やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに

 救急患者はもとより患者の急変時の対応にも特有の知識や技術,さらに経験が必要であることは広く認識されており,救急看護に従事する看護婦が知識を得るための手引書は多く出版されている.しかし,ある程度の救急看護の経験を積んだ看護婦には役立つ知識も,初心者の実践に結びつけにくいことが少なくない.そこで,救急看護婦による救急看護婦のための救急看護の本を作ることを計画し,救急医療の現場で長年の経験を持ち,日々の勤務のなかで新人看護婦の教育に従事しているベテランの婦長や主任看護婦が忙しい勤務の合間を縫って後輩看護婦・看護学生のために執筆した.
 当初は救急領域の新人看護婦のための,さらには救急看護のテキストともなる本として計画したため,目次には救急看護,救急患者ということばが多く出てくるが,これらは急変または急性期患者と読み替えてもらえれば,患者急変時にも,急性期病態の患者ケアにも役立つ本になったと自負している.
 第I編の救急医療と看護では,救急医療における看護部門の位置付け,特徴的な看護管理をのべて救急医療と看護を全体的に理解できるようにした.第II編の救急患者と家族のケアは,救急患者の疾患の特色や治療に関連する患者や家族の心理的問題,さらに倫理的問題にも多くふれた.第III編の救急治療のAでは主要な病態,呼吸・循環・体液・意識・体温などバイタルサインの障害や異常と看護を述べ,Bでは心肺停止など特有で必須の病態と看護を述べた.さらに第IV編では特殊な治療として人工呼吸療法,輸液・輸血療法,体外循環,血液浄化法,創傷療法,脳低温療法,栄養療法などをのべた.第V編では,救急看護婦・士の役割と専門性にもふれた.基本をふまえながら最新の医学知識も盛り込んだ内容にするための努力を重ねたが,さらに看護婦による執筆であるため医学監修をお願いして,安心できる知識を読者に提供できるように努力した.
 多人数による執筆であるために表現に個性があり,多少読みづらい点があるかもしれないが,それは執筆者の熱意に免じてお許しいただきたい.内容は当初目的とした初心者や看護学生はもとより経験ある看護婦にも役立つものになったと確信しているが,さらに内容を充実させるために読者の忌憚のないご指摘やご意見をいただければ幸いである.
 2001年1月 高橋章子
I 救急医療と看護
 1.わが国の救急医療のあゆみ ……(明石惠子)
  1 救急医療体制と看護
    1) 終戦から昭和30年代
    2)昭和40年代
    3)昭和50年代
    4)昭和60年代から現在
  2 救急医療の特性
    1)21世紀における救急医療のあり方
    2)対象の特徴と救急医療の不採算性
    3)救急医療における法的問題
 2.救急看護の特徴
  1 救急看護とは  (礒辺満子)
    1)救急看護の特徴と看護の役割
     ―緊急度・重症度 患者の情報が少ない 臨機応変な対応 危機状況への対応 プライバシーの保護と守秘義務 救急におけるターミナルケア チームワークと調整
    2)救急ナースの教育と健康管理
  2 救急看護体制
    1)部署別にみた看護管理 (礒辺満子)
     ―(1)初療外来
     [受け入れ準備 受け入れ時の対応 記録]
     ―(2)救急病棟
     ―(3)救急ICU
     ―(4)救急手術室
    2)救急部門のベッド管理と病院間の転送 (礒辺満子)
    3)特徴的な看護管理
     (1)救急領域における感染管理 (原 澄子)
     ―感染症と感染管理の変遷 病院感染 ICUの患者の特徴 スタンダードプリコーション サーベイランス
     (2)事故管理・危機管理 (田口吉子)
     ―看護婦の業務範囲 医療事故の発生原因 実践の場で発生しやすい事故 看護婦・士による事故発生要因 リスクマネージメントと事故防止 教育 事故発生時の対処 コラム:用語
