やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

監訳者序文
 歯科医療は,咬合をはじめとする咀嚼系の回復と保全という大きな役割を担っており,全身の健康維持と長寿に不可欠なものとして認知され,社会の期待も近年大きく様変わりしてきている.この様な時に,待望のPeter E.Dawson先生による著書“Functional Occlusion From TMJ to Smile Design”の邦訳版『Functional Occlusion』を上梓できたことは,この上ない喜びである.2006年の原著出版と同時に一読させていただき,Dawson先生の医療に対する情熱と類い稀な探求心,卓越した臨床能力,そして何と言ってもDawson先生の人に対する優しさ,誠意と謙虚さに強い感銘を受け,本書の監訳をお引き受けした.
 Dawson先生は1954年に歯科医師となり,50年以上の長きにわたり臨床と教育に心血を注ぎ,理想的な包括的歯科医療システムの構築に尽力して来られた.先生は,前書“Evaluation,Diagnosis,and Treatment of Occlusal Problems”の1st ed.と2nd ed.で,PMSの方法論を理論的かつ科学的に分析し,これを独自に発展させた形で包括的歯科医療のための診断と治療の基準を示された.この前書はこれまで20年以上にわたって世界中の多くの歯科医療従事者の指標となってきたが,この度新たに発刊された本書は内容が大幅に増し深められ,全てフルカラーの写真とイラストで項目ごとに極めて明快に解説されている.顎関節の診断基準と中心位への誘導に関するこれまで以上に詳細な解説,咬合の診断基準,機能的な咬合構成の基準と術式,そして的確に審美性を治療に盛り込み理想的な治療に仕上げる手順,診断と治療に有効な最新情報と機器,これらが余すところなく整然と示されている.
 翻訳は,本書の内容が解剖学,生理学,放射線学,歯科矯正学,口腔外科学,歯科補綴学,歯科保存修復学,歯科技工学と幅広い分野にわたるため,それぞれの分野に造詣の深い先生方にご依頼した.担当して下さった先生方には快くお引き受けいただき,翻訳にあたっては著者の真意が読者の方々へ正確に伝わるよう十分ご配慮下さったことに深く感謝している.監訳では,原則として本邦で現在用いられている標準的学術用語に全章を通して統一を図ったが,やはり著者の真意にできるだけ忠実に,しかもその真意が日本語として正確に伝わることを意図して,用語をあえて統一しなかった箇所や原語と異なる訳語を採用した箇所があることをご理解いただきたい.
 Dawson先生は,50年以上にわたって膨大な数の研究論文を各分野の専門家を交えて評価し,臨床の現場に適応するものかを見極めて来たが,誤った前提で結論を導いている論文があまりにも多過ぎ,最も多く誤った文献が見られた分野が咬合と顎関節関連であったと警鐘を鳴らしている.そして,一般に広まってしまった誤った認識を取り除き,顎関節障害の原因と治療基準を示し,咬合の問題点を成功裏に治療するにはこれらを理解することが不可欠であると伝えている.咬合分析は顎関節から始めるべきであり,顎関節を無視する歯科医師はスマイルデザインや咬合の診断と治療において決して有能にはなれず,また咬合を無視する歯科医師は,顎関節の診断と治療においても決して有能にはなれないと明言している.
 私達がDawson先生の指し示している予知性の高い理想的な治療を的確に行うには,本書に示されている診査・検査,診断,治療計画立案,治療実施,予後評価の基準を学び実際に行うこと,そしてそれを継続して実践する努力が医療人として大切である.本書を通してもDawson先生は,歯科医療に携わる医療人の王道を示したいのである.
 また本書では,一般に治療が極めて困難とされる代表的なケースを取り上げ,実際のDawson先生の臨床例を通して検査・診断の進め方,詳細な考察と注意すべきポイント,治療計画立案,治療手順,術後ケア,予後評価が具体的に示されている.この様に,Dawson先生の指し示す包括的医療を成功へ導く基準が,読者にとってできるだけ理解しやすいように客観的指標として具体的に示されている.
 本書は,Dawson先生が医療人としての生涯をかけて伝える貴重な指標であり,理想的な包括的歯科医療を目指し努力を惜しまない多くの歯科医師にとってバイブルになると確信している.
 最後に,Dawson先生のご健康と更なるご活躍を祈念したい.また,本書の出版にあたり医歯薬出版の方々に大変お世話になったが,特に監訳を依頼して下さった柳 与志晴氏と編集に多大なご尽力をいただいた矢吹陽子氏に心から感謝を申し上げる.
 2010年5月
 小出 馨

推薦者の序
 ダイナミックな咀嚼系の形態と機能,そして機能障害は,歯科医学研究の最も魅力的で基本的かつ重要な一分野である.技術や治療法の飛躍的な進歩は,材料の発展と質の高い口腔衛生,そして全身の健康におけるその役割に関する一般への意識の普及と相まって,歯科医療の新たな時代の到来を告げている.更に,進歩するサイエンスと歯科におけるアートの融合により,患者への“理想的な歯科治療”を目指した臨床家と科学者を結ぶ真の歯科臨床モデルとして本書が生まれた.
 包括的歯科医療の目標には,至適な口腔衛生,解剖学的調和,機能的調和,顎矯正的安定性,自然な審美性等が含まれる.これらの目標を達成するには,現代の歯科医師は咀嚼系の医師,さらにそれを超える医師にならなければならない.Dawson先生は長年にわたってそのようなコンセプトを提唱されてきた.そして,先生がこれまで用いてきた予知性の高い治療結果へ導く鍵として,最適な機能を犠牲にすることなく,形態の改善(審美性)を得ることの重要性を強調されている.本書では,教育や臨床の専門性にかかわらず,歯科のどの分野にも適用できる“理想的な歯科治療”の基本原則が前面に掲げられている.
 診断が治療を成功へ導く鍵となる.まず健康な咀嚼系を理解しなければ,病変を正確に認識し,原則に基づいて個別の治療計画を立てることは困難となる.Dawson先生は,包括的な診査からスタートし,理解しやすい論理的な流れで本書の内容を巧みに整理されている.相互に関連し合う咀嚼系の構成要素が,健康な状態ではどのように機能するかの理解が深まるように,各章が構成されている.読者は,卓越した図や写真を通して重要な解剖学的関係を明確に把握し,顎矯正の基本原則を深く理解することができるであろう.本文では,咀嚼系の1構成要素に生じた病変や機能障害が,咀嚼系全体に影響を及ぼす可能性を明瞭に解説している.
