やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社



 「咬合」,歯科医学のもっとも重要なファンダメンタルのひとつであり,また,一般医学にはない歯科に特有の分野であることから,歯科医学のコアといっても過言ではないであろう.
 咬合は古くから取り扱われてきたテーマである.歴史的には,総義歯の咬合論からナソロジーを中心とした有歯顎の咬合論へ,そしてインプラントの普及に伴い新たな局面へと向かいつつある.そのような流れのなかで,かつてのナソロジーほどの大きなインパクトをもつ一大転換はないものの,咬合に関する概念は年々整理されてきた.
 しかし,依然として咬合は難解であるとの声が方々で聞かれる.咬合に関する本は山ほどあるが,咬合に関する用語や概念を平易に解説した本はそう多くはない.そこで,21世紀を迎えたいま,咬合に関する基礎的事項を整理し,初学者に役立つ本を企画した.
 本書は,卒業後間もない歯科技工士,歯科医師,あるいは歯学部および歯科技工士学校の学生が,咬合に関する勉強をする際に,その基本的なことがらの理解を助けることを目的として企画された.したがって,咬合に関する概念や用語のなかから,基礎的で,理解しておくべき語を80語厳選して,図や写真を多用し,ビジュアルな誌面とした.
 それぞれの用語は,まず定義を簡潔に記した.定義は,短時間で理解できるようにしてある.さらに詳しいことを学びたければ,続けて解説を見ていただきたい.理論にとどまらず,臨床操作,技工操作など実践的な面も含めた解説を別に写真や図とともに示してある.また,それぞれの用語に関するやや詳しい説明は,別にコラムとして解説した.知識の整理に役立てていただきたい.また,見出し語とともに,同義語,関連語を数多く列挙し,それらを収載し,索引を充実させた.
 なお,用語の定義・解説は,おおむね日米の補綴学会が編纂した用語集に準拠することとした.すなわち,『歯科補綴学専門用語集』(本文中“用語集”)(医歯薬出版)および『Glossary of Prosthodontic Terms 7th editon』(同GPT-7)*を参考にした.
 *アメリカ補綴学会ではおおむね6年に一度用語をまとめて『Journal of Prosthetic Dentistry』 に「Glossary of Prosthodontic Terms」として掲載している.最新版は1999年に改訂された第7版である.
 2002年6月
 九州大学大学院歯学研究院 古谷野潔
 岡山大学大学院歯学総合研究科 矢谷博文
 序
 カラーグラフ

〔あ〕
1.アイヒナーの分類
2.アングルの分類
3.アンテの法則
4.アンテリアガイダンス
5.アンテリアジグ
6.インターオクルーザル・レコード
7.インプラント補綴
8.嚥下運動
9.オーストリアンナソロジー
10.オッセオインテグレーション
〔か〕
11.下顎のバイオメカニクス
12.下顎の基本運動
13.下顎安静位
14.下顎位
15.下顎反射
16.顆頭間距離
17.顆路
18.顎関節の構造
19.顎関節症
20.顎関節内障
21.基準面
22.クリステンセン現象
23.グループファンクション
24.犬歯誘導咬合
25.ゴシックアーチ描記法
26.固定
27.咬合干渉
28.咬合器
29.咬合器の顆路調節
30.咬合高径
31.咬合性外傷
32.咬合接触
33.咬合調整
34.咬合平面
35.咬合様式
36.咬合力
37.咬合彎曲
38.咬頭
39.咬頭嵌合位
〔さ〕
40.サイドシフト
41.作業側・非作業側
42.歯冠歯根比
43.診断用ワックスアップ
44.審美補綴
45.人工歯
46.人工歯排列
47.スプリットキャスト法
48.すれ違い咬合
49.セファログラム
50.生物学的幅径
51.切歯路
52.選択削合
53.咀嚼運動
54.咀嚼筋
55.早期接触
〔た〕
56.短縮歯列
57.チャックバイト法
58.チューイン法
59.中心位
60.調節彎曲
61.蝶番軸
62.ドーソンテクニック
63.ドロップオンテクニック
〔な〜ら〕
64.ニュートラルゾーン
65.ハノーの5原則
66.パントグラフ法
67.バランスドオクルージョン
68.発音
69.被蓋
70.フェイスボウ
71.プロビジョナルレストレーション
72.ブラキシズム
73.不正咬合
74.ポステリアガイダンス
75.ポッセルトの図形
76.ボンウィル三角
77.モノプレーンオクルージョン
78.リマウント法
79.リンガライズドオクルージョン
80.ロングセントリックオクルージョン

 コラムタイトル一覧
 索引
 執筆者一覧
 レイアウト・作図 塚本正幸
 表紙 伊藤 守