     (3)緊急検査 (磯由美子)
     ―血液ガス分析 輸血検査 末梢血検査 電解質検査 生化学検査(血液) 心電図 画像診断 髄液検査 特殊検査
     (4)輸血管理・薬品管理……(藤田昌久)
     ―輸血管理 薬品管理
     (5)患者死亡時の対応 (藤田昌久)
     ―患者の状況と対応 家族の状況と対応 死後の処置
    4)院内救急 (竹内美恵子)
     ―一般病棟における,救急対応のための体制づくりと教育
     [救急物品の整備 救命処置のトレーニング 急変のおそれに対する予測的アセスメント 報告 記録]
 3.救急患者対応の特徴
  1 観察
    1)観察の基礎 (臼井千津)
     ―(1)バイタルサインの観察
     ―(2)観察と時間軸
     ―(3)観察とモニタ類
     ―(4)心理面の観察
     ―(5)原因不明な患者の観察
     ―(6)「観察したこと」を活用する
    2)救急看護における観察とその特徴 (臼井千津)
     ―(1)緊急度・重症度
     ―(2)トリアージ(triage)
     ―(3)救急看護の観察の特徴
     [意識 呼吸 脈拍,心拍 血圧 体温]
    3)救急医療におけるフィジカルアセスメントの意義 (大岡良枝)
     ―(1)初期アセスメント
     [呼吸 循環 全身状態と意識状態の観察]
     ―(2)二次アセスメント
     [情報の収集 身体診査(フィジカルアセスメント)]
    4)モニタリング (藤原正恵)
     ―(1)呼吸
     [パルスオキシメータ カプノメータ 人工呼吸器に内蔵されている呼吸モニタ]
     ―(2)循環系
     [心電図モニタ 観血的動脈圧モニタ 中心静脈圧モニタ スワン・ガンツカテールによるモニタ]
     ―(3)脳神経
     [頭蓋内圧モニタ 内頸静脈酸素飽和度]
  2 情報収集 (多久和喜子・中村文恵)
    1)救急領域における情報の特徴
    2)救急領域における情報収集と手段
     ―(1)情報収集のポイント
     ―(2)報収集の手段
     ―(3)情報の整理と把握
  3 記録 (多久和喜子・中村文恵)
    1)記録とは
    2)救急領域における記録
    3)記録の実際

II 救急患者と家族のケア
 1.救急疾患と患者の特色 ……(藤原美津恵・高橋章子)
    1)救急疾患の特色
     ―(1)不慮の事故,災害としての発症が多い
     [突然の発症が多く,患者の心身の苦痛が大きい 患者情報に不明な点が多く,医療展開に支障をきたすことがある 感染に関する情報がない 夜勤帯の発症が多い]
     ―(2)生命の危険を伴う患者が多い
     [CPAOA 脳死DNR]
     ―(3)自殺企図患者
    2)救急患者の特色
     ―(1)自分の意思によらない搬入
     ―(2)未知の体験による患者の身体的苦痛と不安
     ―(3)医療を拒否する患者
     ―(4)家族への連絡がとりにくい患者
     [旅行中の患者 身寄りのない患者 外国人の患者]
     ―(5)警察との連携が必要な患者
     [虐待を受けている患者 突然死の患者 犯罪や事件に関連する患者]
    3)治療展開の特色
     ―(1)治療が積極的で侵襲が大きい
     [各種モニタの装着とICU管理 特殊治療と合併症のリスク]
     ―(2)治療の限界
     ―(3)経済的負担
 2.集中治療における日常生活ケア ……(丸山美津子)
    1)看護婦・士に求められるもの
    2)ICU看護の基本
    3)ICUにおける患者の日常生活とは
    4)気づき=感性を育てる
    5)予測性・準備性・即応性
    6)家族援助の実際
    7)患者の日常性の確保に向けて
 3.患者と家族の心理 ……(早坂百合子)
