骨再生などの可能性について言及した.
歯科衛生士シンポジウム「歯科衛生士のための歯周病管理 ―認定歯科衛生士として行っていること、考えていること―」 では,野村正子氏(日本歯科大学東京短期大学)を座長に,塩浦有紀氏(東京・熊谷歯科医院),佐藤昌美氏(北海道・池田歯科クリニック),及川弘美氏(岩手医科大学附属病院歯科医療センター歯科衛生部)が登壇.塩浦氏は,患者の来院が途絶えた後,再来院された際の対応として,歯科衛生士に求められる対応や考え方,技量を述べたうえで,歯周病管理とは,患者を医療職が管理することではなく,患者にかかわるデータを医療職側が管理・分析したうえで,臨床において患者へ還元することであるとまとめた.佐藤氏は,25年間にわたって長期歯周管理を行っている症例を解説しながら,自院のリコールプログラムを紹介.長期にわたって歯周病管理を行う際には,担当する歯科医師・歯科衛生士が代わっても患者情報が維持できるよう,日ごろから資料をとる重要性や,そのときどきの患者の都合や希望に添いながら,管理プログラムを提案していく必要があると言及した.及川氏は,大学病院における歯周病管理という視点で,他科との連携により来院継続が図られているケースを紹介.歯周病治療後も,患者が良好な口腔内状態を維持するためには,患者のQOL支援だけでなく,医科との協働,後輩歯科衛生士の教育などが求められると語った.

歯科衛生士シンポジウム(左より及川氏,佐藤氏,塩浦氏)
続く,歯科衛生士向けプログラム「歯科衛生士教育講演」では,鈴木丈一郎氏(鶴見大学歯学部歯科保存学第二講座)が,歯周病管理に必要な資料採得方法や歯周病管理の概念・臨床の基礎事項についてを,学会認定歯科衛生士に求められる素養という視点から解説した.

歯科衛生士教育講演の様子
本大会では,次期学会理事長に吉江弘正氏(新潟大学大学院医歯学総合研究科摂食環境制御学講座歯周診断・再建学・教授)が選出され,平成23年度より就任する.また,ベストハイジニスト賞は,吉岡真由美氏(東京都立心身障害者口腔保健センター)が受賞した.
次回,第53回秋季日本歯周病学会学術大会は,2010年9月19日(日)にかがわ国際会議場(香川県高松市)にて開催される予定である(大会長:永田俊彦氏/徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部歯周歯内治療学分野・教授).