やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社


 審美修復治療のメインマテリアルとなったセラミックスは,近年になってますますその種類,成形法が多様化し,クラウン・ブリッジはもとより,インプラントや歯周軟硬組織の改善を含む総合的治療にまで,その適用範囲は広範化の一歩を辿っている.口腔内スキャニング,レーザー焼結システム,3D-CADに代表されるような新しいデジタル技術の活用も加速度を増し,歯科治療・歯科技工における手技・手法の向上と歯科医院・歯科技工所の経営効率の観点から,従来の既成概念をじわりと変える存在感を放ちつつある.
 本書では,月刊『歯科技工』誌上にて掲載してきた欧米の歯科・歯科技工関連論文から現在の臨床において有意義と思われるものを選出して加筆修正・再編集し,さらに最新の新規翻訳論文を加えて,「セラミックスレストレーション」「CAD/CAMを用いたセラミックスワーク」「インプラントワーク」の内容ごとに分類整理を行った.
 そこで具体的に示されるのは,可能な限り歯牙の削除量を抑えたMI(Minimal Intervention;最小限の侵襲)に基づく修復法,ジルコニアフレーム上に機能的かつ審美的な歯冠形態をプレス成形するプレスセラミックスの優位性,デンタルスキャニングシステムにおける新開発技術による光照射(レーザー)測量法などであり,長い年月を経て蓄積された歯科医師,歯科技工士の手による匠の技術と産業界に端を発するデジタルテクノロジーが融合して全く新しいセラミックスワークが生み出されている最先端歯科医療の実際である.
 歯科技工学とは,歯を作る技術を科学的に論証することにあり,国境を超えて相通ずるものであるが,歯科技工を取り巻く各種の環境や患者のニーズなどはさまざまであることもまた事実である.本書の翻訳においては可能な限り,その事実を考慮した表現に留意したが,微妙なニュアンスや,言葉と言葉の境界で生じる読解内容の違いについては,その技術の実際と各執筆者の考え方のエッセンスを汲み取っていただければ幸いである.
 ドイツと日本で歯科技工士として働いてきた筆者は,「欧米歯科界の奔流は数年後に日本にも渡ってくる」という現実を肌で感じている.その意味では本書に収録された各氏の論文は,まさに現在そして近未来の日本の歯科技工に従事する歯科技工士諸氏にとって必読の内容と言えるであろう.本書の読者諸氏が日本の歯科技工界の将来と可能性を切り拓き,歯科医療に永く貢献する道筋を得られることを願ってやまない.
 本書の出版にあたり多大な理解と協力をいただいた,筆者の古くからの友人で,歯科技工士であり編集者でもあるRalf Suckert氏(teamwork media GmbH)に,心からの感謝の意を表したい.
 2010年9月
 歯科技工士マイスター 大畠一成
 序
 Opening Graph セラミックスワークの可能性
セラミックスレストレーション
 赤と白の審美に対する歯科医師,歯科技工士の責任と役割(Dr.Cyrus Rafiy)
 プレスオーバーテクニックの臨床応用と,その優位性の検証(Ztm.Jan Langner)
 全顎的欠損修復症例における各種築盛テクニックの応用法(Oliver Brix)
 オパール効果と蛍光性を考慮した陶材築盛の実践(Ztm.Paul A.Fiechter)
 最終補綴物に迫るプロビジョナルレストレーションのあり方(Michel & Pascal Magne,Domenico Cascione,Inge Munck)
 症例に応じてどのセラミックス修復法を選択するか?(Klaus Muterthies)
 合理的に審美性を獲得するプレスオーバーテクニックの技法(Aldo Zilio)
CAD/CAMを用いたセラミックスワーク
 インプラント技工における最新のCAD/CAM技術(PD.Dr.Stefan Holst,Prof.Dr.Manfred Wichmann,Dr.Matthias Fenner)
 0.8mm以下のクリアランスにおける上顎両側中切歯修復の実際(Ztm.Jan-Holger Bellmann)
 次世代のラミネートベニア&オールセラミックスクラウン製作(Ztm.Kurt Reichel)
インプラントワーク
 長期予後を見越した上顎全歯修復症例の補綴戦略(Ztm.Hardi Mink)
 チェアサイドとの密な連携に基づくインプラント上部構造の製作(Ztm.Rudolf Hrdina,Dr.Martin Klopf)
 下顎臼歯部インプラント症例における“赤と白”の審美(Christian Berg)

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