 咬合の不調和に伴い生じる病変は多岐にわたり,単一または複数の咬合における関係(歯と歯の関係,歯と支持組織の関係,神経筋機構の関係,顎関節との関係)で問題が起こり得る.顎関節障害の主な原因は,メカニカルストレスもしくは過剰な負荷であることはよく理解されている.咀嚼系に不調和が生じると,顎口腔系の機能障害(TMD)の様々な病態の中から1つ,あるいは複数の症状が発現する.症例に応じた治療計画を的確に立案するためには,TMDが顎関節および筋由来のさまざまな病態を呈す障害であることを認識し,詳細な診断を行わなければならない.原因が明らかであるにもかかわらず,適切な処置を施すことが困難な場合もある.これに対して,本書には以下の重要な情報が加えられている.
 1.咬合の分類方式
 2.顎関節病変の分類体系
 3.筋由来のTMDに関する詳細な考察
 4.顎口腔系のあらゆる側面に関する詳細な評価と,それに基づく診断別の治療
 5.TMD関連および非関連疾患の原因,併発疾患,慢性化の要因
 6.健康な状態と病的な状態における顎関節(TMJ)の画像診断の総説
 症例に応じた診断を行うための基準となるこれらの事項が示されることにより,問題解決のスキルを確実に高める上で不可欠な解剖学的,生理学的,神経学的視点を読者は修得することができる.
 本書のハイライトは,修復に難渋する代表的な症例についての詳細な考察である.そこには,各症例の問題リスト,適切な診断および治療における考慮点が示されている.重要なのは,これらの症例の治療における陥りやすい落とし穴が論じられていることである.術後のケアについても症例ごとに示されている.また,Dawson先生は具体的な成功基準としての客観的指標を示している.
 Dawson先生はかつて,「私の言葉を引用するなら,いつ言った言葉かを明確にして欲しい」と言われた.明らかに本書は歯科治療における真のパイオニアの最高傑作であり,永遠に学び続けることへの先生の誓いを明確に示している.教育者として,また執筆者として優れているだけでなく,自らの教えを卓越したレベルで実践できる人は稀であるが,本書ではその輝かしいキャリアの中で獲得した知恵,知識,スキルを読者に伝えている.論理的な章の配列,最新の知識に基づく各コンセプトの詳細な考察,そして,読者を思う優しさは称賛に値する.
 本書は,顎矯正的不安定性を認識して,その安定性を再構築し,患者の顎口腔系を最大限に快適で,機能的かつ審美的な健康状態に仕上げ,維持することを可能にする治療計画を立案し実施したいと強く願う読者の方々にとって貴重な参考書となるに違いない.
 Henry A.Gremillion,DDS
 フロリダ大学歯学部矯正歯科学教授
 Parker E.Mahan顔面痛センター所長
 フロリダ州ゲインスビル

序文
 顎関節からスマイルデザインまで咬合の分野を網羅する主要な原則がある.それは,あくまで歯は咀嚼系の一部であり,歯と咀嚼系全体とが調和していなければどこかが壊れるということである.このことは,真に有能な“歯の医者“であるためには“咀嚼系の医者”でなければならないことを意味している.顎関節を含む咀嚼系と歯の関係を理解していなければ,歯科のいずれの分野であっても最高レベルの臨床を効果的に行うことはできない.
 本書の読者は以下の点について理解していただきたい.
 ・咀嚼系が調和を維持しながらどう機能するかについての明確な理解.
 ・咀嚼系のどの部位でも完全な快適性と長期安定性が維持されていない場合,何が悪いかを見分ける方法についての詳細な理解.
 ・最も単純なものから最も複雑なものまで,あらゆるタイプの咬合障害について完全な治療計画を立てるための詳細なプロセス.
 ・TMDの管理を含む口腔顔面痛の診断・治療の習熟についての理解.歯科医師は誰もがこのことを知っておくべきである.
 ・初診時の状態にかかわらず,最も機能的で審美的なスマイルのデザインにおいて,憶測はすべて排除すること.
 ・もてはやされてはいるが,機能的調和の原則を侵し,不安定性,違和感,機能障害,患者の不満に繋がる臨床の考え方や術式が存在する.これらをどのように分析すべきかについての信頼性の高い背景情報.
 L.D.Pankey先生は,“名医”の域に達する歯科医師はわずか2%であると書いておられる.名医となった歯科医師は問診,診断,治療計画の立案,そして完全な治療計画を実行するための患者の動機づけを行うことができる.しかし,最も大切なことは,高い成功の予知性を持って必要とされる医療サービスを歯科医師が実践できることである.
 本書執筆の主な動機は,いずれの歯科医師も名医になれるよう,その枠組みを提供することである.私は保存修復専門医として何千例もの複雑な咬合の問題や顎関節障害を治療する機会があった.また,文献から学ぶことに熱心な私は,文献が臨床の現場に沿ったものか見極めるために,50年以上にわたって研究成果を評価する機会に恵まれた.新たな理解への扉が開かれることも少なくなかったが,誤った前提を基に結論が導かれている論文があまりに多過ぎた.文献で誤った認識が最も多く見られた分野は,咬合,そして,顎関節痛・口腔顔面痛と咬合との関係であった.これらの誤った認識を解き,顎関節障害の原因や治療を不可解なものと捉える必要はないことを歯科医師に示すのが私の目標である.咬合の問題点を成功裏に治療するには,このような理解が絶対に不可欠である.なぜなら,咬合の分析はすべて顎関節から始まるからである.これは一般開業医にも可能であり,名医のレベルを目指す歯科医師には必須である.“審美革命“や“大変身”のこの時代において,“スマイルデザイン”と咬合の安定性を支配する要因を関連づけることができなければ,やがて咀嚼系の最も弱い部分に機能障害や破綻を起こす究極の不調和を招くことになる.ほとんどの場合,最も弱い部分とは,歯または顎関節,あるいはその両者である.
