やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社


 WHO(世界保健機関)がアルマ・アタ宣言(1978年)で加盟国に対して伝統医学を現代医療の一環として積極的に取り上げるよう勧告して以来,世界各国は現代医学の枠組みを通して,鍼灸,漢方などの東洋的療法の応用を検討し,そのメカニズムの解明に取り組むようになった.現在,世界150カ国以上の国々で鍼灸治療が行われているという実態を直視すると,鍼灸が全人類共通の財産となり,世界に通用する普遍的医療になったといえる.最先端の医療技術を誇る欧米先進諸国では,鍼灸医学,相補・代替医療への関心が急速に高まり,国を挙げてその科学化と医療分野への応用を推進している.
 このような世界の動向を踏まえ,日本における鍼灸医学の更なる発展を期するために,以前から要望が高かった本格的な鍼灸医学辞典の編纂に取りかかることにした.その頃,私は中国国家中医薬管理局の.靖局長・副大臣(当時)と「中国医学の科学化,客観化」に関する国際共同研究を実施していたこともあり,鍼灸医学辞典の刊行を日中学術交流の一つとして位置付け,辞典の編纂にあたって,中国側の協力が得られることとなった.
 本辞典は,鍼灸医学の臨床実績と学問的業績を結晶化した本格的な総合辞典である.執筆者は鍼灸医学,中医学分野の第一線で活躍中の専門家である.
 編集に際して鍼灸医学の臨床・基礎用語,中医学用語,歴史領域の用語,鍼灸に関連した西洋医学の基礎・臨床用語などを幅広く収集し,それぞれの領域の専門家が簡潔にして要を得た文章でわかりやすく解説している.したがって,鍼灸医学分野の学生,教員,臨床家,西洋医学分野の学生,医師,看護師などの医療関係者のみならず,東洋医学に興味を持つ一般人にも有用な新しい辞典といえる.本辞典が座右の書として広く活用され,多くの方々のお役に立てば無上の幸せである.
 最後に,本辞典の編集,執筆に関わり,ご尽力いただいた日中両国の諸先生方に心から敬意を表し,深い感謝を捧げる.
 本辞典の刊行には十数年の時間を要した.本辞典の刊行に向けられた医歯薬出版の熱意に深謝する.
 2012年2月
 編著者を代表して
 森 和