やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社


 高齢化が進むわが国では,咀嚼機能や嚥下機能が低下した方が増加しています.そのような方には,水分にとろみを付けたり,やわらかい食事を提供する必要があります.時には市販食品を利用することも考えられます.現在,嚥下機能や咀嚼機能が低下した方を対象とした市販食品にはさまざまなものがあり,2,000 種類以上が流通しています.このような多くの製品を有効に活用するには分類が必要です.日本摂食嚥下リハビリテーション学会では,2013 年に嚥下調整食の分類ができる「嚥下調整食分類2013」を作成しました.この分類は医療機関や高齢者福祉施設で徐々に浸透してきています.本書では,比較的重症度の高い学会分類コード0〜2 の製品300 種類を中心に分類しました.分類の客観的な指標として,「かたさ」,付着度を示す「付着性」,まとまり感を示す「凝集性」を用いました.さらに嚥下機能が低下した場合には,高野豆腐のような口腔内で食塊を送り込む際に生じる離水にも気をつける必要がありますので,本書ではこのような圧力がかかった際に生じる離水を「内部離水」とし,製品を開けた際に生じている離水「表面離水」として分けて明記しました.
 一般に嚥下調整食は,やわらかく仕上げるために水分を多く含むため,単位重量当たりの栄養価は低下します.つまり嚥下調整食を提供する場合には,どのような形態が適するかということを考えることと同時に,低栄養状態に陥りやすいことを認識しておく必要があります.最近の研究では,高齢者はたんぱく質の同化機能が低下しているため,たんぱく質をしっかり摂取することが推奨され,従来,至適BMIは18.5〜24.9 kg/m2 と考えられていたのが,高齢者では22.5〜27.4 kg/m2 が望ましいといった新しい知見が報告されています.本書では各製品の栄養量も明記しましたので,市販食品選択の一助になれば幸甚です.
 2015 年8 月
 編著者
1 嚥下障害の方への市販食品の利用と有用性
 (藤島一郎)
 食塊について
 品質の安定性と利便性
 利用の仕方と費用
2 学会分類2013 に沿った市販食品分類の意義
 (栢下 淳)
 食形態の分類
 ゼリー飲料(いわゆるドリンクゼリー)について
 学会分類2013 と嚥下食ピラミッドの関連性
 とろみの分類
3 学会分類2013 に沿った市販食品選択に有用な方法
 (田中陽子)
 適切な食事形態を選択することの必要性
 舌圧の食事形態選択への応用
4 学会分類2013 に沿った在宅での市販食品選択のポイント
 (江頭文江)
 市販食品の購入手段
 市販食品の選び方
 学会分類2013 をどのように一般の人に伝えるか
 どうやったら学会分類2013 と市販食品を個々にマッチできるか
 市販食品を用いた在宅食支援の例
5 学会分類2013 に沿った市販食品の分類方法
 (桜井史明・吉村 遥・山縣誉志江)
 市販食品の分類
 物性の測定方法
 ゲル状の製品の離水測定方法
 コード2 に分類される製品の粒の量の測定方法
6 市販食品の利用のための食事観察のコツ
 (吉田光由)
 「食べる」を考える
 プロセスモデルとは
 食事観察のポイント
 ミールラウンドのすすめ

 市販食品集
  コードの分類方法について
  0j コード0j(嚥下訓練食品0j)
  1j コード1j(嚥下調整食1 j)
  2-1 コード2-1(嚥下調整食2-1)
  2-2 コード2-2(嚥下調整食2-2)
  3 コード3(嚥下調整食3)
  4 コード4(嚥下調整食4)

 【資料】学会分類2013 早見表
 販売会社別製品名さくいん

 COLUMN
  形を残してやわらかく
  すばやく安定した物性の嚥下造影検査食の作製を
  筋肉を増やすロイシン
  学会分類2013 と他分類の対応