 顎関節を無視する歯科医師は,スマイルデザインや咬合の診断・治療において決して有能にはなれない.また,咬合を無視する歯科医師は顎関節の診断や治療において決して有能にはなれない.下顎位や顎関節の状態と咬合との関係を無視する歯科医師は,日々の一般歯科臨床で見られる過度の咬耗,歯痛,修復物の破折,歯の動揺,咀嚼筋の疼痛等さまざまな口腔顔面痛の問題の診断において推測しかできない.咀嚼系全体の調和を維持するために何が必要かを理解することは,神経筋機構を安定させるという目標を達成する以上の効果をもたらし,前歯の正確な位置づけと形態を含む,審美性と歯の配列に関する最も重要な治療方針を決定する上での絶対的な手掛かりとなる.
 私の目標は,臨床を成功に導くために歯科チームが行わなければならないことから,推測の部分をすべて排除することである.本書を勉強し,長年の検証を経た原則を忠実に守ることによって,歯科臨床における最大のフラストレーションと燃え尽きの源である予知性の低さという問題を排除することができるであろう.Pankey先生の言われた予知性の高い成功を達成することは,絵に描いた餅ではなく,名医にとって究極の目標であり,読者に達成していただきたい私の切なる願いである.
 症状緩和が必ずしも問題の是正を意味しないため,臨床結果の解釈を誤りやすい.私達は,症状緩和が問題の悪化という犠牲のもとに得られることもあることを長期の経過観察を通して学んだ.
 私は自らの臨床観察を長年の検証を通して行い,幅広い分野の専門家による吟味を受けるようにしてきた.Dawson Center for Advanced Dental Studyでは我々自身の考え方だけでなく,視点の異なる考え方も評価する学際的“シンクタンク”を育ててきた.25年以上にわたり,さまざまな信条の国際的な臨床家,研究者,専門家を招き,彼らの考えや我々の考えの是非を評価する目的で話し合ってきた.さらに,我々の治療結果はすべて当センターで臨床に携わる全教員に公開され,監査・批評を受けている.この努力から多くの目覚ましい進歩が得られ,初診から始まって技工のコントロールから術後のメインテナンスまで,治療のあらゆる段階を通じて行われる品質管理の開発に計り知れない効果をもたらした.これらの原則および臨床のプロトコールにおける発展について本書で紹介する.
 この“シンクタンク”環境から得られる最も優れた成果の1つは,具体的で計測可能な成功基準の策定である(47章参照).この章を早く読むことをお薦めする.それによって目標を意識して本書による勉強を開始することができるであろう.

謝辞
 歯科の分野は,寛大な分かち合いの精神を持つ多くの偉大な知識人に恵まれていることをありがたく思います.大きな変化が起きている時代に歯学の道に入ったことは,私にとって特に大きな幸運でした.その道程は常に興奮に満ちていました.
 私は臨床を始めて間もなく,Sigurd Ramfjord先生によって咬合の重要性に目覚めさせられ,お亡くなりになるまで親しい関係が続きました.Sig先生を通じて,多くの人々が“咬合の父”と呼ぶスウェーデンのHenry Beyron先生と巡り合い,素晴らしい友情関係を築くことができました.彼は,中心咬合位とアンテリアガイダンスの変更に関する私の提案を常に支持して下さり,素晴らしい激励者であり思慮深い批評家でした.
 私の人生に極めて大きな影響を及ぼした方々のお1人が,L.D.Pankey先生です.臨床を始めた最初の年に先生にお会いしたことは大変幸運でした.すぐに私のお手本,そして,親友の1人となりました.L.D.先生を通じて私はClyde Schuyler,John Anderson, Henry Tanner,Harold Wirthの各先生をはじめ沢山の当時のスーパースターであった先生方に紹介され,歯学の地位向上の一端を担う機会をいただきました.Pankey先生は指導者中の指導者であり,保存修復,咬合,医院経営への貢献に加え,いまだに私の生き方に影響を与えている人生哲学を教えて下さいました.心から感謝しています.L.D.Pankey Instituteは,多くの方々が私と同じ感謝の気持ちを抱いていることの確かな証です.
 Clyde Schuyler先生は,初めて歯科の分野に正しい咬合の原則を導入されました.本書の考え方やコンセプトの多くは,Clyde先生がまかれた種を出発点としています.先生を友人として持てたことは光栄であり,私の医院を訪ねて来られ夜を徹して議論したことは,かけがえのない思い出です.
 初期の頃,計り知れない時間を費やしてCharles Stuart先生だけでなく,Peter K.Thomas,Harvey Paine,Earnest Grangerの各先生からナソロジーについて学びました.その時にGuichet先生と私がFrank Celenza先生と築いた親しい友人関係は,今でも続いています.咬合のさまざまな側面に関する私達の結論を固めるために,彼らが多くの時間を費やして下さったことに感謝しています.
 多数の症例において最良の治療計画を達成するには,多かれ少なかれ矯正治療が必要となります.私の初期の恩師はClair McCreay先生でした.McCreay先生から学んだたくさんのコンセプト,またGerry Francatti先生からいただいた多くの助言を今でも参考にしています.
 顎関節障害の分析と治療に関して,歯科医師は皆Mark Piper先生の貢献に感謝すべきです.Markは卓越した外科医であり,私が知る中で最高の診断医です.複雑な顎関節変形を修復する革新的アプローチは,彼の才能の一端にしか過ぎません.彼の分類法は顎関節障害のゴールドスタンダードであり,本書で紹介できることを光栄に思います.彼は本書で解説する咬合の原則を完全に理解して遵守し,それによって彼の専門的知識が大きく高められています.彼の友情ならびに多くの場面で,“シンクタンク”の議論を促してくれた彼との緊密な仕事上の関係に感謝しています.私は,彼の非の打ちどころのない手術を顕微鏡を通して観察してきましたので,その卓越した手術成績の報告が信頼できることを証言することができます.
 Parker Mahan先生の解剖学,神経学,薬理学の臨床的側面における歯科学への貢献と,私がそれらを理解できたことへの貢献に感謝します.彼は私の親友の1人であり,大切な味方でもあります.口腔顔面痛の診断と治療における彼の貢献は,国際的にも認められています.