    1)発症が患者や家族にもたらすもの
    2)危機状態にある患者や家族の支援
     ―(1)家族援助のための環境調整
     [ 物的環境 自由な面会 医師,看護婦・士からの説明]
     ―(2)家族援助の実際
     [救急外来における家族援助 入院後の家族援助]
    3)救急領域で適応される危機理論
 4.救急患者をめぐる倫理的問題 ……(山勢善江・山勢博彰)
    1)救急患者とインフォームド・コンセント
     ―(1)インフォームド・コンセントの定義
     ―(2)インフォームド・コンセントの概念
     ―(3)救急医療とインフォームド・コンセント
     ―(4)患者・家族の心理状態を踏まえたインフォームド・コンセント
    2)救急患者とQOL
     ―(1)QOLの概念
     ―(2)救急医療とQOL
    3)救急患者とDNR
     ―(1)DNRとは
     ―(2)救急患者に対するDNRの現状
    4)脳死とドネーション
    5)臓器提供と看護婦・士の役割
     ―(1)日本人の死生観
     [死に対する宗教観 遺体への思い]
     ―(2)家族と死
     [家族観 家族にとっての死の意味]
     ―(3)脳死患者家族への看護の特徴
     [患者主体の医療から家族主体の医療へのシフト 感情表出を促すケア 説得のケアではなく共感のケア キュアの終了とケアの継続]

III 救急治療
A.救急患者の主要病態とケア
 1.呼吸障害 ……(塩見一成)
  1 呼吸と呼吸障害
    1)呼吸とは
    2)呼吸障害と原因疾患
    3)呼吸不全とは
  2 呼吸状態のアセスメント
    1)呼吸状態の判定
     ―(1)正常な呼吸状態
     ―(2)異常な呼吸状態
     [呼吸数,深さの異常 呼吸リズムの異常]
    2)呼吸状態と関連する身体症状のアセスメント
     ―(1)主観的症状
     ―(2)視診で発見できる呼吸状態の異常
     [表情 頸部の状態 呼吸状態 胸郭の動き 姿勢 その他]
     ―(3)聴診で発見できる呼吸状態の異常
     ―(4)触診で発見できる呼吸状態の異常
  3 呼吸状態と他のバイタルサインの関連
  4 主な治療と看護
    1)救命のための対応
     ―(1)窒息
     ―(2)舌根沈下
     ―(3)気管内挿管
     ―(4)人工呼吸
    2)呼吸不全への対応
     ―(1)安静
     ―(2)呼吸指導
     ―(3)酸素吸入
     [投与方法 酸素投与中の看護ケア 酸素吸入の評価 酸素吸入の副作用]
 2.循環障害 ……(高田貴美子・伊藤 靖)
  1 循環と循環障害
    1)循環とは
     ―(1)循環の解剖と生理
     ―(2)心臓の機能と循環
    2)循環障害と原因疾患
     ―(1)心原性ショック
     ―(2)循環血液量減少性ショック
     ―(3)敗血症性ショック
     ―(4)神経原性ショック
     ―(5)アナフィラキシーショック
  2 循環状態のアセスメント
    1)循環状態の判定
    2)循環状態とバイタルサインの関連─異常状態の観察と緊急性の判断
     ―(1)血圧
     ―(2)脈拍
     ―(3)呼吸
     ―(4)体温
     ―(5)意識状態
     ―(6)皮膚の状態
     ―(7)尿量
    3)各種データからみたアセスメント
     ―(1)中心静脈圧
     ―(2)心係数
     ―(3)肺動脈楔入圧(PCWP)
     ―(4)その他
  3 循環状態と関連する身体症状のアセスメント─異常状態の観察と原因の推測
    1)胸部症状
    2)出血
    3)感染
    4)病歴と全身状態
  4 主な治療と看護
    1)救命のための対応
     ―(1)心原性ショック
