やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

監訳者の序
 『補聴器ハンドブック 第1版(原著:2001年,日本語版:2004年)』が刊行されて10余年が経った.この間に補聴器はめざましい変化を遂げた.アナログ補聴器からデジタル補聴器への移行があり,現在では次世代デジタル補聴器への革新がすすんでいる.見た目や操作性という点でも大きな変化があった.耳せんの中にレシーバが収まるRIC式耳かけ型補聴器の登場や,左右の補聴器をリモコンを介することなくワイヤレスで制御できるタイプの登場などがある.付け加えておかなければならないのは,スマートホンアプリを用いたセルフフィッティングシステムの登場である.補聴器とスマートホンの連携は,これからの補聴器の姿をさらに大きく変化させていくことだろう.デジタル信号処理(DSP)の進歩も補聴器の機能を大きく変えた.20ch以上のマルチアンプの登場や2つ以上のプロセッサを搭載する補聴器が登場してきたことで,ノイズリダクションやアダプティブ指向性の機能は飛躍的に向上したし,ノイズ下や複数の話者のいる環境においても語音明瞭度が損なわれることもなくなった.音源定位もよりアダプティブに行うことが可能になった.時間分解能の向上からフィードバック発振音(ハウリング音)をゼロにしたり,不快な衝撃音を回避したりすることも可能になった.そうした機能の延長線上に子音強調という考え方も生まれてきている.これまで縦軸としてのゲインのコントロールしかできなかったが,横軸である周波数を移転させたり圧縮したりすることも可能となっている.しかし,これらの革新は,補聴器をますますブラックボックス化させ,われわれがすべてを理解することをむずかしくさせている.
 Dillon博士は本書を通じて,現場で補聴器診療に接するわれわれ(言語聴覚士,補聴器技能者,そして補聴器相談医)に,必要とする知識や情報を懇切丁寧に理解できるように解説してくれている.こうした補聴器に関するあらゆる知識を俯瞰的かつ網羅的に示した書は本書しか存在しない.それゆえに本書は,現場で補聴器診療に接するすべての人に必携の書(ハンドブック)といえるであろう.
 さて,この第2版では第7章が第1版になかった全く新しく内容となっている.またいずれの章もその内容は3割程度において加筆や変更が加えられている.章ごとの名前は第1版を踏襲しているが,全く新しい本にふれるようにこの第2版を1ページごと慎重に読みすすめていってほしい.なお,第2版の翻訳は新しいメンバーで取り組んでいる.補聴器外来にたずさわる新進気鋭の若手言語聴覚士,聴覚リハビリテーション学の教育と研究に深くかかわる専門家,補聴器工学の専門家,そして臨床の実践をつんだ補聴器適合判定医と慎重に人選した.川崎聡大,大沼直紀,麻生伸〔博士(医学)〕,金山正雄〔博士(工学)〕,富澤晃文〔博士(リハビリテーション科学),言語聴覚士〕,古西隆之,岡ア聡子,井上澄香,天野京子,澤田光毅,保科卓成,下澤真紀(言語聴覚士),高木良明の諸先生方のご尽力に感謝する.さらに最終校正でご協力いただいた田中久博〔博士(医学)〕,和久井亜紗子,荒井啓子(言語聴覚士)の諸先生方に深謝する(敬称略).
 最後に,当初あれほど難航した翻訳権取得がこれほどスムーズにすすんだのは,シバントス株式会社のひとかたならぬ労によるところ大であった.紙面を借りてここに改めて謝意を申し上げたいと思う.
 本書が補聴器診療にかかわるすべてのクリニシャンにとっての座右の書としてお役に立てることを願っている.
 2017年春 栃木県那須塩原市にて
 中川雅文


序文
本書のねらい
 本書には,耳鼻咽喉科医,言語聴覚士,および補聴器技能者にとって必須の補聴器に関する情報のすべてを記述してある.実践的かつ理論的に補聴器の音を作るための方法について,課題や限界を列挙するのではなく,問題解決に主眼を置いて記載してある.実践的な手法はエビデンスに基づいた内容を記載するように心がけているが,経験的な手法も提案としてあるいは暫定的なやり方として紹介してある.