 Vernon(Buddy)Shafer,CDTの絶え間ない支援,ドクターと歯科技工士の橋渡しとしての貢献に感謝します.彼は歯科技工の分野に包括的歯科治療の確固たる原則を取り入れた精力的な人であり,彼の影響力は数え切れない歯科技工士のみならず歯科医師にも及んでいます.
 Lee Culp,CDTは,私だけでなく歯科界にとってきわめて貴重なリソースです.名教師であり革新者であるLeeは,歯科のあらゆる分野で最も尊敬されている指導者の1人です.最新情報の提供に感謝するとともに,本書への貢献に謝意を表します.
 本書のために最新の臨床情報を提供して下さるよう,沢山の臨床医の先生方にお願いしました.私の以前の診療所のシニアパートナーであったGlenn DuPont先生は,きわめて多くの情報を下さいましたし,Dawson CenterのDirector of Facultyとして,最も重要なコンセプトとテクニックを指導するための優れた“実習”カリキュラムも開発されました.彼は機能的審美性に優れた丁寧な保存修復専門医です.DeWitt Wilkerson先生からも多くの最新情報と本書への貢献をいただきました.Wittは,咬合の基本とパーフェクトな中心咬合位の達成方法について何千人もの歯科医師を指導し,いつも絶賛されているDawson Centerのクラスを指揮しています.彼の友情と歯科学への多大な貢献を有難く思ってます.臨床医としての国際的名声を築き上げたJohn Cranham先生を誇りに思うと同時に,私達の教育努力に対する彼の継続的支援と忠実な友情に感謝します.Jeff Scott,Michael Sesemann,Ken Grundset,Kim Daxonの諸先生が,本書で示されている目標の推進に大きく貢献して下さったことに謝意を表します.また,Rick Sonntag,CDT,Nancy Franceschi,CDT,Karl Wundermann,CDT,Harold Yates,CDTの方々が最新の歯科技工の専門知識を継続的に提供して下さっていることに感謝致します.Robert Jackson,MDTからもさまざまな形でご支援いただきました.Pete Roach先生には,診療パートナーとして長年にわたりアイデアを共有させていただいたことに感謝致します.それは楽しい歳月でした.
 本書は,主に私がDawson Center for Advanced Dental Studyのセミナーや授業で3万人以上の歯科医師と歯科技工士に指導した原則と手順の集大成であります.このカリキュラムをきわめて効率良く,また,楽しく温かなやり方で運営しているスタッフに深く感謝しています.特に,Executive DirectorのJoan Forestのずば抜けた指導力に感謝しています.また,Sallie Bussey,Mary Lynn Coppins,Jody Booth,Greg Sitek,私の特別補佐Esther McCrackinに深く感謝します.セミナーのコーディネータとして20年間にわたって私を大いに支えてくれた娘のAnne Dawsonと一緒に仕事ができたことを喜ばしく思います.Dee Mortellaroによる原稿の準備に欠かせない助力にも感謝します.
 最後に,Elsevier/Mosby出版社の優秀な編集スタッフの皆様に感謝の言葉を贈ります.Julie Nebelと一緒に仕事ができたことは素晴らしい経験でした.また,発行者のPenny Rudolphと編集主任のJohn Dolan,アーティストのDon O'Connorの助けにも感謝しています.
 皆様本当にありがとうございました.
 Peter E.Dawson,DDS
PartI 機能的調和 Functional Harmony
 1章 完全な歯科医療の概念 The Concept of Complete Dentistry(佐々木啓一)
  1 完全な歯科医療
   1)“問題点がもたらす影響”までを見すえた検査 2)現有の問題が引き起こす影響の分類
  2 完全な歯科医療の到達目標
   1)悪化の原因 2)微生物の役割 3)咬合性外傷とポケット形成 4)解剖学的調和
 2章 咬合の展望と“日常歯科臨床“ Perspectives on Occlusion and“Everyday Dentistry”(佐々木啓一)
  1 診療の段階ごとに必要とされる咬合の原則
   1)痛みの緩和 2)修復物の寿命 3)咬合の安定性 4)より正確な治療計画 5)審美性の改善 6)生産力の向上 7)ストレスの減少
  2 “日常歯科臨床”と咬合の関連性
  3 一般医療における顎顔面痛の診断
 3章 咬合病 Occlusal Disease(佐々木啓一)
  1 徴候と症状
  2 歯表面の変形の基本メカニズム
   1)専門用語の解明 2)咬耗 3)摩耗 4)侵蝕症 5)アブフラクション 6)咬合病の例
 4章 咬合の決定要素 The Determinants of Occlusion(柴田考典)
  1 咀嚼系の構成
  2 咬合治療を成功へ導く3つの重要な必要条件
  3 調整の力学
  4 理想的な咬合様式
 5章 顎関節 The Temporomandibular Joint(柴田考典)
  1 第1に要求されるもの
  2 関節面
  3 下顎頭と関節円板との位置関係の理解
  4 どのように筋は円板の位置関係を制御するのか
  5 外側靱帯
  6 動静脈短絡
  7 咬合
 6章 咀嚼筋 The Masticatory Musculature(小出馨,近藤敦子,高橋睦)
  1 主要決定因子
   1)筋機能に関する基本的事項 2)望ましくない特徴 3)咬合干渉に対する筋の反応 4)後方歯群離開咬合に対する筋の反応 5)筋との関係を正しく理解するための重要用語 6)関節円板障害の原因としての筋の協調運動失調
  2 咀嚼筋群
  3 咬合の調和の重要性
 7章 中心位 Centric Relation(小出馨,浅沼直樹,荒川いつか)
  1 中心位の理解
   1)上顎に対する下顎の関係 2)適切に位置付けされた下顎頭─関節円板集合体 3)関節結節への接触 4)歯の位置や咬合高径とは無関係 5)最上方位
  2 協調した筋活動は顎関節の位置付けと負荷に関係する
  3 位置付けのための筋:外側翼突筋下頭
  4 下顎窩構造のきわめて重要な意義
  5 中心位では内側極のみが固定軸上で回転する
   1)最中央位 2)関節円板の位置付け 3)自動的な中心位の獲得 4)力の頂点の位置 5)最上方位が力学的・生理学的に正しい位置である理由 6)用語としての中心位
  6 要約
 8章 適応中心位 Adapted Centric Posture(佐藤利英,水橋史,小出勝義)
  1 外側極における関節円板転位
  2 偽円板形成を伴う完全な関節円板転位
  3 穿孔を伴う完全な関節円板転位
  4 その他の部分的関節円板転位とクリッキングを認める顎関節
  5 要約
 9章 中心位の決定 Determining Centric Relation(古谷野潔,築山能大)
  1 中心位もしくは適応中心位の決定
  2 中心位は本当に再現性があるのか?