     ―(2)循環血液量減少性ショック
     ―(3)敗血症性ショック
     ―(4)神経原性ショック
     ―(5)アナフィラキシーショック
    2)循環状態に異常をきたした患者のケア
 3.体液異常 ……(山勢博彰)
  1 体液と体液異常
    1)体液
     ―(1)体液の働き
     [物質輸送としての働き 水分出納の調節 酸-塩基平衡の調節]
     ―(2)体液の分布と量
     [TBWの分布 年齢・性別・体重による体液量の相違]
     ―(3)体液の組成
    2)電解質
     ―(1)ナトリウム(Na)
     ―(2)クロール(Cl)
     ―(3)カリウム(K)
     ―(4)カルシウム(Ca)
    3)体液,電解質,酸-塩基平衡の異常
  2 体液状態のアセスメント
    1)自覚症状と身体の観察
     ―(1)自覚症状
     ―(2)身体所見
     [皮膚と粘膜の性状 ツルゴール反応 浮腫の有無 頸静脈の怒張 循環動態の変化 呼吸状態の変化]
    2)検査所見
     ―(1)血液検査値
     [BUN/Cr比 ヘマトクリット(Ht)値]
     ―(2)尿検査データ
    3)1日の水分出納量
  3 体液異常のアセスメント
    1)浮腫
     ―(1)浮腫とは
     ―(2)原因と症状
     [全身性浮腫 局所性浮腫]
    2)脱水
     ―(1)脱水とは
     ―(2)原因と症状
     [水分欠乏性脱水 ナトリウム欠乏性脱水 混合性脱水]
    3)電解質の異常
     ―(1)ナトリウム値異常
     ―(2)カリウム値異常
    4)酸-塩基平衡の異常
  4 主な治療と看護
    1)浮腫の治療と看護
     ―(1)一般的治療
     ―(2)利尿剤の投与
     ―(3)血液透析または血液浄化法
     ―(4)看護
    2)脱水の治療と看護
     ―(1)一般的治療
     ―(2)看護
    3)電解質異常の治療と看護
 4.意識障害 ……(松月みどり)
  1 意識障害のメカニズム
    1)意識と意識障害
     ―(1)意識とは
     ―(2)意識障害とは
    2)意識障害と原因疾患
    3)意識障害のメカニズム
  2 意識障害の評価
    1)意識障害の程度の評価
     ―(1)ジャパンコーマスケール(JCS)
     ―(2)グラスゴーコーマスケール(GCS)
    2)眼症状とアセスメント
     ―(1)眼位と眼球運動
     ―(2)瞳孔異常
     ―(3)角膜反射
     ―(4)Doll's eye phenomenon(人形の眼現象)
    3)その他の症状のアセスメント
     ―(1)姿勢異常
     ―(2)眼底所見
     ―(3)片麻痺
     ―(4)異常反射
     ―(5)顔面筋の麻痺
     ―(6)項部硬直
     ―(7)皮膚の色
     ―(8)吸気臭
    4)バイタルサインと原因疾患の関係
     ―(1)血圧・脈拍の変動の特徴
     ―(2)体温
     ―(3)呼吸との関連
     [チェーンストークス呼吸 過呼吸(中枢神経性) 失調性呼吸 クスマウル呼吸 ビオー呼吸]
  3 意識障害の主な治療と看護
    1)呼吸と循環の維持
     ―(1)救命のための対応
     ―(2)気道の確保
     ―(3)循環の維持
     ―(4)痙攣への対処
    2)患者の安全対策
    3)脳保護療法
    4)原因疾患の治療
 5.体温異常 ……(寺師 榮)
  1 体温と体温異常
    1)体温とは
    2)体温調節の仕組み
     ―(1)体温の産生と放散
     ―(2)体温調節
    3)体温異常と原因
     ―(1)発熱
     ―(2)うつ熱
