やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序 はじめに
 う蝕や歯周病の治療のために歯科医院を受診される患者さんの中には,うつ病などの精神疾患を抱えた患者さんも相当数いらっしゃいます.また歯科疾患が原因ではなく,精神疾患が原因で歯科領域の症状を訴えて歯科医院を受診される場合もあります.厚生労働省(2011 年)の報告によると,現在精神疾患で医療機関を利用している人は300 万人以上で,これは,日本人の約40 人に1 人が該当します.また生涯有病率は約20%といわれています.そのため治療を受けていない人も含めると,歯科医院には,毎日1人以上の精神疾患のある患者さんが来院している可能性があります.
 このような患者さんは精神疾患のない患者さんと比べて,その対応には難しい面があります.今回,そういった患者さんへの対応に苦慮している歯科衛生士や歯科医師のみなさんへ歯科心身症をなるべくわかりやすくまとめてみました.必ずしもはじめから読んでみる必要はありません.“ ここ” と思われるところから目を通していただき,日々の実践にお役に立てれば幸いです.
 序 はじめに
第1章 歯科心身症ってどんな病気?―歯科心身症の概要
 1)心身症とは
 2)歯科心身症とは
 3)歯科心身症を理解するために知っておきたい精神疾患
  (1)うつ病性障害(Depressive Disorder) /(2)身体症状症(Somatic Symptom Disorder) /(3)病気不安症(Illness Anxiety Disorder)
 COLUMN 01 不定愁訴とは?
 COLUMN 02 心因性とはどういう意味?
第2章 代表的な「歯科心身症」は?
 1)舌痛症
 2)顎関節症
 3)口臭恐怖症
 4)味覚異常
  (1)味覚異常の原因 /(2)味覚異常の診断
 5)特発性歯痛
 6)咬合違和感症候群
 7)過換気症候群
 8)その他
  (1)口腔乾燥症(ドライマウス) /(2)口内炎 /(3)地図状舌
 9)器質的な疾患によっても起こる心理的な問題
  (1)顎変形症および歯列不正 /(2)唇顎口蓋裂 /(3)口腔腫瘍(悪性)
 COLUMN03 フィルター理論とは
 COLUMN04 ストレスって・・・?
 COLUMN05 口腔領域のジストニアとジスキネジア
第3章 どんな評価法があるの?
 1)SOAP
 2)MW分類(心身医学・精神医学的な対応を要する患者の分類)
 3)症例
  (1)舌痛症,地図状舌および溝状舌 /(2)舌痛症,口腔乾燥症,カンジダ性舌炎の疑い /(3)顎関節症,舌痛症,味覚異常 /(4)特発性歯痛 /(5)咬合違和感
 4)医療面接のポイント
  (1)問診と医療面接の違い /(2)面接を行う前に /(3)問診票(質問票)の確認 /(4)実際の医療面接 /(5)具体的な方法 /(6)患者教育と動機づけ
 COLUMN06 向精神薬を知ろう
第4章 どんな対応法があるの?
 1)歯科衛生士の場合―情報収集を中心に
  (1)歯科心身症の患者さんへの対応の仕方 /(2)患者さんからの情報収集 /(3)体の不調サインで精神疾患のチェック /(4)薬剤について /(5)診療補助時およびメインテナンス時に注意したいこと /(6)精神疾患の問診票 /(7)歯科衛生士はゲートキーパーにもなりうる
 2)歯科医師の場合
  (1)MW分類から /(2)対応時の注意点 /(3)心身医学的な治療の実際―どのような治療法があるか
 3)精神科・心療内科の場合
  (1)薬物療法 /(2)精神療法
 4)臨床心理士によるカウンセリング
  (1)臨床心理学 /(2)カウンセリング /(3)共感的理解 /(4)カウンセリングの留意点 /(5)チーム医療
 5)医療連携の実際
  (1)どう対応すべきか /(2)治療目標
 COLUMN07 漢方治療
 COLUMN08 臨床心理士ってどんな仕事?
 COLUMN09 リエゾン診療とはどういう診療?
 COLUMN10 それってクレーマー?

 おわりに
 さくいん