  3 なぜバイラテラルマニピュレーションを用いるのか?
  4 中心位もしくは適応中心位を決定するための他の方法
   1)アンテリア・バイト・ストップ 2)直接法で製作する前歯型ディプログラミング装置 3)Pankeyのジグ 4)Best-biteアプライアンス 5)Luciaのジグ 6)NTI 7)リーフゲージ 8)顎関節への荷重負荷 9)アンテリア・バイト・ストップの欠点
 10章 中心位を検証するための荷重負荷試験 Load Testing for Verification of Centric Relation(古谷野潔,築山能大)
  1 顎関節の荷重負荷試験に関する根拠
  2 荷重負荷試験を適切に行うには,力を徐々に増加させながら行わなければならない
  3 ありふれた誤り
   1)早く大きな圧をかけ過ぎてしまう 2)上方への荷重負荷を十分にかけない
  4 荷重負荷試験に関する誤った懸念
  5 下顎頭が完全に収まっていない(筋緊張による固定)場合の荷重負荷試験への反応
  6 関節円板に位置異常がある場合の荷重負荷試験に対する反応
  7 関節包内障害もしくは損傷がある場合の荷重負荷試験に対する反応
 11章 中心位の記録 Recording Centric Relation(山森徹雄,清野和夫)
  1 中心位の正確な記録
  2 正確さの基準
   1)ワックスによる咬合記録 2)アンテリアストップテクニック 3)パワーバイト 4)中心位のための前歯部の指標 5)欠損部顎堤
  3 なぜ蝶番軸に関連させて模型を位置付ける必要があるのか
   1)弧状の閉口路が頬舌的位置に及ぼす影響 2)顆頭間軸に対する模型の正確な位置付け
 12章 咬合の分類 Classification of Occlusions(山森徹雄,清野和夫)
  1 有効な分類
  2 Dawsonの分類
  3 考察
  4 臨床応用
 13章 咬合高径 Vertical Dimension(大川周治,山本裕信)
  1 咬合高径とは
   1)顎関節症に対する咬合挙上の誤り 2)部分被覆型咬合挙上アプライアンスが咬合高径に及ぼす影響 3)咬合高径の安定性に関するエビデンス
  2 安静時における咬合高径
   1)有歯顎者の咬合高径決定における規則 2)咬合挙上
  3 咬合高径を変えなければならない時とは?
   1)“快適”な咬合高径の探求 2)顎間空隙における圧下
  4 なぜ咬合高径を挙上しないのか?
  5 なぜ,咬合挙上を望む患者がいるのか?
  6 咬合高径の低下
   1)前歯と咬合高径との関係
  7 顆頭位が咬合高径に与える影響
   1)顆頭の垂直的な偏位量に関する計測方法 2)顆頭の垂直的な偏位測定に対するセントリチェック・レコーダーの応用
  8 対合歯を喪失した症例での咬合高径の確立
   1)最小発音空隙を有する時の下顎位(S発音位)
  9 総括
 14章 ニュートラルゾーン The Neutral Zone(津賀一弘)
  1 ニュートラルゾーンの理解
   1)歯の水平的位置を決定する要因 2)舌と頬筋─口輪筋の帯の間の空間
  2 不正咬合とニュートラルゾーンの関係
   1)垂直的要素と水平的要素の組み合わせがニュートラルゾーンに及ぼす影響 2)臼歯部のニュートラルゾーンの決定法 3)前歯部のニュートラルゾーンの決定法 4)ニュートラルゾーンを変更する方法
 15章 機能運動における切歯の運動領域 The Envelope of Function(細川隆司,正木千尋)
  1 機能
  2 下顎の限界運動領域
   1)下顎頭の運動限界 2)下顎切歯部の運動限界
  3 機能的運動限界
   1)歯の影響 2)咬合の調和(ハーモニー)という概念
  4 側方機能的運動限界
   1)機能的運動限界はどうやってプログラミングされているのだろうか
  5 きわめて繊細な機械的受容器系統
 16章 機能的スマイルデザイン Functional Smile Design(細川隆司,正木千尋)
  1 自然美学
  2 スマイルデザインにおける決定因子
   1)咬合器へ装着された模型の重要性 2)前歯修復:どこから始めるか? 3)前歯接触実現のための選択肢 4)模型の形態修正
  3 機能解剖の基準
   1)前歯カントゥアの決定手順
 17章 アンテリアガイダンスとスマイルデザインとの関係 Anterior Guidance and Its Relationship to Smile Design(佐藤裕二,北川昇)
  1 アンテリアガイダンスの重要性
  2 アンテリアガイダンスのカスタム化
   1)中心咬合位での接触 2)逆トライポッド理論
  3 切歯切端の位置の決定
   1)切歯切端の水平的位置の決定 2)インサイザルプレーン(切歯切縁の平面)のカントゥアの決定
  4 アンテリアガイダンスを調和させるステップ
   1)予備段階 2)調和のための5ステップ
  5 審美的カントゥア
   1)上顎前歯形態のガイドライン 2)唇側鼓形空隙の形成
  6 歯科技工士への正確で詳細な伝達
 18章 下顎前歯部の修復 Restoring Lower Anterior Teeth(五十嵐順正)
  1 咬合型付与における出発点
   1)下顎前歯部
  2 下顎前歯部の“質”の管理
   1)審美性と修復物のチェックリスト
  3 切縁の位置
   1)切縁のなす曲面形態 2)切縁位置の高さ 3)下顎歯切縁の水平的な位置
  4 下顎切歯切縁の外形
 19章 ロングセントリック Long Centric(五十嵐順正)
  1 ロングセントリックの概念
  2 ロングセントリックを咬合調整により得るには
   1)咬合接触点の吟味
  3 咬合再構成を行う場合にロングセントリックを付与するには
   1)ロングセントリックに至る干渉
 20章 咬合平面 The Plane of Occlusion(五十嵐順正)
  1 咬合平面のあり方
  2 Speeの彎曲
   1)修復・補綴症例における適切な咬合平面の設定法
  3 Wilsonの彎曲
   1)顎関節の後方ガイドによる臼歯部の保護