 本書は,段階的に読み込んでいけるような構成をとっている.まず,章の概要を各章の冒頭に示した.読者諸氏の多くが,概要だけでは飽き足らずに,さらに読みすすんでいってくれるのではないかと期待している.各ページには灰色の背景がついている部分がある.これは,読みすすんでいくときに必ず目を通してほしい部分である.灰色の背景がついた段落を読むことで,より理解を深めていってほしい.それ以外の部分を読むことでは,より詳しい学術的な情報を学ぶことができるだろう.また,著者のコメントとして脚注も付け加えてある.さらに囲み記事では,ハードウェアに関しては「Summary」,理論に関しては「Theory」,実践的なテクニックについては「Practice」とそれぞれ左上に明記し,トピックとなる情報を示した.
 初版においては,“難聴者”を表す用語として,「患者」「難聴者」「装用を希望している顧客」などを使用したが,いずれも不評であった.難聴者がクリニシャンと初めて会う場面でこうした呼称を使うことを不適切だと考える読者が多かったようである.本書では,聴覚コミュニケーションの問題を抱え,高価な補聴器の購入(消費行動)を考えている,「クライエント」と呼ぶことにした.また,医師,言語聴覚士,補聴器技能者は総称して「クリニシャン」としている.「クリニシャン」は,クライエントに対して必要な助言や指導を行う専門家を指すことばとして使用している.
 本書では,クライエント中心のリハビリテーションという考え方を採用し,補聴器の一般的な使用方法や,補聴器外来に通院する難聴者が期待することなどを網羅するように記述した.もし「クライエント」という表現を好まないようであれば,読み替えて読みすすんでいってほしい.

前版からの変更点
 基本的には全章を確認し,必要に応じて章の追加や書き換えを行った.
 新たな章(第7章)や追加項目には,指向性マイクロホンの重要性や,DSP(デジタル信号処理装置)の革新がもたらした関連情報などを新規情報として組み込んである:
 ・この10年間の技術革新,およびどの技術が実用化されたか.
 ・知っておくべき新しい技術〔補聴器,ALD(補聴援助機器),埋め込み型デバイス〕.
 それほど大きな変化がなかった項目については,その記述の変更も最小限にとどめてある.しかし,この10年間で,初版での主張はさらに強化された.その意味で,第2版では,より踏み込んだ主張を展開している.結果としてほとんどの章で手を加えた.
 本書はエビデンスに基づいてより確かな情報を伝えることに主眼を置いて記述してある.正確に情報を伝える目的で,初版と異なるニュアンスの記述になった部分もある.文中における表現のあいまいさは,エビデンスの弱さを示すものとして読みすすんでいっていただければ幸いである.
 一方,これまでと主張を変えた部分もある.初版では取り扱わなかった全く新しい概念,つまりオープンフィッティングの登場によってフィッティングの考え方が大きく変わったからである.フィードバック発振抑制(ハウリングキャンセル)機構と細いチューブの組み合わせによって実現されるこの新しいフィッティング技術は,クライエントに大きな恩恵を与えている.本書では多くのページを割いて解説した.



謝辞
 本書を上梓するにあたり,草稿段階などで各章に対し,コメントや助言をくださった世界中のすべての仲間に感謝する.本書には,著者1人の力だけで達成できることをはるかに凌駕した知識の幅広さがあり,各氏に助言を仰ぐということは,この学問の広がりを,書籍という形で,一貫性と相互関連性をもってして読者諸氏に伝えるうえで,最適な方法であったと考えている(補聴器学分野のこうした裾野の広さをみようとしない読者がいたとしたら,それはこの学問の発展において非常に不幸なことである).