     [熱中症 悪性過高熱(悪性高熱症) 悪性症候群]
     ―(3)低体温
  2 体温異常のアセスメント
    1)体温測定方法
    2)体温異常と関連する身体症状のアセスメント
     ―(1)重症度の評価
     ―(2)熱型の様式
     ―(3)発熱に伴う随伴症状
     ―(4)既往歴・治療歴
     ―(5)検査
  3 体温異常と他のバイタルサインの関連
    1)高体温時のバイタルサインの変化
     ―(1)脈拍・血圧
     ―(2)呼吸
     ―(3)中枢神経症状
     ―(4)その他
    2)低体温時のバイタルサインの変化
     ―(1)脈拍・血圧
     ―(2)呼吸
     ―(3)中枢神経症状
     ―(4)その他
  4 主な治療と看護
    1)体温上昇に対する治療と看護
     ―(1)発熱時の対応
     [冷罨法 解熱剤 輸液 患者指導]
     ―(2)うつ熱時の対応
     [体表冷却法 体腔冷却法]
    2)低体温時の治療と看護
コラム:低体温(凍傷) (五十嵐美恵子)

B.救急領域の特徴的な病態とケア
 1.CPAOA(来院時心肺機能停止) ……(中谷茂子)
  1 CPAOAとは
  2 原因
  3 症状
     ―脈拍・血圧 呼吸 意識 瞳孔 体温 失禁 尿量
  4 治療とケアの展開
    1)搬送の依頼を受ける
    2)搬入前準備
    3)患者受け入れ
    4)家族,付き添い者からの聴取
    5)救急隊員からの聴取
    6)治療・処置の展開
     ―(1)気道確保
     [気管内挿管チューブのサイズ 気管内挿管後の換気 気管内吸引]
     ―(2)CPR
     ―(3)輸液ルート確保
     ―(4)輸液・投薬
     [輸液 投薬]
     ―(5)除細動
     ―(6)その他(バルンカテーテルの挿入)
     ―(7)検査,画像診断
     [血液検査 尿検査 超音波エコー 心電図 画像診断]
    7)転室
  5 救急外来における看護の役割・注意点―患者家族への援助
  6 院内急変によりCPAに陥った場合の看護の役割・注意点
    1)看護の展開
     ―(1)患者を処置室へ搬送する
     ―(2)一次,二次救命処置
     ―(3)家族への連絡と説明
    2)他患者への配慮
  7 今後の課題
    1)CPR普及啓発活動
    2)患者の尊厳
    3)プレホスピタルケアの充実に向けて
 2.急性腹症 ……(廣野二美)
  1 急性腹症とは
  2 原因
    腹痛の種類とその発生機序や特徴
     ―(1)内臓痛
     ―(2)体性痛
     ―(3)関連痛
  3 症状
    1)問診
     ―(1)既往歴
     ―(2)現病歴
     [腹痛に関する問診 随伴症状に関する問診]
    2)理学所見
     ―(1)全身所見
     [バイタルサイン ショック症状]
     ―(2)局所所見
     [視診 触診 打診 聴診]
  4 治療とケアの展開
    1)主な観察とアセスメント
     ―(1)痛みに関する観察
     ―(2)全身状態に関する観察
    2)緊急対応とアセスメント
     ―ショック対応
     [輸液路確保と体液管理 呼吸管理]
    3)主な緊急検査とアセスメント
     ―(1)一般血液検査・尿検査
     ―(2)画像診断検査
     [単純X-p撮影 超音波腹部エコー 腹部CTスキャン その他選択検査]
    4)緊急開腹手術とアセスメント
  5 看護の役割,看護上の注意点
    1)経時的観察の重要性
    2)予測性と即応性のある検査対応
    3)患者の苦痛や不安への対応
    4)インフォームド・コンセントへの対応
 3.敗血症 ……(中村恵子・蟹沢信二)
  1 敗血症とは
