プロローグ
実はこんな本を作ってみたかった.歯周治療はチーム医療といわれているのに,歯科医師,歯科衛生士双方にまたがるような本がなかったからだ.歯科医師は歯科医師向けの本を読み,歯科衛生士は歯科衛生士向けの本を読む.こんな状況でお互い連係のとれたチーム医療ができるのだろうか…と常々感じていた.そんな思いから2009年1月から同12月までの1年間,歯界展望で『ペリオの視点 歯科医師と歯科衛生士の視交叉』というタイトルの連載の機会をいただいた.本書はその連載を加筆,修正したものである.
歯周治療の主役はあくまで患者さん.われわれはサポーターでしかない.毎日ブラッシングをするのは患者さん.辛い治療に通ってくださるのも患者さん.治療が終わってもメインテナンスに通ってくださるのも患者さん.患者さんがブラッシングを怠るだけで,たちまちわれわれの行うSRP(スケーリング・ルートプレーニング)や歯周外科が幻と消えてしまうし,患者さんがわれわれのもとにお見えにならなくなるだけで,たちまち医院はサポーターだけの競技場になってしまう.
SPT(Supportive Periodontal Therapy)という言葉は動的治療後のいわゆるメインテナンスに使っているが,そもそも歯周治療はすべてがSPTなのである.サポーターはプレイヤー(患者さん)と喜びを共有できるし,良くなるときも悪くなるときも一体感を味わうものである.良くなったときは患者さんのおかげ,悪くなったときは自分のせいという構えでサポーター役に徹していれば,きっと患者さんと長いお付き合いができることと信じている.継続してメインテナンスに通っていただくと,患者さんの歯の寿命が延びるのだから長いお付き合いは歯周治療の大前提.それを願って,本書では歯科医師と歯科衛生士それぞれが個別に認識しておくべきことと,共通して認識しておくべきことに分けて解説をした.著者としては歯科医師に歯科衛生士の個別認識,歯科衛生士に歯科医師の個別認識を読んでもらうことで,お互いの連携を強めてほしいと切望している.
ここまで筆を進めておいて,自分が墓穴を掘っている気分にかられてきた.そんな大それた本を作るほどの知識も経験も未だに持っていない.歯科医師になってたかだか四半世紀だ.もし多少なりとも読者の方々に役に立つような内容が本書にあるとすれば,それは私が先輩の先生方から受け継いだ教えのおかげであり,もし役に立たないとすればその教えを上手く受け継げなかった私の責任である.院内での視交叉はどうなのか,家庭内での視交叉はどうなのかと問われれば,顔を背けたくなるような独り相撲の毎日だが,こんな私のサポーターを快く務めてくれるスタッフ,そして家族に感謝したい.また連載,書籍化にあたってたいへんお世話になった医歯薬出版の白石泰夫氏,藤本憲明氏,中村 伸氏に衷心より感謝申し上げる.みんなありがとう!
2010年8月
山本浩正
実はこんな本を作ってみたかった.歯周治療はチーム医療といわれているのに,歯科医師,歯科衛生士双方にまたがるような本がなかったからだ.歯科医師は歯科医師向けの本を読み,歯科衛生士は歯科衛生士向けの本を読む.こんな状況でお互い連係のとれたチーム医療ができるのだろうか…と常々感じていた.そんな思いから2009年1月から同12月までの1年間,歯界展望で『ペリオの視点 歯科医師と歯科衛生士の視交叉』というタイトルの連載の機会をいただいた.本書はその連載を加筆,修正したものである.
歯周治療の主役はあくまで患者さん.われわれはサポーターでしかない.毎日ブラッシングをするのは患者さん.辛い治療に通ってくださるのも患者さん.治療が終わってもメインテナンスに通ってくださるのも患者さん.患者さんがブラッシングを怠るだけで,たちまちわれわれの行うSRP(スケーリング・ルートプレーニング)や歯周外科が幻と消えてしまうし,患者さんがわれわれのもとにお見えにならなくなるだけで,たちまち医院はサポーターだけの競技場になってしまう.
