やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序文
 審美修復治療とは,特別な歯科医学ではなく,本来人間が兼ね備えている自然で機能的な歯と歯周組織を,再現することが治療の目的となる.そしてまた同時に患者個々が求める美しさを具現化する努力を行わなければならないという特殊性がある.
 とりわけ上顎6前歯-Anterior6-は,最も審美性が要求されるエリアである.顔貌,口唇,歯列,歯冠形態,ジンジバルレベル,歯間乳頭,バイオタイプ……,留意すべき点は多岐にわたり,且つ個体差があるため,術者の主観のみに頼った治療では,患者が望む結果を得ることは困難であろう.そのため,基礎資料の収集,客観的なガイドラインを活用した診査・診断,そしてそこから真の問題点を浮かび上がらせ,治療計画に組み込んでいく,という極めて基本的で地道な作業こそが,実は最も重要なことなのではないだろうか.
 しかし,苦心して立案した治療計画であっても,それが遂行できなければ机上の空論に過ぎない.術者の正確な治療技術はもちろんのこと,歯科技工士,矯正医,歯周形成外科医との緊密な連携が求められよう.
 そこで本別冊においては,「診査・診断」「歯周組織のコントロール」「補綴的・矯正的アプローチ」「インプラント」のパートに分け,Anterior6の治療を成功に導くための考え方,治療技術について詳述した.
 本書を活用していただき,治療によって患者の笑顔を得ることができれば,編者としてこれに勝る喜びはない.
 2013年6月
 東京都渋谷区・代官山アドレス歯科クリニック
 大河雅之
 大阪府大阪市・大阪セラミックトレーニングセンター
 片岡繁夫
 序文
 Opening Graph Interdisciplinary Management of Anterior 6(大河雅之 片岡繁夫)
 歯冠形態を極める(佐々木正二)
Part 1 診査・診断
 Anterior 6における診査・診断(大河雅之)
 診断用ワックスアップ(松尾幸一)
 ラボコミュニケーション(西山英史 高橋 健)
Part 2 歯周組織のコントロール
 天然歯・インプラントにおけるジンジバルレベルのコントロール―マイクロサージェリーによる対応―(千 栄寿)
 バイオタイプの改変(蘭 源太郎)
 ブラックトライアングルへの対処法(栗原一雄 大河原純也)
Part 3 補綴的・矯正的アプローチ
 インサイザルエッジポジションとジンジバルレベルの検討(加部聡一)
 異種材料を用いた補綴治療(栗原一雄)
 ブリッジ(山ア 治)
 シェード伝達の注意点(脇田太裕)
 インターディシプリナリーアプローチによる審美修復治療(構 義徳)
Part 4 インプラント
 前歯部シングルインプラント(千葉豊和)
 マルチプルインプラントにおける補綴法の検討(林 丈裕)
 審美領域におけるインプラント・リカバリー(大河原純也)
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