 本書は,以下のメンバーの協力なしに,完成させることはできなかった:Harvey Abrams,Iris Arweiler,Martina Bellanova,Virginia Best,Arjan Bosman,Eric Burwood,Peter Busby,Sharon Cameron,Simon Carlile,Teresa Ching,Terry Chisolm,Laurel Christensen,Cynthia Comptom,Robyn Cox,Huanping Dai,Ole Dyrlund,Kris English,Carol Flexer,Mark Flynn,Kirsty Gardner-Berry,Megan Gilliver,Helen Glyde,David Hartley,Heike Heuermann,Louise Hickson,Larry Humes,Earl Johnson,Dirk Junius,Gitte Keidser,Alison King,Linda Kozma-Spytek,Sophia Kramer,Frances Kuk,Ariane Laplante-L?vesque,Stefan Launer,Dawna Lewis,Brian Moore,Hans Mulder,Kevin Munro,Graham Naylor,Anna O'Brien,Unn Siri Olsen,Wendy Pearce,Rainer Platz,David Preves,Henning Puder,Gary Rance,Jason Ridgway,Gabi Saunders,Richard Seewald,Karolina Smeds,Pauline Smith,Michael Stone,Robert Sweetow,Janette Thorburn,Peter Van Gerwen,Andi Vonlanthen,Wayne Wilson,Justin Zakis.ここにあらためて謝意を示す.
 補聴器のエキスパートの皆さんから受け取った有益なコメントの多くを初版で取り上げたように,第2版でも彼ら彼女らの意見を多く取り上げている.編集にかかわってくれたSteven Banningにも感謝する.もし読者諸氏が,本文の記述の中に誤りを見つけたときは,是非「publisher@boomerangpress.com.au」まで連絡してほしい.
 著者は,30年もの間,補聴器にかかわるエビデンスや聴覚リハビリテーションについて研究してきた.本書で取り上げた各章やトピックス,あるいはそこで展開した著者の知識や信念は,いずれもこれまでの臨床研究の中で著者を教育し,多くの影響を与えてくれたDenis Byrne,Teresa Ching,Gitte Keidserによって形作られたものである.謝意を伝えたい.さらには,国際的な交流によって多くの影響を与えてくれたArthur Boothroyd,Don Dirks,Harry Levitt,また,洞察に優れた助言をくださり,本書上梓に多大な貢献をしてくれた故Stuart Gatehouseにも感謝したい.
 最後に,初版そして第2版を通じていつも見守ってくれた私の妻,Fiona Macaskillに感謝したい.初版のときも第2版のいずれのときも,私は家族との時間を犠牲にしてしまったが,彼女は家族をまとめ支えてくれた.そればかりでなく,本書の完成に至るまで,聴覚に関する様々な助言や数多くの洞察を提供してくれた.
 本書を上梓するにあたって協力してくれたすべての人たちに深謝する.
 Harvey Dillon

 長きにわたり辛抱と理解を示してくれたFiona,Louisa,Nicholasに本書を捧げる
 監訳者の序
 序文
第1章 補聴器を理解するために
 1.1 難聴者の直面する問題
  1.1.1 聴力の低下
  1.1.2 ダイナミックレンジの減少
  1.1.3 周波数分解能の低下
  1.1.4 時間分解能の低下
  1.1.5 難聴の原因
  1.1.6 いくつかの機能低下の組み合わせで生じてしまう問題