  2 原因
  3 症状
  4 敗血症の一般的治療
     ―感染源の早期発見 感染源の除去 感受性のある抗生物質の投与 新たな感染と菌の伝播の防止 早期の栄養投与 薬剤投与 敗血症に伴う症状への対応
  5 敗血症の一般的検査
     ―感染巣の把握 各臓器の検査
  6 敗血症の一般的看護
     ―異常の早期発見 呼吸の管理 輸液の管理 褥瘡の予防 患者,家族への援助
  7 治療とケアの展開
    1)看護の展開
    2)看護の実際および評価
  8 看護の役割,看護の注意点
 4.中毒 ……(中野八重美)
  1 中毒とは
    1)薬物中毒の種類
    2)急性薬物中毒の診断と治療
     ―(1)急性中毒の診断
     ―(2)急性中毒の治療
  2 急性薬物中毒の看護
    1)急性期の看護援助と役割
     ―(1)緊急性評価とは
     [バイタルサイン 全身状態]
     ―(2)中毒物質特定のための情報収集とは
     [直接患者自身から情報を得る方法 周辺の人々から情報を得る方法 検体採取・保管方法]
     ―(3)急性中毒初期治療・処置
     [毒物の吸収阻止・排除 解毒・拮抗剤 対症療法 中毒患者来院時に行われる検査]
  3 回復期の看護援助と役割
     ―(1)後遺症の把握
     ―(2)患者・家族への精神的ケア
     ―(3)再発防止
  4 知っておきたい個々の急性薬物中毒について
     ―(1)一酸化炭素中毒(CO中毒)
     ―(2)医薬品による中毒
     ―(3)農薬中毒
     ―(4)家庭用品中毒(タバコ・防虫剤・殺虫剤・洗剤・漂白剤)
     [タバコ(ニコチン中毒) 防虫剤・殺虫剤(衣料用) 洗剤・漂白剤]
     ―(5)工業用品中毒(青酸化合物・シンナー・ガソリン)
     [青酸化合物(シアン中毒) シンナー・ガソリン類]
 5.外傷 ……(安保弘子)
  1 頭部外傷
    1)頭蓋内血腫の特徴と治療
    2)脳浮腫の病態
    3)看護のポイント
  2 胸部外傷
    1)胸壁外傷の特徴と治療
    2)看護のポイント
  3 腹部外傷
    1)診断と治療手順
     ―(1)検査
     [腹部理学的所見 腹部単純X-p撮影 血液検査 検尿 超音波検査 腹腔穿刺 造影CT検査 内視鏡的逆行性膵胆管造影 消化管造影 尿路造影]
     ―(2)診断と治療
     [心肺停止やショック状態の場合 ショック状態から離脱できた場合 持続的な腹膜刺激症状がある場合 腹膜刺激症状がない場合]
    2)看護のポイント
  4 脊髄・骨盤・四肢の外傷
    1)脊髄損傷
    2)骨盤骨折
    3)四肢の外傷
     ―(1)四肢の開放性骨折
     ―(2)コンパートメント症候群
     ―(3)クラッシュシンドローム
    4)看護のポイント
 6.熱傷 ……(渡邊淑子)
  1 熱傷とは
  2 診断と症状
    1)熱傷の重症度の判定
     ―(1)深度判定と症状
     ―(2)熱傷面積の算定
    2)熱傷病態の一般的経過
     ―熱傷ショック期 ショック離脱期 感染期
    3)栄養管理
    4)治療とケアの展開
     ―(1)臨床経過
     ―(2)看護過程の展開
     [ショック期 ショック離脱期 感染期 回復期]
    5)看護の役割・看護上の注意点
 7.溺水(小倉ひとみ)
  1 溺水とは
  2 予後を左右する因子
  3 淡水溺水と海水溺水
  4 注目すべき症例
     ―肺水腫 低酸素血症 代謝性・呼吸性アシドーシス 低体温
  5 治療とケアの展開
  6 看護の役割,看護上の注意点
 8.熱中症 ……(坂口桃子)
  1 熱中症とは
     ―コラム:体温調節機構と発熱の機序
  2 病態と症状
    1)日射病
    2)熱痙攣
    3)熱射病(熱疲労)