  4 要約
 21章 後方歯の咬合 Posterior Occlusion(茂野啓示,桑田正博)
  1 干渉のない後方歯
  2 下顎後方歯
   1)3つの重要事項の決定 2)下顎頬側咬頭の位置 3)下顎舌側咬頭の位置 4)下顎後方歯のみを修復する場合 5)上下顎ともに後方歯を修復する場合 6)下顎窩カントゥアの決定およびカービング 7)フォッサカントゥアガイドの製作
  3 咬合面のポーセレン修復
  4 上顎後方歯
   1)咬合回復のための上顎臼歯の形成 2)最重要事項:中心位記録 3)限界運動の記録 4)上顎咬合面の補足的解剖
  5 グループファンクションの作業側接触滑走の長さ
  6 平衡側の接触滑走
  7 臼歯部の咬合面歯冠形態の種類
  8 中心咬合位における保持接触の種類
  9 側方滑走運動時の臼歯部接触の種類
  10 安定性のための咬合面形態の選択
  11 要約
 22章 咬合の分析と治療のための機器応用の簡略化 Simplifying Instrumentation for Occlusal Analysis and Treatment(波多野泰夫)
  1 簡略化の論理
   1)目標1:顆頭を中心位に位置づける上で制限のないこと 2)咬合高径を変化させる場合には顆頭間軸の正確さが重要となる理由 3)目標2:中心位において前歯群が接触するまでの閉口路にブレや変異がないこと 4)目標3:同時的かつ均等な強さの前臼歯にわたる咬合接触 5)目標4:許容できる咬合平面と切縁平面 6)咬合器上での模型の上下的な高さの設定 7)目標5:アンテリアガイダンスが機能運動の範囲と調和していること 8)目標6:下顎が中心位から移動する時,全臼歯が即時離開すること
  2 計測の簡略化
   1)任意の顆路設定はどのような場合に受容可能か 2)唯一の真の差異:顆路指導要素
  3 それぞれの咬合器における顆路の記録法
   1)全調節性咬合器 2)パントグラフ機器 3)立体記録咬合器 4)半調節性咬合器 5)非調節性咬合器 6)全調節性咬合器と非調節性咬合器の組み合わせ 7)臼歯の修復の予定のない症例で前方運動時に前歯群が咬合離開する場合の機器使用
  4 機器を有効に使用する:要約
   1)作業側ではグループファンクションが求められる
PartII 機能障害 Dysfunction
 23章 TMDの鑑別診断 Differential Diagnosis of Temporomandibular Disorders(小木信美,栗田賢一)
  1 用語の意味を理解する
   1)TMD 2)頭蓋下顎障害 3)咀嚼系障害 4)診断について具体的になること 5)口腔顔面痛の分析 6)構造変化の分析
  2 TMDのカテゴリー
 24章 咬合─筋障害 Occluso─Muscle Disorders(小木信美,栗田賢一)
  1 顎関節が健全であることを証明する方法
   1)顎関節が健全であることを証明する6つの方法 2)病歴のスクリーニング
  2 TMDのない咬合─筋痛を診断すること
   1)運動域の検査 2)筋の触診でわかること
  3 咀嚼筋反応
   1)確定診断
 25章 顎関節内障 Intracapsular Disorders of the TMJ(矢谷博文)
  1 関節包内の痛み
  2 関節包内障害のステージ
  3 関節円板障害の進行性
   1)外側極の円板転位:典型的な順序
  4 健常な顎関節
   1)説明 2)診断方法
  5 外側極部の内部障害の始まり
   1)説明 2)考えられる原因 3)診断方法 4)治療 5)予後
  6 進行性の外側極の内部障害
   1)説明 2)考えられる原因 3)症状 4)診断方法 5)治療 6)予後
  7 外側極部の円板転位
   1)説明 2)考えられる原因 3)徴候と症状 4)診断方法 5)治療 6)予後
  8 外側極クローズドロック
   1)説明 2)考えられる原因 3)徴候と症状 4)診断方法 5)治療 6)予後
  9 非復位性の外側極円板転位
   1)説明 2)考えられる原因 3)徴候と症状 4)診断方法 5)治療 6)予後
  10 完全円板前方転位
   1)説明 2)関節円板転位の種類 3)完全円板前方転位の考えられる原因 4)症状と徴候 5)方法と診断
  11 完全円板転位の治療
   1)治療のカテゴリー 2)臨床所見 3)治療
 26章 関節包内障害の分類 Classification of Intracapsular Disorders(和嶋浩一)
  1 実践的顎関節分析
   1)顎関節症の分類
  2 分類のための体系化されたアプローチ
   1)内外側極における診断の重要性 2)Piperの顎関節障害分類 3)Piperの分類の各ステージ
 27章 顎関節の画像検査 Imaging the TMJs(小林馨,五十嵐千浪)
  1 なぜ歯科医師は顎関節の画像検査法を理解しなければならないのか
  2 顎関節画像検査の種類
   1)パノラマX線撮影法 2)経頭蓋X線撮影法 3)断層X線撮影法 4)造影断層X線撮影法 5)MRI 6)CTスキャン
 28章 ブラキシズム Bruxism(渡邉誠,服部佳功)
  1 噛み締め(中心位ブラキシズム)
  2 偏心位ブラキシズム
   1)病因
  3 ブラキシズムの治療
   1)直接法による咬合の是正 2)アプライアンスの応用 3)咬合が咬耗によって平坦化した際のブラキシズムの抑制 4)重度の噛み締め患者への前歯型ディプログラミングスプリントの応用
  4 小児のブラキシズム
  5 デンタル・コンプレッション・シンドローム
   1)咀嚼系の機能障害と心理的ストレス 2)スプリントの診断的応用
PartIII 治療 Treatment
 29章 咬合の安定のための要件 Requirements for Occlusal Stability(古屋良一)
  1 外見からの安定した咬合とは
   1)生理学的不正咬合
  2 外見にとらわれずに安定した咬合を識別する方法
  3 外見にとらわれずに不安定な咬合を識別する方法
  4 咬合安定のための5つの要件