 1.2 音の計測
  1.2.1 物理学的計測の基本
  1.2.2 リニア増幅器とそのゲイン
  1.2.3 飽和音圧レベル
  1.2.4 カプラと実耳測定
 1.3 補聴器の種類
 1.4 歴史的な観点からみた補聴器
  1.4.1 集音管式補聴器の時代
  1.4.2 カーボンマイクロホンの時代
  1.4.3 真空管の時代
  1.4.4 トランジスタと集積回路の時代
  1.4.5 デジタルの時代
  1.4.6 ワイヤレスの時代
第2章 補聴器の構成部品
 2.1 ブロック図
 2.2 マイクロホン
  2.2.1 動作原理
  2.2.2 マイクロホンの周波数特性
  2.2.3 マイクロホンの欠点
  2.2.4 指向性マイクロホン
  2.2.5 マイクロホンの位置
 2.3 増幅器(アンプ)
  2.3.1 アンプ技術
  2.3.2 ピーククリッピングとひずみ
  2.3.3 コンプレッションアンプ
 2.4 デジタル回路
  2.4.1 アナログ-デジタル変換器
  2.4.2 デジタル信号処理装置
  2.4.3 固定配線式デジタル処理
  2.4.4 一般演算処理式デジタル処理
  2.4.5 シーケンシャル処理,ブロック処理,および補聴器の遅延
  2.4.6 デジタル-アナログ変換器
  2.4.7 デジタル補聴器の仕様
  2.4.8 デジタル補聴器とアナログ補聴器
 2.5 フィルタ,音質調整,およびフィルタ構成
  2.5.1 フィルタ
  2.5.2 音質調整
  2.5.3 フィルタ構造
 2.6 レシーバ
  2.6.1 動作原理
  2.6.2 レシーバの周波数特性
 2.7 音響ダンパ
 2.8 テレコイル
 2.9 外部入力
 2.10 リモートコントロール
 2.11 骨導レシーバ
 2.12 電池
  2.12.1 動作原理
  2.12.2 動作電圧
  2.12.3 容量と物理的な大きさ
  2.12.4 充電池
 2.13 まとめ
第3章 補聴器のシステム
 3.1 カスタム構成とモジュラー構成
  3.1.1 カスタム補聴器
  3.1.2 モジュラー補聴器
  3.1.3 セミモジュラー補聴器とセミカスタム補聴器
  3.1.4 補聴器の信頼性
 3.2 両耳通信式補聴器
 3.3 補聴器のプログラム
  3.3.1 プログラマ,インターフェース,およびソフトウェア
  3.3.2 マルチメモリとマルチプログラム補聴器
  3.3.3 一対比較法
 3.4 補聴器の遠隔検知・送信システム
 3.5 磁気誘導ループ
  3.5.1 電界均一性と方向
  3.5.2 磁場強度
  3.5.3 磁気誘導ループ周波数特性
 3.6 無線送信
  3.6.1 周波数変調
  3.6.2 デジタル変調技術
  3.6.3 補聴器への接続
  3.6.4 ワイヤレスマイクロホンとローカルマイクロホンの組み合わせ
 3.7 赤外線送信
 3.8 教室内における音場増幅(DSF)システム
 3.9 磁気誘導ループ,無線送信,赤外線送信,およびDSFシステムのメリットとデメリットの比較
 3.10 補聴援助機器(ALD)
 3.11 接続性と収束性
  3.11.1 電子機器と補聴器の接続
  3.11.2 周辺機器とのリンク
  3.11.3 携帯電話と補聴器の干渉
 3.12 まとめ
第4章 電気音響的特性の測定
 4.1 カプラと擬似耳による補聴器の測定
  4.1.1 カプラと擬似耳
  4.1.2 試験箱
  4.1.3 測定用信号
  4.1.4 利得周波数レスポンスとOSPL90周波数レスポンス
  4.1.5 入出力(I-O)特性
  4.1.6 ひずみ
  4.1.7 内部ノイズ
  4.1.8 磁気レスポンス
  4.1.9 ANSI,ISO,IEC規格
 4.2 RECD(実耳-カプラ差)
  4.2.1 RECDに影響を及ぼす要因
  4.2.2 RECDの測定
  4.2.3 RECDとREDD(実耳-ダイヤル差)
 4.3 REAG(実耳補聴利得)