  3 熱中症の予防
  4 治療とケアの展開
    1)現場での処置
     ―(1)患者の把握
     [重症度を把握する 発生時の状況を把握する]
     ―(2)現場での処置
     ―(3)搬送時の注意
     [搬送先の決定 搬送時の注意点]
    2)入院時看護の展開
     ―(1)情報の収集
     [原因に関する情報を得る 経過に関する情報を得る 症状を観察する 検査データから情報を得る]
     ―(2)治療に伴う看護の実際
     [身体の冷却 体液・電解質の管理 気道の確保・酸素療法 合併症の治療・予防に伴うケア]
     ―(3)看護の役割,看護上の注意点
     [安全への援助 安楽への援助 清潔の保持 不安の軽減]
 9.救急領域に多くみられる精神症状「せん妄」(嶋田幸子)
  1 せん妄とは
  2 せん妄の初期症状
     ―正常な反応との鑑別 身体症状と経過
  3 せん妄の病態
  4 せん妄の原因
    1)直接因子
    2)準備因子
     ―(1)高齢者
     ―(2)痴呆
     ―(3)アルコール依存・薬物中毒
    3)誘因・促進因子
  5 せん妄患者の看護のポイント
    1)情報の収集
    2)アセスメントとせん妄防止対策
    3)せん妄の初期症状の判断と対策
    4)せん妄の薬物療法
  6 看護の実際

IV 救急医療における特殊療法
 1.人工呼吸療法(椎名ひろみ)
  1 人工呼吸療法の特色
    1)人工呼吸療法の目的
    2)人工呼吸の適応
     ―(1)人工呼吸の開始基準
     ―(2)人工呼吸器からの離脱
    3)人工呼吸器の種類と特徴
    4)各種作動方式285
     ―IPPV IMV SIMV PSV CPAP CPPV その他
  2 人工呼吸療法実施中の看護
    1)合併症の予防
     ―(1)機器のトラブルとその管理
     [駆動源の異常 本体の故障 呼吸回路のリーク 吸気ガスの酸素濃度の異常 加温・加湿器の異常 アラーム機能の動作異常]
     ―(2)感染防止
     [人工呼吸器および回路の管理 気管内吸引およびチューブ,カニューレの管理]
    2)呼吸理学療法
     ―呼吸理学療法の種類・方法
     [体位排痰療法 用手による排痰促進法 胸郭可動域訓練]
    3)水分・栄養管理
    4)精神面のケア
 2.輸液・輸血療法(高山裕喜枝)
  1 静脈路の確保
  2 輸液について
    1)特殊輸液療法
     ―脱水時の輸液 出血性ショック時の輸液 熱傷時の輸液
    2)輸液による合併症
     ―腎機能障害 心不全 肺水腫・肺うっ血 電解質異常 血糖値異常 発熱 静脈炎・血栓症
    3)輸液時の呼吸・循環・体液管理
     ―呼吸 血圧 脈拍 尿量 体温 中心静脈圧(CVP) 肺動脈圧,心拍出量 体重 電解質濃度
    4)輸液療法の評価
  3 輸血について
    1)輸血を行うときの注意点・観察点
    2)輸血の副作用
 3.体外循環(縣美恵子)
  1 体外循環とは
  2 体外循環の種類と特徴
    1)人工心肺装置
    2)PCPS
    3)ECMO
    4)血液浄化法
  3 PCPS(経皮的心肺補助法)
    1)PCPSの定義と作動原理
    2)PCPSの目的
    3)PCPS開始までの手順
    4)PCPS施行中の患者の看護
     ―(1)身体的な変化と看護
     ―(2)心理的な変化と看護
     ―(3)生活面への影響と看護
 4.血液浄化法 ……(刀谷峰子)
  1 血液浄化とは
  2 血液浄化法の種類
  3 ブラッドアクセス
  4 血液浄化の原理と実際
    1)血液透析
    2)血液濾過
    3)持続的血液濾過
     ―動静脈血液濾過 静静脈血液濾過
    4)血液濾過透析