 30章 規格化された治療計画の立案に基づく咬合問題の解決法 Solving Occlusal Problems Through Programmed Treatment Planning(古屋良一)
  1 診察・検査のための方略
   1)最初の判断 2)咬合治療計画立案のための準備
  2 治療計画立案のための方略
   1)確実な接触を与える方法 2)確実な接触を代替する方法 3)アンテリアガイダンスのための選択的手段 4)確実な咬合接触の必要性を除外する方法 5)安定した確実な接触
  3 (咬合)分析の第1要件のためのチェック票
   1)分析#1:安定した確実な接触 2)治療の選択肢 3)分析#2:アンテリアガイダンス 4)分析#3:前方滑走時の臼歯部離開咬合 5)分析#4:作業側と平衡側での臼歯部離開咬合
  4 複合的な問題
  5 問題の解決
   1)初診時 2)2回目の診療時
  6 咬合の安定性のための要件に基づいた咬合治療計画
   1)初期治療の目的:安定した確実な咬合接触
  7 要約
 31章 診断用ワックスアップ The Diagnostic Wax-up(佐藤裕,市川哲雄)
  1 ワックスアップ:歯科医師が最も省きたいプロセス
   1)誰がワックスアップするべきか? 2)ワックスアップの目的 3)最前の治療オプションの選択 4)ワックスアップの利点 5)歯科技工士による診断用ワックスアップ
  2 診断用ワックスアップのステップ
  3 診断用ワックスアップによる審美的分析
   1)診断用ワックスアップ:有意義な時間
 32章 オクルーザルスプリント Occlusal Splints(志賀博,石川礼乃)
  1 オクルーザルスプリントの理解
   1)オクルーザルスプリントのタイプ 2)オクルーザルスプリントが必要でない場合 3)治療前のオクルーザルスプリントが適切な場合 4)オクルーザルスプリントのその他の利点 5)前歯部ディプログラミング装置の長期使用で起こり得る問題 6)オクルーザルスプリントではできないこと
  2 オクルーザルスプリントの製作
   1)上顎スプリントか,下顎スプリントか? 2)全歯列型オクルーザルスプリント設計の原理 3)スプリントはどれくらいの期間装着すべきか? 4)顎関節が損傷を受けていたらどうなるか? 5)前方整位型スプリントの適応症
  3 要約
 33章 咬合調整 Occlusal Equilibration(皆木省吾,岡本信)
  1 咬合調整の重要性
  2 咬合調整の実施に対する恐怖感の除去
   1)適切な咬合調整:それは何を意味するか?
  3 咬合調整の手順
   1)咬合調整の前の患者カウンセリング 2)咬合干渉の場所を同定する 3)中心位に至る咬合干渉の除去 4)削合のルール 5)側方運動時の干渉 6)側方滑走運動時の咬合干渉の除去 7)中心位と偏心位における望ましい咬合接触 8)側方滑走時の干渉を見つけるための下顎誘導 9)アンテリアガイダンスを調整する 10)前方滑走運動時の咬合干渉 11)動揺歯の咬合調整
  4 咬合調整を終えるための要点
  5 最終チェック
   1)食いしばりテスト 2)前歯部ディプログラミングスプリント
  6 情緒面に問題のある患者の咬合調整
  7 予防的咬合調整
  8 歯科矯正治療患者の咬合調整
   1)治療中の咬合調整 2)保定中の咬合調整
  9 咬合調整における効率
   1)チェアサイドアシスタントの役割
  10 咬合調整のための器具
   1)干渉の印記
  11 コンピュータ応用の動的咬合分析
  12 長期的な咬合の安定性
 34章 神経筋歯科治療:生体電子機器 Neuromuscular Dentistry:Bioelectronic Instrumentation(小林博)
  1 美辞(レトリック)の再考
   1)機器の問題でなく使用法の問題である 2)中心位と神経筋歯科治療の主張の比較
  2 文献の意味の理解
   1)文献分析 2)最近の研究 3)臨床的問題 4)筋活動:誤った議論
  3 神経筋歯科治療による中心位批判
  4 容認できる機器の使用
  5 要約
 35章 咬耗への対応 Solving Occlusal Wear Problems(鈴木哲也,若林則幸)
  1 摩耗の原因
   1)摩耗のタイプ 2)咬耗による咬合高径の低下 3)咬耗はどのように起こるのか
  2 治療計画
   1)切歯路と顆路 2)診断用ワックスアップ 3)プロビジョナルクラウン 4)臼歯部の補綴 5)著しく咬耗した歯の支台歯形成 6)咬耗した歯はいつ補綴すべきか? 7)下顎切歯の保存修復 8)切端対切端の咬合関係 9)一般的な治療法:歯冠形態の修正 10)その他の治療法:歯の移動 11)下顎唇側歯面と上顎舌側歯面の咬耗 12)下顎切歯唇側の咬耗 13)上顎前歯舌面の咬耗 14)不均一な咬耗 15)顎関節の問題に起因する咬耗 16)歯ぎしりによる咬耗
  3 咬耗を予防する
 36章 深い垂直被蓋の問題の解決 Solving Deep Overbite Problems(鱒見進一)
  1 前歯部の深い垂直被蓋
   1)舌圧と深い垂直被蓋 2)ニュートラルゾーンに対する考慮 3)上顎の舌側面のカントゥア
  2 原則の適用
  3 上顎粘膜との咬合接触を有する深い垂直被蓋
  4 前歯部の滑走を伴う深い垂直被蓋の問題
   1)特別な考慮
  5 過度な咬耗のある深い垂直被蓋
  6 偏位時の干渉がない深い垂直被蓋問題
   1)ニュートラルゾーンの考慮 2)舌側傾斜した前歯
  7 中心位での咬合接触がない深い垂直被蓋の問題
  8 歯科矯正的な深い垂直被蓋問題の解決
  9 修復的形態修正による深い垂直被蓋問題の解決
  10 連結固定による深い垂直被蓋問題の解決
  11 バイトプレーンの使用により最小限の治療介入による深い垂直被蓋問題の解決
  12 可撤性部分床義歯の使用による深い垂直被蓋問題の解決
  13 要約
 37章 前歯部水平被蓋問題の解決 Solving Anterior Overjet Problems(鱒見進一)