  4.3.1 REAG測定におけるプローブの挿入
  4.3.2 REAG,カプラ利得,および擬似耳利得の関係
  4.3.3 不正確な補聴器装用下の測定を見抜く
 4.4 REIG(実耳挿入利得)
  4.4.1 REIG測定におけるプローブの挿入・配置
  4.4.2 REIG,カプラ利得,および擬似耳利得の関係
  4.4.3 不正確なREIGの測定を見抜く
  4.4.4 REIGの測定における正確度
 4.5 実耳測定における実施上の注意点
  4.5.1 プローブの較正
  4.5.2 音場制御用マイクロホン
  4.5.3 耳垢の影響
  4.5.4 背景ノイズによる悪影響
  4.5.5 補聴器の飽和
  4.5.6 スピーカの向き
  4.5.7 測定用信号の特性
 4.6 補聴器装用下の閾値検査とファンクショナルゲイン
 4.7 補聴器におけるフィードバック発振
  4.7.1 フィードバック発振の仕組み
  4.7.2 フィードバックによる音質への影響
  4.7.3 プローブチューブの測定値とフィードバック
 4.8 補聴器の不具合へのトラブルシューティング
 4.9 まとめ
第5章 補聴器のイヤモールド,イヤシェル,カプリングシステム
 5.1 イヤモールド,イヤシェル,カナルフィッティングの形状
  5.1.1 BTEイヤモールドの形状
  5.1.2 ITE/ITC/CICのイヤシェルの形状
 5.2 イヤモールド,イヤシェル,カナルフィッティングの音響効果についての概要
 5.3 ベント
  5.3.1 補聴器ゲインとOSPL90のベント効果
  5.3.2 ベントとオクルージョン(こもり感・耳閉塞感)効果
  5.3.3 フィードバックに対するベントと音漏れの影響
  5.3.4 ベントとデジタル信号処理アルゴリズムの相互作用
  5.3.5 平行ベントとYベント(斜めベント)
  5.3.6 オープンカナルフィッティングの概要
 5.4 音道:チュービング,ホーン,締めつけ
  5.4.1 音響ホーンと音道サイズの調整
  5.4.2 チューブ挿入の深さ
 5.5 ダンパ
 5.6 チューブ,ダンパ,ベントの構成
 5.7 イヤモールドやイヤシェルの音響特性の選択手順
 5.8 耳型採取
  5.8.1 標準的な耳型採取のテクニック
  5.8.2 CICや高ゲイン補聴器用の耳型採取テクニック
  5.8.3 印象剤
 5.9 イヤモールドやイヤシェル
  5.9.1 イヤモールドやイヤシェルの構成
  5.9.2 イヤモールドやイヤシェルの材料
  5.9.3 インスタントイヤモールドやインスタント補聴器
  5.9.4 イヤモールドやイヤシェルの修正・補修
 5.10 まとめ
第6章 補聴器に使用される圧縮システム
 6.1 圧縮の主な役割:信号のダイナミックレンジの縮小
 6.2 コンプレッサの基本特性
  6.2.1 コンプレッサの動的特性:アタックタイムとリリースタイム
  6.2.2 静的圧縮特性
  6.2.3 入力と出力の制御
  6.2.4 マルチチャネル圧縮
 6.3 圧縮を使用する理論的根拠
  6.3.1 不快感,ひずみ,損傷の回避
  6.3.2 音節間または音素間の強度差の軽減
  6.3.3 長時間レベル差の軽減
  6.3.4 音の快適さの向上
  6.3.5 デジタル補聴器におけるラウドネスの正常化制御
  6.3.6 語音明瞭度の最大化
  6.3.7 ノイズリダクション
  6.3.8 経験的なアプローチ
 6.4 補聴器におけるコンプレッサの組み合わせ
 6.5 各種圧縮システムのメリットとデメリット
  6.5.1 リニア増幅に対する圧縮
  6.5.2 単チャネル圧縮に対するマルチチャネル圧縮のメリット
  6.5.3 低速圧縮と高速圧縮の比較
 6.6 まとめ
第7章 指向性マイクロホンとアレー信号処理
 7.1 指向性マイクロホンの技術
  7.1.1 減算式指向性マイクロホン
  7.1.2 加算式指向性アレー
  7.1.3 高度な指向性アレー
  7.1.4 バイノーラルリンク指向性