    5)持続的血液濾過透析
    6)吸着療法
     ―(1)血液吸着
     ―(2)血漿吸着
    7)血漿交換
    8)腹膜透析
     ―(1)間欠的腹膜透析
     ―(2)持続的外来腹膜透析
  5 合併症と対応策
  6 看護の役割,看護上の注意点
    1)観察と看護
    2)装置の管理
 5.創傷療法(阿久津功)
  1 創傷とは
  2 創傷の種類
    1)鈍的外力による損傷
    2)鋭的外力による損傷
    3)特殊な外力による損傷
  3 観察のポイント
    1)受傷時の情報収集
    2)全身の観察
    3)情報・程度に合わせたバイタルサインのチェックと評価
    4)損傷部位の確認と程度の評価
  4 治療・処置のポイント
    1)確実な止血
     ―(1)圧迫止血法
     ―(2)止血包帯法
     ―(3)結紮止血法
     ―(4)MAST
    2)創傷処置
    3)疼痛への対応
    4)感染防止
  5 特殊な外傷のポイント
    1)破傷風
    2)ガス壊疽
    3)咬創
    4)刺創
  6 看護の役割,看護上の注意点
 6.脳低温療法(渕本雅昭・藤井弥生・菊池武子)
  1 脳損傷による脳内の変化
  2 脳低温療法とは
  3 脳低温療法中における生体反応
  4 脳低温療法中のモニタリング
  5 脳低温療法中の看護の実際
    1)温度コントロール
    2)重症感染対策
    3)呼吸管理・呼吸器合併症予防
    4)末梢循環不全予防
 7.栄養療法 ……(藤原正恵)
  1 栄養状態の評価
  2 栄養療法の選択
  3 栄養療法の種類
    1)静脈栄養法
     ―(1)末梢静脈栄養法(PPN)
     ―(2)中心静脈栄養法IVH(または完全静脈栄養法 TPN)
     [適応 欠点 合併症とその対策]
    2)経腸栄養法(EN)
     ―栄養剤の種類 合併症とその対策

V 救急看護婦・士の役割と専門性
 1.救急看護婦・士の役割の変遷
    1)主としてエマージェンシーな傷病への処置を優先した時期
    2)エマージェンシーからクリティカルへの変化
    3)救急看護婦・士としての専門性におけるジレンマの時期
    4)日本救急医学会看護部会の発足
    5)日本救急看護学会の発足
 2.救急看護婦・士の働く場所と役割
    1)救急医療施設内ケア
     ―(1)救急看護婦・士に期待される知識と技術
     [エマージェンシーでクリティカルな病態への対応 救急患者と家族への対応]
     ―(2)システムと場の調整
     [対外的な調整と看護婦・士 施設内での調整と看護婦・士]
     ―(3)救急看護婦・士としての専門性の獲得
     [救急医療人としての自覚 後継者の育成 看護技術の質を高める 看護の質の向上と研究能力の開発]
    2)プレホスピタルケアにおける救急看護婦・士の役割
     ―(1)現場への出動
     ―(2)救急救命士ならびに救急隊員の教育
     ―(3)medical control(MC)制度と看護婦・士
     ―(4)一般社会人への啓発活動
    3)災害医療における救急看護婦・士の役割
     ―(1)病院が被災した場合
     [入院患者への対応 被災傷病者への対応 日常生活への支援 近隣の避難所での診療活動]
     ―(2)被災地を応援する場合
     [医療チームの派遣 後方支援 緊急収容患者への対応]
 3.救急看護婦・士の専門性
    1)救急看護婦・士の育成
     ―(1)日本救急医学看護部会の果たした役割
     ―(2)教育目標と方法
     [目標 方法]
    2)救急看護認定看護師
     ―(1)救急専門看護婦・士の構想
     ―(2)認定看護師制度の発足
     ―(3)認定看護師の役割