  1 過度な前歯部水平被蓋に対する治療法の選択
  2 前歯部水平被蓋の問題
  3 下顎前歯の安定性の問題解決
  4 前方運動時の臼歯部離開の設定
  5 平衡側の離開の設定
  6 過度の水平被蓋を有する上顎前歯の位置および形態の改善
   1)歯科矯正的上顎前歯の位置の修正 2)原則の適用 3)修復による全歯の形態修正
  7 水平被蓋に問題がある場合の咬合調整
  8 臼歯の固定源が不十分な時の水平被蓋の問題解決
   1)顎外固定 2)粘膜支持の義歯床 3)インプラント固定源 4)下顎歯列弓からの固定源
  9 外科的修正
 38章 前歯部開咬の対応 Solving Anterior Open Bite Problems(佐藤亨,大岡洋)
  1 原因を見極める
  2 原理の応用
   1)治療前に開咬の原因を判断する 2)咬舌癖を防ぐ方法 3)症例
  3 軽度の前歯部開咬
  4 重度の前歯部開咬(5mm以上の離開があるもの)
   1)安定のための固定装置 2)前歯部開咬の閉鎖
  5 前側方舌突出癖の問題点
   1)慢性関節リウマチ
  6 前歯部開咬の矯正治療
 39章 切端咬合の治療 Treating End─to─End Occlusions(浅野栄一朗,渡辺正宣,西川正幸)
  1 前歯部切端咬合の修復
   1)過度な咬耗を伴う切端咬合関係 2)特別考察
  2 咬頭対咬頭関係の臼歯修復
   1)下顎の咬頭頂に対する上顎の平坦な咬合面 2)下顎の咬頭を中心へ寄せる 3)臼歯部の形態修正
  3 片側の咬頭対咬頭関係
   1)矯正 2)咬頭嵌合側の平衡斜面を平坦にする 3)前歯部の切端咬合関係
 40章 フレアアウトした前歯の治療 Treating Splayed or Separated Anterior Teeth(野村修一)
  1 ニュートラルゾーンの変更
  2 巨舌の結果としてのフレアアウト
   1)原則の適用
  3 ニュートラルゾーンの考慮
  4 空隙を閉じるためのラミネートベニアの使用
 41章 交叉咬合症例の治療 Treating the Crossbite Patient(野村修一)
  1 前歯部交叉咬合の分析
   1)前歯部交叉咬合に伴う問題 2)疑似下顎前突 3)なぜ咬合高径の増加は効果があるのか 4)原則の適用 5)前歯部交叉咬合の外科的修正 6)TMDと前歯部交叉咬合
  2 臼歯部交叉咬合
   1)臼歯部交叉咬合の評価 2)臼歯部交叉咬合の修復 3)臼歯部交叉咬合の咬合調整
 42章 叢生,歯列不正,インターロックした前歯の治療 Treating Crowded,Irregular,or Interlocking Anterior Teeth(大谷賢二,石上友彦)
  1 叢生,不正咬合,インターロックする前歯の分析
   1)清掃性 2)安定性 3)機能的な干渉 4)既存の歯周病の問題
  2 前歯のインターロック咬合の修正方法
   1)原則の適用 2)配列のための叢生歯幅径の狭小化
  3 選択的抜歯による前歯歯列不正の修正
   1)全ての下顎切歯の抜歯 2)上顎前歯の抜歯
  4 修復処置と矯正治療との組み合わせ
   1)臼歯部が安定している叢生のある前歯 2)臼歯部に著しい干渉がある叢生を伴う前歯部
  5 前歯と臼歯の関係
  6 成長の問題と下顎の叢生を伴った前歯
 43章 重度の上下顎歯列弓の不正関係の問題解決 Solving Severe Arch Malrelationship Problems(寺田員人)
  1 重度の歯列弓の不正関係の分析
  2 許容できる基底骨を有する場合の治療計画
   1)最初の治療目的:安定した保持咬合接触
  3 基底骨が許容できない配列である時の治療
   1)分析のための開始点
  4 骨格性の不正関係を安定化させるための非外科的治療
   1)完全な下顎歯列弓舌側転位のための治療法 2)下顎歯列弓が上顎歯列弓と比較して著しく広い場合の治療法
 44章 咬合分析のための頭部X線規格写真分析 Using Cephalometrics for Occlusal Analysis(遠藤敏哉)
  1 頭部X線規格写真分析の限界
  2 頭部X線規格写真分析の構成要素
   1)計測点 2)計測平面(側方頭部X線規格写真分析に関連して)
  3 咬合問題の分析に対する計測平面の使用方法
   1)上顎骨の水平的位置の評価 2)下顎骨の水平的位置の評価 3)下顎骨に対する上顎骨の近遠心的関係の評価 4)基底骨格と歯の関係 5)骨格型の垂直的関係の評価 6)咬合平面の評価 7)軟組織側貌の評価
  4 頭部X線規格写真分析の使用に対する留意点
 45章 咬合治療を行った患者の術後管理 Postoperative Care of Occlusal Therapy Patients(前田芳信,池邉一典)
  1 術後管理の成功例
  2 咬合治療のフォローアップ
  3 術後のオクルーザルアプライアンスの使用
  4 術後の歯周組織のメインテナンス
  5 健康な口腔:歯科治療のゴール
 46章 咬合修復の将来の技術 The Technological Future for Occlusal Restoration(前田芳信,池邉一典)
  1 技工室におけるコンピュータ化された咬合
   1)咬合に関するコミュニケーション
  2 コンピュータによるデザインと製作
   1)Cynovad
  3 コンピュータによる咬合の確認
  4 要約
 47章 咬合治療を成功させるための基準 Criteria for Success of Occlusal Treatment(西川義昌,兒玉敏郎,中島優)
  1 成功の客観性を測る
   1)診断基準1:顎関節負荷試験が陰性である 2)診断基準2:クレンチングテストが陰性である 3)診断基準3:グラインディングテスト(歯ぎしり試験)で臼歯部に干渉が存在しない 4)診断基準4:フレミタステスト(振盪音試験)陰性 5)診断基準5:安定性試験陽性 6)診断基準6:快適性試験 7)診断基準7:審美性試験 8)到達目標:機能的な審美性
  2 要約

 索引
 訳者一覧