 7.2 指向性の定量化
  7.2.1 2次元次元指向性指数
  7.2.2 AI-DI
 7.3 指向性による効果
  7.3.1 受聴環境の影響
  7.3.2 実生活におけるレポートや臨床でみられる客観的効果
  7.3.3 指向性と他の技術との相互作用
  7.3.4 指向性のデメリット
  7.3.5 指向性マイクロホンの対象者
  7.3.6 病院内や店舗内で指向性マイクロホンを評価するときの注意点
 7.4 まとめ
第8章 高度な信号処理
 8.1 アダプティブノイズリダクション
  8.1.1 アダプティブノイズリダクションの方式
  8.1.2 アダプティブノイズリダクションの効果
  8.1.3 衝撃音(インパクトノイズ)の抑制
 8.2 フィードバックの抑制
  8.2.1 利得周波数レスポンスの制御によるフィードバック抑制
  8.2.2 位相制御によるフィードバック抑制
  8.2.3 フィードバックキャンセルによるフィードバック抑制
  8.2.4 周波数移転によるフィードバック抑制
  8.2.5 フィードバック抑制方式の組み合わせ
 8.3 周波数移転
  8.3.1 周波数移転のルール
  8.3.2 周波数移転の技術
  8.3.3 市販製品の周波数移転方式
  8.3.4 周波数移転の語音明瞭度と適用可能性
 8.4 音声特徴量を強調する方法
 8.5 その他の信号処理方式
 8.6 まとめ
第9章 補聴器装用候補者についての評価
 9.1 補聴器装用下限閾値に影響する要因
  9.1.1 姿勢とモチベーション
  9.1.2 聴力レベルと聴力像
  9.1.3 語音弁別能
  9.1.4 聴覚障害に関する自己申告
  9.1.5 ノイズの受け入れ
  9.1.6 きき取り環境,ニーズと期待
  9.1.7 見かけや審美上の懸念
  9.1.8 操作と取り扱い
  9.1.9 年齢
  9.1.10 パーソナリティー
  9.1.11 聴覚情報処理障害(APD)
  9.1.12 耳鳴り
  9.1.13 様々な要因が複合する場合
  9.1.14 装用に気乗りしていないクライエントへのカウンセリング
 9.2 補聴可能な難聴の限界
  9.2.1 語音明瞭度が不良な場合
  9.2.2 補聴器か人工内耳か
  9.2.3 バイモーダルかハイブリッドか
  9.2.4 補聴器かタクタイルエイドか
 9.3 補聴器適応における禁忌
 9.4 まとめ
第10章 補聴器の処方
 10.1 補聴器適合のための処方の実際とその背景にある考え方
 10.2 リニア増幅をゲインと周波数レスポンスから規定していく
  10.2.1 POGO
  10.2.2 NAL
  10.2.3 DSL
  10.2.4 POGOII,NAL-RP,DSLの比較
 10.3 処方のむずかしい事例
  10.3.1 ゲインと周波数レスポンスに対する順化と順応
  10.3.2 ラウドネスの適正値
  10.3.3 不感領域
  10.3.4 高度難聴例で明瞭度を改善させるための高域増幅のコツ
  10.3.5 圧縮閾値を決定する処方手順
  10.3.6 正確な処方の必要性
 10.4 ノンリニア補聴器におけるゲイン,周波数レスポンス,入出力関数
  10.4.1 LGOB
  10.4.2 IHAFF/コンツアー
  10.4.3 ScaleAdapt
  10.4.4 FIG6
  10.4.5 DSL[i/o]とDSLm[i/o]
  10.4.6 NAL-NL1とNAL-NL2
  10.4.7 CAM-REST,CAMEQ,CAMEQ2-HF
  10.4.8 ノンリニア処方のまとめ
 10.5 伝音難聴と混合難聴における処方手順
 10.6 マルチメモリ補聴器の設定
  10.6.1 音楽対応プログラム
  10.6.2 マルチメモリ補聴器の候補
 10.7 OSPL90を処方する
  10.7.1 基本原理:不快感を避け,内耳障害を生じさせず,信号のひずみも発生させない
  10.7.2 出力制限は圧縮で行うべきか,ピーククリッピングで行うべきか
