やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社


 嚥下調整食(以下,嚥下食とする)の客観的な評価で判定する嚥下食ピラミッドのレシピ関連書籍は,本書で4冊目となる.最初に出版したのは『嚥下食ピラミッドによる嚥下食レシピ125』(2007年)で,ほぼ毎年増刷を行っている.従来,対象者にどのような嚥下食を提供するかは,施設内で主観により判断することが多かったが,ゼリーやムース系の食品では,従来書を参考に客観的評価による判定も広がってきた.従来書を参考にされた医療関係者は,提供する嚥下食の参考になったものと思われる.
 一方,ピューレやペースト状の食品については,各施設で熟考されたものが提供されてはいるが,施設間の形態の差は大きい.広島県の病院・高齢者福祉施設で提供されている同一のメニュー(肉じゃが)のペースト食を調査した結果では,均質なものと不均質なものを提供している施設があることがわかった.さらに,不均質のものには,咀嚼が必要なものと,そうでないものが存在しており,このような現状では,病診連携を進めにくいと考えられた.その原因のひとつは,ペースト食のレシピ集が,ほとんど存在していないためと思われ,このような背景から,本書の発行に至った次第である.
 本書の発行にあたっては,徳島赤十字病院の粗ペースト食,ペースト食,ムース食のレシピを基に,嚥下食ピラミッドの物性範囲に入るよう徳島赤十字病院の栄養士および調理師の方々に多大なる協力をいただいた.特に,温かくして提供する食事は,温かい時点では非常によい物性を示しても,冷めると嚥下食としては好ましくない物性に変化するものも多く,試行錯誤の連続であった.また,単位重量当たりの栄養価をできるだけ下げないように加水量を少なくし,ミキサーのかけ方も工夫した.さらに,施設においては個別対応が可能なように,また在宅においてはご家族が作成できるような調理機材で作成した.
 本書を参考に食事作りを行っていただければ幸いである.
 2012年12月
 栢下 淳
1 嚥下食ピラミッドにおけるゼリー食(L0)とペースト食(L3)の適応(仙田直之)
 嚥下食ピラミッド
 地域連携の取り組み
 嚥下食ピラミッドの落とし穴
 ゼリー食とペースト食の適応
 ゼリー食とペースト食の選択
2 嚥下食ピラミッドの概念―栄養摂取の注意点―(金谷節子・栢下 淳)
 簡易的な摂食・嚥下スクリーニング
 摂食・嚥下機能の低下と低栄養の問題
 形態調整した食事とエネルギー・たんぱく質量との関係
 形態調整した食事の基準化に向けて
 嚥下食ピラミッドとは
 嚥下食ピラミッドの概念
 嚥下食の形態調整
3 嚥下食の物性(国重美樹・末丸彩香・山縣誉志江)
 物性の測定方法
 本書収載レシピの物性
4 嚥下食の調理方法―調理するときのコツ―(徳島赤十字病院栄養課)
 嚥下食調理に必要なもの
 食事形態別の調理方法
 まとめ
ペースト・ムース食レシピ
 レシピの見方・考え方
 ソース
 全粥
 巻き寿司
 ちらし寿司
 親子丼(具)
 牛丼(具)
 カレーライス
 ハヤシライス
 チキンライス
 チャーハン
 煮込みうどん
 焼きそば
 ラーメン
 お好み焼き
 たこ焼き
 厚焼き卵
 牛肉
 鶏肉
 豚肉
 ハンバーグ
 鶏のから揚げ
 焼き魚 さけ
 焼き魚 さわら
 焼き魚 たい
 ぶりの照焼き
 かれいの煮付け
 さばのみそ煮
 すき焼き
 肉じゃが
 けんちん煮
 筑前煮
 クリームシチュー
 酢豚
 麻婆豆腐
 えびしゅうまい
 魚フライ
 えびフライ
 肉コロッケ
 天ぷら さつまいも
 天ぷら なす
 おでん こんにゃく
 おでん だいこん
 おでん 卵
 おでん 竹輪
 おでん 焼き豆腐
 かぼちゃの含め煮
 切干しだいこんの煮付け
 さといもの含め煮
 ポテトサラダ
 きんぴられんこん
 ほうれんそうのお浸し
 なすのみそ和え
 ひじきの炒り煮
 きゅうりの酢の物
 もずくきゅうり
 なます
 金時豆
 黒豆
 たくあん漬
 キムチ
 しば漬
 野沢菜漬
 らっきょう
 けんちん汁
 豚汁
 みそ汁