SPT(Supportive Periodontal Therapy)という言葉は動的治療後のいわゆるメインテナンスに使っているが,そもそも歯周治療はすべてがSPTなのである.サポーターはプレイヤー(患者さん)と喜びを共有できるし,良くなるときも悪くなるときも一体感を味わうものである.良くなったときは患者さんのおかげ,悪くなったときは自分のせいという構えでサポーター役に徹していれば,きっと患者さんと長いお付き合いができることと信じている.継続してメインテナンスに通っていただくと,患者さんの歯の寿命が延びるのだから長いお付き合いは歯周治療の大前提.それを願って,本書では歯科医師と歯科衛生士それぞれが個別に認識しておくべきことと,共通して認識しておくべきことに分けて解説をした.著者としては歯科医師に歯科衛生士の個別認識,歯科衛生士に歯科医師の個別認識を読んでもらうことで,お互いの連携を強めてほしいと切望している.
ここまで筆を進めておいて,自分が墓穴を掘っている気分にかられてきた.そんな大それた本を作るほどの知識も経験も未だに持っていない.歯科医師になってたかだか四半世紀だ.もし多少なりとも読者の方々に役に立つような内容が本書にあるとすれば,それは私が先輩の先生方から受け継いだ教えのおかげであり,もし役に立たないとすればその教えを上手く受け継げなかった私の責任である.院内での視交叉はどうなのか,家庭内での視交叉はどうなのかと問われれば,顔を背けたくなるような独り相撲の毎日だが,こんな私のサポーターを快く務めてくれるスタッフ,そして家族に感謝したい.また連載,書籍化にあたってたいへんお世話になった医歯薬出版の白石泰夫氏,藤本憲明氏,中村 伸氏に衷心より感謝申し上げる.みんなありがとう!
2010年8月
山本浩正
プロローグ
Part1 歯周治療における歯科医師と歯科衛生士の職域と共通認識・個別認識
1 歯周治療における歯科医師と歯科衛生士それぞれの職域
本書の執筆にあたって
歯科医師に求められる役割は?
歯周治療のオーバービュー
動的治療における歯科医師の職域
動的治療における歯科衛生士の職域
メインテナンスにおける歯科医師の職域
メインテナンスにおける歯科衛生士の職域
2 歯周組織検査における共通認識
たかがプロービング,されどプロービング
みんなで一緒にプローブ選び
信頼できるデータを得るために
データの解釈
3 歯周組織検査における個別認識
治療計画の立案
力のコントロール
炎症のコントロール
モチベーションアップのための戦略立案
意識のコントロール
言葉のコントロール
Column(1)サロゲイトエンドポイントとしての検査結果
Part2 良くなるための動的治療 歯周基本治療と歯周外科
4 歯周基本治療における共通認識と個別認識
ゴールの設定と創傷治癒
非外科的環境整備
プロフェッショナルケアとセルフケア
良くなるためのプロケア戦略
良くなるためのセルフケア戦略
良くなったことを実践してもらう情報提供
Column(2)キュレットVS超音波スケーラー
5 歯周外科総論における共通認識
歯周外科への移行基準
ポケットセラピーとリセッションセラピー
ポケットセラピーとメインテナンスの関係
Column(3)切開の奥義
Column(4)縫合の奥義
6 切除療法における共通認識と個別認識
切除療法後の治癒形態
How to切除療法
術後管理のポイント
Column(5)わかってくれているという安心感
7 組織付着療法における共通認識と個別認識
組織付着療法後の治癒形態
How to組織付着療法
術後管理のポイント
Column(6)スキルと感度
8 再生療法における共通認識と個別認識
再生療法後の治癒形態
How to再生療法
術後管理のポイント
Column(7)インフォームド・コンセント考
9 歯周形成外科療法における共通認識と個別認識
歯周形成外科療法後の治癒形態
How to根面被覆術
術後管理のポイント
Column(8)人の行動の特徴はオーバー
Part3 悪くならないためのメインテナンス
10 メインテナンスにおける共通認識
メインテナンスの重要性
歯周外科とメインテナンスの関係
メインテナンスへの移行基準
メインテナンスの種類
11 メインテナンスにおける歯科医師の役割
歯周動的治療における歯科医師の役割
メインテナンスにおける歯科医師の役割
院内システムの構築
歯周治療においてバランスのとれた歯科医師とは?