  10.7.3 OSPL90を処方する
  10.7.4 周波数ごとにOSPL90を処方する
  10.7.5 ノンリニア補聴器に対するOSPL90
  10.7.6 伝音難聴例と混合難聴例におけるOSPL90の処方
 10.8 過剰な出力レベルによって生じる難聴の進行
 10.9 まとめ
第11章 補聴器の選択と調整および検討
 11.1 補聴器の型式(CIC,ITC,ITE,BTE,めがね型,ポケット型)を決める
 11.2 補聴器の機能を選ぶ
 11.3 補聴器の選択と調整
 11.4 耳の大きさと形に合わせたカプラ処方
 11.5 処方した実耳特性の達成と確認
 11.6 信号処理機能の検証
 11.7 OSPL90による評価と微調整
 11.8 まとめ
第12章 補聴器の微調整とトラブルシューティング
 12.1 日常的な問題を解決する
  12.1.1 取り扱いの困難さ
  12.1.2 イヤモールドまたはイヤシェルの不快感
  12.1.3 不自然な形状のイヤモールドやイヤシェルの脱落
  12.1.4 自分の声の音質とオクルージョン
  12.1.5 フィードバック(発振)音
  12.1.6 音質
  12.1.7 ノイズ,語音明瞭度,ラウドネス
 12.2 エビデンスに基づいた補聴器調整手順
  12.2.1 一対比較法
  12.2.2 音質の絶対評価
  12.2.3 一対比較法を用いた選択のやり方
  12.2.4 一対比較法の際の適応パラメータ調整のやり方
  12.2.5 音質の絶対評価を用いたアダプティブファインチューニング
  12.2.6 マルチメモリまたはトレーニング型補聴器による自宅での微調整
 12.3 まとめ:微調整の視点から
第13章 補聴器装用者への教育とカウンセリング
 13.1 難聴の理解
 13.2 補聴器の選択
 13.3 補聴器を使い始める
 13.4 補聴器がもたらす新しい音の体験
 13.5 補聴器の手入れ
 13.6 ヒヤリング・ストラテジー
  13.6.1 話し手と周辺環境を観察する
  13.6.2 対人スキルを工夫する
  13.6.3 環境調整
  13.6.4 ヒヤリング・ストラテジーをどう教えるか
 13.7 家族や友人を参加させる
 13.8 聴能訓練
 13.9 e-ラーニングの活用
 13.10 補聴器が原因で難聴を進行させてしまうことがないようにする
 13.11 補聴援助機器(ALD)
 13.12 カウンセリングを通じての支援
 13.13 カウンセリングスタイルのあれこれ
 13.14 再来予約はどの程度行うべきか
  13.14.1 カウンセリングで評価すべき項目
  13.14.2 フィッティングのための再来受診
  13.14.3 フォローアップのためのカウンセリング
  13.14.4 グループカウンセリングの活用
 13.15 まとめ
第14章 聴覚リハビリテーション効果の評価
 14.1 成果の内容
 14.2 ことばのきき取り検査
  14.2.1 補聴器適合評価におけることばのきき取り検査の限界
  14.2.2 ことばのきき取り検査による効果評価の役割
 14.3 装用効果を評価するための質問紙法による自己評価
  14.3.1 質問紙の作成法
  14.3.2 実際的自己評価法
 14.4 ニーズとゴールの一致
 14.5 使用法,問題,満足度の評価
 14.6 補聴器効果国際調査紙
 14.7 補聴器フィッティング後の効果の変化
 14.8 聴力障害と補聴器が健康関連QOLにもたらす影響
  14.8.1 聴力障害が健康関連QOLにもたらす影響
  14.8.2 補聴器が健康関連QOLにもたらす影響
 14.9 まとめ
第15章 両耳装用とフィッティング
 15.1 音の方向感と両耳聴
  15.1.1 健聴者はいかにして音の方向感を得ているか
  15.1.2 難聴者の音の方向感
 15.2 検知と認知における両耳聴のメリット
  15.2.1 頭部陰影効果
  15.2.2 ノイズ下の両耳スケルチ
  15.2.3 両耳冗長性
  15.2.4 両耳ラウドネス加算
 15.3 両耳装用のメリット
  15.3.1 語音明瞭度
  15.3.2 方向感
  15.3.3 音質
  15.3.4 遅発性に生じる聴覚の廃用
  15.3.5 耳鳴りの抑制
  15.3.6 両耳装用で得られるその他のメリット
 15.4 両耳装用のデメリット
  15.4.1 コスト
  15.4.2 両耳干渉
  15.4.3 自己像(セルフイメージ)
  15.4.4 その他のデメリット
 15.5 両耳装用効果の確認方法
  15.5.1 基準耳の選択に関するバイアス
  15.5.2 両耳装用効果を評価するために必要となる語音検査の感度
  15.5.3 両耳装用効果を評価するための語音検査の役割
  15.5.4 方向感検査
 15.6 左右非対称な難聴のフィッティング
  15.6.1 左右非対称な難聴では,両耳装用か片耳装用か
  15.6.2 片耳装用における装用耳の選択
  15.6.3 その他の選択肢:FM補聴器とCROS補聴器
 15.7 両耳装用か片耳装用かの決定
 15.8 電気音響学的な処方における両耳装用と片耳装用の影響
 15.9 まとめ
第16章 乳幼児・幼児への補聴とその周辺
 16.1 音の感覚経験,失聴,補聴器の適応
  16.1.1 両耳聴による音感覚刺激
  16.1.2 一側性難聴
  16.1.3 軽度難聴,ごく軽度の難聴
  16.1.4 人工内耳
  16.1.5 ANSD
 16.2 聴力の評価
  16.2.1 実耳特性に対応した周波数別のアセスメント
  16.2.2 小さな耳と聴覚レベルのレベル変換
  16.2.3 APD
  16.2.4 アセスメントにかかわる他の問題
 16.3 補聴器とイヤモールドの形状
  16.3.1 補聴器の形状
  16.3.2 イヤモールド
 16.4 乳幼児・幼児への補聴器処方
  16.4.1 音声聴取能と増幅の必要性
  16.4.2 閾値ベースの手順とラウドネスベースの手順の比較
  16.4.3 小さな外耳道への対応
  16.4.4 デジタル信号処理の特徴
  16.4.5 補聴援助システム(ALD)
 16.5 実耳特性の検証
 16.6 補聴効果の評価
  16.6.1 語音検査
  16.6.2 一対比較法によるテスト
  16.6.3 不快レベルの評価
  16.6.4 主観的報告による評価
  16.6.5 明瞭度指数(AI法,SII法)
  16.6.6 大脳皮質からの誘発反応
  16.6.7 話しことばの産出と言語習得
 16.7 両親支援
 16.8 聴覚ハビリテーションの目標
  16.8.1 乳幼児に対する目標と方策
  16.8.2 幼児に対する目標と方策
  16.8.3 就学前児に対する目標と方策
  16.8.4 学齢児に対する目標と方策
 16.9 10代の若者と外見上の問題
 16.10 安全面の問題
 16.11 まとめ
第17章 CROS型・骨導型・埋め込み型補聴器
 17.1 CROS補聴器
  17.1.1 CROS補聴器(標準型)
  17.1.2 BICROS補聴器
  17.1.3 ステレオCROS補聴器
  17.1.4 経頭蓋的CROS補聴器
 17.2 骨導補聴器
  17.2.1 骨導補聴器の適応
  17.2.2 骨導補聴器の出力性能
  17.2.3 骨導補聴器の処方,調整,および電気音響特性の評価
  17.2.4 骨導補聴器のデメリット
 17.3 埋め込み型骨導補聴器(BAHA)
  17.3.1 一側性伝音難聴または混合難聴へのBAHA
  17.3.2 両側性伝音難聴または混合難聴への両耳BAHA
  17.3.3 一側ろう(一側性感音難聴)へのBAHA
  17.3.4 BAHAの合併症
 17.4 中耳埋め込み型補聴器
  17.4.1 出力トランスデューサ
  17.4.2 マイクロホン
  17.4.3 完全(埋め込み型)システム
  17.4.4 適応と有用性
  17.4.5 人工中耳の合併症
 17.5 まとめ

 文献
 索引