12 メインテナンスにおける歯科衛生士の役割
メインテナンスプログラム 企画・実行者としての歯科衛生士
歯肉縁下環境をいかに整えるか
プラークコントロールレベルをいかに適正に保つか
患者さんにいかに安心感をもってもらうか
メインテナンスの中断をいかに防ぐか
おわりに-歯周治療を成功に導くために
Column(9)健康オタクというリスクファクター
参考文献
和文索引
欧文索引
Part1 歯周治療における歯科医師と歯科衛生士の職域と共通認識・個別認識
1 歯周治療における歯科医師と歯科衛生士それぞれの職域
本書の執筆にあたって
歯科医師に求められる役割は?
歯周治療のオーバービュー
動的治療における歯科医師の職域
動的治療における歯科衛生士の職域
メインテナンスにおける歯科医師の職域
メインテナンスにおける歯科衛生士の職域
2 歯周組織検査における共通認識
たかがプロービング,されどプロービング
みんなで一緒にプローブ選び
信頼できるデータを得るために
データの解釈
3 歯周組織検査における個別認識
治療計画の立案
力のコントロール
炎症のコントロール
モチベーションアップのための戦略立案
意識のコントロール
言葉のコントロール
Column(1)サロゲイトエンドポイントとしての検査結果
Part2 良くなるための動的治療 歯周基本治療と歯周外科
4 歯周基本治療における共通認識と個別認識
ゴールの設定と創傷治癒
非外科的環境整備
プロフェッショナルケアとセルフケア
良くなるためのプロケア戦略
良くなるためのセルフケア戦略
良くなったことを実践してもらう情報提供
Column(2)キュレットVS超音波スケーラー
5 歯周外科総論における共通認識
歯周外科への移行基準
ポケットセラピーとリセッションセラピー
ポケットセラピーとメインテナンスの関係
Column(3)切開の奥義
Column(4)縫合の奥義
6 切除療法における共通認識と個別認識
切除療法後の治癒形態
How to切除療法
術後管理のポイント
Column(5)わかってくれているという安心感
7 組織付着療法における共通認識と個別認識
組織付着療法後の治癒形態
How to組織付着療法
術後管理のポイント
Column(6)スキルと感度
8 再生療法における共通認識と個別認識
再生療法後の治癒形態
How to再生療法
術後管理のポイント
Column(7)インフォームド・コンセント考
9 歯周形成外科療法における共通認識と個別認識
歯周形成外科療法後の治癒形態
How to根面被覆術
術後管理のポイント
Column(8)人の行動の特徴はオーバー
Part3 悪くならないためのメインテナンス
10 メインテナンスにおける共通認識
メインテナンスの重要性
歯周外科とメインテナンスの関係
メインテナンスへの移行基準
メインテナンスの種類
11 メインテナンスにおける歯科医師の役割
歯周動的治療における歯科医師の役割
メインテナンスにおける歯科医師の役割
院内システムの構築
歯周治療においてバランスのとれた歯科医師とは?
12 メインテナンスにおける歯科衛生士の役割
メインテナンスプログラム 企画・実行者としての歯科衛生士
歯肉縁下環境をいかに整えるか
プラークコントロールレベルをいかに適正に保つか
患者さんにいかに安心感をもってもらうか
メインテナンスの中断をいかに防ぐか
おわりに-歯周治療を成功に導くために
Column(9)健康オタクというリスクファクター
参考文献
和文索引
欧文索引